いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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819:手厚く保護

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台所に向かいながら、話に参加。

パイ類も作っておこうか。
あとは、ゼリイ。また骨を煮詰めないといけないな。
うまくすれば、トラの骨か油がつかえるかもしれんな。
ジャンクなものも。
いろどりも考えないとな。

甘い匂いが漂ってきている。
こうなるとワイプは集中力にかけるはずだが、
今は目の前に大量の甘味と食料があるので、
問題ないようだ。

ワイプとオート院長に樽をわたして戻ってきたカップ、
そしてオーロラ。
次々に食べ物が無くなっていく。

「オーロラ?いつでも好きなだけ食べられるのだから、
無理して食べるな?腹が膨らみすぎると動きが鈍くなるぞ?」
「!ルグとモウにも言われた!」
「そうだろ?」
「でもな、モウも早いんだよ!
ルグにな?モウ様!モウ様!って注意されてた!!」
「あはははは!それで?愛しい人は何と?」
「よく噛んでるからだいじょうぶって!
そうだ、よく噛まないと!
顎が鍛えられないって!顎なんか鍛えたことないよ!」
「顎?鍛える?何のために?」
「ハナラビがなんとか?あと、肉を食いちぎれるとか?」
「歯並び?肉を食いちぎるというのわかるが。」
「あと、踏ん張るときにぐって噛むだろ?
その時に歯と顎が丈夫じゃないといけないって!
これはルグもすごいって褒めてた。
で、あとはーって考えて、
なんか真っ赤になって照れてたぞ?」
「ん?ルグに対して?」
「いや、なんか思い出してだと思う。
1人で騒いでた。」


おかしい。
そんな感情感じなかった。
門番と話していた時か?
すべての関連が遮断された?


ガイライから銃撃者の話。
一般人か?
私が送った気も気付かなかったのか。
気を読めるものだけが分かる手度だったから。
ガイライの殺気を受けて平気なのは命拾いしたな。
いや、かなり手加減はしたということだな。
でないと、そのまま死ぬ。


「匂いな。カレエの匂いが強くて他のは気付かなかった。
ここの匂いは避けれるようにはなったぞ?」
そしてカレーの話。
アバサとルーの話をしながら、
その匂いだけ避けることができると話しておく。

その時私がクロモ殿のことを気付かなかったこと、
愛しい人の照れていた感情に気付かなかったことを。

オーロラの話も。
リリクの名の守りの話はニックでも知らなかったようだ。
そもそもオーロラ自身が知らなかった。

「そうだな。テルマなら知ってるだろう。
が、あれもルポイドの元首だったんだ。
自分の国のこと優先だからな。
そこだけ気を付けろ?」
「わかっている。」
「オーロラの状況は分かりました。
余程、外部との接触を断っていたことなんでしょうね。
命の石のはなしもそうだ。
その縛りは今はないと考えていいんですね?
しかし、その縛り、文字が読めないね、それが無くなったとしても、
あの手紙を読んで、おそらく完全な配下というか、
最初の契約書に合った道具にするつもりなんでしょうが、
なりますか?そして、今後そうならないと言えますか?」
「わたしのシクロスト、か?
これが言霊、次の縛りになるんだろう。
シクロストという名は我々の中で、オーロラを鍛錬した奴のことになっている。
オオイは最初の男だ。
彼女がそう決めてしまった。ややこしいからなんだがな。
それをオーロラもそう認識している。
オーロラは、すでに、ルグのオーロラだ。
先にな。だからその言葉は何の意味もない。
それに、愛しい人が宣言している。
オーロラ、おそらくルグにもそうだろうな。
こちらまでかなり強い言霊で聞こえたから。

この者の縛りは全てなくなった
砂漠石の契約、その他の呪い
この者に対する理不尽な契約、呪いは一切ない
ただ、誰もが願う、願いのみ
生をつとめよ
この者は己の意志のみで未来にはばたく
何人もそれを妨げることはない


とな。
これからは、すべてオーロラの意思だ。
そこにルグの守りも入る。
言葉の恩恵もあるだろうし、後で思い出した、気付いた縛りも、
相手に返る。」
「かなり、手厚く保護していますね。それは?」
「みな同じだぞ?彼女の世界は全て。
オーロラには説明しないと納得しないからだろ?
まだ、彼には移動と呼び寄せの話をしていない。
いずれするという契約をしているだけだ。
移動と呼び寄せができるのなら、ここまで説明をしないだろ?」
「え?そんな契約をしたんですか?
どうして?」
「そうだな?どうしてだ?」
「・・・・ルグが教えてくれたんだ。
モウに説明されて納得できればできるって。
でも、これから先誰にもしないだろうっていわれた。
今までのことを話すって約束で、その話をしてくれるように契約したんだ。
契約書も作った。」
「契約書!!なんてものを作ったんですか!!
盗まれたりしないでしょうね?」
「燃やした。それが条件だった。」
「よかった。」
「このことですね、さすがモウ様だ。」
「その話はいつ聞くんですか?」
「・・・・。答える必要はない。これはモウと俺の契約だ。」
「偉いぞ!オーロラ!」
「マティス君!黙って!
いいですか?それはいつでもいいです。
ただ、廻りの状況だけは注意して。
誰にも聞かれてはいけませんよ?」
「聞かれてもどうにもならないぞ?」
「あたりまえですよ。
しかし、聞かれて、移動と呼び寄せができるということが、
モウがなんらか施していると思うでしょ?
あなたに説明してもできないといっても理解できないでしょ?
そういう輩は。時間の無駄だと切って捨てるでしょうが、
それが廻りまわってセサミナ殿、我らが王にいけば?
モウが迷惑をかけると悲しむでしょ?」
「おお!ワイプがまともだ!!」
「いいから!そこだけ気を付けてくださいね?」
「わかった。」




「どうした?」
「撃ったものに持たせた音石が帰ってきた。」
「マティス君?それ、どうやって戻ってくるのですか?」
「砂漠石と一緒に持たせたんだ。
気付かれないように。
記憶できなくなったら戻る、
見つかりそうになったら戻るようにと頼んでいる。」
「!なるほど!」



『ありがとう。
聞こえた音を大きめの音で教えておくれ』





ガタ
ダダダダ

ガサガサ













「なにもしゃべらないな。あの女なら言いふらしてると思うんだが?」
「これ、今戻ってきたということは、
撃たれてから今までの音を聞くということですか?」
「いや、無音は記憶しない。
あの大きさなら、もっと記憶はできる。
見つかりそうになったから戻ってきたんだ。」
「マティス様?
撃ったものに持たせたんですね?」
「そうだが?」
「これ、おそらく、撃ったもの、モウ様を撃ったもの、
つまり銃そのものにくっついたのでは?」
「あ!」


彼女が言う大失敗の巻きだ。



「撃ったもの。
弾を撃ったものですね。このものが銃になるので、それに。
銃で弾を撃った人間となれば、撃った人になります。」

ツイミが説明してくれた。
そうか、私は撃ったものにくっつくようにと。
銃本体になるな。

「面倒だな!わかるだろ?普通?」
「すべて指示しないと。
どうすればいいかの判断もできない。いや、できないのではなくしない。
なにも知らない部下に指示すると思ってください。
中途半端な指示だと
希望する結果は出ないのといっしょです。」
「モウちゃんもそんな風にしてる?言霊だけど、結構なんていうか、
いい加減だぞ?」
「適当でいいんだよ。適当に、いい感じに。
これが彼女のお願いの言葉だ。
が、指示はそうだな、事細かにしているぞ?」



「静かに!小さな音は出している!」
「聞こえない!」
「マティス!もっと大きくできないか?」
「あまり大きくすると壊れる。」
「音が出るの?
なんか紙?斜めに丸めて?それで、小さい方にそれを。」

オーロラが手近にある紙を丸める。
片側は大きく、片側は小さく。クリームの絞り口のようだ。

大きく聞こえた!

「素晴らしいな!!」
「静かに!!」

皆が絶賛しようとしたが、音石の方が先だ。






カタカタ






「銃なら袋に入れて誰かが持ち出したはずだ。
それか?」

・・・・・

「馬車に乗ったか?街の音は聞こえる。」
「とまったな。」


・・・・・・

ガイライでやっと聞こえる音だ。
私では何かが聞こえる止まりだ。


---誰か出てこい!!
---モウ様はご無事なのか!!
---スダウト家のものだ!ここを通せ!!
---タレンテ家だ!医家を連れて来たぞ!
---中央院です。御面会お願いいたします!
---誰もいないのか!!
---天文院だ!出てこい!!



「館前に来ていた者たちだ。
愛しい人がムムロズに会いに行っている間だな。」
「誰かわかりますか?」
「すべての顔はシャシンをしている。
馬車で来ていたものは分からないな。
馬車と御者はシャシンをしたが。」
「それで十分。」


ガサ
ドタン

-どうだった?
-会えないようですね。
-無事かどうかもわからないのか?


!この声!


「・・・クロモだ。」


-誰も応対にでないようです
-そうか。あまりここで騒ぐのも良くないな
-戻ろう
-きっと、あの笑顔で大変だったんですよーって
-笑って話してくださるにちがいない
-わかりました



ガタガタ

ゴト

-これは?










「これで戻ってきたようだな。」
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