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第2章 和国オウラ騒動編

16果たし合いからの乱戦?

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    ギルドへ依頼完了の報告後、果たし合いでレイナをかけるという事態に憂鬱なリン。
    レイナの父であるガイに報告と相談を兼ねてユイトの屋敷へレイナと共に訪ねた。

名前を名乗ると、審査の水晶とギルドカードで細かく審査。本人確認が取れ、取り次ぎの有無が確認出来れば応接室へと案内される仕組みになっている。
事前に、レイナはガイに連絡しておいた。
現在は屋敷の応接室でガイに会って報告したところだ。


「ぐぬぬ~!レイナは物ではない!レイナに名も明かさぬような不届き者はお呼びで無いわ!リン殿!コテンパンに伸してきてくれ!ああ、どこの馬の骨とも分からん男には、まず最初にレイナを賭けたことを謝罪させねばならんな!やはり私もその日は冒険者ギルドに向かうぞ‼」

    物凄い剣幕で怒り狂うガイは、かの明王に見える。リンはガイの溺愛っぷりにひきつった笑みで答えるしかなかった。

「レイナちゃんのお父様の溺愛っぷりには驚かされるわ……。私が負けるような相手だったらどうするのよ……」

    リンは盛大に溜め息を吐いた。
この調子では、勢い余って相手をコテンパンにするのはガイではなかろうか。

    レイナの父のブツブツ呟く姿に一抹の不安を感じつつ、退出の声を掛けたが反応が無い。
溜め息を吐いたレイナに促されて応接室を後にした。


    ユイトの屋敷から出たリンとレイナは、茜色に染まる住宅街へ続く道をゆっくりと歩く。


「何だか疲れましたね……」

「……そうね。精神的に疲れたわ。帰って夕飯の支度するけど、レイナちゃん食べてく?」

「そうしたいですが、今日は家で食べると約束したのでこのまま帰ります」

「そっか。じゃあ、明後日ね。果たし合いは気乗りしないけど。レイナちゃんは大切な友達だから、賭けに使われるのは私も気に食わないのよ。あ、謝らないでね?レイナちゃんが悪いわけじゃ無いんだから」

「……はい。有り難うございます。明後日会いましょう」

「うん」

    お互いに手を振り、レイナは高級住宅街へ、リンは住宅街外れの方向へリコラを伴って家へ向かった。



△▲△▲



────そして2日後。リンは冒険者ギルドの地下闘技場に来た。
闘技台の上に上がれば、この間の男が1人立っていた。

    観客席には、冒険者や一般人がビッシリ入っている。思わず深い溜め息を吐いた。

「よく逃げずに来たなぁ。お前のような女がレイナ様といるなど許せん!レイナ様の側によるんじゃねえ!」

    意味不明な内容にリンは呆れつつ、こいつなら木刀で良いか、と小さく呟いて木刀を取り出す。
構える必要も感じないため、自然体のままだ。

「リンちゃん頑張って下さい」

    闘技台の側で、レイナから声がかかる。
振り向かずに頷くと、レイナが離れていく気配を感じ、目を閉じて深呼吸。

「レイナ様と一緒にいられるのは、親衛隊だけで充分なんだ。その中から花婿候補を選んで貰えるんだ……」

    ブツブツ呟く男の姿に、リンは寒気を感じ、思わず目を開ける。

(ナニコノオトコキモチワルイ。
潰す。絶対に潰す。レイナちゃんに近寄ったらレイナちゃんが穢れる‼)

    リンは男を見据え、自然体で木刀をギリギリと握り締めた。


「これより、Cランクのリン・トウヤ対Cランクのジボーの果たし合いを始める。審判は私、和国オウラギルドマスター、トウジ・ヤキタが務める。では、始め!」

    ギルドマスターの声と同時に飛び出したのは、男───ジボー。
ジボーの持つ武器は大剣だ。重さを感じさせずに横凪ぎに振り抜いてきた。
    リンはヒラリと避ける際に木刀で腹を一撃。ジボーを闘技台の端まで飛ばす。

「ぐっ……!くそ!」

    ジボーは飛ばされた態勢から受け身を取りすぐさま起き上がる。
リンの姿が視界に入るとジャンプ。
斬撃が通りすぎる。

「あら」

    リンは残念そうな顔をする。
手加減した斬撃を避けたジボーが再び突っ込んでくる。

「そんな木刀ごときで防げるかあああ‼」

    ジボーが大剣で連撃を繰り出す。それをリンは器用に避けては木刀でいなす。

「くそっ!何で折れない⁉」

    それもそのはず。リンは闘気を木刀に纏わせている。濃度を濃く、気付かれにくいように薄く。魔闘気は周囲に気付かれる可能性があるため、使用を控えた。


(練気が荒い。剣筋はなかなか。もう少し鍛えれば、この人Bランク行けそうなのに。私の闘気が木刀を包んでるから折れないんだけど、気付かない?闘気読みが苦手なのかな?──教えてやらないけど)

    教えたところで、簡単に出来るような物でもない。コツは自分で掴まなければ意味がないのだ。
    ましてや、レイナの親衛隊を名乗る男に余計な手助けなどするものか。

    ガキン!と大剣を受け止めて、太刀筋は殆ど読めたと感じたリンは、ジボーを強い視線で見据え、口元が弧を描く。

「反撃開始します」

    ガンッと大剣を弾き、胴をがら空きに。
直ぐ様蹴りを入れて吹き飛ばす。
飛んだと同時にリンは一気にジボーとの間合いを詰める。

「このっ!」

    態勢が崩れていても何とか受け止め、ジボーはその反動を利用して着地。

「……ふっ!」

    リンの小さな呼吸とともに一閃。
闘技台の上からジボーを叩き落とした。

「勝者、リン・トウヤ!」

    ギルドマスターの声を合図のように歓声と怒号が飛び交う。

「ジボーさん、レイナちゃんを賭けるなんて、あまりにも酷すぎですよ。それでも男ですか?アホとしか言えません」

    ヒュッと木刀を振り下ろし、アイテムボックスにしまう。

    さんざん痛め付けられたジボーは、それでもリンを睨み付ける。

「「「ジボー兄貴の仇!」」」

    突然、声と同時に3人の男たちが其々の武器をもって一斉に闘技台へと飛び込んできた。
そのままの勢いでリンへと飛び掛かる。

「うざっ!」

    究極に嫌そうな顔をして、1人ずつその勢いを利用して闘技場の壁まで投げつける。轟音とともにあっという間に気絶させた。手をはたいて溜め息をつく。

「つ、つえぇ……」

「勢いを利用して投げただけだからそうでもないぞ?ジボー、いい加減その親衛隊から抜けろ。お前はまだ間に合う」

    ジボーの言葉に返事を返したのは、ギルドマスターのトウジ・ヤキタ。

「まあ、あそこまでになるには、幼い頃からの相当な鍛練を積まないと出来ない事だ。才能でも左右されるがな」

「…………」

「じっくり考えて答えを出せ。あの3人には厳罰なペナルティを与えるとしよう」

    トウジはそう言い残して闘技場から去っていった。

    離れた場所でリンとレイナが話しているのが見える。
じっと見ていたジボーは静かに立ち上がると、リンたちに背を向ける。

「模擬戦、やりたいならいつでも声掛けて下さい。私でよければ」

「…………ふん」

    リンの言葉に、背を向けたままそれだけ呟くと、ジボーは闘技場から出ていった。

「リンちゃん有り難うございました。──あの方、大丈夫でしょうか……」

「───きっと大丈夫よ。何か憑き物が落ちたような顔をしてるし……。親衛隊って言ってるけど、何だか変な集団ね」

「そう言われてみれば…。お父さんに調べてもらいましょうか?」

「その方が良いかもね。私も調べてみるから」



果たし合いからちょっとした乱闘?騒ぎは、これで幕を閉じたのだった。


 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

お読み頂いている皆様、遅くなってすみません。
仕事の関係で、投稿が思うように出来ておりません。 
遅筆ではありますが、これからも頑張ります。
 ここまで読んで下さり、有り難うございますm(__)m
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