妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上

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 (※バスマン家当主視点)

「ああ……、よかった。ようやく、目が覚めたようだね」

 私は、病院のベッドの上で目覚めたイザベルに声をかけた。
 娘が無事で、本当によかった。
 
「お父様……。私は、いったい何を……」

 イザベルはまだ、目覚めたばかりだから少し混乱している様子だった。
 だから私は、彼女に状況を説明した。

 オリバーが本性を表したこと。
 その事がきっかけで事件が起きて、イザベルが被害にあったこと。
 そして、その騒動の結果、オリバーや彼の両親が逮捕されたこと。

 イザベルは少し戸惑っていたが、やがて何が起きたかを思い出し、状況を理解したようだった。
 そして、彼女の証言もあり、オリバーたちの有罪は確定した。
 彼らのことは、決して許せない。
 何せ、溺愛している娘を殺されかけたのだ。

 なので私は、牢獄の看守と少しばかり話をして、彼らにはそれなりの罰を与えることにしたのだった……。

     *

 (※父親視点)

「おい! いったいどうなっているんだ!」

 私は看守に怒鳴り散らした。
 逮捕された私たちは、牢獄へ入れられてしまった。
 納得はできないが、それなりのことをしてしまったのだから、その事はまだ理解できる。

 しかし、どうして貴族である私たちが、特別棟ではなく、一般の牢に入れられているんだ?

 周りには、見るからに野蛮そうな連中が、何人もいる。
 そして、彼らはこちらを見ながら、獲物をとらえた時のような笑みを浮かべていた。

「おいおい、あいつら貴族だけど、痛めつけてもいいらしいぞ」

「マジかよ。でも、あとでし仕返しされないか? 権力や金を使ってどんなことでもするんだろう?」

「いや、仕返しの心配はない。誰だか知らないが、偉い人の許可は出ているって、看守が言っていた」

「それにあいつら、一生牢獄から出られないらしいぞ。だから、仕返しもなにもないだろう」

「ああ、確かにその通りだ。それなら、やっちまうか……」

「おう、やろうぜ! 日頃おれたちを虐げている権力者を痛めつけられるなんて、最高じゃないか!」
 
 私は彼らの話を聞いて、恐怖で震え上がっていた。
 それは、妻もオリバーも同じようだった。

 何てことだ……。
 いずれは解放されると思っていたのに、こんなことになるなんて……。
 私はいったい、どこで間違えてしまったのだろう……。

「よ、よせ……。いったい、何をするつもりだ!」

 私は声を震わせながら、近づいてくる連中に呼びかけた。
 しかし彼らは、止まってくれる様子など微塵もない。
 それどころか、恐怖で歪んでいる私たちの表情を見て、楽しんでいるようだった。

 今思えば、私たちの破滅は、もっと以前から既に始まっていたのだ。
 を屋敷から追放した時から、こうなる運命だったのかもしれない。
 
 しかし、後悔したところで、この地獄からは抜け出せそうもなかった……。
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