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新しいお家はストーカー邸
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しおりを挟むババロくんが案内してくれた部屋は、かつて私が使っていた南側の奥の部屋だった。
夫婦であったものの、彼はほとんど公務や訓練で屋敷にはおらず、生活時間も違ったため、寝室は別々にされていた。
一人で寝るにはあまりに大きすぎるベッドに、お留守番のあの子たちが喜びそうなフカフカのソファ。
天井に吊るされたシャンデリアは、売ればきっと私達が遊んで暮らせるような額になるだろう。
「陛下がここを使ってくれて構わないと。」
「驚くほど変わってないのね。」
この屋敷の家具や壁紙のデザイン、どうやら全て私がいた頃と何一つ変えていないらしい。
だが、どんなに大切に扱っても寿命がくるはずなのに、この家具たちは色あせて特有の古めかしさも放っていない。
正直気味が悪いほどだ。
前世での昔の人が無常を好む理由が分かった気がする。
「陛下のご意向で、この屋敷全体には保護魔法がかけられています。ホコリやチリはつきませんので掃除の必要はありません。」
保護魔法と聞いて、ハジメはピンときていないようで首を傾げているが、私は口をつぐんだ。
魔法自体が、この国では珍しいものである。
しかも保護魔法と言った、保存系、回復系、時空系のものは三大魔法だ。
グッと私が眉をしかめれば、ハジメが察したようにババロくんに尋ねた。
「魔法とやらは、このあたりじゃ滅多にお目にかかれるものじゃ無いと思うが?」
「数ヶ月前東の国からの流れ者で、錬金術という奇妙な技を使える子供が訪ねてきたんです。魔法はその子供が。なんでも、赤い石を探しているとかで……。」
その言葉に、息を飲んで顔の筋肉がこうばった。
間一髪、ビーくんに呼ばれたババロくんが部屋を出て行って、顔を見られることはなかった。
だが、勘も感覚も鋭いハジメにはバレてしまったようでじとりと睨まれた。
「誰かにそっくりで、本当に気ままな流れ者ですね。」
「あの子ったら……。」
突然、家を飛び出したかと思えば、まさかこの国に来ていたなんて。
はぁとため息を吐くと、ハジメが持っていた荷物をドサっと下ろした。
「お腹が空けば、帰ってくるだろうと思ってたんだけど……」
「どこの世界に、半年も放置する親がいるんですか?」
ハジメの言葉に、確かに些か放し飼いにしすぎたのかもしれない。
私自身、窮屈な幼少期を過ごしたから、あの子はのびのび育てようとしすぎた。
反省……。
「幸い、あの飽き性は一度来た国にはしばらく来ないだろうから、巻き込まれたりすることはないわ。」
「しかし、探し物とは?」
「知らない。あの子突拍子なさすぎて何考えてるかわからないの。」
「そっくりじゃないですか。」
自由奔放や、突拍子がないのも私だけの性格ではないだろう。
まぁ、失うものが少ない分私の方が一歩リードしているが……。
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