王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上

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 私は、手を震わせながら、遺書を書いていた。 

 まさか、こんなことになるなんて……。
 せっかく、牢獄から出られると思っていたのに……。
 私は数日後に、処刑されてしまう。

 大勢の前で自分が死ぬ瞬間を見られるなんて、最悪の屈辱である。
 色々考えたけれど、それを避けるためには、こうするしかなかった。

 処刑される前に、旅立つしかない……。

    *

 (※ウィリアム王子視点)

 エマがまさか、私のことを拒絶するなんて……。

 もう、あの女のことは知らない。
 私に恥をかかせたことを後悔しながら、あの世へ旅立ってもらおう。
 私が惚れたエマは、あんなことはしなかった。

 昔のエマはもう死んでしまったのだ。
 今牢獄にいるのは、その抜け殻。
 今更抜け殻が死のうが何とも思わない。

 私はヘレンのところへ向かっていた。

 私は彼女の裏切りに、ひどいショックを受けた。
 そして、彼女を拒絶した。
 しかし、よく考えてみれば、私が今まで愛していたのは、ヘレンなのだ。
 確かにエマだと思っていたけれど、私が婚約者を愛していたのは、まぎれもない事実なのだ。

 彼女のしたことは、許されることではない。
 しかし、このまま一人になるのも嫌だった。
 ここは、寛大な心で、ヘレンの過ちを許そう。
 それこそが、愛というもの。

「ヘレン……」

 床に膝をつき、泣き崩れている彼女に私は声を掛けた。

「殿下……」

 彼女は、ゆっくりと顔を上げて私を見上げた。

「さっきは、すまない……。あまりに突然すぎて、動揺していたんだ。信じていた君に、大きな嘘をつかれたことがショックだったんだ。……だから君を、拒絶してしまった。でも、よく考えてみれば、そんなに怒るほどのことでもなかったよ。君は、私を愛しているからこそ、嘘をついて私に近づいた。そして、私も君との暮らしは本当に楽しかった。隣にいる君のことを愛していた」

「殿下……、私のことを、許してくれるのですか?」

「ああ、確かに嘘をつかれて悲しかったけど、君との関係が終わってしまうことの方が、もっと悲しいよ。そのことに、ようやく気付いた」

「殿下……」

 ヘレンがゆっくりと立ち上がった。
 そんな彼女を、私は抱きしめた。

「私は、君のことを許すよ。また、二人でやり直そう」

「嬉しいです、殿下」

 彼女は笑顔になった。

「もう、隠し事はないね?」

「ええ、何もありません」

 彼女は笑顔で答えた。
 姉に成りすましていたということ以上の大きな嘘など、あるはずもない。
 私は彼女の言葉を信じた。
 そして、彼女の唇に、私の唇を近づけようとした。
 しかし、その時……。

「殿下! 大変です!」

 兵が部屋に入ってきた。

「いったい何の用だ!」

「今すぐ、牢獄に来てください! 大変なことになってしまいました!」

 私とヘレンは、兵について行き、エマが捕らわれている牢獄へ向かった。
 牢獄に着くと、私は中の様子を見た。

 そこには、驚くべき光景が広がっていた。
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