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(※ハンク視点)
私はフレデリックに呼び出され、彼がいる病院へ向かっていた。
こういうシチュエーションが、以前にもあったな、と思い出していた。
ウィリーに借金を迫られていた時だ。
しかし、彼とフレデリックは違う。
フレデリックは、ギャンブルはしないと言っていた。
たぶん、仕事のことで何か相談があるのだろう。
新しい器具が欲しいとか、そういうことのための金なら、べつに問題はない。
おそらく彼が私を呼びだしたのは、そういう相談があるからだと思う。
しかし、そうではなかった。
私は彼の部屋に入り、彼から衝撃的な言葉を聞いた。
「あの、実はお願いがありまして……、昨日、ギャンブルで大負けしてしまったのですが、その……、借金を背負ってしまったんです。それで、返済期間までにまとまったお金を用意しなければならないのですが、お借りすることはできませんか?」
「貴様は、何を言っているんだ!」
私は思わず怒鳴り散らしていた。
「ギャンブルで負けただと!? 貴様、ギャンブルはやっていないと言っていたではないか! 神に誓って嘘ではないと、言っただろう!」
「いえ、言っていません。あ、もちろん、神に誓って嘘は言っていませんよ。私の言葉を、正確に思い出してください。私は、ギャンブルはやったことがない、と言ったのです。その時点では、本当にやったことがなかったので、嘘ではありません」
「何を屁理屈を言っているんだ! どうしてギャンブルに手を出したりしたんだ!?」
「すいません。先日、旧友に誘われまして、その日は大勝ちしたんです。それで、自分にはギャンブルの才能があると思って調子に乗っていたら、見事に負けてしまいました」
「ふん、そんな馬鹿な奴に貸す金などない! ほかを当たれ。そして、二度とギャンブルはするな!」
「そんな……。あなたしか、頼れる人がいないんですよ。ギャンブルは金輪際やらないと約束しますから、どうか……」
フレデリックは頭を下げた。
「……今後はギャンブルはやらないと、神に誓うか?」
「え……、あのスリルが楽しみなので、それは……」
「神に誓うか!?」
「はい! 神に誓います! だからどうか、お金を貸してください!」
「しかたがない、今回だけだぞ」
「あ、ありがとうございます!」
フレデリックは笑顔になった。
私は大きくため息をついた。
誰にでも、間違いはある。
彼も反省して、今後はギャンブルに手を出すことはないだろう。
ウィリーの奴が、特別だっただけだ。
普通は失敗から学び、二度と同じ過ちは繰り返さないようにするものである。
そう思っていたのだが……。
私はフレデリックに呼び出され、彼がいる病院へ向かっていた。
こういうシチュエーションが、以前にもあったな、と思い出していた。
ウィリーに借金を迫られていた時だ。
しかし、彼とフレデリックは違う。
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たぶん、仕事のことで何か相談があるのだろう。
新しい器具が欲しいとか、そういうことのための金なら、べつに問題はない。
おそらく彼が私を呼びだしたのは、そういう相談があるからだと思う。
しかし、そうではなかった。
私は彼の部屋に入り、彼から衝撃的な言葉を聞いた。
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私は思わず怒鳴り散らしていた。
「ギャンブルで負けただと!? 貴様、ギャンブルはやっていないと言っていたではないか! 神に誓って嘘ではないと、言っただろう!」
「いえ、言っていません。あ、もちろん、神に誓って嘘は言っていませんよ。私の言葉を、正確に思い出してください。私は、ギャンブルはやったことがない、と言ったのです。その時点では、本当にやったことがなかったので、嘘ではありません」
「何を屁理屈を言っているんだ! どうしてギャンブルに手を出したりしたんだ!?」
「すいません。先日、旧友に誘われまして、その日は大勝ちしたんです。それで、自分にはギャンブルの才能があると思って調子に乗っていたら、見事に負けてしまいました」
「ふん、そんな馬鹿な奴に貸す金などない! ほかを当たれ。そして、二度とギャンブルはするな!」
「そんな……。あなたしか、頼れる人がいないんですよ。ギャンブルは金輪際やらないと約束しますから、どうか……」
フレデリックは頭を下げた。
「……今後はギャンブルはやらないと、神に誓うか?」
「え……、あのスリルが楽しみなので、それは……」
「神に誓うか!?」
「はい! 神に誓います! だからどうか、お金を貸してください!」
「しかたがない、今回だけだぞ」
「あ、ありがとうございます!」
フレデリックは笑顔になった。
私は大きくため息をついた。
誰にでも、間違いはある。
彼も反省して、今後はギャンブルに手を出すことはないだろう。
ウィリーの奴が、特別だっただけだ。
普通は失敗から学び、二度と同じ過ちは繰り返さないようにするものである。
そう思っていたのだが……。
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