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(※王子視点)
タイムリープが発動して、記憶を引き継いだまま、おれは過去へと戻った。
前回の失敗の原因は、日頃の恨みで頭に血が昇っていたせいで、ことを急いで強引に進めてしまったことだ。
そのせいで、後処理がおろそかになり、偽装の証拠がララーナに見つかってしまった。
しかし、今回は違う。
前の周回の記憶を引き継いでいるおれは、今回は慎重にことを進めた。
そして、前回と同じように、ララーナを罠にはめることに成功した。
しかし、前回と違う部分もある。
それは、刑の内容を変更したことだ。
前回は島流しを言い渡したが、今回ははりつけの刑を言い渡した。
王子という立場上、刑の執行人になれないのは残念だが、それでも島流しと違って、ララーナが苦しむ様を長い間眺め続けることができる。
前回おれをさんざん痛め付けた恨みを、今回は晴らしてやる!
……というように、途中までは順調だった。
おれは、今回ララーナに恨みのすべてをぶつけられると思って、気持ちが高ぶっていた。
しかし、途中で雲行きが怪しくなってきた。
また、おれが証拠を偽装していた証拠を、ララーナに握られてしまったのだ。
これは、明らかにおかしい。
ララーナの観察眼や思考力が優れているとか、そんなレベルの話ではない。
おれは、前回の記憶を引き継いでいる。
だから、未来に何が起こるか知っているに等しいので、対策も完璧だった。
それなのに、偽装の証拠を掴まれてしまった。
明らかに、おれの行動を先読みしないとできない芸当だ。
そして、それは観察眼や思考力でどうにかなるレベルではない。
まるで、心を読まれたかのように、彼女はおれの行動を読んでいた。
普通の人間に、そんなことが不可能なのは自明だった。
……ということは、まさか、ララーナは魔法が使えるのか?
魔法が使えないと思っていた彼女が、実は魔法が使えるという可能性……。
魔法を使える者は、悪い歴史があるのでそのことを隠したがる。
だから、ララーナが魔法を使えるという可能性は、ないわけではない。
しかし、今までそんなそぶりは、微塵も見せたことがない。
よく今まで、隠し通せたものだ。
「お前は、島流しの刑だ!」
前回と同じように、証拠の偽装がばれて、陛下にそう告げられたおれは、移送中の馬車の中でもずっと考えていた。
どんなに可能性が低くても、もう、そうとしか思えなかった。
ララーナは、魔法が使える!
おれが置かれているこの状況が、その証拠だ。
タイムリープで記憶を引き継いだおれを出し抜くなんて、魔法を使わない限りは不可能なのだから。
では、いったい彼女は、どんな魔法を使ったんだ?
まず間違いないのは、タイムリープ系の魔法ではないということだ。
なぜなら、同じ時代に同じ系統の魔法は一つしか存在しないからだ。
これは長い歴史の間、一つの例外もなくそうだった。
炎系の魔法使いが発見されてからは、同じ時代に炎系の魔法使いは現れなかった。
音を自由自在に操れる魔法使いが発見されてからは、それ以降その時代に同じ音系統の魔法使いは現れなかった。
つまり、おれがタイムリープの魔法を使える以上、この時代にタイムリープ系の魔法使いは存在し得ない。
よって、ララーナもそうではないと断言できる。
そして、彼女はおれのタイムリープのことを知っていた。
前回の周回ではその事が疑問だったが、今ならその理由にも説明がつきそうだ。
前の周回の記憶を引き継いでいる現在のおれの行動が先読みされて、まるで心が読まれているみたいだと思ったが、まさにそれが、彼女の魔法なのではないだろうか……。
心を読める魔法なんて、長い歴史の中でも、今まで存在が確認されたことはなかった。
心を読めるなんて、そんな強すぎる魔法が、本当にあるのだろうか……。
しかし、そうとしか思えない。
ララーナは、人の心を読む魔法が使える。
もしそうなら、今までのことにも説明がつく。
おれのタイムリープのことを知っていたのも、おれの心を読んだからだ。
そして、記憶を引き継いでいるおれの行動が先読みされたのも、おれの心を読んでいたからだ。
さらに、前の周回の時、ララーナは移送中の馬車を襲ってきた。
当然、移送中の馬車の周りには兵たちがいた。
どうやって彼らを倒したのかと思っていたが、兵たちの心を読んでいたのだ。
どうやって攻撃されるのかわかっていれば、避けることは容易いし、逆にララーナが攻撃する場合は、確実に急所をとらえることも、難しくはない。
心を読んで行動を先読みできるから為せる芸当だ。
これらの事例から、やはりララーナは、心を読む魔法を使えることは、間違いなさそうだ。
しかし、それがわかったところで、どう対策すればいいんだ?
おれのタイムリープも大概だが、心を読むなんて、そんなの反則じゃないか……。
「この馬車が襲撃されているぞ!」
移送中の馬車の運転をしている兵が叫んだ。
前回と同じだ。
また、ララーナが来たに違いない。
このままではまた、前回と同じようになってしまう。
そして、またタイムリープしても、心を読まれてしまっては、どうしようもない。
何とかしなければ……。
どうすればいい?
心を読んでくる相手に、おれはどう立ち向かえばいいんだ……。
「そうだ……」
おれは、とある対策法を思い付いた。
試してみる価値はある。
先ほどまで騒がしかった外は静かになった。
そして、足音が近づいてくる。
前回と同じようにララーナだろう。
おれは息を呑んだ。
そして、この時のおれはまだ気づいていなかった。
自身が、大きな勘違いをしているということを……。
タイムリープが発動して、記憶を引き継いだまま、おれは過去へと戻った。
前回の失敗の原因は、日頃の恨みで頭に血が昇っていたせいで、ことを急いで強引に進めてしまったことだ。
そのせいで、後処理がおろそかになり、偽装の証拠がララーナに見つかってしまった。
しかし、今回は違う。
前の周回の記憶を引き継いでいるおれは、今回は慎重にことを進めた。
そして、前回と同じように、ララーナを罠にはめることに成功した。
しかし、前回と違う部分もある。
それは、刑の内容を変更したことだ。
前回は島流しを言い渡したが、今回ははりつけの刑を言い渡した。
王子という立場上、刑の執行人になれないのは残念だが、それでも島流しと違って、ララーナが苦しむ様を長い間眺め続けることができる。
前回おれをさんざん痛め付けた恨みを、今回は晴らしてやる!
……というように、途中までは順調だった。
おれは、今回ララーナに恨みのすべてをぶつけられると思って、気持ちが高ぶっていた。
しかし、途中で雲行きが怪しくなってきた。
また、おれが証拠を偽装していた証拠を、ララーナに握られてしまったのだ。
これは、明らかにおかしい。
ララーナの観察眼や思考力が優れているとか、そんなレベルの話ではない。
おれは、前回の記憶を引き継いでいる。
だから、未来に何が起こるか知っているに等しいので、対策も完璧だった。
それなのに、偽装の証拠を掴まれてしまった。
明らかに、おれの行動を先読みしないとできない芸当だ。
そして、それは観察眼や思考力でどうにかなるレベルではない。
まるで、心を読まれたかのように、彼女はおれの行動を読んでいた。
普通の人間に、そんなことが不可能なのは自明だった。
……ということは、まさか、ララーナは魔法が使えるのか?
魔法が使えないと思っていた彼女が、実は魔法が使えるという可能性……。
魔法を使える者は、悪い歴史があるのでそのことを隠したがる。
だから、ララーナが魔法を使えるという可能性は、ないわけではない。
しかし、今までそんなそぶりは、微塵も見せたことがない。
よく今まで、隠し通せたものだ。
「お前は、島流しの刑だ!」
前回と同じように、証拠の偽装がばれて、陛下にそう告げられたおれは、移送中の馬車の中でもずっと考えていた。
どんなに可能性が低くても、もう、そうとしか思えなかった。
ララーナは、魔法が使える!
おれが置かれているこの状況が、その証拠だ。
タイムリープで記憶を引き継いだおれを出し抜くなんて、魔法を使わない限りは不可能なのだから。
では、いったい彼女は、どんな魔法を使ったんだ?
まず間違いないのは、タイムリープ系の魔法ではないということだ。
なぜなら、同じ時代に同じ系統の魔法は一つしか存在しないからだ。
これは長い歴史の間、一つの例外もなくそうだった。
炎系の魔法使いが発見されてからは、同じ時代に炎系の魔法使いは現れなかった。
音を自由自在に操れる魔法使いが発見されてからは、それ以降その時代に同じ音系統の魔法使いは現れなかった。
つまり、おれがタイムリープの魔法を使える以上、この時代にタイムリープ系の魔法使いは存在し得ない。
よって、ララーナもそうではないと断言できる。
そして、彼女はおれのタイムリープのことを知っていた。
前回の周回ではその事が疑問だったが、今ならその理由にも説明がつきそうだ。
前の周回の記憶を引き継いでいる現在のおれの行動が先読みされて、まるで心が読まれているみたいだと思ったが、まさにそれが、彼女の魔法なのではないだろうか……。
心を読める魔法なんて、長い歴史の中でも、今まで存在が確認されたことはなかった。
心を読めるなんて、そんな強すぎる魔法が、本当にあるのだろうか……。
しかし、そうとしか思えない。
ララーナは、人の心を読む魔法が使える。
もしそうなら、今までのことにも説明がつく。
おれのタイムリープのことを知っていたのも、おれの心を読んだからだ。
そして、記憶を引き継いでいるおれの行動が先読みされたのも、おれの心を読んでいたからだ。
さらに、前の周回の時、ララーナは移送中の馬車を襲ってきた。
当然、移送中の馬車の周りには兵たちがいた。
どうやって彼らを倒したのかと思っていたが、兵たちの心を読んでいたのだ。
どうやって攻撃されるのかわかっていれば、避けることは容易いし、逆にララーナが攻撃する場合は、確実に急所をとらえることも、難しくはない。
心を読んで行動を先読みできるから為せる芸当だ。
これらの事例から、やはりララーナは、心を読む魔法を使えることは、間違いなさそうだ。
しかし、それがわかったところで、どう対策すればいいんだ?
おれのタイムリープも大概だが、心を読むなんて、そんなの反則じゃないか……。
「この馬車が襲撃されているぞ!」
移送中の馬車の運転をしている兵が叫んだ。
前回と同じだ。
また、ララーナが来たに違いない。
このままではまた、前回と同じようになってしまう。
そして、またタイムリープしても、心を読まれてしまっては、どうしようもない。
何とかしなければ……。
どうすればいい?
心を読んでくる相手に、おれはどう立ち向かえばいいんだ……。
「そうだ……」
おれは、とある対策法を思い付いた。
試してみる価値はある。
先ほどまで騒がしかった外は静かになった。
そして、足音が近づいてくる。
前回と同じようにララーナだろう。
おれは息を呑んだ。
そして、この時のおれはまだ気づいていなかった。
自身が、大きな勘違いをしているということを……。
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