上 下
27 / 64

27.

しおりを挟む
 (※マーシー視点)

「だって、彼は私のお兄様ですから」

「……はあ?」

 意味が分からない。
 お兄様?
 ということは、エリオット様とあんたが、兄妹だってこと?

「何度も言おうと思っていたのですけれど、話を全く聞いてくれませんでしたから、言いそびれてしまいました」

 言いそびれたですって?
 言われても信じないわ、そんなこと。
 あなたたちが兄妹だなんて……。

 しかし、周りを見てみるとどの生徒も、そんなことは知っているという顔だった。
 ……いや、それでも私は信じない!
 あの美しいエリオット様と、こじんまりとしているくせに、態度だけは大きくて生意気なこの女が、兄妹であるはずがない。

「嘘を言わないで! あなたとエリオット様が兄妹だなんて、あるはずがないわ!」

「あるはずがないと言われましても……、本当に私たち、正真正銘の兄妹です。だから前にも言ったように、同棲、というか一緒に住んでいますよ」

「そんなの……、ありえないわ……。だって、あなたたち、学園でも仲良く話したり……、一緒にお昼を食べている所だって見たわ! そんなの、普通の兄妹だとありえないでしょう!? それこそが、あなたが嘘をついている証拠だわ!」

 ふう、危うくだまされるところだった。
 場の雰囲気に飲まれて、あの女の言葉を信用しそうになっていたわ。
 私は完全に論破してやった。
 さて、どう言い返すの?

「うーん、そう言われましても……。それは、お兄様が妹を溺愛しているシスコンだからだとしか、言いようがありませんけれど……」

「……シスコン、ですって? そんな……」

 そんなバカな……。
 そんな反論をされるなんて、思っていなかった。
 私は、なんて勘違いをしていたの……。

「というか、この学園の人たちの大半は、私たちが兄妹だと知っていますよ。お恥ずかしながら、私の入学時にけっこう噂が流れまして、あなたの様に勘違いする人がいたのです。それで、私たちが兄妹だと、みんな知ることになりました。学年が違っても、学園全体に噂が流れたのであなたも知っていると思っていました。普通こういう噂って、お友達と話したりすると思うのですけれど……、あ!」

 あ、じゃねえよ。
 殺すぞ。
 何を察したような顔をしているのよ!
 ……まあ確かに、私には友達がいない。
 二人が兄妹だなんて話は、聞いたことがない。

 私はその事実を知って、絶望していた。
 こんなことに気付かなかったなんて……。
 もちろん大好きなエリオット様の苗字は存じ上げているけど、この生意気な一年の苗字なんて知らないし、興味もなかった。
 そうか、私はとんでもない勘違いをしていたのね……。

 ……しかし、改めて考えてみると、これは私にとってはいい情報なのでは?
 だって、あの女は、エリオット様とはただの兄妹だったと判明した。
 つまり、婚約者同士ではない。
 エリオット様はフリーなのだ。
 婚約者という邪魔者は、最初からいなかった。
 となれば、私の取るべき行動は一つしかない。

「エリオット様! 私の思いは伝わったでしょう!? 私は、こんなことをしてしまうくらい、あなたのことを思い続けてきたのです! どうか、私とお付き合いして頂けないでしょうか!?」

 今までのやり取りで、私がどんなことをしてでもエリオット様とお付き合いしたいという気持ちは、充分に伝わっているはず。
 彼からの返事も、かなり期待できる。

 そう思っていたのに……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。

ざまぁでちゅね〜ムカつく婚約者をぶっ倒す私は、そんなに悪役令嬢でしょうか?〜

ぬこまる
恋愛
王立魔法学園の全校集会で、パシュレミオン公爵家長子ナルシェから婚約破棄されたメルル。さらに悪役令嬢だといじられ懺悔させられることに‼︎  そして教会の捨て子窓口にいた赤ちゃんを抱っこしたら、なんと神のお告げが……。 『あなたに前世の記憶と加護を与えました。神の赤ちゃんを育ててください』 こうして無双魔力と乙女ゲームオタクだった前世の記憶を手に入れたメルルは、国を乱す悪者たちをこらしめていく! するとバカ公爵ナルシェが復縁を求めてくるから、さあ大変!? そして彼女は、とんでもないことを口にした──ざまぁでちゅね 悪役令嬢が最強おかあさんに!? バブみを感じる最高に尊い恋愛ファンタジー! 登場人物 メルル・アクティオス(17) 光の神ポースの加護をもつ“ざまぁ“大好きな男爵令嬢。 神の赤ちゃんを抱っこしたら、無双の魔力と乙女ゲームオタクだった前世の記憶を手に入れる。 イヴ(推定生後八か月) 創造神ルギアの赤ちゃん。ある理由で、メルルが育てることに。 アルト(18) 魔道具開発をするメルルの先輩。ぐるぐるメガネの平民男子だが本当は!? クリス・アクティオス(18) メルルの兄。土の神オロスの加護をもち、学園で一番強い。 ティオ・エポナール(18) 風の神アモネスの加護をもつエポナ公爵家の長子。全校生徒から大人気の生徒会長。 ジアス(15) 獣人族の少年で、猫耳のモフモフ。奴隷商人に捕まっていたが、メルルに助けられる。 ナルシェ・パシュレミオン(17) パシュレミオン公爵家の長子。メルルを婚約破棄していじめる同級生。剣術が得意。 モニカ(16) メルルの婚約者ナルシェをたぶらかし、婚約破棄させた新入生。水の神の加護をもち、絵を描く芸術家。 イリース(17) メルルの親友。ふつうに可愛いお嬢様。 パイザック(25) 極悪非道の奴隷商人。闇の神スキアの加護をもち、魔族との繋がりがありそう──? アクティオス男爵家の人々 ポロン(36) メルルの父。魔道具開発の経営者で、鉱山を所有している影の実力者。 テミス(32) メルルの母。優しくて可愛い。驚くと失神してしまう。 アルソス(56) 先代から伯爵家に仕えているベテラン執事。

婚約者は私が大嫌いなんだそうです。じゃあ婚約解消しましょうって言ったら拒否されました。なぜだ!

リオール
恋愛
伯爵令嬢ミリアには、幼い頃に決められた婚約者が居た。 その名もアルバート。侯爵家が子息である。 だがこのアルバート、会えばいつも嫌味に悪口、果てには暴力ととんでもないモラハラDV男だった! 私は彼が大嫌い。彼も私が大嫌い。 なら当然婚約は解消ですよね。 そう思って、解消しましょうと言ったのだけど。 「それは絶対嫌だ」 って何でですのーん!! これは勘違いから始まる溺愛ストーリー ※短いです ※ヒーローは最初下衆です。そんなのと溺愛ラブになるなんてとんでもない!という方はレッツUターン! ※まあヤンデレなんでしょうね ※ヒロインは弱いと思わせて強いです。真面目なのにギャグ体質 ※細かい事を気にしてはいけないお話です

【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ

リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。 先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。 エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹? 「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」 はて、そこでヤスミーンは思案する。 何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。 また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。 最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。 するとある変化が……。 ゆるふわ設定ざまああり?です。

処理中です...