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夏の話
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すぐ近くで扇風機の回る音が聞こえ、外で人々が次々に出かけていく音がする。
あぁ朝なんだ。少しだけかいた寝汗に不快感を感じながら目が覚める。
何故か夜抱えて寝たはずの抱き枕は足元にあり、部屋の時計は午前9時過ぎを指す。
部屋から見えるリビングの机。食べ残された朝ごはん。誰もいない部屋で喋り続けるテレビ。
あぁ、そうか。
家族はもうみんな仕事に行ったのか。
未だバイトとしてお金を稼いでいる僕は
そう思いながら、いそいそとベッドから這いずり出て、冷蔵庫を開ける。足元に絡まる猫をなだめながら、卵を1つ、目玉焼きに。そして買うだけ買って誰も食べない冷凍のパンを温め、いつも通り珈琲を入れる。
リビングの食卓に全て並べて、椅子に体操座りしながら遅めの朝の食事。
いただきます。
朝の食事は憂鬱だ、2食の中で1番食べるのがしんどい。
ずっとつきっぱなしのテレビは淡々とひとりでに喋る。僕にとって内容なんてどうでもいい、ただの生活音なのだ。
パンをかじる。
ご飯なんかよりパンが美味しいのにな。みんな食べない。なんて思いながらまたパンをかじる。少しだけちぎって足元の猫にあげた。
猫も美味しそうにパンを食べた。わかるのは君だけだね。
朝食を済ませた僕は、夏の一日で最も難しい問いに答えを出す。
今日はどんな服を着たいか。
……なんて。どうせ今日もTシャツとズボン。
だから僕は本当に心底夏は嫌いだ。
なんせ服を上下1枚しか着れない。
暑いから。
僕は正直一日のテンションは割と服で決まったりする。だから夏の代わり映えしない組み合わせでは毎日テンションが上がらない。
あぁ最近買った黒のTシャツとスキニーでいいか。差し色はリュックのタグの黄色を拾って靴下黄色とかにしよう。ハイハイ決定。
ダラダラと着替え化粧を気持ちばかり施し、
髪を結う。窓から見える青空。雲ひとつない。そのせいで私の心は曇りだ。
僕なんて外に出たら目が眩んで立ってられないんじゃないか。光に消えてしまうのではないか。ぐるぐる言葉が頭の中に回る。
そんな言い訳を他所に、無情にも時は進む。バスの時間が迫る。
ちっ……行くか…。
貴重品だけ持ってドアを開ける。
生暖かい重い空気が全身をつつみ、耳にいっぱいに入る音は蝉。どっと重くなる体を何とか稼働させてマンションの階段をダラダラと降りる。
そして1歩日向に出た瞬間、僕は消えた。
ああ、だから僕は本当に心底夏は嫌いなんだ。
あぁ朝なんだ。少しだけかいた寝汗に不快感を感じながら目が覚める。
何故か夜抱えて寝たはずの抱き枕は足元にあり、部屋の時計は午前9時過ぎを指す。
部屋から見えるリビングの机。食べ残された朝ごはん。誰もいない部屋で喋り続けるテレビ。
あぁ、そうか。
家族はもうみんな仕事に行ったのか。
未だバイトとしてお金を稼いでいる僕は
そう思いながら、いそいそとベッドから這いずり出て、冷蔵庫を開ける。足元に絡まる猫をなだめながら、卵を1つ、目玉焼きに。そして買うだけ買って誰も食べない冷凍のパンを温め、いつも通り珈琲を入れる。
リビングの食卓に全て並べて、椅子に体操座りしながら遅めの朝の食事。
いただきます。
朝の食事は憂鬱だ、2食の中で1番食べるのがしんどい。
ずっとつきっぱなしのテレビは淡々とひとりでに喋る。僕にとって内容なんてどうでもいい、ただの生活音なのだ。
パンをかじる。
ご飯なんかよりパンが美味しいのにな。みんな食べない。なんて思いながらまたパンをかじる。少しだけちぎって足元の猫にあげた。
猫も美味しそうにパンを食べた。わかるのは君だけだね。
朝食を済ませた僕は、夏の一日で最も難しい問いに答えを出す。
今日はどんな服を着たいか。
……なんて。どうせ今日もTシャツとズボン。
だから僕は本当に心底夏は嫌いだ。
なんせ服を上下1枚しか着れない。
暑いから。
僕は正直一日のテンションは割と服で決まったりする。だから夏の代わり映えしない組み合わせでは毎日テンションが上がらない。
あぁ最近買った黒のTシャツとスキニーでいいか。差し色はリュックのタグの黄色を拾って靴下黄色とかにしよう。ハイハイ決定。
ダラダラと着替え化粧を気持ちばかり施し、
髪を結う。窓から見える青空。雲ひとつない。そのせいで私の心は曇りだ。
僕なんて外に出たら目が眩んで立ってられないんじゃないか。光に消えてしまうのではないか。ぐるぐる言葉が頭の中に回る。
そんな言い訳を他所に、無情にも時は進む。バスの時間が迫る。
ちっ……行くか…。
貴重品だけ持ってドアを開ける。
生暖かい重い空気が全身をつつみ、耳にいっぱいに入る音は蝉。どっと重くなる体を何とか稼働させてマンションの階段をダラダラと降りる。
そして1歩日向に出た瞬間、僕は消えた。
ああ、だから僕は本当に心底夏は嫌いなんだ。
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