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 お化け屋敷では、さらに二回ほど悲鳴を上げる事態に遭遇した。

 もう少しなんというか、「きゃっ!」みたいな感じで可愛く悲鳴を上げられたらいいのだけれど、残念ながらそんな余裕はなかった。
 あの手この手で驚かしてくるお化けと遭遇するたびに、「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」と私は悲鳴を上げていた。
 若い令嬢があんな声を出すなんて、とハワードに引かれていないといいのだけれど……。
 むしろ、人間味のあるリアクションでいいね、と私に惹かれていたらいいのだけれど……。

 ビビり過ぎて、ハワードと手を繋ぐことも忘れているまま、私たちはお化け屋敷を脱出した。
 私たちがお化け屋敷から出て、次のお客様がお化け屋敷に入るとき、彼らはかなり怖がっている表情を浮かべていた。
 もし私の悲鳴、というか絶叫で必要以上に怖がらせてしまったのなら、本当に申し訳ない。

「さて、次はどこへ行きましょうか」

「うーん、そうですねぇ、さっきは私が行きたいところへ行ったので、次はハワードさんの行きたいところへ行きましょう」

「では、僕のクラスへ行きましょう。きっと楽しいですよ」

 私たちは、ハワードのクラスに向かって歩き始めた。
 その時、前からこちらに向かって歩いて来ている人物たちがいた。
 なんというか、かなり目立つカップルである。

 女性の方は、とてもきれいなご令嬢、といった感じだ。
 そして男性の方は、さらに目立つ。
 身長二メートルは超えているのではないかというほどの大男で、威圧感のある風貌だった。
 そのアンバランスなカップルが、楽しそうに話していた。

「今さっきのお化け、怖がらす側なのに、マッチョくんを見て怖がっていたわね」

「いえ、あれはお嬢様の悲鳴で怖がっていたのだと思いますよ」

 すれ違ったので、すぐに二人の会話は聞こえなくなった。
 しかし、あのご令嬢、あんな怖そうな大男を気安くマッチョくんと呼ぶなんて、どんな心臓をしているのだろう。
 世の中、いろいろなカップルがいるということか……。
 そういえば、私たちもはたから見ると、カップルに見えているのだろうか。
 ちょっとハワードに聞いてみよう。
 彼がどんなリアクションをするのか楽しみだ。

「ねえ、ハワードさん。私たちって、はたから見たら、どう見られていると思います?」

「え……、制服を着ているので、この学園の生徒だと見られているのだと思いますが……」

 うーん、そういうことが言いたかったわけではないのだけれど……。
 あれ?
 ちょっと待って……。
 さっきのカップル、お化けがどうとか言っていたわよね。

 私たちがさっき行ったお化け屋敷は、私たちの後ろ側だ。
 それなのに、前から来てすれ違ったカップルも、お化けの話をしていた。
 しかも話し方からして、ついさっき行っていたような言い方だった。

「あの、ハワードさん、もしかして、さっき行ったお化け屋敷以外にも、どこかのクラスがお化け屋敷をしていたりしますか?」

「ええ、ちょうど僕たちのクラスが、お化け屋敷をしていますよ」

 なんと……。
 またお化け屋敷とは……。
 そんなに私を怖がらせたいのかしら?
 いやいや、ネガティブになってはダメ。
 何事もポジティブに捉えないとね。
 
 ……あ、もしかして、さっき手を繋ぎそこなったから、もう一度お化け屋敷へ行こうとしているのかしら?

 そう考えると、どきどきしてきた。
 しかし、この時の私はまだ知らなかった。
 
 私が学園祭を楽しんでいる裏側で、がとんでもない騒ぎを起こすつもりでいるということを……。
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