妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上

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 (※シルビア視点)

「やめて、マーガレット! もう、私は自分の立場を充分に理解しているわ! だから、もう暴力は止めて!」

 マーガレットと契約をした三日後、私は部屋の中で必死に叫び声をあげていた。

 身体中が痛いし、苦しい。
 マーガレットは私に立場をわからせるという名目で、毎日私のことをサンドバッグにしていた。
 
「やめてだと!? それは命令か? この私に命令しているのか!?」

 マーガレットはますます攻撃の手を強めながら、怒鳴り声をあげた。

「違うわ! 私はそんなつもりじゃ……」

 あまりの痛みに声が続かない。
 しかし、マーガレットは攻撃の手を緩めることはなかった。

「お前のわがままで自分勝手な性格を、矯正してやっているんだ! ありがたく思いな!」

 私の首を絞めながら、彼女は歪んだ笑みを浮かべていた。


「あ、ああ……」

 息ができない。
 苦しい。
 もうやめて……。

 毎日毎日繰り返しこんな目に遭うなんて、地獄以外の何物でもない。

 契約を交わしたときは、2ヶ月耐えればいいだけだと、軽く考えていた。
 しかし今では、一週間耐えられるのかもわからないほどだった。

 もちろん、マーガレットは私を殺すようなことはしないだろう。
 そんなことをすれば、お金をもらえなくなる。
 それに約束通り、彼女は絡んでくる連中から、私のことを守ってくれている。

 大勢に暴力やいじめを受けるよりは、マーガレット一人のサンドバッグになった方がマシだ。
 
 そんなことを思っていたのは、最初の日だけだ。
 こんなの耐えられない。
 大勢から暴力を受けるのと比べても、楽だとはおもえなかった。
 
 そんなことを思いながら、私はマーガレットからの暴力に悲鳴をあげていた。
 そんな私の声を聞くたびに、マーガレットは歪んだ笑みを浮かべていた。

 こんなに痛くて苦しいのは、もう耐えられない。
 そんなことを思いながらも、それでも私が耐えているのは、この地獄が2ヶ月という期限つきのものだからだ。
 そこにしか、希望を見いだせなかった。
 しかし、それがなければ、私はとっくに諦めて絶望し、廃人になっていただろう。
 
 まだまだこの地獄は続く。
 しかし、この地獄を乗りきれば、私には平穏な日々が訪れる。

 そんな希望があると、このときの私は信じて疑っていなかったのだが……。

     *

 (※父親視点)

 このままでは、我がベルモント家は没落の一途をたどるだけだ。

 何とかしなければならない、
 今回の件で、信頼は失われ、そしてそれを取り戻すことは不可能なのではないかと思うほど困難だった。

 一度てにいれた権力や富を失うことを、私は極端に恐れていた。
 そんなこと、あってはならないことだ。
 なんとしてでも、状況を好転させなければならない。

 こんなことになってしまったのは、すべてソフィアのせいだ。
 シルビアはなにも悪くない。
 彼女はソフィアのせいで逮捕された被害者だ。
 そんなことを思っていると、更に彼女への怒りが増していった。

 しかし今は、そんなことを思っている場合でもない。
 まずは、我がベルモント家を立て直さなければ……。

 必死に考えて、いくつか手を打ってきた。
 しかし、どれもうまくいかなかった。
 私は焦りや苛立ち、怒りや悲しみ、色々な感情を抱えながら、必死に頭を回した。

 そして、あるいはという方法を思い付いた。

 没落を回避するための起死回生のこの一手、はたして吉と出るか、凶と出るか……。
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