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781:尋問
しおりを挟む「ないものはない!」
「でしょうね。すべて奥方たちが持っていったと。
そうですか。それは、こちらでできるだけ回収します。
で?あなたは?戻って何をしに?」
「領主の務めを果たしたい。」
「残念ですね。それは遅い判断です。
税金を払えない時点で、あなた方一族が領主に戻ることはないと、
説明してます。聞いた聞かないの話ではなく、決まりです。」
「わかっている。」
「それは良かった。では、就職先のあっせんですか?
いまは、それなりに仕事が有りますよ?
なにができますか?文字は読めて、計算は?お得意?」
「違う!」
戻ってきた領主、スホームは皆の前で話がしたいと言い出し、
では、資産院が公開しましょうと、
公開尋問劇場。
師匠とオート君が聞いていきます。
傍にはツイミさんが。
「えーと。もう一度お聞きしますね?
まず、今までどこにいましたか?」
「わからない。」
「どうして、領国をでたんですか?」
「わからない。」
「・・・・名前と前職、なにをしていたか言えますか?」
「ナソニール領主、スホームだ。」
「元ね?逃げた、統治者としての仕事を放棄したという認識はありますか?」
「ある。申し訳ないことをしてしまった。ニバーセル王に謝罪したい。
そして我が領民にも。」
「そうですね。それは個人的にしてください。
あなたが、ナソニールにいる領民のことを自分の民だという権利は有りませんから。」
「・・・・。」
「では、その奥方たち?
もう少し詳しく話してください。なにを持っていったのか?
どこに行ったのか?奥方のご実家の方には連絡してますが、
関係ないと言われたんですよね。
庇えば、その一族も返済義務が生じますから。
他にどこに行ったか?
知ってるだけお教え願いますか?」
「そうだな、、、、」
ほんと何しに来たんだろ?
隠し財産で払いますってことでもないしね。
どこに行ったか?奥方の実家、
その母親の実家、自分の母親の兄弟の実家。
資産院が把握しきれていないところもあったのか、
書き出し、すぐに指示していく。
奥方たち自身の話をしていく。
「最初の妻はマトグラーサの豪族の娘だ。
こっちに来てから、マトグラーサにある家は没落。
持参金もすぐになくなった。
価値のない女だ。
妻は10人。産んだのは皆女だ。役立たずだ。
誰も男を産まない。
男がいるんだ、わたしの手足になる。
最初の娘が大人になったから、それと婚姻した。」
(ツイミさん、カップ、チュラル、ルビス。みないるね?)
((((はい))))
(心乱すな。そんな価値もない)
((((はい))))
(あれ?ソヤは?)
(計算室で陣頭指揮を)
(・・・・そうなんだ)
「それがやっと男を産んだ。
ツイミだ。あれは、長子だ。」
みんな知らないはなしだ。
「ほうほう!それで?」
師匠は話を進める。
皆に聞かせるような話?
誘導していってるけど?
そのほうが、ハッキリと手が切れるからか?
「それから、娘たち、姪たちと婚姻。
産む子供は皆男だ。
2人目の男を産んだ奴が、ツイミと産んだ女を追い出した。
後を継ぐ男はたくさんいる。資産のない女に用はない。
なのに、他の男は皆間抜けばかりだった。
その追い出した女が死んだ。
それで、ツイミを呼び戻したんだ。
追い出した時、全ての権利は失っているのに、
よく働いた!こういうのがいるんだ!
一番賢い。が、賢すぎる。
もっと、わたしを盛り立ててくれないと!
だから、もう一度、子供を産ませようとした。同じ女に。
死産だと!
他の女が産む子供も皆、役立たず!役立たず!
だが、やっと、利発な男が産まれた。
3歳で、あらゆることを理解した。
賢すぎるのは逆に困るが、
もう一人いる。
反発しあうように仕向けてうまく利用するんだ。
だがどうだ!また死産だと!
役立たず!役立たず!役立たず!!
女どもは金を使うだけで、まともな子は産まない!!
わたしの兄弟たちがわたしの資産を奪おうとしているのに!
兄弟ではなく、わたしの息子たちで領国を納めないといけないのに!!
だがな、最後はわたしの役に立つ。
いい子供達だったよ。産んだ女、ああ、妻たちもな。」
「そうれは良かったですね。それで?」
「いちばんの役立たずはツイミだよ!
こいつが正直に帳簿をつけるからだ!!」
「えー、その発言だけで、強制労働ですよ?」
「あははははは!誰がそんなことをするものか!!」
「え?反省してないんですか?」
「誰がするか!!
わたしの子供はみな最後は役に立つんだよ!
それはツイミもだ。
ツイミ!!お前が放棄したナソニールでの権利を
戻すぞ!だからお前がナソニール領主だ!!」
『契約破棄だ!!』
小さな石で宣言した。
それでできるなら、最初の契約はどんな小さな石でしたの?
本人がそれで納得していれば、小さいものでいいということ?
「さ、ツイミ?ナソニールに帰ろう。
税金はお前が領主になったことで帳消しだ。
そうだな?」
「そうなりますね。ナソニールは長子に権利がある。
が、不正を働いていた時に彼にはその権利がなかった。
なので、負債の責任もない。
うまい方法だ。すぐにでも改正を。」
オート君がなにか書き込んでいる。
即時発行できる法なのかな?
「あははははは!が、それはこれからだろ?
遅いんだ!ツイミ!
とりあえず、館を新しくしよう。
あの館は臭うからな!」
みながツイミさんに注目する。
逸材だとセサミンも言っていた。
優秀なことを皆知っている。
実質ナソニールの運営者。
指示した内容が次々返ってくるが、
あまり結果は思わしくないようだ。
師匠の配下達が動いているのだろう。
暗部もどきのお仕事のみなさまだ。
「ダメですね、こちらで把握しているものばかりです。
が、もう一度あたってみます。
わたしが知っていただけではどうにも。
元領主がここで名を出してくれたのは良かった。
それを理由にもう少し踏み込めますから。」
「そうだな。
はー、末までに一度切をつけよう。
でないと雨の月は皆気が散るから。」
「ふふ。それ、オート院長自身のことですよね?」
「・・・お前はどんどんワイプに似てくるな。」
「院長!副院長!これ、強制労働でいいですか?」
「そうなるな。計算できる?だめ?
じゃ、いいか。そのように手続きを。」
「わかりました。」
「なにを言っている?
ツイミ!聞こえないのか!!
父が言っているんだぞ!!」
「これです。連れて行ってください。」
屈強な人たちが入ってきた。
このひとたちはどこの所属なんだろ?
「領主の父親なんだぞ!強制労働者にはならない!
放せ!ツイミ!!こいつらは不敬罪だぞ!!」
「領主の親族は領主が拒否すればならない、ですよ?
でも、あなたの親族は領主でもないし、拒否もしていない。」
「ツイミ!ツイミ!
なんだ?不服なのか?
ああ!母親のことか?まだ生きているのか?
呼寄せればいいから!早く言ってくれ!
宣言だ!早く!!
そしてこいつらは不敬罪だ!!」
ツイミさんは書類から目をあげ、わめいている物体を、
なんの感情もない目で見つめ、
そしてにこりと微笑んだ。
「ツイミ!」
スホールのうれしそうな顔。
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