王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上

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「わ……、私は……」

 ヘレンが視線を宙にさまよわせ、言葉を探している。
 私は彼女の言葉を待っていた。
 しかしその時、拘束されて口を押えられていた殿下が首を振り回し、口を押さえていた兵の手を振り払った。

「ふざけるな! いきなり押しかけて来たと思ったら、ヘレンが母親を殺しただと!? 彼女がそんなこと、するはずがないだろう! 彼女は母が死んだと知らされた時、確かに驚いていたんだ! 明らかに、動揺していた! あれは、演技なんかじゃなかった! どう見ても、突然の出来事に混乱している様子だったぞ!」

 そこまで言ったところで、殿下は再び口を押さえられた。
 ヘレンは彼の方を見ていたが、私の方に視線を向けた。

「で、殿下の言う通りよ! 私は、お母様を殺してなんかいない! 兵から事件のことを聞いた時は、本当に驚いたわ! まさか……、お母様が殺されるなんて……。それなのに、私を疑うなんて、酷いわ!」

「そうですか……。まあ、仮に、殿下が言っていたことが本当だとしましょう。あなたが事件のことを聞いて、本当に驚いていたという殿下の言葉は、とりあえず信じます。でも、あなたが驚いていたのは、お母様が死んだと知ったからではないでしょう?」

「……ど、どういう意味よ?」

 そう言ったヘレンの声は、震えていた。
 明らかに、動揺している。

「あなたは、お母様が死んだことに驚いたのではなく、お母様が銃で撃たれていたことに、驚いていたのでしょう?」

 私は、彼女の目を見ながら言った。

「そ、それは……」

「あなたは、お母様が死んでいたことは、初めから知っていた。自分で窒息死させたのだから。でも、兵からの知らせでは、銃で撃たれて死んだということになっていた。だから、混乱していたのでしょう? わけがわからなくて、動揺していたのでしょう?」

「そ、そんなの……、なんとでも言えるでしょう!? 私を犯人扱いするのなら、証拠を出してよ! 証拠もないのに、私を犯人扱いするなんて──」

「証拠なら、ありますよ」

 私はヘレンの言葉を遮って言った。

「え……」

 彼女は、明らかに動揺している。
 可哀想なほど、不安な表情を浮かべて、体が震えていた。
 目には少し涙が浮かんでいるようにも見えた。

 まあ、同情はしませんけれどね……。
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