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第1章 旅立ちと怒涛の出会いは濃い始まり?編
閑話。ギルマスの暴走、サブマスの苦労
しおりを挟む─────これは、リンたちが冒険者ギルドから出ていったすぐ後の執務室での出来事である。
「ふふふふふふふ……。漸く見付けました……!素敵な出会いがありましたっ。
防音の結界を張って、思う存分叫びますとも。さあ、ギルマスの引き継ぎをしてもらわなければ……!リンさん、待っていて下さいね。私は貴方の元にすぐに向かいます……!ああ、女神の祝福にあの銀のギルドカード。1000年に一度、女神の森から現れると言う娘ですよ!今度こそ、私の運命の相手に違いありません‼ふふふふふふふ……あだっ⁉」
バコン!という大きな音とともに、ルカフの後頭部が木刀で叩かれ、思わず痛みにしゃがみ込む。
「うぅ~!痛い!誰ですか⁉ギルマスの頭を叩くのはっ!」
しゃがんだままルカフが振り返ると、そこに鬼のような形相のサブマスター、ラカが立っていた。
「何が引き継ぎですか。あなた以外にここのギルマスが務まるわけないでしょう?いい加減にしてくれませんか⁉アルディーさんの報告と、『赤狼』の尋問。執務が忙しいからと代理を受けて戻ってきてみれば………………!」
ぷるぷると木刀を握り締め、殺気だつ雰囲気にルカフは顔を青くした。ヤバい。
「い、いやだってね?今度の子は絶対大丈夫だと思うんだよ?だから、この世界に詳しいボクが行けば、きっと楽しい生活が送れるでしょう?」
思わぬ言い訳をルカフから聞き、ラカは鬼の形相でボコンッと再び殴る。
「何度もその手で追いかけて、結局はどうなりました⁉しつこいと嫌がられたでしょう⁉もう何度も申し上げております‼不思議な境遇の方で‼女の子が来る度に‼色んな理由を付けて冒険者ギルドから逃げようとする‼元SSランク冒険者で、ギルドマスターのやることではありません‼こんの変態エルフーーー!」
ボコボコと木刀を振り回してルカフを殴り続けるラカ。
「いだっ!だってねっ⁉ボクの運命の相手に違いないと思うんですぅ!痛いっ!分かった、分かりました‼何処にも行きません‼ごめんなさい~!あだっ!」
ボコンッ!
「いいえ!今度という今度はもう許せません‼覚悟してください!」
ボコボコンッと更に強い力で叩かれる。
「いっ!本当に何処にも行きませんって~!執務室で……っ痛い!もっと真面目に仕事しますから~!あだだっ!」
頭を抱えて咄嗟に叫んで、『あっ⁉』と余計なことを口走った事に気付くが、既に遅かった。
「本当ですね?」
ピタリと木刀を振り回すのを止め、氷のような眼差しをルカフへ向ける。
コクコクとルカフは首を縦に振るしか出来なかった。サブマス怖い。
ラカはルカフを睨みつつ、ゆっくりと木刀を降ろした。
「またそんな事になったら────今度は最終手段を取らせて頂きます。ギルドマスター、貴方を執務室で繋いで何処にも行けないようにしますから、覚悟しておいて下さいね?」
「は、はいぃ!」
「あぁ、それと。私も2階の廊下から彼女を見ていたんですが……あの子は貴方の変態な視線に気付いていたようですから、近付くときは気を付けた方が良いですよ?アルディーさんのお知り合い……と言うより、命の恩人らしいですし、リンさんに惚れているようですから?」
近付いて、顔の広いアルディーさんから皆さんにバラされたら怖いですねぇ……と、ニヤリと笑ったラカの言葉にショックを受け、ルカフが頭を抱えて縮こまった。これが無ければ、素晴らしいギルドマスターなんですがね……と思いながら、ラカは溜め息を吐くのだった。
サブマスの苦労はまだまだ続く。
△△△△△△△△△△△
ここまで読んで下さり有り難うございます。
改訂版に変更してから1000以上のお気に入り登録、とても嬉しく思っております。
そろそろ第2章に入ります。
これからも皆様に楽しんで頂けるように頑張っていきます。
《葵沙良》
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