いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
791 / 863

791:冷気

しおりを挟む
眠い。
それだけだ。

専属の御者がいないので、ルグとオーロラが
馬車を取りに行っている。

「セサミナ殿!」
「クロモ殿?どうされました?
大型の冷蔵庫と冷凍庫に不具合でも?」

ボット肉のことのようだ。
サイの肉以上にうまい部位があったと。
それで売り上げがあがった。
大型冷蔵庫、冷凍庫もそれを後押ししていると。
礼を言いたいと。


「礼を言うのはこちらのほうだ。
クロモ殿の所に納品済みだと言えば、
皆買ってくださる。クロモ殿が買うのなら間違いがないとね。
ありがとうございます。」

いやいや、こちらこそ。
とんでもない、それはこちらです。
と、不毛な会話を続けている。
眠い。
ちょっとフラフラする。

「モウ殿?その?なにか具合が悪そうですが?
まさか先程の?」
「ああ、クロモ殿。いまは、わたしの護衛なので、返答はご容赦を。」
「そ、そうですね。」
「ええ。また、新しくなった屋敷に来てください。
いつでも歓迎しますよ。」
「それはうれしい。では。モウ殿、マティス殿も失礼します。」

(すまぬ、セサミン。眠いの)
(ええ。もう少しです。我慢してください)
(うん)


セサミンは各領主と雑談。
そういうの大事だから。

ドーガーとアバス、ルーがついている。
もちろん、わたしとマティスもだ。


これを今までしてこなかった、若き領主セサミナ。
大問題だ。

水清ければ魚棲まず

なにもドロドロになれとは言っていない。
駆け引きは必要だ。
己を持つことが大事。


銃購入の話もしている。
が、何も頭に入ってこない。
ダメだ、気を引き締めないと。

領国の馬車がやってきて順次帰っていく。
それぞれが各館に行き来きして商談をしていくようだ。
コットワッツに戻るのは合わさりの月前になりそう。

スダウト家とタレンテ家の方々も帰ったようだ。
残るのは軍隊長たち。
ニックさんにはガイライが、
あの2人には、あの時の従者がそれぞれついている。

隊長同士での話があるんだよ、と半ば強引に持っていってる。
それを両家が許すのは傍についている従者が、できる人たちだからか、
両家として軍隊長を切って捨てることができるからなのか?



ダメだな。ほんとダメダメ。
眠い。最後に寝たのっていつだっけ?

ムムロズさんもこっちに来てるはず。
返事ももらわないと。
100万リングの商談も、カップ君の友人の話も聞かないとね。
することはたくさんあるんだ。
オーロラはすでにルグの家族になってるようだけど、
仕事の契約はきちんとしないとね。



「お待たせしました!」

領国では最後だった。
大きいから最後にされたみたい。
そんなの関係ないんじゃないの?

「愛しい人、あなたも馬車に。」
「ダメだよ。護衛だもの。」
「姉さん?あとは帰るだけです。中に。」
「・・・ごめん。そうさせてもらうね。」
「ドーガーは中に。ルグはそのまま、御者を。
オーロラは私と一緒で後ろに。」

情けないが、睡魔には勝てん。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


(セサミナ?愛しい人が限界だ)
(わかってます。中に入ってから戻ってください)
(それはできないが、中で少し寝かせてくれ。
お前から言ってもらえれば従うだろう)
(わかりました)



アバサ、ルーが乗り込み、セサミナ、ドーガー。
そして今にも眠りそうな愛しい人だ。


「愛しい人?ほら?」

抱きあげようと前に廻った。







パーン






私か?愛しい人か?



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


銃撃されたら?
そうだね、
まず、どちらかが撃たれた場合ね。



自分を中心に冷気を放出。
撃ったであろう場所を睨む。
そこから逃げる者に音石君のお土産。
落ちた血は砂を掛け、念のために豚の血と交換。

あとは?
ああ、気は出さない?



「笑ってしまいそうだな。」
「それは鍛錬だね。
でもよく考えたら、マティスを狙ったってことだけでダメかも?」
「そうだな。それはあるな。気を出さないのは?」
「だって実際そんなことになったらえげつないよ?
そうだと廻りも認識していると思う。
中途半端にあげると嘘じゃね?って逆に勘ぐる。
だから何もなしだ。あれ?って思うぐらい。
気が上がらなかった、だから嘘だっていい切れない。
まったく出なかったからだ。
人間びっくりすればものすごく冷静になるもんだ。
そして、気がわかるというのは少数。
んー、でも、出してもいいかな?
あくまでも冷静にね。死んだことにするわけじゃないんだし。
冷気は素人さんにもわかるように出すと。」
「冷気はどこから?」
「んー、大型冷凍庫の?移動?
それ専用を作っておこう。
普段はアイスクリーム専用で!無駄がない!」
「そうか。撃ったものを始末しないのか?」
「あのねー、即殺ってのはある意味親切なんだよ?
反省と後悔、悔い改めることなく終了するんだ。
そんな、なまやさしいことは許さんよ?
見られた!気を飛ばされ、認識された!
怖い!って思ってもらわないと。
恐怖で眠れなくしてくれるわ!!」
「・・・・・。」
「練習しとけばいいかな?良し!頑張ろう!!」
「・・・・練習か。」
「うん!!だってあたんないんだもの。
これは、どっちかが撃たれて、それを目の当たりにしたほうね。
撃たれた時の練習もしないと!」
「じっとしとけばいいのだろ?」
「膜張って、心音を徐々に小さく聞こえるように?
動いちゃダメ!もちろん笑っちゃダメ!
死んだふりは難しいよ?」
「そうか?」
「・・・・・・。」
「どうした?」
「膜張ってさ、横たわってさ、
プゥーってしたらほんとに死んじゃうかもしれんね。匂いで。」
「・・・・・。」
「あ!ごめんなさい!
ダメだった?マティス?ごめん!下品だった?
ごめんなさい!
マティス?マティス!!!」

「・・・・・笑わない。」
「え?うん、笑わないようにね。うん。」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

伯爵様の子供を身篭ったの…子供を生むから奥様には消えてほしいと言う若い浮気相手の女には…消えてほしい

白崎アイド
ファンタジー
若い女は私の前にツカツカと歩いてくると、「わたくし、伯爵様の子供を身篭りましたの。だから、奥様には消えてほしいんです」 伯爵様の浮気相手の女は、迷いもなく私の前にくると、キッと私を睨みつけながらそう言った。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...