【完結】彼女はボクを狂おしいほど愛する ー超絶美少女の転校生がなぜかボクにだけぞっこんな件ー

竜竜

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【第2章】失くしたもの

第1話

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 私は小学生の頃、いつも一緒に遊んでくれたあの子のことが好きだった。
 名前はシュウちゃん。
 ちょっと引っ込み思案なところはあるけど、すごく可愛くって、いつも一緒にいてくれた。ずっとこのままでいたいって思ってた。
 でも……

「結葉、お父さんの仕事の都合で遠くにお引越しをしなくちゃいけなくなった。寂しいとは思うけど、お友達とバイバイしなさい」
「えっ、じゃあシュウちゃんとも?」
「そうだな。シュウちゃんともお別れしないとな」
「嫌だよ! シュウちゃんともっと遊んでたいよ! えーん!」
「ほら泣かないの。お父さんも困っちゃうでしょ。今度お母さんとお別れのご挨拶に行きましょ」

 シュウちゃんとの突然の別れ。
 とっても悲しかった。
 全てが奪われた気がした。
 あのときから、シュウちゃんは私の全てだったんだ。
 正直、お父さんとお母さんの仲は良くない。子供ながらそう感じていた。
 ただ体裁を保って周りから変な目で見られないために、必死に夫婦ごっこをしているだけに見えた。
 そこに愛情なんて感じなかった。
 でも、シュウちゃんと私は違う。
 たまに喧嘩をしちゃうこともあったけど、すぐに仲直り。
 それはお互いのことが大切で、強い絆があったからだと思う。

 福岡に引っ越してから数年が経ち、中学生になった。
 周りの子は優しく話しかけてきてくれたけど、それは上辺だけで、心はこもってなんていなかった。
 私と心の底から笑い合って、お話しできるのはシュウちゃんしかいない。
 そんな心の隙間が埋まらない中、あることが起こった。

「朱宮、実はお前のことが好きなんだ。よかったら俺と付き合ってくれないか」

 なぜだか急にモテるようになった。
 告白も一回だけじゃない、一日に二回も告白されることがあった。
 私も上っ面だけ体裁を整えて、色んな人と愛想よく接していたから、勘違いしてしまった男子が多かったのかもしれない。
 この心の隙間を埋めるために、試しに付き合ってみるのも悪くないかも……。
 そんなことを思ったこともあったけど、やっぱりシュウちゃんのことが忘れられず、他の人と   
 付き合う未来なんて想像できなかった。

 正直、こういうのは……もううんざり。

 ————いつしか、他人への興味が全くなくなった。

「ちょっと朱宮さん、なんで坂本君を振ったの? 高嶺の花にでもなったつもり?」
「マジうざい」
「調子こくなよ」

 ある日、誰かも分からない人から呼び出されたかと思うと、変な難癖をつけられてしまった。
 話の内容から、私が告白を断った人のことが、たまたま好きだった子らしい。
 完全に八つ当たりだ。
 でも、

「私がフッたんだから、むしろチャンスなんじゃないの?」

 当然の疑問なので聞いてみた。
 そしたらさらに頭に血が上ったらしく、

「てめぇマジでむかつく! いい加減にしろよ! 坂本君の気持ちを踏みにじりやがって!」
「やめなって。さすがに手を出すのはまずいって」
「もう行こうよ」

 殴って気持ちが晴れるなら、別にそれでもいいのに。
 でも彼女たちは、別の形で私に報復をすることにした。
 次の日学校に行くと、上履きを隠され、トイレに入れば水をかけられる。
 典型的ないじめの始まりだった。
 周りの人は自然と私を避けるようになったけど、

「ぼ、ぼ、僕は朱宮さんの味方だからね!」

 鼻息を荒くさせた、いかにも下心丸出しの変な男の子から声を掛けられるようになった。
 もううんざり……。
 面倒くさい……。
 そのままなんとなく高校に進学したけど、同じようなことの繰り返し。

 ————いっそのこと、もう死んだ方がましかも。

 そんなことを思い始めるようになったとき、転機が訪れた。

「すまんが転勤でまた関東に戻ることになった。前住んでたところとは違うけど」

 場所は違うとしても、またシュウちゃんに近づける。
 それだけで私は嬉しかった。

 シュウちゃんが通う高校なんて知らなかった。
 だから、とりあえず入学が楽そうなところを選んで、いつか会える日を気長に待つことにしよう。
 そうやって期待を持つことにして生きる糧にした。

 でも、運命は私に味方をしてくれた。
 転校初日。初めてみんなの前に立ったとき、一瞬で気付いた。

 ……また会えた。

 灰色で先の見えない世界が、急に色を取り戻して、光を照らしてくれた瞬間だった。


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