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(※オリバー視点)
「お、おれが偽装工作をした証拠が、まだあるだと!? 出鱈目を言うな! そんなもの、あるはずがない!」
おれの口からでたその言葉は、震えていた。
それは、怒りのせいではなく、恐怖のためだ。
まだなにか、おれを追い込む材料があるというのか?
さっきの踏み台のことは、確かにおれの落ち度だ。
認めたくはないが、浅はかな証言をしてしまった。
もしイザベルがいた部屋が一階だったなら、あるいは踏み台も見えたかもしれない。
しかし、憲兵のいう通り、彼女がいたのは四階だ。
そして、踏み台は膝くらいの高さで、窓がある位置は、底辺が腰くらいの高さだ。
つまり、彼女が踏み台に乗っている姿を、地上から見ることなど絶対に不可能なのだ。
完全に矛盾している。
おれが嘘の証言をしたという証拠には、充分すぎるほどだ。
そして、嘘をついたのは、その証言者が犯人だからだと考えるのは、自然な流れだ。
そのうえ、まだ何か証拠があると言われて、平常心を保つなど、無理な話だ。
おれは完全に動揺していた。
そのことを隠す余裕もないので、目の前にいる憲兵にも悟られているに違いない。
おれは震えながら、彼の次の言葉を待っていた。
「イザベル様が意識を失ったのは、ロープで首を絞められたせいではなく、頭部を激しく打ったせいだと判明しました。血が出ていなかったので最初は気づきませんでしたが、詳しく調べた結果、先程判明しました」
「首を絞められたせいではない……」
そう呟いたおれの声は、震えていた。
つまりそれは、首をつったように見せかけるというおれの偽装工作が、見破られたということだ。
しかし、どうしてわかったんだ?
たとえ頭部にコブなどの痕があったとしても、首にロープが巻かれていたら、普通は自殺と判断するのではないのか?
「はっきりと言いますが、あなたの偽装工作は、お粗末なものでした。彼女の首に巻かれていたロープが偽装だというのは、実は最初から気づいていました」
「さ、最初からだと!?」
おれは憲兵の言葉に驚いた。
どうして、そんなに簡単に見破れたんだ?
「私は偽装工作に気づきましたが、それをしたのが誰かは断定できませんでした。それが、先程の踏み台の件で、偽装工作をしたのがあなただとわかったのです」
相変わらず、冷静な態度で憲兵は説明している。
それに比べて、おれは完全に取り乱していた。
「ど……、どうしてだ!? どうして最初から、ロープが偽装だと気づいたんだ!?」
おれはその疑問を、憲兵にぶつけた。
「ああ、それはですね……」
「お、おれが偽装工作をした証拠が、まだあるだと!? 出鱈目を言うな! そんなもの、あるはずがない!」
おれの口からでたその言葉は、震えていた。
それは、怒りのせいではなく、恐怖のためだ。
まだなにか、おれを追い込む材料があるというのか?
さっきの踏み台のことは、確かにおれの落ち度だ。
認めたくはないが、浅はかな証言をしてしまった。
もしイザベルがいた部屋が一階だったなら、あるいは踏み台も見えたかもしれない。
しかし、憲兵のいう通り、彼女がいたのは四階だ。
そして、踏み台は膝くらいの高さで、窓がある位置は、底辺が腰くらいの高さだ。
つまり、彼女が踏み台に乗っている姿を、地上から見ることなど絶対に不可能なのだ。
完全に矛盾している。
おれが嘘の証言をしたという証拠には、充分すぎるほどだ。
そして、嘘をついたのは、その証言者が犯人だからだと考えるのは、自然な流れだ。
そのうえ、まだ何か証拠があると言われて、平常心を保つなど、無理な話だ。
おれは完全に動揺していた。
そのことを隠す余裕もないので、目の前にいる憲兵にも悟られているに違いない。
おれは震えながら、彼の次の言葉を待っていた。
「イザベル様が意識を失ったのは、ロープで首を絞められたせいではなく、頭部を激しく打ったせいだと判明しました。血が出ていなかったので最初は気づきませんでしたが、詳しく調べた結果、先程判明しました」
「首を絞められたせいではない……」
そう呟いたおれの声は、震えていた。
つまりそれは、首をつったように見せかけるというおれの偽装工作が、見破られたということだ。
しかし、どうしてわかったんだ?
たとえ頭部にコブなどの痕があったとしても、首にロープが巻かれていたら、普通は自殺と判断するのではないのか?
「はっきりと言いますが、あなたの偽装工作は、お粗末なものでした。彼女の首に巻かれていたロープが偽装だというのは、実は最初から気づいていました」
「さ、最初からだと!?」
おれは憲兵の言葉に驚いた。
どうして、そんなに簡単に見破れたんだ?
「私は偽装工作に気づきましたが、それをしたのが誰かは断定できませんでした。それが、先程の踏み台の件で、偽装工作をしたのがあなただとわかったのです」
相変わらず、冷静な態度で憲兵は説明している。
それに比べて、おれは完全に取り乱していた。
「ど……、どうしてだ!? どうして最初から、ロープが偽装だと気づいたんだ!?」
おれはその疑問を、憲兵にぶつけた。
「ああ、それはですね……」
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