いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「これは、ダメだな。」
「ああ、申し訳ない。いらぬ話だった。
それにヒガス殿、助かった。
もう少しで資産をすべて金に買えるところだった。
わたしも、常に対等な取引を望んでいる。
礼にはならないが、焼き菓子をもらってくれ。
コーヒーに合うと好評なものだ。
日持ちもするが、半月までは持たないからな。
センボ殿、リギン殿ももらってほしい。」

3人は焼き菓子をもらってうれしそうだ。

「これが噂の焼き菓子ですね。
前回の軍再編の話が出たときに
あなたが配っているという話は聞いています。
タフトも同じような菓子を出したと聞いたので、
食べてみたのですが、噂になるほどのものではなかった。
あなたからもらったというものが、
全く違うと言ってましたしね。
門番たちも食べたと。それは、護衛モウから、
もらったと。
どこで買っているのですか?」

ヒガスが聞いてくる。
リギンは包みを開けようとしている。
甘味はミタラシのほうがうまいけどな。

「噂になっているのですか?
ああ、リギン殿、そのままお持ち帰りください。
油紙で包んでいる方が日持ちはしますから。
ニック、背負子から出してくれ。クリームもあるだろ?
紅茶もいいそうだがな、紅茶はうまく入れられないんだ、すまない。」
「道具はあるのか?
では、わたしが入れよう。」

センボだ。
背負子の中の紅茶セットと、クリームはこれ?
茶葉は?
わからん。
出せばいい?あ、お願いします。

「ありがとうございます。
これは、モウモウ商会から。
マティスとモウの店ですよ。
主、モウの店ですね。
作っているのはマティスだと思います。」
「やはり。
どうすれば買えるのでしょうか?」
「分けてもらっているんですよ。
うまく事が進むようにと、持たされているのです。」
「それは、モウ殿が軍事に興味があると?」
 「ああ、主としてではないのです。
わたしは、モウを母と思い、
うれしいことに、モウも息子だと言ってくれる。
軍、仕事ですね。そのことで心配を掛けているです。
息子がどんな仕事をしていても息子には違いないと。
何をやっても心配になるのが母親だからと。
世話になった方々に食べてもらえとね。」
「母ですか。」
「ええ。いくつになっても、母には頭が上がらないものなのですね。」

茶器もそれなりの物が入っている。
これは本当にだ。
それらを使い、お上品にセンボが仕上げていく。


「いい茶葉ですね。
これはデルサートル産だ。
これは?」
「ああ、それも、モウからのもらい物ですよ。
結構安く買うことができたと。」
「広範囲ですね。
砂漠の民は足が速いと聞くが、それでも、移動速度がおかしい。
マティスが移動できるというのは本当ですか?」

笑顔で聞いてくるが、
目が笑っているようで、笑っていない。
その点、リーズナは完全に笑っている。
そこがさすがと言うことか?


「コットワッツ領主セサミナ殿ができるというのは聞いています。
本人も否定はしていなかった。
変動後に領主の力に加わったと。
それと同じ事がマティスにもできると理解しています。
確認はしていませんがね。
すればするだけ、距離を置かれる。
主の伴侶で、元部下だ。警戒はされたくない。」


「これは?」

さっきあれだけ食べていたのに、
また、食べ始めているリーズナが、
小さな入れ物の中身を見ている。

「紅茶には土蜜だとか。
これは買いましたよ。マティスが拝領した土地で
取れるのとか。」
「あ!ガイライ!それをいうとマティスの土地の税金が
あがるぞ?マティスもモウちゃんもそれに関しては、
ワイプの弟子だ、文句は言わない。
が、セサミナ殿はうるさいぞ?」
「確認できればだろ?
一度訪れてみよう。
立ってられないほどの風があるから、
匍匐前進で進むらしい。
で、笑いがこみ上げると、モウは言ってたぞ?」
「笑い?なんだろ?」


サギョウグミ登場の型みたいなものか?

みなもそれぞれで想像して首をかしげている。
話を逸らすにはもってこいだな。

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