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【第21話】 リリティア
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異世界アルファザードの上空に浮かび3人の女神たちの拠点でもある『空中神殿』…
その空中神殿から数百メートルほど離れた位置で、オレ・春埼隆人は魔王軍四天王のひとり『天空王スカイダル』(巨乳なダークエルフ)と空中戦を繰り広げていた。
ドヤ顔で的外れなことを語っていたスカイダルに対し、オレは面と向かってそのことを指摘した。
指摘されたスカイダルは、(恥ずかしさと怒りからか)顔を真っ赤にしてプルプル震えている…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
顔を真っ赤にしたスカイダルが音速の数倍の速度で突進してきた。
『 ドオオオォォンッッ!! 』
スカイダルに遅れて、衝撃波(ソニックウェーブ)と爆音が巻き起こる。
だが、スキル【自動加速(オート・ヘイスト)】がかかっているオレにはスローに見える。
余裕を持ってスカイダルの魔法剣による(オレの心臓を狙った)突きを剣で受け流した。
そこから更にスカイダルは、胴を狙った横薙ぎ、肩口を狙った袈裟斬り、胴を狙った突き、頭部を狙った兜割り、右手首を狙った斬撃、等、次々と技を繰り出してきた。
だが、オレにはもうスカイダルの剣はまるで通用しない。
( まぁ、厳密には、最初から通用してなかったんだが…。 )
…と言うか、オレがスカイダルの剣筋に慣れた(剣を見切った)ということもあるが、音速の数倍の速度での体さばきや剣さばきの戦闘により、スカイダルはだいぶ疲労してきているようで、技のキレやスピードが徐々に低下していった…。
更には恥をかかされたことで頭に血が上っているのか、攻めも単純になっているようだ。
オレも、少し軽めに反撃してみるか…
スカイダルの左肩から右わき腹に抜ける軌跡(ライン)で袈裟斬りをしかけてみた。
『 ギイィィンッ!! 』
スカイダルはオレのこの袈裟斬りに反応し、剣で受け止めた。
そして、剣を受け止めつつ、右足でオレのみぞおちを狙って膝蹴りを放ってきた。
( おいおい…これは最初にオレがスカイダルの膝にカウンターで肘打ちを入れた時と同じパターンじゃないか…。 スタミナを欠いてきただけでなく、冷静さも欠いているようだな。 )
オレはスカイダルの右膝の上あたりにカウンターの左肘打ちをあわせた。
『 バキィッ!! 』
オレの左肘がスカイダルの右膝上に直撃した!
「 ぐうぅっ!!? 」
スカイダルが顔をゆがめ、たまらず後方に5mほど飛びのいた。
スカイダルは『ハァハァ…』と肩で息をしている。
骨折したであろう右膝を【治癒】する余力もないようだ。
「 もう限界みたいだな? そろそろ終わらせるが、いいか? 」
オレはスカイダルに死刑宣告を突き付けた。
スカイダルは…ちょっと意外なことに目に涙を浮かべている。
なんだ…?
やっぱ、『四天王』とかでも死ぬのは怖いってことかな…?
この時、スカイダルはちょっと気になることを呟いた。
「 くっ…私はこんなところで殺されて終わるのか…村のみんな…仇を討てなくてゴメン… 」
…ん?
今のスカイダルの呟き…『村のみんな…仇を討てなくてゴメン…』とか言ってたな…。
オレが初っ端 殺したのはドラゴンライダー1000騎だ。
その『ドラゴンライダー1000騎』が『村のみんな』って意味か…?
…しかし、ドラゴンライダーの騎手たちは、ダークエルフだけでなく、ゴブリンやオークや人間(悪人)すらも混じっていた。
あの『ドラゴンライダー1000騎』が同じ村で和気あいあいと楽しく暮らしてる姿は想像しがたい…。
だとすれば、スカイダルの呟いた『村のみんな』ってのは、なんのことだ…??
「 なあ? 今オマエが呟いてた『村のみんな』ってのは、なんのことだ? まさか、オレが瞬殺したドラゴンライダー1000騎が、その『村のみんな』ってわけじゃあないよな…? 」
オレの問いかけに対して、スカイダルは返答したが…
「 …私はヤハク村の唯一の生き残りだ! 」
なん…だと…!? …って、『ヤハク村』なんて初めて聞く単語だ。
たぶん結構スゴイことをカミングアウトしたんだろうけど、初めて聞く単語なんで さっぱりピンとこない…。
そこでオレは、【アカシック・レコード(宇宙記録)】にアクセスすることにした。
( 【アカシック・レコード】とは、宇宙のすべてが記録・記憶されている特殊な空間である。 パソコン用語的に言えば、『データベース』といったところだ。 創造主であるオレは、いつでもどこでも【アカシック・レコード】にアクセスして、必要な情報を引き出すことが出来る。 )
( 「 【アカシック・レコード】アクセス…惑星アルファザードの『ヤハク村』とは? また、『ダークエルフ』との関連は? 」 )
瞬時に回答が頭の中に流れ込んでくる。
それによると『ヤハク村』とは…
惑星アルファザードの北半球にある『ヤハクの森』のすぐ近くに作られた、ダークエルフたちの集落だった。
但し、30年前、『ヤハク村』の近隣の人間の国家である『ヤークド帝国』によって滅ぼされている。
人間にも善人や悪人や中立(ニュートラル)の性格・性質があるように、基本的には人間に敵対的で悪事を働くダークエルフが多い中、『ヤハク村』のダークエルフたちはダークエルフとしては珍しく中立(ニュートラル)な性格・性質の者がほとんどで、人間の味方とまではいかないが、人間と敵対もしていなかった。
30年前、『ヤハクの森』で希少金属である『魔鉱石・翡翠(ひすい)』が発見されたことから、その独占を目論んだ『ヤークド帝国』の『ヤハド皇帝』と『宰相リヒャルト』によって、『ヤハク村』は滅ぼされた。
尚、アルファザードの表の歴史では生き残りは皆無とされているが、実際には当時10歳のダークエルフの少女が一人だけ生き残っている。
その少女の名前は『リリティア』といい…
「 なるほど…四天王の一人『スカイダル』は、その生き残りである『リリティア』というわけか… 」
と、呟いてしまった。
「 なっ…!!? キサマ…なぜ私の本名を知っているっ!!? たしかに私は『ヤハク村』の生き残りであることをキサマに告げた…だが、なぜ私の本名までわかるのだっ…!!? 」
リリティア…じゃなくてスカイダルは驚きの表情を浮かべている。
うっかり呟いてしまったが…まぁ、いいや。
いくらでもごまかしは効く。 ( 【現実改変】、【時間逆行】、【記憶改ざん】、等々…。 )
つまり…
『村のみんな』ってのは、今は亡き『ヤハク村』の村人たち。
『仇』ってのは、(オレのことではなく、)『人間』たち…もっと突き詰めれば『ヤークド帝国』の『ヤハド皇帝』と『宰相リヒャルト』。
…ってことになるわけか…。
…ってか、ついさっきまではスカイダルを始末しようって思ってたんだけど、こんな過去話(かこばな)知っちゃったら、スカイダル(=リリティア)が可哀そうになっちゃったな…
(^_^;)
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