異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良

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第2章 和国オウラ騒動編

14初依頼へ出発です!

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    あれから、レイナに街中の案内をしてもらい、雑貨や家具など色んな物を買い込んだ。
    ストーカーらしき人物は、あの後追ってくることは無かったが……嫌な予感はずっと消えていない。

    その内接触がある気がする。と考えつつも、街中を歩くのは楽しかった。
    友達と出掛けるなんて本当に久し振りだった。

    冒険者として動くことをレイナに伝えると、一緒に依頼頑張りしょうとニコニコ言われて嬉しかった。いよいよ新しい生活のスタートと気を引き締めて、夕方には家へ帰宅した。

    そしてその翌日。現在リンは、早朝から冒険者ギルド前に来ている。

「リンちゃんおはようございます!」

「レイナちゃんおはよう!これから宜しくね。そう言えば、リリアナさんは?」

「そうでした、リンちゃんにリリアナさんから伝言を預かってました」

    ギルド前で待ち合わせていたレイナと共にギルドへ入りながら、レイナからメモを渡される。


《リンへ。
行商の護衛依頼を受ける知り合いのパーティーに暫く入ることになったから、和国オウラから離れることになったの。獣国経由で他国にも行く予定だから、和国オウラに向かうのがいつになるか分からないわ。また会うのを楽しみに頑張ってくるわね♪リリアナ》

───と書いてあった。

「Aランクだとスゴいのね」

「そうですね。今回は、リリアナさんの知り合いのパーティーだから問題ないですけど、臨時で入るパーティーは良いメンバーだとは限らないので、一時的に入ることは出来るだけ避けた方が良いです。余計なトラブルになりますから」

    そんな話に頷きながら、依頼ボードの近くに着いた。
    早朝はやはり混んでいる。良く読んでいた小説に出てくるテンプレ的な感じは今のところ無いようだ。

    和国オウラのギルドの造りは、レグリアと変わらない。
    人混みを縫って2人で依頼ボードを見に行くと、近くに子供向けの依頼ボードがある。子供たちが見やすいように造りは低めだ。

    そこには4~5人の子供たちが依頼ボードとにらめっこしている。
それを横目で少し見てから、依頼ボードへと視線を戻す。
    Cランクの依頼は討伐依頼や護衛依頼などが主になる。

「リンちゃん、良いのありました?」

    レイナは依頼ボードへと視線を向けたまま、リンへ聞いてきた。

「んー……報酬額が高めで、東の森の調査って有るけど、そんなに危険な森なの?」

「えっと、それは子供たちの護衛も兼ねています。ほらここ」

    レイナが指を差している依頼票の下方に、小さめの文字で『採集依頼の子供たちの護衛も兼ねる』と書いてあった。

「成る程……。土地勘無いから、覚えるのにもうってつけね。報酬額もそれなりだし、この依頼受けても良いかな?」

「リンちゃんにとっては、この国に来て初めてですから良いんじゃないでしょうか。では、受付に持っていきましょう」

    ペリッと依頼票をレイナが剥がし、2人で受付へと向かった。



    今日は受付が混んでいる。10人程の列になっている最後尾に並ぶと、別の列にいる男に話し掛けられた。

「姉ちゃんたち、子供たちの護衛依頼受けるのかい?あんなの暇潰しにしかならねえぞ」

    お前に関係ないわ!と突っ込みたいが我慢して、丁寧に答えることにした。

「依頼に関しては、各自の自由ですから貴方に関係ありません」

「まあ、そうなんだが。ワガママなガキに当たらないことを祈っててやるよ」

    ニヤリと笑って男は前を向き、先へと進んで行った。

「……感じ悪いです」

「ああいうのは気にしない方が良いよ?手を出してこなかっただけ、まだマシだもの」

    手を出してきたら返り討ちにするけどね~と笑顔で言うリン。

    レイナはリンの綺麗な笑顔に寒気を感じた。
首をぷるぷると横に振って少し気合いを入れる。
その間も列は進み、リン達の順番が回ってきた。

「おはようレイナ、今日は依頼受けるの?」

「おはようございますエナちゃん。あ、こちらはこの国に住民登録したリン・トウヤさんです。一緒に依頼を受けようと思ってるんです」

   レイナは依頼票をエナと呼んだ受付嬢に渡した。

「そうなんだ。─────初めまして。私は和国オウラギルドの午前中担当のエナって言います。午後は担当が変わりますので注意して下さいね。これから宜しくお願いします」

「Cランクのリン・トウヤです。宜しくお願いします」

お互いに軽く頭を同時に下げて戻し、視線ががっちり合うとクスリと笑う。

「では早速、依頼の受付を致します。東の森の生態系調査と採集へ向かう子供たちの護衛で宜しいのですね?」

    エナがレイナとリンが頷いたのを確認するとx再び依頼書に視線を落とした。
内容を確認の後、判を押して視線を上げた。

「それでは、お二人のギルドカードをお願い致します」

    それぞれのギルドカードを提示して、受理をしてもらい、すぐにカードを手渡された。

「それでは、あちらにある子供用の受付へ行って下さい」

    エナが右奥の小さなカウンターを指差す。
そこには低めのカウンターがあり、子供たちが近くでキョロキョロしながら待っている姿が見えた。


    子供たちのいる方向へ向かうと、ムスッとした仏頂面の少年に睨まれる。
それをスルーしてカウンターの前に立つと、リンは小さく頭を下げた。

「初めまして。リン・トウヤと申します。東の森の生態系調査の依頼を受けた者です」

「ハイハイ。ワシはこの受付担当のジールじゃ。宜しくのう。ギルドカードの提示をお願いしても良いかの?」

受付は紳士という言葉が似合うお爺ちゃんだった。
「「はい」」
リンとレイナがカードを渡す。
「レイナは久しぶりじゃのう。修行は上手くいったかい?」
「ジールお爺ちゃんお久し振りです。修行は何とかこなして、修了の印を頂きました」
「そうかね。それはおめでとうじゃ」
「有り難うございます」
にこやかな会話をリンは微笑ましげに眺めていると、背後に気配。
しゃがむとレイナに当たるので、投擲用のナイフを素早く出して振り返り様に闘気を少しだけ込めて弾く。
ガラン!と大きな音をたてて剣が床に落ちた。
「ぐっ……!」
剣の柄側の先には、痺れた腕を押さえながら睨む、先程の少年がいた。
「これ!ロッツ!なんという事をするんじゃ!」
咎めるジールを睨み付け、ふんっと鼻を鳴らす。
「女に護衛されるなんて冗談じゃねぇ!」

(道場にもこんな子いたんだよなー。こういう子に限って、筋が良いのよね。負けず嫌いだし)とリンは思う。

「だったらもっと強くなりなさい。私に弾かれるようじゃ、まだまだね」

    勝ち誇った顔をすれば、少年はより一層睨み付けてくる。

「くっそー!今に見てろよ!採集依頼は確実に達成して、討伐まで一気に上がってやるからな!」

「あら。そんなにギャアギャア言うようじゃ、底が知れてるわよ。もっと冷静に判断出来るようでなければ、剣は磨けないわ。剣術教えても良いんだけど、私じゃ教えられるのも嫌だろうから、他当たってね?」

    ニッコリ笑って返せば、ロッツと呼ばれた少年は更にムキになる。

「採集依頼に付いていく!お前の剣術は見て盗む!」

(それは無理なんだけど、やっぱり噛みついた。ふふっ)

「付いてきても良いけど、音を上げないでね」

    リンは口許に手を当ててクスクス笑う。
ムキーっと叫んで飛びかかってくるロッツを軽やかな足捌きで避ける。

「ロッツをあそこまで扱えるとは……。やるのう。ほれ、ギルドカードじゃ。そこのロッツとロミナが今日の採集依頼に出向くから、頼むぞい」

「……ロミナです。お兄ちゃん共々お願いします」

    ジールに呼ばれたカウンター側の少女がちょこんと頭を下げた。

「はい、宜しくお願いします!私はCランクのレイナ・カガミです」

「私はCランクのリン・トウヤよ。宜しくね!っと」

    リンは自己紹介しながらしゃがみこんで足払い。ロッツは盛大に転んだ。

「ってぇ!」

「足元が疎かね。この調子なら私も採集やってられそうねー。私の勝ちで」

「畜生!負けねぇかんな!」

    地団駄を踏む姿を視界に入れるが気に止めず、ギルドカードを受け取ってジールにお辞儀をする。

「では、行ってきます。きっちり護衛こなしてきますね」

ニッコリ笑ってリンが歩き始める。

「うむ、頼んだぞい!」

    クツクツ笑いながら返すジールに手を振って、ギャアギャア喚くロッツとそれを見て苦笑するロミナを連れたリン達一行は、周囲の目も気にすることなくギルドを後にした。



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