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 (※マーシー視点)

「僕は、カトリーがいじめをしていたなんて、そんなことは信じない!」

 エリオット様が声をあげる。
 普段は温厚なのに、必死になっている顔もかっこいいわ。
 ……いえ、それでも今は、カトリーをいじめの犯人に仕立て上げなければならない。
 いくらエリオット様といえども、私は反論する。

「何か、証拠でもあるんですか? 彼女が私をいじめていないと証明する、絶対的な証拠が!」

「それは……、ない。だが、僕はカトリーを信じている! ここにいるみんなだって、カトリーを知っているはずだ! 彼女がいじめをするなんて、本当に思っているのか!? そんなはずないだろう! その場の雰囲気に飲まれて、彼女がいじめていると思い込んでいるだけじゃないのか!?」

 エリオット様の発言で、生徒たちがざわめき始めた。
 カトリーがいじめの犯人だという雰囲気だったのに、その流れが変わりつつある。
 これはまずいわ。
 なんとかして、この流れを断ち切らないと……。

「エリオット様の言うことも、一理あるでしょう。確かに、彼女はいじめをするような人物には見えません。しかしそれは、裏に潜んでいる本性を隠しているからです! 彼女は本当は、極悪非道な人物なのです! いいですか? いじめられた本人である私が、カトリーが犯人だと名指ししているのです! それに、この頬の痕を見てください! 明らかに、人の手形です! これが、カトリーが私の頬を叩いたという、動かぬ証拠です!」

 生徒たちが、また騒めき始めた。
 一度は変わりかけた流れが、また戻ってきた。
 生徒たちのなかでは、カトリーがいじめの犯人だという雰囲気に再びなっていた。
 まあ、当然である。
 言葉だけなら、いじめているとか、いじめていないとか、なんとでも言える。
 
 しかし、私には頬の腫れた痕という、動かぬ証拠がある。

 これが、私の言い分を確かなものとするのだ。
 さすがにエリオット様も、黙り込んでしまった。
 カトリーも、エリオット様が発言していた時は目を輝かせていたけど、それもまた失われつつある。
 さらにダメ押しをして、カトリーは地獄に叩き落してやるわ。

「私の望みはただ一つです! それは、カトリーの退学処分です! 停学なんて生温いことは、絶対に認めません! それに停学だと、処分明けに登校してきたカトリーに、私が復讐される可能性が大いにあります! ですからここは、退学処分にするのが、もっともな判断だと思います! 先生たちも、そのことを考慮して頂けると、仕返しを恐れている私としては助かります!」

 これで完璧だ。
 充分に作戦を練ってきたかいがあった。
 これで、邪魔者のカトリーは消える。
 すべて、計画通りだった。

 カトリーもエリオット様も、黙ったままだ。
 その様子を見て、私は勝利を確信していた。

 しかし、また一人の意外な人物が、異議を唱える声をあげたのだった……。
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