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私は、島流しにされる王子を移送中の馬車を襲い、周りにいた兵たちを倒し終えた。
兵たちは全員息はあるが、気を失っている。
私は王子が乗っている馬車に向かって歩き始めた。
兵たちを倒すことは、さほど難しくはなかった。
大勢いたわけではないけれど、それでも複数人の兵を相手にするのは、普通の人間にとっては困難だ。
しかし、私には可能だった。
なぜなら、私には兵たちがどのように動くのか、あらかじめわかっていたかただ。
それは、私が戦闘の才に秀でているがゆえに兵たちの動きを読めた……、というわけではない。
私にはそんな才能はない。
護身術の心得はあるので、普通の人よりは多少強いけれど、それだけで兵たちを倒すことは不可能だ。
王子は、私が兵たちを倒したことに、違和感を抱くかしら?
そこに違和感を覚えたら、もしかすると私のことについて、認識を新たにするかもしれない。
まあ、あの王子が答えにたどり着ける可能性は、かなり低いと思うけれど……。
私は、馬車の前に立った。
そして、扉に手をかけた。
これから、王子とご対面して、そして、それからは……。
*
(※王子視点)
馬車の扉が開いた。
入ってきたのは前回と同様、ララーナだった。
「ララーナ……」
私は息を呑んだ。
また、あの倉庫のような場所に連れて行かれるのか……。
そして、そこでまた……。
いや、そのことを考えるのはやめよう。
今回はすでに、島流しを宣告されて、こうして手足を拘束されている時点で詰んでいる。
もう、おれには抵抗する術がない。
死を免れることはできないだろう。
となれば、今のおれにできることは一つしかない。
それは、情報収集だ。
今回がダメでも、次の周回でやり直せばいい。
そして、そのためには有益な情報が必要だ。
まずは、ララーナが魔法を使えるということを明らかにする。
そして、その詳細も可能な限り知りたい。
命を捨てるつもりではあるが、無駄にするつもりはない。
少しでも多く、次の周回の時に役立つ情報を手に入れなければならない。
しかし、おれの考えでは、ララーナは心を読む魔法を使える。
つまり、おれのこのような考えも筒抜けになってしまう。
彼女は自身の魔法について知られないようにするだろう。
だから、何か対策をする必要がある。
そして、おれは一つの策を思い付いた。
「さて、着きましたよ」
前回と同じ場所に到着した。
また、あの地獄のような時間が始まるのか……。
いや、とにかく今は次の周回のための情報収集に専念しよう。
そして、こちらの心を読まれないようにする必要もある。
おれが考えたこの対策法は誰でも思い付く方法だ。
そして大人が、ましてや王子であるこのおれがやるなんて恥さらしだ。
しかし、心を読まれないようにするにはこうするしかない。
だからおれは、先ほどからずっと心の中で、排泄物の名を呟いていた。
これでララーナに心を読まれなければ、次の周回ではうまく立ち回ることができる。
だから、この対策法に効果があるのか確かめる価値は充分にある。
おれは深層心理を悟られないように、心の浅い部分で排泄物の名を呪文のように唱え続けた。
魔法の詠唱をしていると思えば、恥ずかしさは少し和らいだ。
ララーナの魔法に対抗できる可能性を秘めているので、これもある意味、魔法なのかもしれない。
新たに得た魔法を唱えながら、おれは前回と同様、ララーナと共に倉庫の中に入った。
絶対に、ララーナの魔法の詳細を暴いてやる。
そう思っていたが、ララーナによって、おれは自らがとんでもない勘違いをしていたことに、気づくことになるのだった……。
兵たちは全員息はあるが、気を失っている。
私は王子が乗っている馬車に向かって歩き始めた。
兵たちを倒すことは、さほど難しくはなかった。
大勢いたわけではないけれど、それでも複数人の兵を相手にするのは、普通の人間にとっては困難だ。
しかし、私には可能だった。
なぜなら、私には兵たちがどのように動くのか、あらかじめわかっていたかただ。
それは、私が戦闘の才に秀でているがゆえに兵たちの動きを読めた……、というわけではない。
私にはそんな才能はない。
護身術の心得はあるので、普通の人よりは多少強いけれど、それだけで兵たちを倒すことは不可能だ。
王子は、私が兵たちを倒したことに、違和感を抱くかしら?
そこに違和感を覚えたら、もしかすると私のことについて、認識を新たにするかもしれない。
まあ、あの王子が答えにたどり着ける可能性は、かなり低いと思うけれど……。
私は、馬車の前に立った。
そして、扉に手をかけた。
これから、王子とご対面して、そして、それからは……。
*
(※王子視点)
馬車の扉が開いた。
入ってきたのは前回と同様、ララーナだった。
「ララーナ……」
私は息を呑んだ。
また、あの倉庫のような場所に連れて行かれるのか……。
そして、そこでまた……。
いや、そのことを考えるのはやめよう。
今回はすでに、島流しを宣告されて、こうして手足を拘束されている時点で詰んでいる。
もう、おれには抵抗する術がない。
死を免れることはできないだろう。
となれば、今のおれにできることは一つしかない。
それは、情報収集だ。
今回がダメでも、次の周回でやり直せばいい。
そして、そのためには有益な情報が必要だ。
まずは、ララーナが魔法を使えるということを明らかにする。
そして、その詳細も可能な限り知りたい。
命を捨てるつもりではあるが、無駄にするつもりはない。
少しでも多く、次の周回の時に役立つ情報を手に入れなければならない。
しかし、おれの考えでは、ララーナは心を読む魔法を使える。
つまり、おれのこのような考えも筒抜けになってしまう。
彼女は自身の魔法について知られないようにするだろう。
だから、何か対策をする必要がある。
そして、おれは一つの策を思い付いた。
「さて、着きましたよ」
前回と同じ場所に到着した。
また、あの地獄のような時間が始まるのか……。
いや、とにかく今は次の周回のための情報収集に専念しよう。
そして、こちらの心を読まれないようにする必要もある。
おれが考えたこの対策法は誰でも思い付く方法だ。
そして大人が、ましてや王子であるこのおれがやるなんて恥さらしだ。
しかし、心を読まれないようにするにはこうするしかない。
だからおれは、先ほどからずっと心の中で、排泄物の名を呟いていた。
これでララーナに心を読まれなければ、次の周回ではうまく立ち回ることができる。
だから、この対策法に効果があるのか確かめる価値は充分にある。
おれは深層心理を悟られないように、心の浅い部分で排泄物の名を呪文のように唱え続けた。
魔法の詠唱をしていると思えば、恥ずかしさは少し和らいだ。
ララーナの魔法に対抗できる可能性を秘めているので、これもある意味、魔法なのかもしれない。
新たに得た魔法を唱えながら、おれは前回と同様、ララーナと共に倉庫の中に入った。
絶対に、ララーナの魔法の詳細を暴いてやる。
そう思っていたが、ララーナによって、おれは自らがとんでもない勘違いをしていたことに、気づくことになるのだった……。
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