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(※王子視点)
ララーナを追放した翌日、おれの元へ兵が訪れてきた。
「殿下、国王陛下がお呼びです」
「そうか、いったい、何の用か聞いているか?」
おれは兵に尋ねた。
「いえ、陛下は具体的なことは何も言いませんでした。ただ、緊急のことだそうで、今すぐに来てほしいとのことです」
「そうか、わかった」
おれはさっそく、陛下の元へ向かった。
いつもなら、どんな用件なのかも伝えてくるのに、具体的なことを何も言わないとは珍しいことだ。
まあ、行けばわかるから、何も問題はない。
「陛下、失礼します」
私は部屋のなかに入った。
部屋には、陛下が一人いるだけで、他には誰もいなかった。
どうやら、誰の耳にも入れたくないような内容の話らしい。
「緊急だとのことですが、いったいどのようなご用件でしょうか?」
おれは陛下に尋ねた。
しかし、すぐに返事は返ってこなかった。
部屋には、重苦しい沈黙が流れた。
おれは、少し不安な気持ちになっていた。
そして、ようやく陛下が口を開いた。
「私ももう歳だから、最近は医者に頼る時間も増えてきた。だから、ほとんどのことは、お前に任せてきたが、まさか、こんなことになるとは……」
陛下は、嘆くようにそう言った。
いったい、なんのことを言っているのだろう?
体が弱ってきただけでなく、頭もボケてきたのか?
「いったい、何のことをおっしゃられているのですか?」
おれは、陛下に尋ねた。
「あくまでも、とぼけるつもりか……。それなら、はじめから説明しよう。お前は、婚約者の、いや、今は元婚約者か。ララーナとその家族を、敵国に情報を流しているということで、島流しの刑にしたそうだな」
「ええ、その通りです。国を裏切った者たちには、ふさわしい罰です」
おれは平然とした態度で答えた。
「だが、私は知っているぞ。本当に国を裏切ったのは、お前だということをな!」
陛下の鋭い目付きが、こちらを向いていた。
おれは、全身から汗が止まらなかった。
いったい、どうしてばれたんだ?
「な、何の話をされているのか、わかりませんね……」
おれはとりあえず、ごまかしてみようと思った。
「認めないつもりか……。しかし、こちらには証拠がある。それに、証人もいる。それだけの用意をしたのは。すべて私ではなく、彼女だがな」
陛下のその言葉と共に、壁の向こう側から一人の人物が現れた。
陛下と二人きりだと思っていたが、そんなところに控えていたのか……。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
おれはその人物を見て、腰を抜かすほど驚いていた。
いや、実際に腰が抜けていた。
「ララーナ……」
おれは、その人物の名を呟いていた。
ありえない。
島流しの刑はすでに執行したのに、どうして……。
どうして彼女が生きて、こんなところにいるんだ!?
ララーナを追放した翌日、おれの元へ兵が訪れてきた。
「殿下、国王陛下がお呼びです」
「そうか、いったい、何の用か聞いているか?」
おれは兵に尋ねた。
「いえ、陛下は具体的なことは何も言いませんでした。ただ、緊急のことだそうで、今すぐに来てほしいとのことです」
「そうか、わかった」
おれはさっそく、陛下の元へ向かった。
いつもなら、どんな用件なのかも伝えてくるのに、具体的なことを何も言わないとは珍しいことだ。
まあ、行けばわかるから、何も問題はない。
「陛下、失礼します」
私は部屋のなかに入った。
部屋には、陛下が一人いるだけで、他には誰もいなかった。
どうやら、誰の耳にも入れたくないような内容の話らしい。
「緊急だとのことですが、いったいどのようなご用件でしょうか?」
おれは陛下に尋ねた。
しかし、すぐに返事は返ってこなかった。
部屋には、重苦しい沈黙が流れた。
おれは、少し不安な気持ちになっていた。
そして、ようやく陛下が口を開いた。
「私ももう歳だから、最近は医者に頼る時間も増えてきた。だから、ほとんどのことは、お前に任せてきたが、まさか、こんなことになるとは……」
陛下は、嘆くようにそう言った。
いったい、なんのことを言っているのだろう?
体が弱ってきただけでなく、頭もボケてきたのか?
「いったい、何のことをおっしゃられているのですか?」
おれは、陛下に尋ねた。
「あくまでも、とぼけるつもりか……。それなら、はじめから説明しよう。お前は、婚約者の、いや、今は元婚約者か。ララーナとその家族を、敵国に情報を流しているということで、島流しの刑にしたそうだな」
「ええ、その通りです。国を裏切った者たちには、ふさわしい罰です」
おれは平然とした態度で答えた。
「だが、私は知っているぞ。本当に国を裏切ったのは、お前だということをな!」
陛下の鋭い目付きが、こちらを向いていた。
おれは、全身から汗が止まらなかった。
いったい、どうしてばれたんだ?
「な、何の話をされているのか、わかりませんね……」
おれはとりあえず、ごまかしてみようと思った。
「認めないつもりか……。しかし、こちらには証拠がある。それに、証人もいる。それだけの用意をしたのは。すべて私ではなく、彼女だがな」
陛下のその言葉と共に、壁の向こう側から一人の人物が現れた。
陛下と二人きりだと思っていたが、そんなところに控えていたのか……。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
おれはその人物を見て、腰を抜かすほど驚いていた。
いや、実際に腰が抜けていた。
「ララーナ……」
おれは、その人物の名を呟いていた。
ありえない。
島流しの刑はすでに執行したのに、どうして……。
どうして彼女が生きて、こんなところにいるんだ!?
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