711 / 869
711:樹脂蜜
しおりを挟む「いや、あの、
あまりお時間もないようなので。
そうでしょ?ガイライ?」
「あ、ええ。急ぎましょう。」
「え?そうなの?じゃ、後で聞こうか。
が、リーズナは残念だな!
どうなるのか考えて寝不足になればいい!!」
「ん?考えるまでもない。
この話の大筋、モウが言いたいことは心の中は
だれもわからないし思うのは自由だということだろ?
迷惑かどうかも話さなければわからない。
話したあとのことは、人それぞれということか。
要は己の心の中は己で決めればいいということだな?」
「はい!その通りです!」
すごい!わたしの言いたいことがわかってくれてるんだ!!
お母さんだ!!
「それに、その最後の出てきた男は、
そうだな、その父親の地位を狙う、兄弟かなにかだ。
それで、それぞれにいらぬことを吹き込んでいた?
権力争いによくある話だ。
しかもその老人、そのごたごたを聞いてやって来た、
父親以上の権力者か?
もしくは、そうだな、モウのことだから、
まったくの関係ない旅の老人で、あれよあれよというまに、
何でも解決してくれると勘違いされた老人で、
いままさに、何とかしてくれ、と心の中で泣きさけんでいるとか?」
オチまで見抜かれてる!!!
しかし、これはものすごく恥ずかしい!!!!
破棄した読書感想文を
みんなの前で読まされるレベル?
いや、いつの間にか、大事になって朝礼で読み上げられるとか?
この年でこんな辱めを受けるとは!!
顔面から火が出るとはこのことか!!
「え?愛しい人?顔が真っ赤だ。しかも、かわいいぞ!!
え?殺気?」
「モウちゃん!リーズナだな?やってしまえ!!」
「ニック黙れ!!母さんも落ち着いて!!」
お前らが黙れ!!
思わずしゃがみこんでしまった。
「ははははは!モウ!
若いな!
わたしは若いころ芝居に傾倒していたことがあってな、
演じるほうではなく、話を作る方だ。
出てきた登場人物が当然、なにかしらの役がある。
そして話の終わりも当然ある。芝居なんだからな。
即興だろう?よくは出来ていたぞ?
が、最初にもう少し老人のことを入れれば良かったと思うぞ?」
え?リーズナ殿は月影先生?
「お恥ずかしい限りです。精進いたします。」
「ははははは!そうかしこまるな!
なかなかに楽しかった。また聞かせてほしい。」
「はい。機会ありますれば。」
「お前、このことは誰にも言うなよ?
でないと2度と見れないぞ?」
「ん?そうなのか?
そうだな、では、また機会があるということで黙っていよう。
続きがあってもいいが、
芝居には必ず終わりがある。
人生ではない、終わりがな。それをわすれるな?」
「はい。重きお言葉、ありがとうございます。
あの、先生とお呼びしてしてもいいですか?」
「もちろんだ。」
「モウちゃん!!こいつが調子に乗るだけだ!!やめてくれ!!」
「でも、オチまで見抜かれて、それよりもわたしのいいたいことを
わかってくれたんですよ?
マティスはわかった?」
「あなたの気持ちはいつでもわかるのだが、
芝居風の話はわからない。
リーズナ殿の話の通りなのか?
だとしても、続きが聞きたい。
あなたの声で。前の話のように。」
「?前の?あれの続き?聞いたのか?」
「もちろんだ。よかった。泣いたぞ。」
「聞きたい!あれだろ?やっぱり親友を倒すんだろ?」
「いや、それは5番目の話だ。
最後、10番目の大会に参加しなかった兵士、
貴族の私兵がなにもかも倒していくのがよかった。」
「10!!全部聞きたい!!」
それは眠たくて、それこそ適当だったんだよ。
「別の物語があるのだな?
それも聞きたいな。
ああ、それとな?
モウの廻りは男ばかりか?」
「え?そういわれればそうですが、義理にはなりますが、
妹たちはいてますが?あとお世話になっているおかみさんとか?」
「んー?妹?セサミナ殿の奥方だな?
んー?モウは子を産んだことはないのだな?
一度な、成人前に女子たちが産婆に話を聞くという
その話を聞いて来たほうがいいな。
モウは異国出身だからかな?
異国か?異国な。」
「・・・どういうことですか?」
マティスとガイライが警戒して気を膨らます。
「ガイライ!マティス!!止めろ!!」
どういうことだろう?
ニックさんがリーズナ先生を守っている。
「これはニックか?相変わらず、野暮ったい。」
「うるさい。」
「あの?」
まとわりつく気に気付いたのか、
リーズナ先生が笑っている。
「ああ、女子の乳はな、己の子にしか出せない。」
「え?そ、そうなんですか?」
「そうだ。死産、もしくは、赤子が含まなければ乳は出ない。
産後に臥せることがあるのはよくあることだ。
その場合も乳は出ない。」
「では、今の話のように母親が臥せったり、
その、母親が死んでしまったら?赤ちゃんは?
だれかの乳を分けてもらったり、メーウやポットの乳を?」
「ん?動物の乳をか?
それもないし、他人の乳もない。子が受け付けない。
だから赤子には樹脂蜜だな。それで子は育つ。」
樹脂蜜!!
「先生。リーズナ先生。
ニバーセルでどうか、
ブラス以上に樹脂蜜が取れる木の確保と保護を。」
「ん?そうか?あれは寒い地方の生産物だ。
数は流通している。それでもか?」
「ええ。お願いします。そしてそれの成分の研究も。」
「どうして?」
「どうして?それこそ、どうしてと言いたい。
もし、もしも、戦争等でその蜜が手に入らなくなったら?
その蜜が一般市民には手が届かなくなるほど高騰したら?
その木がなにかの病気で枯れてしまったら?
ここでは育たないかもしれない。
だけど、成分の研究が進んでいれば、それに代わる他のものが
できるかもしれない。
子は資産です。国の。
子は樹脂蜜があれば育つと明確に断言できるのに、
その入手先が他国からの購入に頼るしかないなんて!
わたしが樹脂蜜を生産できる国の統治者なら、
それを他国との取引材料にします。」
「・・・・。」
「それともそのような必要不可欠なものを
独占するという考え方自体、この大陸にはありませんか?」
「いや、そんなことはない。」
「わたしの妹たちが産婆殿と話し合う機会を設けています。
それにはわたしも出るつもりです。
そのとき詳しく話は聞きます。
わたしは、48なのですが、結婚もはじめてで、
子を産んだことはありません。
この先もありません。
それは、わたしが異国の者であることも大きいのですが・・・。」
どこまで話せばいい?
「モウちゃん、かまわない。」
ニックさんが促す。
この人は話してもいい人なんだ。
「・・・我が夫、マティスは緑の目です。対象はわたしです。」
「なるほど!!ん?なにか施しているのだな?」
「はい。」
「マティス!良き伴侶を得たな。これ以上の伴侶はいない。
モウもな。マティス以上の伴侶はいない。」
「「はい。」」
「では、ガイライは?」
「ガイライは臣の腕を預からせて頂いております。
弟、セサミナからもです。」
「ははははは!!ガイライ!
よき主を得たな!」
「はっ!」
「んー?ではニックは?」
「ニックさんは、槍の師匠です。マティス共々。」
「俺はガイライに捧げているよ。」
「なるほど。お前たちの師はワイプだと聞いていたんだがな。」
「ワイプ師匠は武と生き方と棒術です。」
「リーズナ殿、これは間違ってはいけない、私は便宜上だ。」
「あー、そうだな。便宜上な。
夫婦で弟子としたほうが説明は速いな。
それが利点だな。」
「そうです!それのみの利点です!」
「マティス!喜ぶな!
リーズナ!もういいだろ?ヤッチの報告と同じはずだ。
異国の話は言うな。
モウちゃん、俺たちにはその手の話はわからなかった。
産婆の話を聞いてからのほうがいいな。」
「はい。わかりました。
・・・・マティス。」
やっぱり違うんだ。
それが悲しかった。
マティスにしがみつく。
「愛しい人?悲しまないで?
こうやって教えてもらったことに感謝しよう。
なにか大事になる前に知ることができたんだ。
どうすればいいかもわかっている。
産婆殿に教えてもらえばいい。
ね?」
マティスは知らなかったことを悲しんでいると思っている。
そうじゃない。
違うんだ。
人としての体の構造が違うんだ。
それが悲しい。
でも、そうだね、わたしの持っている知識で
へたなことをする前でよかったんだ。
「うん。先生ありがとうございます。」
「リーズナ先生に感謝を。」
「マティス!お前が先生と呼ぶことはない!!」
「いや、わたしからも先生と呼んでもよろしいか?」
「ガイライも!やめてくれ!!!」
ニックさんがワニワニ怒っているのがおかしかった。
「あの?その話は、その、わたしの廻りの男衆は、
そうですね、知らない話でしょう。
知識が偏っているといっていい。
先生は?一般的には知っている話なんでしょうか?」
「わたしも樹脂蜜で子を育てからな。
歯が生えるぐらいまで蜜だけでいい。
そこからは普通の食事に蜜をかければいい。」
「では、母乳で育った子にも?」
「いや、それはないと思うぞ?蜜の味しかしらないから、
その味がしないと食べないんだ。
それで、徐々に蜜掛けを減らすんだな。
蜜で育った子供はからだが丈夫だと言われる。
が、甘いもの好きだな。」
そんなこどもは結構いるんじゃないの?
だったら、蜜掛けの何かを売り出せば、
必ず売れるじゃない!
そんな商品は見たことない!
料理好きの人が料理にちょっと使うくらいだ。
そりゃプリンが流行るはずだ。
ある程度は樹脂蜜で育った人がいるんだから。
蜜は砂糖の代わり、結構安価なはず。
それがなくなる恐怖はないの?
いや、まじで寒い地方に行って樹脂蜜農園つくるよ?
あれ?じゃ、タンダードもそうなのかな?
ツイミさんは?大人になる前に掘り出されてからか。
樹脂蜜は乳児の成長に必要なのか。
で、大人の体になるためには樹脂蜜では追いつかない?
10年分の成長を10日でするんだ。
基礎が出来ていても、成長分のエネルギーがないとだけってことか。
高カロリーなものをいるということ?
乳児に必要なものが、
樹脂蜜にあると言われればそうなのだろう。
それと同じものが母乳に有るというのなら、
妊娠期になにか特別なものを食べている?
そんな話は聞かなかった。
お酒を呑んでもいいくらいなんだもの。
違うんだね、ほんと。
「愛しい人?」
「あ!うん。樹脂蜜すごいねって。」
「そうだな。まだどんな木から取れるか知らないな。
イリアスに行った時に見せてもらおう。」
「うん。先生?
ブラスと樹脂蜜の研究、お願いします。」
「そうだな。それらに興味のある人物を探しておこう。
なにも我々がすることはないんだから。」
「ええ。」
「先に言っておくが、それは俺たちじゃんないからな!!」
「それはわかる。ま、心当たりがあるからな。あたってみよう。」
「リーズナ先生、そろそろ行きましょう。
ニック隊長?かまわないですね?」
「・・・・。わかった。」
「ふふふ。ニックさん。きっとブラスノコに小躍りしますよ?」
「期待しておくよ。あとで寄るから。」
「はい。」
中央院本館に向かって歩いていった、3人。
それを見送り、まだ、わたしたちを監視している目があるので、
背負子を背負って、コットワッツ滞在館に向かう。
面談の館ではあの女2人はまだ、動けないようだ。
いろいろ運び込んでいる。
必要なものが揃う頃には動けるだろうね。
なんか、日に日に意地悪になってる気がする。
13
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる