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694:青春
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トックス工房にわたしたちがいるというのは内緒なのだが、
セサミンの奥方たち、
ペリフロや、ドーガーの妹ちゃんに順番に来てもらった。
オイルのことを聞くためだ。
まずは2人の妹たちだ。
「その後どんな感じ?」
「使っている最中に女官がやって来たので
慌てて棚に隠したんですが、ふたを閉め忘れたみたいで、
夜にもう一度使うと、中身がすごく減っていました。
しかも香りが違うんです。」
そりゃ、交換されたんだよ。
そんな短期間で変質しないことは確認済みだ。
女官の出来心か、隠密か。
「なるほど。
乾燥や、空気に触れるのは良くないかもしれないね。
それは?持ってきてる?
ん。じゃ、新しいのと交換ね。
慌てて隠さなくていいから、必ずフタだけはして?
これ、本人じゃないと開かないようにするからね。
化粧水との相性はどうかな?
香も?」
「化粧水は肌になじんで香りが付くと意識したことはないんですが、
オイルの香りは残ります。
いい香りなのでわたしは好きですよ。」
「そうか。残るんだよね。
香水つける人には好まれないかな?香水って高いでしょ?
使ってるの?」
「普段はオイルに好みの香りをつけて使いますから。
以前のカメリも好みの香りをつけていました。」
「そうか。そうなると香りが残るのは、
好みになるよね。いままでどうしてたの?」
「・・・わたしは、オイルに蜜を混ぜて使っていました。
甘い香りがするので。」
「・・・わたしは、花びらを。」
「例のオイルね。
ああ、ごめんね。香関係の話は恥ずかしんだね。
顔が真っ赤だ。」
「いえ、その、アネウエさまのお役に立つのなら。」
「可愛いことを言うね。ありがとうね。
ほんに、花が色づくように赤くなっている。可愛いな。」
「ア、アネウエさまはすぐにそのようなことをおっしゃいます。」
「ん?かわいいものをかわいいっていうのはダメなの?
なるほど。
秘め事か?セサミナがいう言葉をわたしがいうのはよくないか?
可愛がってもらっているのだな?
んー?いまは2人してかわいがっているのか?」
「「アネウエさま!!」」
ほんとにかわいい。
オヤジ化していまうな。
今度、いまのオイルにも同じように使ってみるとのこと。
ペリフロにも好評。
うん、その秘め事の進捗具合は報告しなくていいよ。
純粋すぎてこちらが照れる。
テール君のことも報告はしている。
もう立派な領主だと。
2人同時に子供を作るということは、
さすがにしていないようだ。
カーチはそれを、その立場を憂いたんだ、
我が子たちには同じことを強いることはできなかったんだろうな。
しきたりを変えなければいけない。
それは当事者が考えていけばいい。
このしきたりも、初めから決まっていたわけではないんだ。
そのとき、この方法が最善だっただけ。
近いうちに2人が手料理を振舞ってくれる。
楽しみだ。
最後はドーガーの妹ちゃん。マースだ。
「モウ様!」
「あはははは!呼び名はどうでもいいけどね。
ま、座って。それ食べながら。
飲み物はコーヒー?紅茶?
あ、入れてくれるの?ありがとう。
紅茶はへたくそなんだ。
ああ、いい香りだ。ありがとうね。
さ、いろいろ聞いていくけど、思ったこと感じたことを教えてね。
オイルの使用感を聞いていってるの。
なにかある?」
概ね同じような答えだ。
「うん。ありがとう。
ああ、母君はお元気?もう少ししたら母君にも使ってもらおうかな。
なんせ、母君の情報網はすごいから。」
「そうですね。あっという間に広がります。
いいことも悪いことも。」
「あははは!だろうね。ん?どうした?」
「あの!」
「ん?なにか困りごと?
ドーガーののろけがうざいか?一度きっちり〆ないといけないな!」
「あ!いえ、それは。
2人の姉さまも素敵な方たちで、母も喜んでいます。
わたしも姉ができてうれしいです。
でも、その、姉さま方はその。」
「ああ、おぼこい、ここではなんていうかな?
幼いよね、恋愛とか、そういうのに関しては。
仕方がないよ。
ドーガーに会うまで結婚なんてするとは思ってなかったみたいだから。」
「そうなんです!兄とのことを話してくれるんですが、
え?まだそこ?って感じで。」
「あはははははは!!そうだね。
3人の別れのあいさつは最初は握手だったから。
うぶいよねー。ん?その話?」
「違います!その!」
「んー?ああ!いい人がいるのね?マースに。そのひとの相談?」
「そうです!」
「ふむ。わたしは、異国の出身で、ここの、そのなんていうかな?
結婚の仕組みとかに疎いんだけど、男の人が、通うんだよね?
女の人のところに。で、その場合女のひとのことを娼婦だというんだよね?」
「そうです。」
「じゃ、いま、マースは娼婦?」
「・・・・。違います。」
「あれ?そうなの?
てっきりいい人ができたんだとおもったよ?
だって、きれいだもの。今まさに咲き誇る寸前って感じで。
恋は女をきれいにするね。
これは、感覚だけの話じゃないよ?
からだがそうなるんだ。いい男を捕まえるためにね。
それと同時に精神も不安定になる。
どうして?って。
その不安を解消するためにだれかに相談するのもひとつの方法だ。
自分と違う別の意見を聞いて、
それで、自分の気持ちを確かめる。
人の意見を鵜呑みにしてはいけない。
ああ、鵜呑みってわかる。まるごと受け入れるってことなんだけど?」
「え?わかります。ミウのように丸のみするってことですよね?」
「ミウ?動物?鳥?4本足?」
「4本足です。シシの群れの近くにいます。
シシの食べかすを狙ってるんです。で、すべて食べてしまいます。」
「おお!!それ、おいしい?」
「!食べません!!」
「あ、そうなんだ。
うん、はなしが逸れたね。えーと?
マースがいいなって思っている人はいるけど、
通ってはいないと?でも、なにかとお話はする?
ああ、贈り物もある?
なるほど。
で、部屋には来ない?
なるほど。」
「それで、その、母もそうなんですが、ご近所の方が、
あれやこれやと。」
「ああ!なんていってるの?」
「その、わたしの婚約者のことは?」
「結婚の約束をすれば、婚約者っていうのね?
んー、館で働いていたんだよね?その関係は護衛業として把握はしているよ?
辞めてどこかに行くって。
そのどこかが、セサミナ様に害をなさない限り後は追わない。
彼は問題ないから今はどうしているか知らないよ?」
マトグラーサの砂漠か、すでに埋まっているかだ。
「それはもうどうでもいいんです。
ただ、婚約者がどこかに行ったということは皆知っています。」
「婚約者じゃないだろ?元だ。というか、元婚約者というのもおこがましい。
他人だ。それが?」
「うふふふ。ええ。他人なんですが、そんなことがあったから、
母は心配して、廻りは、その、」
「おもしろおかしく?いらぬことばかり言ってくる?」
「はい。わたしを悪く言うのはかまわないんですが、
その、いま、お傍付き見習いになっている、カップさん、なんですが、その、」
「おお!カップ君!優秀だよね!
マティスも彼は強いって言ってたよ?」
「え!そうなんですか?マティス様が!すごい!
でも、御前試合で負けていました、あの兄に。」
「あははは!カップ君は槍術を本格的に習い始めたのは、
ニックさんが来てからだ。で、次席ドーガーは強いのよ?
そうは見えないところがまた強い証拠だ。
そうか、マースのいい人はカップなんだね?」
「わたしはそう思っています。
だけど、部屋に来てくれないんです!
毎日会っているのに!夜は部屋に来てくれないんです!」
「んー、これ、ほんとに内緒なんだけど、
彼は夜の仕事も多いのよ?それはお傍付きの家族としてわかってるよね?」
「もちろん。でも、一回もないんです!」
「そうか、不安だね。いま、次の会合のことで、
皆忙しいんだ。寝る暇もないほど。
待っててあげて?大丈夫、わたしの見た感じでは、
マーサだけを、見ていたよ?」
「・・・・。」
「ふふ。おばさんに任せなさい!」
「モウ様がおばさんだなんて!
だったら、カップの悪口を言うあの人たちは
婆です!!」
「婆って。悪口ってどんなの?」
「彼に、故郷にいい人がいるからわたしは遊ばれてるんだって。
わたしはその、前のこともあるからわからないだろ?って。」
「なにそれ?そんなこと他人には関係ないのにね。
故郷にいないよ?それは、ほれ、身元と身辺は確認するから知ってるんだ。
仕事を変わったばかりだからね。
きっちりしてからにしたいんだろう?
その方が男としてわたしは責任があっていいと思うよ?
なんせ、雨の日は来月だ。
準備も仕事もあるからね。
どっしり構えとけばいいよ?」
「でも!」
「ん?いいよ?なんでも言ってみな?」
「カップの悪口を言うくせに、
あの人たちは自分の娘をけしかけているんです!!
わたしたちのこと探ってるんです!
傍付きになったことは皆知っています!
雨の日にカップの家に行くつもりなんです!」
「え?それありなの?事前のその、やり取り無しに?」
「扉を開けたらそうなります!!
マティス様の家に火をつけた女たちが今度はカップを狙ってるんです!
兄は先に結婚を公言しましたし!
今一番狙いはカップなんですよ!!」
「うわー!あの子たちが?
それは、なんというか。
あー。わかった。んー、あのね、これはわたしから聞いたって言わないでね?
で、誰にも言ったらだめだよ?
カップ君、こっちに家を構えたでしょ?
それ、仕事があるからじゃなくて、マーサの為に越してきたんだよ。
せめて雨の日の半月前には家を構えないとダメでしょ?
だから、バタバタで、やって来たんだ。
マーサの為にこっちに来たんだよ?」
「!!」
「今日の半分にはセサミナ様の移動で王都に向かう。
カップだけ、明日にしてもらう。」
「そんな!仕事優先です!!」
「いや、仕事だ。
単独で入都するコットワッツの従者になんて言ってくるかも確認しないとね。
セサミナ様はもちろん、筆頭、次席、
護衛赤い塊には何もできないが、
新顔の従者になにか吹き込むかもしれないしね。」
「カップに危険は?」
「ないない。どっちかというと相手の心配をするべきだね。
良し!じゃ、早くお帰り。きっと今日訪ねてくるよ?
確実に落とせよ?」
「はい!」
このことはセサミンに報告。
(しまった!そうですね。隠密としてずっとそばにいてましたし、
それ以外は従者の仕事を叩きこまれてましたから)
(だろうね。お給金は渡してるよね?)
(もちろん)
(じゃ、遅れて様子を見ることは仕事だとして、
それとなく、ゆってあげて?)
(わかりました)
これで、一安心かな?
しかし、怖いな、あのお嬢軍団。
あ、手土産用意する?
いや、そこまですると、おせっかいだよね。
んーん。青春ですなぁ。
セサミンの奥方たち、
ペリフロや、ドーガーの妹ちゃんに順番に来てもらった。
オイルのことを聞くためだ。
まずは2人の妹たちだ。
「その後どんな感じ?」
「使っている最中に女官がやって来たので
慌てて棚に隠したんですが、ふたを閉め忘れたみたいで、
夜にもう一度使うと、中身がすごく減っていました。
しかも香りが違うんです。」
そりゃ、交換されたんだよ。
そんな短期間で変質しないことは確認済みだ。
女官の出来心か、隠密か。
「なるほど。
乾燥や、空気に触れるのは良くないかもしれないね。
それは?持ってきてる?
ん。じゃ、新しいのと交換ね。
慌てて隠さなくていいから、必ずフタだけはして?
これ、本人じゃないと開かないようにするからね。
化粧水との相性はどうかな?
香も?」
「化粧水は肌になじんで香りが付くと意識したことはないんですが、
オイルの香りは残ります。
いい香りなのでわたしは好きですよ。」
「そうか。残るんだよね。
香水つける人には好まれないかな?香水って高いでしょ?
使ってるの?」
「普段はオイルに好みの香りをつけて使いますから。
以前のカメリも好みの香りをつけていました。」
「そうか。そうなると香りが残るのは、
好みになるよね。いままでどうしてたの?」
「・・・わたしは、オイルに蜜を混ぜて使っていました。
甘い香りがするので。」
「・・・わたしは、花びらを。」
「例のオイルね。
ああ、ごめんね。香関係の話は恥ずかしんだね。
顔が真っ赤だ。」
「いえ、その、アネウエさまのお役に立つのなら。」
「可愛いことを言うね。ありがとうね。
ほんに、花が色づくように赤くなっている。可愛いな。」
「ア、アネウエさまはすぐにそのようなことをおっしゃいます。」
「ん?かわいいものをかわいいっていうのはダメなの?
なるほど。
秘め事か?セサミナがいう言葉をわたしがいうのはよくないか?
可愛がってもらっているのだな?
んー?いまは2人してかわいがっているのか?」
「「アネウエさま!!」」
ほんとにかわいい。
オヤジ化していまうな。
今度、いまのオイルにも同じように使ってみるとのこと。
ペリフロにも好評。
うん、その秘め事の進捗具合は報告しなくていいよ。
純粋すぎてこちらが照れる。
テール君のことも報告はしている。
もう立派な領主だと。
2人同時に子供を作るということは、
さすがにしていないようだ。
カーチはそれを、その立場を憂いたんだ、
我が子たちには同じことを強いることはできなかったんだろうな。
しきたりを変えなければいけない。
それは当事者が考えていけばいい。
このしきたりも、初めから決まっていたわけではないんだ。
そのとき、この方法が最善だっただけ。
近いうちに2人が手料理を振舞ってくれる。
楽しみだ。
最後はドーガーの妹ちゃん。マースだ。
「モウ様!」
「あはははは!呼び名はどうでもいいけどね。
ま、座って。それ食べながら。
飲み物はコーヒー?紅茶?
あ、入れてくれるの?ありがとう。
紅茶はへたくそなんだ。
ああ、いい香りだ。ありがとうね。
さ、いろいろ聞いていくけど、思ったこと感じたことを教えてね。
オイルの使用感を聞いていってるの。
なにかある?」
概ね同じような答えだ。
「うん。ありがとう。
ああ、母君はお元気?もう少ししたら母君にも使ってもらおうかな。
なんせ、母君の情報網はすごいから。」
「そうですね。あっという間に広がります。
いいことも悪いことも。」
「あははは!だろうね。ん?どうした?」
「あの!」
「ん?なにか困りごと?
ドーガーののろけがうざいか?一度きっちり〆ないといけないな!」
「あ!いえ、それは。
2人の姉さまも素敵な方たちで、母も喜んでいます。
わたしも姉ができてうれしいです。
でも、その、姉さま方はその。」
「ああ、おぼこい、ここではなんていうかな?
幼いよね、恋愛とか、そういうのに関しては。
仕方がないよ。
ドーガーに会うまで結婚なんてするとは思ってなかったみたいだから。」
「そうなんです!兄とのことを話してくれるんですが、
え?まだそこ?って感じで。」
「あはははははは!!そうだね。
3人の別れのあいさつは最初は握手だったから。
うぶいよねー。ん?その話?」
「違います!その!」
「んー?ああ!いい人がいるのね?マースに。そのひとの相談?」
「そうです!」
「ふむ。わたしは、異国の出身で、ここの、そのなんていうかな?
結婚の仕組みとかに疎いんだけど、男の人が、通うんだよね?
女の人のところに。で、その場合女のひとのことを娼婦だというんだよね?」
「そうです。」
「じゃ、いま、マースは娼婦?」
「・・・・。違います。」
「あれ?そうなの?
てっきりいい人ができたんだとおもったよ?
だって、きれいだもの。今まさに咲き誇る寸前って感じで。
恋は女をきれいにするね。
これは、感覚だけの話じゃないよ?
からだがそうなるんだ。いい男を捕まえるためにね。
それと同時に精神も不安定になる。
どうして?って。
その不安を解消するためにだれかに相談するのもひとつの方法だ。
自分と違う別の意見を聞いて、
それで、自分の気持ちを確かめる。
人の意見を鵜呑みにしてはいけない。
ああ、鵜呑みってわかる。まるごと受け入れるってことなんだけど?」
「え?わかります。ミウのように丸のみするってことですよね?」
「ミウ?動物?鳥?4本足?」
「4本足です。シシの群れの近くにいます。
シシの食べかすを狙ってるんです。で、すべて食べてしまいます。」
「おお!!それ、おいしい?」
「!食べません!!」
「あ、そうなんだ。
うん、はなしが逸れたね。えーと?
マースがいいなって思っている人はいるけど、
通ってはいないと?でも、なにかとお話はする?
ああ、贈り物もある?
なるほど。
で、部屋には来ない?
なるほど。」
「それで、その、母もそうなんですが、ご近所の方が、
あれやこれやと。」
「ああ!なんていってるの?」
「その、わたしの婚約者のことは?」
「結婚の約束をすれば、婚約者っていうのね?
んー、館で働いていたんだよね?その関係は護衛業として把握はしているよ?
辞めてどこかに行くって。
そのどこかが、セサミナ様に害をなさない限り後は追わない。
彼は問題ないから今はどうしているか知らないよ?」
マトグラーサの砂漠か、すでに埋まっているかだ。
「それはもうどうでもいいんです。
ただ、婚約者がどこかに行ったということは皆知っています。」
「婚約者じゃないだろ?元だ。というか、元婚約者というのもおこがましい。
他人だ。それが?」
「うふふふ。ええ。他人なんですが、そんなことがあったから、
母は心配して、廻りは、その、」
「おもしろおかしく?いらぬことばかり言ってくる?」
「はい。わたしを悪く言うのはかまわないんですが、
その、いま、お傍付き見習いになっている、カップさん、なんですが、その、」
「おお!カップ君!優秀だよね!
マティスも彼は強いって言ってたよ?」
「え!そうなんですか?マティス様が!すごい!
でも、御前試合で負けていました、あの兄に。」
「あははは!カップ君は槍術を本格的に習い始めたのは、
ニックさんが来てからだ。で、次席ドーガーは強いのよ?
そうは見えないところがまた強い証拠だ。
そうか、マースのいい人はカップなんだね?」
「わたしはそう思っています。
だけど、部屋に来てくれないんです!
毎日会っているのに!夜は部屋に来てくれないんです!」
「んー、これ、ほんとに内緒なんだけど、
彼は夜の仕事も多いのよ?それはお傍付きの家族としてわかってるよね?」
「もちろん。でも、一回もないんです!」
「そうか、不安だね。いま、次の会合のことで、
皆忙しいんだ。寝る暇もないほど。
待っててあげて?大丈夫、わたしの見た感じでは、
マーサだけを、見ていたよ?」
「・・・・。」
「ふふ。おばさんに任せなさい!」
「モウ様がおばさんだなんて!
だったら、カップの悪口を言うあの人たちは
婆です!!」
「婆って。悪口ってどんなの?」
「彼に、故郷にいい人がいるからわたしは遊ばれてるんだって。
わたしはその、前のこともあるからわからないだろ?って。」
「なにそれ?そんなこと他人には関係ないのにね。
故郷にいないよ?それは、ほれ、身元と身辺は確認するから知ってるんだ。
仕事を変わったばかりだからね。
きっちりしてからにしたいんだろう?
その方が男としてわたしは責任があっていいと思うよ?
なんせ、雨の日は来月だ。
準備も仕事もあるからね。
どっしり構えとけばいいよ?」
「でも!」
「ん?いいよ?なんでも言ってみな?」
「カップの悪口を言うくせに、
あの人たちは自分の娘をけしかけているんです!!
わたしたちのこと探ってるんです!
傍付きになったことは皆知っています!
雨の日にカップの家に行くつもりなんです!」
「え?それありなの?事前のその、やり取り無しに?」
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マティス様の家に火をつけた女たちが今度はカップを狙ってるんです!
兄は先に結婚を公言しましたし!
今一番狙いはカップなんですよ!!」
「うわー!あの子たちが?
それは、なんというか。
あー。わかった。んー、あのね、これはわたしから聞いたって言わないでね?
で、誰にも言ったらだめだよ?
カップ君、こっちに家を構えたでしょ?
それ、仕事があるからじゃなくて、マーサの為に越してきたんだよ。
せめて雨の日の半月前には家を構えないとダメでしょ?
だから、バタバタで、やって来たんだ。
マーサの為にこっちに来たんだよ?」
「!!」
「今日の半分にはセサミナ様の移動で王都に向かう。
カップだけ、明日にしてもらう。」
「そんな!仕事優先です!!」
「いや、仕事だ。
単独で入都するコットワッツの従者になんて言ってくるかも確認しないとね。
セサミナ様はもちろん、筆頭、次席、
護衛赤い塊には何もできないが、
新顔の従者になにか吹き込むかもしれないしね。」
「カップに危険は?」
「ないない。どっちかというと相手の心配をするべきだね。
良し!じゃ、早くお帰り。きっと今日訪ねてくるよ?
確実に落とせよ?」
「はい!」
このことはセサミンに報告。
(しまった!そうですね。隠密としてずっとそばにいてましたし、
それ以外は従者の仕事を叩きこまれてましたから)
(だろうね。お給金は渡してるよね?)
(もちろん)
(じゃ、遅れて様子を見ることは仕事だとして、
それとなく、ゆってあげて?)
(わかりました)
これで、一安心かな?
しかし、怖いな、あのお嬢軍団。
あ、手土産用意する?
いや、そこまですると、おせっかいだよね。
んーん。青春ですなぁ。
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