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10日と少しが経った頃。

私とお姉様は、リックベルと一緒に馬車でアードラー公爵家の王都本邸に来ていた。

手紙をやり取りし、リックベルの同行がしぶしぶながらも了承され、リックベル本人は馬車の中で不機嫌なご様子だ。


もちろん私は、可愛く着飾ったお姉様を横抱きにして、お姉様の横髪を軽く弄っている。

私と同じ淡い金色の髪は、細く、柔らかくて手触りがいい。時間なんて忘れて、いつまでも、触っていられる。

時々、くすぐったそうに眉を寄せるお姉様は、私の癒しだ。



「クリスお姉様。そろそろ着きますよ。辞めて差し上げたらどうですか?」


「もう?…名残惜しいですわね」


「……そうですか。」


「……」

一瞬、目の前にいる弟を揶揄いたい気持ちが湧いたが、馬車の窓から、目的地の屋敷が見えたため、気持ちを切り替えることにした。

こんなやり取りしかできていないが、これでも私は弟にも愛情がある。お姉様に対するモノよりは数段劣るが。


さあ、親友に会いに行こう。入学前の最後のお茶会だ。少しでも、建設的な会話ができる様に、私も力添えしよう。









「ご機嫌よう、クリス!お姉様も、顔色は良さそうですわね!天気も宜しいですし、お茶会は庭園のガゼボに致しましょう。」


「ご機嫌ようステフ。ええ、それは楽しみですわ。」

玄関にて、ステフが出迎えてくれた。私達が先に降りた為、彼女は満面の笑みで声をかけてくれた。

が、すぐ後に降りて来たリックベルには若干作り笑顔を貼り付けた様に見えた。

「ステファニー嬢。本日はお招き頂き有難うございます。」


「リックベル様もご機嫌よう。お越しくださり有難う存じますわ。今日はお互いに、楽しいひと時になりますよう宜しくお願いいたしますわ。」



「ええ。存じております。」

形式的な挨拶に、今までのがあるため釘を刺した彼女は、早々に切り替えて明るい声で手招きする。


「では、ご案内いたしますわ。ついてきて下さいまし。」


ステフの案内により、公爵家自慢の庭園が一望できるガゼボに到着する。
お姉様の為にベッドソファも設置されており、可愛らしいクッションが何個か準備されていた。

早速そのソファに行き、お姉様をゆったりと寝かせる。

その間に、公爵家のメイドがお茶と菓子をテーブルに並べていく。ハーブティーの爽やかな香りが、庭園の香りを合わさり、思わず笑顔になる。さすが最上位貴族、センスが素晴らしい。


「どう?このハーブティーはわたくしのお気に入りなの。貴女にも気に入っていただけると思っているのだけれど、どうかしら?」


「ええ、流石ですわ。」


「ふふ。ご満足いただけた様でなによりですわ。」


「さ、リックベル様もこちらにお掛けになって下さいまし。」


「有難う御座います。」


私も、お姉様の隣に座って、お茶会は和やかに始まった。

初めは、テーブルの甘味についての説明。

「本日は、シェフに頼んで新作を作らせました。あとは定番のものを何種類か、それと、王都で人気の甘味を集めてみましたわ。」


「ああ、このケーキはあの人気店の新作ではないかしら?」


「ふふ、流石はクリス。その通りですわ。あまりに人気なので、もしかしたら用意できないかもと執事に苦情を言われたほどですの。間に合ってよかったですわ。」


ふふふ、と少女達の笑い声が続く。リックベルは、静かにその話を聞いていた様に見える。

暫く話していると、隣のお姉様がモゾモゾと身を起こした。
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