43 / 52
【第5章】時の悪戯、そして決意する
第3話
しおりを挟む7月16日、金曜日。
試験結果返却日。
練習のときもそうだったが、勉強会を始めてから試験終了まであっという間だ。
同じくお泊りイベントも発生したが、前よりもしっかりできたはず。
このままいくと、試験内容も同じような問題が出るのはないかと思ったが、寸分違わず全く同じであった。
しかし、ズルはしたくないし、高崎さんにとっても良くないと思ったので、今回の勉強会ではあえて試験問題には触れなかった。
代わりに、前の勉強会で、時間の都合上、手が出せなかった問題にも取り組めるように効率化を図った。
おかげで前回よりも幅広く勉強ができたので、うまくいけば点数も上がっているはずだ。
空き教室で待っていると、ついにそのときが来たようだ。
タッタッタッタッタッ!
ガタン!
「太田君! 私、やったよ!」
実に2週間ぶりの、緊張から解き放たれた高崎さんの満面の笑み。
「太田君のおかげで、全教科平均点を突破できました……! 本当にありがとう……太田君、私……頑張って良かった。太田君がいてくれて本当に……本当に、良かった……」
笑顔と涙交じりに感謝を告げる彼女の姿は、この世の全てをかき集めても遠く及ばないほど綺麗だと思った。
体感的には2回目だとしても、この感動は薄れない。
急にモジモジしながら乙女な顔をする高崎さん。
そうか。あれが来るのか。
結局、目の前のことに集中し過ぎて忘れかけていたけど。
「太田君……。私ね……試験が終わって、いい結果が出たら、言おうと思ってたことがあるの。私、太田君のおかげで未来が開けた気がした。成り行きとはいえ、私に手を貸してくれた。でも今度は、私が太田君の支えになりたいの! 太田君のことが好き……大好きです!」
やばい。
胸がすごいドキドキしている。
今までは、何とか練習のときよりも堂々とした立ち居振る舞いができるように心掛けていたけど、これはさすがに厳しいです。
きっと俺の手も震えているんだろうな……
————嬉しいはずなのに、急に嫌な予感が頭をよぎる。
同時に、周りが静寂に包まれた。
一度体験した、自分の手足が動かせない感覚。
もしかして、またなのか……?
自分に抗う術もないまま、高崎さんが今までの行動を巻き戻すかのように動き出す。
遠のく意識……
迫りくる暗闇……
どうなってんだよ……これ……
………………………………
………………
……
…
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ふと意識が覚醒する。
手元には成績表。
ここは俺の教室。
黒板を確認すると【7月1日(木)】の記載。
誰かが急いでこちらに駆けてくる足音。
タッタッタッタッタッ!
ガタン!
あぁ、もはや言い逃れはできない。
————また2週間前に戻ってきたんだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
何故か超絶美少女に嫌われる日常
やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。
しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

小学生の時にかけた恋のおまじないが、さっき発動しました。
サイトウ純蒼
青春
「恋のおまじないだよ」
小学校の教室。
片思いだった優花にそう言われたタケルは、内心どきどきしながら彼女を見つめる。ふたりの間で紡がれる恋まじないの言葉。でもやがてそれは記憶の彼方へと消えて行く。
大学生になったタケル。
通っていた大学のミスコンでその初恋の優花に再会する。
そして発動する小学校時代の『恋まじない』。タケルは記憶の彼方に置き忘れてきた淡い恋を思い出す。
初恋と恋まじない。
本物の恋と偽りの想い。
――初恋が叶わないなんて誰が決めた!!
新たな想いを胸にタケルが今、立ち上がった。

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる