34 / 55
34.
しおりを挟む
私は、手を震わせながら、遺書を書いていた。
まさか、こんなことになるなんて……。
せっかく、牢獄から出られると思っていたのに……。
私は数日後に、処刑されてしまう。
大勢の前で自分が死ぬ瞬間を見られるなんて、最悪の屈辱である。
色々考えたけれど、それを避けるためには、こうするしかなかった。
処刑される前に、旅立つしかない……。
*
(※ウィリアム王子視点)
エマがまさか、私のことを拒絶するなんて……。
もう、あの女のことは知らない。
私に恥をかかせたことを後悔しながら、あの世へ旅立ってもらおう。
私が惚れたエマは、あんなことはしなかった。
昔のエマはもう死んでしまったのだ。
今牢獄にいるのは、その抜け殻。
今更抜け殻が死のうが何とも思わない。
私はヘレンのところへ向かっていた。
私は彼女の裏切りに、ひどいショックを受けた。
そして、彼女を拒絶した。
しかし、よく考えてみれば、私が今まで愛していたのは、ヘレンなのだ。
確かにエマだと思っていたけれど、私が婚約者を愛していたのは、まぎれもない事実なのだ。
彼女のしたことは、許されることではない。
しかし、このまま一人になるのも嫌だった。
ここは、寛大な心で、ヘレンの過ちを許そう。
それこそが、愛というもの。
「ヘレン……」
床に膝をつき、泣き崩れている彼女に私は声を掛けた。
「殿下……」
彼女は、ゆっくりと顔を上げて私を見上げた。
「さっきは、すまない……。あまりに突然すぎて、動揺していたんだ。信じていた君に、大きな嘘をつかれたことがショックだったんだ。……だから君を、拒絶してしまった。でも、よく考えてみれば、そんなに怒るほどのことでもなかったよ。君は、私を愛しているからこそ、嘘をついて私に近づいた。そして、私も君との暮らしは本当に楽しかった。隣にいる君のことを愛していた」
「殿下……、私のことを、許してくれるのですか?」
「ああ、確かに嘘をつかれて悲しかったけど、君との関係が終わってしまうことの方が、もっと悲しいよ。そのことに、ようやく気付いた」
「殿下……」
ヘレンがゆっくりと立ち上がった。
そんな彼女を、私は抱きしめた。
「私は、君のことを許すよ。また、二人でやり直そう」
「嬉しいです、殿下」
彼女は笑顔になった。
「もう、隠し事はないね?」
「ええ、何もありません」
彼女は笑顔で答えた。
姉に成りすましていたということ以上の大きな嘘など、あるはずもない。
私は彼女の言葉を信じた。
そして、彼女の唇に、私の唇を近づけようとした。
しかし、その時……。
「殿下! 大変です!」
兵が部屋に入ってきた。
「いったい何の用だ!」
「今すぐ、牢獄に来てください! 大変なことになってしまいました!」
私とヘレンは、兵について行き、エマが捕らわれている牢獄へ向かった。
牢獄に着くと、私は中の様子を見た。
そこには、驚くべき光景が広がっていた。
まさか、こんなことになるなんて……。
せっかく、牢獄から出られると思っていたのに……。
私は数日後に、処刑されてしまう。
大勢の前で自分が死ぬ瞬間を見られるなんて、最悪の屈辱である。
色々考えたけれど、それを避けるためには、こうするしかなかった。
処刑される前に、旅立つしかない……。
*
(※ウィリアム王子視点)
エマがまさか、私のことを拒絶するなんて……。
もう、あの女のことは知らない。
私に恥をかかせたことを後悔しながら、あの世へ旅立ってもらおう。
私が惚れたエマは、あんなことはしなかった。
昔のエマはもう死んでしまったのだ。
今牢獄にいるのは、その抜け殻。
今更抜け殻が死のうが何とも思わない。
私はヘレンのところへ向かっていた。
私は彼女の裏切りに、ひどいショックを受けた。
そして、彼女を拒絶した。
しかし、よく考えてみれば、私が今まで愛していたのは、ヘレンなのだ。
確かにエマだと思っていたけれど、私が婚約者を愛していたのは、まぎれもない事実なのだ。
彼女のしたことは、許されることではない。
しかし、このまま一人になるのも嫌だった。
ここは、寛大な心で、ヘレンの過ちを許そう。
それこそが、愛というもの。
「ヘレン……」
床に膝をつき、泣き崩れている彼女に私は声を掛けた。
「殿下……」
彼女は、ゆっくりと顔を上げて私を見上げた。
「さっきは、すまない……。あまりに突然すぎて、動揺していたんだ。信じていた君に、大きな嘘をつかれたことがショックだったんだ。……だから君を、拒絶してしまった。でも、よく考えてみれば、そんなに怒るほどのことでもなかったよ。君は、私を愛しているからこそ、嘘をついて私に近づいた。そして、私も君との暮らしは本当に楽しかった。隣にいる君のことを愛していた」
「殿下……、私のことを、許してくれるのですか?」
「ああ、確かに嘘をつかれて悲しかったけど、君との関係が終わってしまうことの方が、もっと悲しいよ。そのことに、ようやく気付いた」
「殿下……」
ヘレンがゆっくりと立ち上がった。
そんな彼女を、私は抱きしめた。
「私は、君のことを許すよ。また、二人でやり直そう」
「嬉しいです、殿下」
彼女は笑顔になった。
「もう、隠し事はないね?」
「ええ、何もありません」
彼女は笑顔で答えた。
姉に成りすましていたということ以上の大きな嘘など、あるはずもない。
私は彼女の言葉を信じた。
そして、彼女の唇に、私の唇を近づけようとした。
しかし、その時……。
「殿下! 大変です!」
兵が部屋に入ってきた。
「いったい何の用だ!」
「今すぐ、牢獄に来てください! 大変なことになってしまいました!」
私とヘレンは、兵について行き、エマが捕らわれている牢獄へ向かった。
牢獄に着くと、私は中の様子を見た。
そこには、驚くべき光景が広がっていた。
8
お気に入りに追加
525
あなたにおすすめの小説

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。

オネエな幼馴染と男嫌いな私
麻竹
恋愛
男嫌いな侯爵家の御令嬢にはオネエの幼馴染がいました。しかし実は侯爵令嬢が男嫌いになったのは、この幼馴染のせいでした。物心つく頃から一緒にいた幼馴染は事ある毎に侯爵令嬢に嫌がらせをしてきます。その悪戯も洒落にならないような悪戯ばかりで毎日命がけ。そのせいで男嫌いになってしまった侯爵令嬢。「あいつのせいで男が苦手になったのに、なんであいつはオカマになってるのよ!!」と大人になって、あっさりオカマになってしまった幼馴染に憤慨する侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢に今日も幼馴染はちょっかいをかけに来るのでした。

【コミカライズ決定】契約結婚初夜に「一度しか言わないからよく聞け」と言ってきた旦那様にその後溺愛されています
氷雨そら
恋愛
義母と義妹から虐げられていたアリアーナは、平民の資産家と結婚することになる。
それは、絵に描いたような契約結婚だった。
しかし、契約書に記された内容は……。
ヒロインが成り上がりヒーローに溺愛される、契約結婚から始まる物語。
小説家になろう日間総合表紙入りの短編からの長編化作品です。
短編読了済みの方もぜひお楽しみください!
もちろんハッピーエンドはお約束です♪
小説家になろうでも投稿中です。
完結しました!! 応援ありがとうございます✨️

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。

本日私は姉を卒業します!
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
公爵令嬢のアンジェリカには双子の妹アンジェラがいる。
生まれたのが数秒早かっただけで人生こんなに変わるもの⁈と思う程の依怙贔屓。
アンジェリカは妹の我儘に付き合わされながら日々を過ごしてきた。両親も何故か妹には甘々で、正直平等など存在しない。
ある日妹のアンジェラが王太子の元へ嫁ぐ事になり婚姻の儀が執り行われた。他国の来賓者達も出席する中アンジェリカはある事を実行に移す。アンジェラの姉として王太子とアンジェラに祝いを述べた最後に。
「アンジェラ、私は本日で貴女の姉を卒業します」と宣言した。無論周囲は騒然とする。妹は呆然と立ち尽くし、王太子は王太子妃を侮辱したとして不敬罪だと激怒し、国から追放すると言う。 アンジェリカは覚悟の上だったが「なら彼女は僕が妃に貰うよ」と隣国の王太子が名乗りを上げた。彼は超がつく程の美男子で実は妹が以前アプローチをしていた人物だった。妹は発狂して…婚儀はめちゃくちゃに…。
駄作ラノベのヒロインに転生したようです
きゃる
恋愛
真面目な私がふしだらに――!?
『白銀の聖女』と呼ばれるシルヴィエラは、修道院の庭を掃除しながら何げなく呟いた。「はあ~。温かいお茶といちご大福がセットで欲しい」。その途端、彼女は前世の記憶を思い出す……だけでは済まず、ショックを受けて青ざめてしまう。
なぜならここは『聖女はロマンスがお好き』という、ライトノベルの世界だったから。絵だけが素晴らしく内容は駄作で、自分はその、最低ヒロインに生まれ変わっている!
それは、ヒロインのシルヴィエラが気絶と嘘泣きを駆使して、男性を次々取り替えのし上がっていくストーリーだ。まったく面白くなかったため、主人公や作者への評価は最悪だった。
『腹黒女、節操なし、まれに見る駄作、聖女と言うより性女』ああ、思い出すのも嫌。
ラノベのような生き方はしたくないと、修道院を逃げ出したシルヴィエラは……?
一生懸命に生きるヒロインの、ドタバタコメディ。ゆる~く更新する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる