694 / 863
694:青春
しおりを挟む
トックス工房にわたしたちがいるというのは内緒なのだが、
セサミンの奥方たち、
ペリフロや、ドーガーの妹ちゃんに順番に来てもらった。
オイルのことを聞くためだ。
まずは2人の妹たちだ。
「その後どんな感じ?」
「使っている最中に女官がやって来たので
慌てて棚に隠したんですが、ふたを閉め忘れたみたいで、
夜にもう一度使うと、中身がすごく減っていました。
しかも香りが違うんです。」
そりゃ、交換されたんだよ。
そんな短期間で変質しないことは確認済みだ。
女官の出来心か、隠密か。
「なるほど。
乾燥や、空気に触れるのは良くないかもしれないね。
それは?持ってきてる?
ん。じゃ、新しいのと交換ね。
慌てて隠さなくていいから、必ずフタだけはして?
これ、本人じゃないと開かないようにするからね。
化粧水との相性はどうかな?
香も?」
「化粧水は肌になじんで香りが付くと意識したことはないんですが、
オイルの香りは残ります。
いい香りなのでわたしは好きですよ。」
「そうか。残るんだよね。
香水つける人には好まれないかな?香水って高いでしょ?
使ってるの?」
「普段はオイルに好みの香りをつけて使いますから。
以前のカメリも好みの香りをつけていました。」
「そうか。そうなると香りが残るのは、
好みになるよね。いままでどうしてたの?」
「・・・わたしは、オイルに蜜を混ぜて使っていました。
甘い香りがするので。」
「・・・わたしは、花びらを。」
「例のオイルね。
ああ、ごめんね。香関係の話は恥ずかしんだね。
顔が真っ赤だ。」
「いえ、その、アネウエさまのお役に立つのなら。」
「可愛いことを言うね。ありがとうね。
ほんに、花が色づくように赤くなっている。可愛いな。」
「ア、アネウエさまはすぐにそのようなことをおっしゃいます。」
「ん?かわいいものをかわいいっていうのはダメなの?
なるほど。
秘め事か?セサミナがいう言葉をわたしがいうのはよくないか?
可愛がってもらっているのだな?
んー?いまは2人してかわいがっているのか?」
「「アネウエさま!!」」
ほんとにかわいい。
オヤジ化していまうな。
今度、いまのオイルにも同じように使ってみるとのこと。
ペリフロにも好評。
うん、その秘め事の進捗具合は報告しなくていいよ。
純粋すぎてこちらが照れる。
テール君のことも報告はしている。
もう立派な領主だと。
2人同時に子供を作るということは、
さすがにしていないようだ。
カーチはそれを、その立場を憂いたんだ、
我が子たちには同じことを強いることはできなかったんだろうな。
しきたりを変えなければいけない。
それは当事者が考えていけばいい。
このしきたりも、初めから決まっていたわけではないんだ。
そのとき、この方法が最善だっただけ。
近いうちに2人が手料理を振舞ってくれる。
楽しみだ。
最後はドーガーの妹ちゃん。マースだ。
「モウ様!」
「あはははは!呼び名はどうでもいいけどね。
ま、座って。それ食べながら。
飲み物はコーヒー?紅茶?
あ、入れてくれるの?ありがとう。
紅茶はへたくそなんだ。
ああ、いい香りだ。ありがとうね。
さ、いろいろ聞いていくけど、思ったこと感じたことを教えてね。
オイルの使用感を聞いていってるの。
なにかある?」
概ね同じような答えだ。
「うん。ありがとう。
ああ、母君はお元気?もう少ししたら母君にも使ってもらおうかな。
なんせ、母君の情報網はすごいから。」
「そうですね。あっという間に広がります。
いいことも悪いことも。」
「あははは!だろうね。ん?どうした?」
「あの!」
「ん?なにか困りごと?
ドーガーののろけがうざいか?一度きっちり〆ないといけないな!」
「あ!いえ、それは。
2人の姉さまも素敵な方たちで、母も喜んでいます。
わたしも姉ができてうれしいです。
でも、その、姉さま方はその。」
「ああ、おぼこい、ここではなんていうかな?
幼いよね、恋愛とか、そういうのに関しては。
仕方がないよ。
ドーガーに会うまで結婚なんてするとは思ってなかったみたいだから。」
「そうなんです!兄とのことを話してくれるんですが、
え?まだそこ?って感じで。」
「あはははははは!!そうだね。
3人の別れのあいさつは最初は握手だったから。
うぶいよねー。ん?その話?」
「違います!その!」
「んー?ああ!いい人がいるのね?マースに。そのひとの相談?」
「そうです!」
「ふむ。わたしは、異国の出身で、ここの、そのなんていうかな?
結婚の仕組みとかに疎いんだけど、男の人が、通うんだよね?
女の人のところに。で、その場合女のひとのことを娼婦だというんだよね?」
「そうです。」
「じゃ、いま、マースは娼婦?」
「・・・・。違います。」
「あれ?そうなの?
てっきりいい人ができたんだとおもったよ?
だって、きれいだもの。今まさに咲き誇る寸前って感じで。
恋は女をきれいにするね。
これは、感覚だけの話じゃないよ?
からだがそうなるんだ。いい男を捕まえるためにね。
それと同時に精神も不安定になる。
どうして?って。
その不安を解消するためにだれかに相談するのもひとつの方法だ。
自分と違う別の意見を聞いて、
それで、自分の気持ちを確かめる。
人の意見を鵜呑みにしてはいけない。
ああ、鵜呑みってわかる。まるごと受け入れるってことなんだけど?」
「え?わかります。ミウのように丸のみするってことですよね?」
「ミウ?動物?鳥?4本足?」
「4本足です。シシの群れの近くにいます。
シシの食べかすを狙ってるんです。で、すべて食べてしまいます。」
「おお!!それ、おいしい?」
「!食べません!!」
「あ、そうなんだ。
うん、はなしが逸れたね。えーと?
マースがいいなって思っている人はいるけど、
通ってはいないと?でも、なにかとお話はする?
ああ、贈り物もある?
なるほど。
で、部屋には来ない?
なるほど。」
「それで、その、母もそうなんですが、ご近所の方が、
あれやこれやと。」
「ああ!なんていってるの?」
「その、わたしの婚約者のことは?」
「結婚の約束をすれば、婚約者っていうのね?
んー、館で働いていたんだよね?その関係は護衛業として把握はしているよ?
辞めてどこかに行くって。
そのどこかが、セサミナ様に害をなさない限り後は追わない。
彼は問題ないから今はどうしているか知らないよ?」
マトグラーサの砂漠か、すでに埋まっているかだ。
「それはもうどうでもいいんです。
ただ、婚約者がどこかに行ったということは皆知っています。」
「婚約者じゃないだろ?元だ。というか、元婚約者というのもおこがましい。
他人だ。それが?」
「うふふふ。ええ。他人なんですが、そんなことがあったから、
母は心配して、廻りは、その、」
「おもしろおかしく?いらぬことばかり言ってくる?」
「はい。わたしを悪く言うのはかまわないんですが、
その、いま、お傍付き見習いになっている、カップさん、なんですが、その、」
「おお!カップ君!優秀だよね!
マティスも彼は強いって言ってたよ?」
「え!そうなんですか?マティス様が!すごい!
でも、御前試合で負けていました、あの兄に。」
「あははは!カップ君は槍術を本格的に習い始めたのは、
ニックさんが来てからだ。で、次席ドーガーは強いのよ?
そうは見えないところがまた強い証拠だ。
そうか、マースのいい人はカップなんだね?」
「わたしはそう思っています。
だけど、部屋に来てくれないんです!
毎日会っているのに!夜は部屋に来てくれないんです!」
「んー、これ、ほんとに内緒なんだけど、
彼は夜の仕事も多いのよ?それはお傍付きの家族としてわかってるよね?」
「もちろん。でも、一回もないんです!」
「そうか、不安だね。いま、次の会合のことで、
皆忙しいんだ。寝る暇もないほど。
待っててあげて?大丈夫、わたしの見た感じでは、
マーサだけを、見ていたよ?」
「・・・・。」
「ふふ。おばさんに任せなさい!」
「モウ様がおばさんだなんて!
だったら、カップの悪口を言うあの人たちは
婆です!!」
「婆って。悪口ってどんなの?」
「彼に、故郷にいい人がいるからわたしは遊ばれてるんだって。
わたしはその、前のこともあるからわからないだろ?って。」
「なにそれ?そんなこと他人には関係ないのにね。
故郷にいないよ?それは、ほれ、身元と身辺は確認するから知ってるんだ。
仕事を変わったばかりだからね。
きっちりしてからにしたいんだろう?
その方が男としてわたしは責任があっていいと思うよ?
なんせ、雨の日は来月だ。
準備も仕事もあるからね。
どっしり構えとけばいいよ?」
「でも!」
「ん?いいよ?なんでも言ってみな?」
「カップの悪口を言うくせに、
あの人たちは自分の娘をけしかけているんです!!
わたしたちのこと探ってるんです!
傍付きになったことは皆知っています!
雨の日にカップの家に行くつもりなんです!」
「え?それありなの?事前のその、やり取り無しに?」
「扉を開けたらそうなります!!
マティス様の家に火をつけた女たちが今度はカップを狙ってるんです!
兄は先に結婚を公言しましたし!
今一番狙いはカップなんですよ!!」
「うわー!あの子たちが?
それは、なんというか。
あー。わかった。んー、あのね、これはわたしから聞いたって言わないでね?
で、誰にも言ったらだめだよ?
カップ君、こっちに家を構えたでしょ?
それ、仕事があるからじゃなくて、マーサの為に越してきたんだよ。
せめて雨の日の半月前には家を構えないとダメでしょ?
だから、バタバタで、やって来たんだ。
マーサの為にこっちに来たんだよ?」
「!!」
「今日の半分にはセサミナ様の移動で王都に向かう。
カップだけ、明日にしてもらう。」
「そんな!仕事優先です!!」
「いや、仕事だ。
単独で入都するコットワッツの従者になんて言ってくるかも確認しないとね。
セサミナ様はもちろん、筆頭、次席、
護衛赤い塊には何もできないが、
新顔の従者になにか吹き込むかもしれないしね。」
「カップに危険は?」
「ないない。どっちかというと相手の心配をするべきだね。
良し!じゃ、早くお帰り。きっと今日訪ねてくるよ?
確実に落とせよ?」
「はい!」
このことはセサミンに報告。
(しまった!そうですね。隠密としてずっとそばにいてましたし、
それ以外は従者の仕事を叩きこまれてましたから)
(だろうね。お給金は渡してるよね?)
(もちろん)
(じゃ、遅れて様子を見ることは仕事だとして、
それとなく、ゆってあげて?)
(わかりました)
これで、一安心かな?
しかし、怖いな、あのお嬢軍団。
あ、手土産用意する?
いや、そこまですると、おせっかいだよね。
んーん。青春ですなぁ。
セサミンの奥方たち、
ペリフロや、ドーガーの妹ちゃんに順番に来てもらった。
オイルのことを聞くためだ。
まずは2人の妹たちだ。
「その後どんな感じ?」
「使っている最中に女官がやって来たので
慌てて棚に隠したんですが、ふたを閉め忘れたみたいで、
夜にもう一度使うと、中身がすごく減っていました。
しかも香りが違うんです。」
そりゃ、交換されたんだよ。
そんな短期間で変質しないことは確認済みだ。
女官の出来心か、隠密か。
「なるほど。
乾燥や、空気に触れるのは良くないかもしれないね。
それは?持ってきてる?
ん。じゃ、新しいのと交換ね。
慌てて隠さなくていいから、必ずフタだけはして?
これ、本人じゃないと開かないようにするからね。
化粧水との相性はどうかな?
香も?」
「化粧水は肌になじんで香りが付くと意識したことはないんですが、
オイルの香りは残ります。
いい香りなのでわたしは好きですよ。」
「そうか。残るんだよね。
香水つける人には好まれないかな?香水って高いでしょ?
使ってるの?」
「普段はオイルに好みの香りをつけて使いますから。
以前のカメリも好みの香りをつけていました。」
「そうか。そうなると香りが残るのは、
好みになるよね。いままでどうしてたの?」
「・・・わたしは、オイルに蜜を混ぜて使っていました。
甘い香りがするので。」
「・・・わたしは、花びらを。」
「例のオイルね。
ああ、ごめんね。香関係の話は恥ずかしんだね。
顔が真っ赤だ。」
「いえ、その、アネウエさまのお役に立つのなら。」
「可愛いことを言うね。ありがとうね。
ほんに、花が色づくように赤くなっている。可愛いな。」
「ア、アネウエさまはすぐにそのようなことをおっしゃいます。」
「ん?かわいいものをかわいいっていうのはダメなの?
なるほど。
秘め事か?セサミナがいう言葉をわたしがいうのはよくないか?
可愛がってもらっているのだな?
んー?いまは2人してかわいがっているのか?」
「「アネウエさま!!」」
ほんとにかわいい。
オヤジ化していまうな。
今度、いまのオイルにも同じように使ってみるとのこと。
ペリフロにも好評。
うん、その秘め事の進捗具合は報告しなくていいよ。
純粋すぎてこちらが照れる。
テール君のことも報告はしている。
もう立派な領主だと。
2人同時に子供を作るということは、
さすがにしていないようだ。
カーチはそれを、その立場を憂いたんだ、
我が子たちには同じことを強いることはできなかったんだろうな。
しきたりを変えなければいけない。
それは当事者が考えていけばいい。
このしきたりも、初めから決まっていたわけではないんだ。
そのとき、この方法が最善だっただけ。
近いうちに2人が手料理を振舞ってくれる。
楽しみだ。
最後はドーガーの妹ちゃん。マースだ。
「モウ様!」
「あはははは!呼び名はどうでもいいけどね。
ま、座って。それ食べながら。
飲み物はコーヒー?紅茶?
あ、入れてくれるの?ありがとう。
紅茶はへたくそなんだ。
ああ、いい香りだ。ありがとうね。
さ、いろいろ聞いていくけど、思ったこと感じたことを教えてね。
オイルの使用感を聞いていってるの。
なにかある?」
概ね同じような答えだ。
「うん。ありがとう。
ああ、母君はお元気?もう少ししたら母君にも使ってもらおうかな。
なんせ、母君の情報網はすごいから。」
「そうですね。あっという間に広がります。
いいことも悪いことも。」
「あははは!だろうね。ん?どうした?」
「あの!」
「ん?なにか困りごと?
ドーガーののろけがうざいか?一度きっちり〆ないといけないな!」
「あ!いえ、それは。
2人の姉さまも素敵な方たちで、母も喜んでいます。
わたしも姉ができてうれしいです。
でも、その、姉さま方はその。」
「ああ、おぼこい、ここではなんていうかな?
幼いよね、恋愛とか、そういうのに関しては。
仕方がないよ。
ドーガーに会うまで結婚なんてするとは思ってなかったみたいだから。」
「そうなんです!兄とのことを話してくれるんですが、
え?まだそこ?って感じで。」
「あはははははは!!そうだね。
3人の別れのあいさつは最初は握手だったから。
うぶいよねー。ん?その話?」
「違います!その!」
「んー?ああ!いい人がいるのね?マースに。そのひとの相談?」
「そうです!」
「ふむ。わたしは、異国の出身で、ここの、そのなんていうかな?
結婚の仕組みとかに疎いんだけど、男の人が、通うんだよね?
女の人のところに。で、その場合女のひとのことを娼婦だというんだよね?」
「そうです。」
「じゃ、いま、マースは娼婦?」
「・・・・。違います。」
「あれ?そうなの?
てっきりいい人ができたんだとおもったよ?
だって、きれいだもの。今まさに咲き誇る寸前って感じで。
恋は女をきれいにするね。
これは、感覚だけの話じゃないよ?
からだがそうなるんだ。いい男を捕まえるためにね。
それと同時に精神も不安定になる。
どうして?って。
その不安を解消するためにだれかに相談するのもひとつの方法だ。
自分と違う別の意見を聞いて、
それで、自分の気持ちを確かめる。
人の意見を鵜呑みにしてはいけない。
ああ、鵜呑みってわかる。まるごと受け入れるってことなんだけど?」
「え?わかります。ミウのように丸のみするってことですよね?」
「ミウ?動物?鳥?4本足?」
「4本足です。シシの群れの近くにいます。
シシの食べかすを狙ってるんです。で、すべて食べてしまいます。」
「おお!!それ、おいしい?」
「!食べません!!」
「あ、そうなんだ。
うん、はなしが逸れたね。えーと?
マースがいいなって思っている人はいるけど、
通ってはいないと?でも、なにかとお話はする?
ああ、贈り物もある?
なるほど。
で、部屋には来ない?
なるほど。」
「それで、その、母もそうなんですが、ご近所の方が、
あれやこれやと。」
「ああ!なんていってるの?」
「その、わたしの婚約者のことは?」
「結婚の約束をすれば、婚約者っていうのね?
んー、館で働いていたんだよね?その関係は護衛業として把握はしているよ?
辞めてどこかに行くって。
そのどこかが、セサミナ様に害をなさない限り後は追わない。
彼は問題ないから今はどうしているか知らないよ?」
マトグラーサの砂漠か、すでに埋まっているかだ。
「それはもうどうでもいいんです。
ただ、婚約者がどこかに行ったということは皆知っています。」
「婚約者じゃないだろ?元だ。というか、元婚約者というのもおこがましい。
他人だ。それが?」
「うふふふ。ええ。他人なんですが、そんなことがあったから、
母は心配して、廻りは、その、」
「おもしろおかしく?いらぬことばかり言ってくる?」
「はい。わたしを悪く言うのはかまわないんですが、
その、いま、お傍付き見習いになっている、カップさん、なんですが、その、」
「おお!カップ君!優秀だよね!
マティスも彼は強いって言ってたよ?」
「え!そうなんですか?マティス様が!すごい!
でも、御前試合で負けていました、あの兄に。」
「あははは!カップ君は槍術を本格的に習い始めたのは、
ニックさんが来てからだ。で、次席ドーガーは強いのよ?
そうは見えないところがまた強い証拠だ。
そうか、マースのいい人はカップなんだね?」
「わたしはそう思っています。
だけど、部屋に来てくれないんです!
毎日会っているのに!夜は部屋に来てくれないんです!」
「んー、これ、ほんとに内緒なんだけど、
彼は夜の仕事も多いのよ?それはお傍付きの家族としてわかってるよね?」
「もちろん。でも、一回もないんです!」
「そうか、不安だね。いま、次の会合のことで、
皆忙しいんだ。寝る暇もないほど。
待っててあげて?大丈夫、わたしの見た感じでは、
マーサだけを、見ていたよ?」
「・・・・。」
「ふふ。おばさんに任せなさい!」
「モウ様がおばさんだなんて!
だったら、カップの悪口を言うあの人たちは
婆です!!」
「婆って。悪口ってどんなの?」
「彼に、故郷にいい人がいるからわたしは遊ばれてるんだって。
わたしはその、前のこともあるからわからないだろ?って。」
「なにそれ?そんなこと他人には関係ないのにね。
故郷にいないよ?それは、ほれ、身元と身辺は確認するから知ってるんだ。
仕事を変わったばかりだからね。
きっちりしてからにしたいんだろう?
その方が男としてわたしは責任があっていいと思うよ?
なんせ、雨の日は来月だ。
準備も仕事もあるからね。
どっしり構えとけばいいよ?」
「でも!」
「ん?いいよ?なんでも言ってみな?」
「カップの悪口を言うくせに、
あの人たちは自分の娘をけしかけているんです!!
わたしたちのこと探ってるんです!
傍付きになったことは皆知っています!
雨の日にカップの家に行くつもりなんです!」
「え?それありなの?事前のその、やり取り無しに?」
「扉を開けたらそうなります!!
マティス様の家に火をつけた女たちが今度はカップを狙ってるんです!
兄は先に結婚を公言しましたし!
今一番狙いはカップなんですよ!!」
「うわー!あの子たちが?
それは、なんというか。
あー。わかった。んー、あのね、これはわたしから聞いたって言わないでね?
で、誰にも言ったらだめだよ?
カップ君、こっちに家を構えたでしょ?
それ、仕事があるからじゃなくて、マーサの為に越してきたんだよ。
せめて雨の日の半月前には家を構えないとダメでしょ?
だから、バタバタで、やって来たんだ。
マーサの為にこっちに来たんだよ?」
「!!」
「今日の半分にはセサミナ様の移動で王都に向かう。
カップだけ、明日にしてもらう。」
「そんな!仕事優先です!!」
「いや、仕事だ。
単独で入都するコットワッツの従者になんて言ってくるかも確認しないとね。
セサミナ様はもちろん、筆頭、次席、
護衛赤い塊には何もできないが、
新顔の従者になにか吹き込むかもしれないしね。」
「カップに危険は?」
「ないない。どっちかというと相手の心配をするべきだね。
良し!じゃ、早くお帰り。きっと今日訪ねてくるよ?
確実に落とせよ?」
「はい!」
このことはセサミンに報告。
(しまった!そうですね。隠密としてずっとそばにいてましたし、
それ以外は従者の仕事を叩きこまれてましたから)
(だろうね。お給金は渡してるよね?)
(もちろん)
(じゃ、遅れて様子を見ることは仕事だとして、
それとなく、ゆってあげて?)
(わかりました)
これで、一安心かな?
しかし、怖いな、あのお嬢軍団。
あ、手土産用意する?
いや、そこまですると、おせっかいだよね。
んーん。青春ですなぁ。
11
お気に入りに追加
369
あなたにおすすめの小説
完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる
シェルビビ
恋愛
ランキング32位ありがとうございます!!!
遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。
ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。
ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。
この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。
「やっと見つけた、俺の女神」
隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。
サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~
紫仙
ファンタジー
真実を司りし神ウェルスの名のもとに、
魔法公証人が秘められし真実を問う。
舞台は多くのダンジョンを近郊に擁する古都レッジョ。
多くの冒険者を惹きつけるレッジョでは今日も、
冒険者やダンジョンにまつわるトラブルで騒がしい。
魔法公証人ルロイ・フェヘールは、
そんなレッジョで真実を司る神ウェルスの御名の元、
証書と魔法により真実を見極める力「プロバティオ」をもって、
トラブルを抱えた依頼人たちを助けてゆく。
異世界公証人ファンタジー。
基本章ごとの短編集なので、
各章のごとに独立したお話として読めます。
カクヨムにて一度公開した作品ですが、
要所を手直し推敲して再アップしたものを連載しています。
最終話までは既に書いてあるので、
小説の完結は確約できます。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
伯爵様の子供を身篭ったの…子供を生むから奥様には消えてほしいと言う若い浮気相手の女には…消えてほしい
白崎アイド
ファンタジー
若い女は私の前にツカツカと歩いてくると、「わたくし、伯爵様の子供を身篭りましたの。だから、奥様には消えてほしいんです」
伯爵様の浮気相手の女は、迷いもなく私の前にくると、キッと私を睨みつけながらそう言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる