両親から溺愛されている妹に婚約者を奪われました。えっと、その婚約者には隠し事があるようなのですが、大丈夫でしょうか?

「悪いけど、君との婚約は破棄する。そして私は、君の妹であるキティと新たに婚約を結ぶことにした」

「え……」

 子爵令嬢であるマリア・ブリガムは、子爵令息である婚約者のハンク・ワーナーに婚約破棄を言い渡された。
 しかし、私たちは政略結婚のために婚約していたので、特に問題はなかった。

 昔から私のものを何でも奪う妹が、まさか婚約者まで奪うとは思っていなかったので、多少驚いたという程度のことだった。

「残念だったわね、お姉さま。婚約者を奪われて悔しいでしょうけれど、これが現実よ」

 いえいえ、べつに悔しくなんてありませんよ。
 むしろ、政略結婚のために嫌々婚約していたので、お礼を言いたいくらいです。

 そしてその後、私には新たな縁談の話が舞い込んできた。
 妹は既に婚約しているので、私から新たに婚約者を奪うこともできない。
 私は家族から解放され、新たな人生を歩みだそうとしていた。

 一方で、私から婚約者を奪った妹は後に、婚約者には『とある隠し事』があることを知るのだった……。
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