転生したら乙ゲーのモブでした

おかる

文字の大きさ
上 下
9 / 81
一学期編

ヒロイン襲来

しおりを挟む
ただいま、別室にてドレス作成のため採寸中です。泣きそうです・・・
羞恥心半端無い・・・世の貴族令嬢や夫人たちは羞恥心というものをどこか遠くへ投げ捨てなければなれないと思います。
 昼間の外出に着用するドレスとデザインが大幅に異なるためフルオーダーメイドです・・・
 お母様は、ウキウキとデザインや布地を選んでいます。
どうやら、娘と一緒に夜会に参加できるのがこの上なく嬉しいみたいです。
 夜会当日は、お父様とお母様と私だけで王宮へ向かう事になりました。
ジェリク様からの招待状にお兄様の名前がなかったのと、普通科ではなく騎士科に在籍しているのが裏目に出たかたちになってしまいました。

 「・・・お母様、楽しそうですわね・・・」

 「それはもう!!だって愛娘を連れての参加よ?あと数年は先だと思っていたのだけれど・・・マリアはお母様たちと参加するのイヤだった?」

うっ・・・そんなウルウルした瞳で上目遣いで見ないでくださいお母様・・・
本音を言えば『イヤです』の一言につきる。メンドクサイ・・・
 まぁ・・・採寸までしてしまっているのですから?今更イヤだとは絶対に言えないけど・・・
 ジェリク様からの招待なら、婚約者であるリリウム様もパートナーとして参加するだろうから、早々にリリウム様の所へ避難しよう!最低限の挨拶したら、疲れたと言って帰らせてもらおう!!
 私は暢気にそんな風に考えていた。
 考えが甘かったことに私はまだ気付かなかった。


 羞恥心半端無い採寸をした2日後、学園に登校するとお休み前に起こった騒動の話題で持ちきりだった。
 2回目の親呼び出しを受けたエリカ嬢は、悪質なウソで侯爵令嬢を貶めようとしたとして2週間の自宅謹慎を受けたらしい。
あれ?でもさっき校門前でエリカ嬢見かけたけど・・・まさか自宅謹慎中なのに自宅から脱走してきた?
なんて考えてたら、クラスの前の廊下が騒がしくなりました。
 何事?と思って視線を向けるとそこにはエリカ嬢がいました。般若のような表情でこちらを睨んでます。

 「マリア・フローライトって誰!?ここにいるの!?」

えっ!?私をご指名ですか!?やだなぁ・・・名乗り出たくないよ~っていうか何で私をご指名なの~
クラス内はシンと静まり返ってますが、クラスメイトがこちらをチラチラと見てます。
やめて~こっち見ないで~気付かれちゃうよ~
クラスメイトの視線に気付いたエリカ嬢がこちらに向かってきます。
こっわいなぁ~普通にしてれば可愛いはずなのに・・・
若干、現実逃避をしていた私の前にエリカ嬢が立ちます。

 「あんたがマリア・フローライト?」

うわ~『あんた』とか言われた・・・貴族令嬢にあるまじき言葉遣い・・・

「・・・えぇそうですが・・・どのようなご用件でしょうか?」

 気に障ったのか、カッと目をかっぴらいて私を攻め始めます。
 誰か先生を呼びに言ってくれないかなぁ・・・

「そう・・・あんたが・・・あんたリリウム様の取り巻きなの?だから私を陥れるためにウソの証言をしたんでしょう!?」

・・・はぁ?エリカ嬢は一体ナニを言ってるんでしょうか?
 前世で言うところの『電波娘』?ナニを受信しているんでしょうかね?

 「あの・・・仰っている意味がわからないのですが・・・」

 「しらばっくれんじゃないわよ!!私の教科書や制服を破いたのはリリウム様なの!!そういうシナリオなのよ!!あんたはただのモブなの!!私の邪魔をするんじゃないわよ!!」

あ・・・転生者確定。『シナリオ』とか『モブ』とか言っちゃってるし。しかも気付いてないし(笑)
クラスメイト一同はポカ~ンとしてます。みなさん口を閉じましょうね?
 紳士淑女にあるまじき表情ですよ~はっきり言ってアホ面ですよ~(笑)
あれ?リリウム様は驚いてないですね~さすがです!!ただちょっと顔色が悪いかなぁ?

 「あの・・・エリカ様?本当に仰っている意味がわからないのですが・・・」

エリカ嬢に再度そう言いますが、聞く耳を持ってくれません。
 私を指差してさらに続けます。・・・人を指差しちゃダメって教えられませんでした?前世でも今世でも。

 「はぁぁ!?まだそんな事言ってるの!?一回で理解しなさいよ!!だからねぇ・・・」

そこまで言って、エリカ嬢の口撃は止まりました。
なぜなら、先生方がクラスに駆け込んできて、エリカ嬢の頭を鷲掴みにしているからです。

 「エリカ・リナライト。ここでナニをしている?自宅謹慎中だろう?」

ひぃっ!!先生方がみんな般若になってる~誰か私をこの般若地獄から助けてよ~(涙)
クラスメイトたちに視線を向けますが、みんなシレ~っと視線を逸らします。
ヒドイよみんな!!助けてよ!!
 涙目になったのに気付いたリリウム様がそっと般若の輪から私を助け出してくれました。
リリウム様マジ天使!!

 「マリア様大丈夫ですか?」

 「はい・・・リリウム様ありがとうございます」

 「いいえ。礼には及びません。先にマリア様が私を助けてくれたではないですか」

ふわぁ~ゲームでは悪役令嬢なだけあって美人だよリリウム様。
ふわりと微笑んだだけなのに、周りの男子生徒数名が頬を赤らめてます。
あっ!!ジェリク様が凄い目つきで男子生徒たちを睨んでますよ~
 嫉妬!?嫉妬しちゃった!?(笑)
ほのぼのとしていたら、今度はお兄様がクラスに駆け込んできました。

 「マリア!!大丈夫か!?」

 「お兄様。はい、大丈夫ですわ。先生方もいらっしゃってくださいましたし・・・」

そんな私たちの横で、エリカ嬢は先生に叱られてます。
エリカ嬢は時折、チラチラとジェリク様やお兄様など攻略対象たちを見てますね。
まぁ・・・その度に先生に怒られてますが(笑)
その時、ふとリリウム様がつぶやきました。私にしか聞こえない位の小声で。

 『やっぱりここ乙ゲー世界なんだ・・・ヒロインも転生者っぽいし・・・どうしよう・・・』

ん?今のはリリウム様だよね?なんか日本語が聞こえたけど・・・まさかリリウム様も転生者?
だから、エリカ嬢が虐められてなくて自作自演した?
う~ん・・・夜会の時に確認してみようか・・・
 そんなことを考えている私を、お兄様が心配そうに見ているのに気付きませんでした。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった... その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!? たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく ここが... 乙女ゲームの世界だと これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話

生前SEやってた俺は異世界で…

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~ ※書籍化に伴い、タイトル変更しました。 書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん 第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。  職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。 死因、過労と不摂生による急性心不全…… そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった…… なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。 俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!! 忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。 ※2017/02/06  書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。  該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。 2017/02/07  書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。 2017/03/18  「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。  新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/  気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。 読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

処理中です...