いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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しかし、自画像か。
たしか、普通にうまかったと記憶しているけど。

絵がうまいというのは才能だな。

「マティスもうまいし、セサミンもうまいよね。あははは。
そういうのって受継がれるよね。環境もあるんだろうけど。」

セサミンもわたしの話を紙に書き上げていく横に書いていた
スケッチはうまかった。

「受継ぐ?領主の力ですか?」
「いや、違うよ。んー、親子や兄弟って似るよね。
それと同じ、得意分野も似る。
でも、それは育つ環境にも左右される。
ちょっとした疑問や興味を持った時に、調べることができる環境、
試すことができる環境。
例えばよ?楽器一つにしたって、親がその道で生きてるとしようか。
子供も興味は持つよね?で、使ってみたい、教えてほしいってなったら、
最強の先生がいるわけだ、それが親。
親が押し付けてそれを完全に拒否する子供もいるだろうけどね。
子供の可能性は無限だ。
それを隣の家で見ている子供も同じように習えるわけでもない。
だって、教えを乞うにはお金もいるだろうし、
そんな時間を取らすこともできないかもしれない。家の手伝いとかさ。
でも、本当は隣の家の子もものすごい才能があるかもしれない。
いつか自分で習得するんだって頑張るかもしれない。
だけど、楽器?なにそれおいしいの?っていう環境なら、
興味も習得もできない。
だから子供の学校は広く、浅くいろいろなことを教えるんだ。
ああ、違うな。
選択肢があるということを教えるんだ。
ま、理想論だけどね。
教える先生は何もかもに精通している必要もない。
ただ、そういう道に進みたいのなら、どうすればいいか、
一緒に考え、調べてくれるだけでいい。
頭ごなしに否定はいけない。
そんなの出来るわけがないとかね。
与える教育は広く浅くだ。
求める教育は深く、深く。
こんなことわざがあるよ。
もともとあったものに付け足したらしいけどね。

井の中の蛙大海を知らず
されど空の蒼さを知る

蛙ってカエルのことなんだけど、
ここのカエルじゃないよ。
飛べるしね。
井戸の中に住んでいる生き物のことね。
それは、海の広さ、そもそも海なんか知らない
世間知らずだって。
だけど、毎日見上げる空の青さを知っているんだ。
どんな小さな変化も知っている。

ふふ。でもさ、
海のことを知る必要はないよね?
だって井戸から出ないんだもの。
必要ないものを知る必要は当然ないんだ。
空の青さも、今日は濃い、薄いって見てるだけでは意味はないんだ。
空色が薄くなったらどうなる?
濃くなったらどうなる?
いろんなことを結び付けていかないと。
ああ、これも固定してしまってはダメなんだ。

海を知る、もし、鳥が飛んできて、
海って知ってる?って話を聞いて興味を持てば、
調べればいい。
調べる方法がなければ、井戸から出ればいいい。
しかし、それが正解だとは言わない。
干乾びて死んでしまうかもしれないしね。
ありがたいことに人間はそこまでお間抜けではない。

外に出たら、水がないかも知れない。
準備しようってなるね?
それもさ、外に出たら水がないかも知れないってことを
知っているからこそできるんだ。
砂漠石が取れなくなる。
だから、準備をしたよね?
それは知識だ。

一つ聞いてもいい?
砂漠石が取れなくなる。20年の蓄えはある。
別の産業も順調。
砂漠石はよそから買えばいい。
じゃ、砂漠石がこの大陸からすべてなくなったら?
月無し石の話では、なくなることはない、新たに生まれるという。
時間がいるけどって。
でも、人が考える時間の長さと、彼らの時間の長さは違うんだ。
1日、2日だと、何とも思わないかな?
それがひと月だったら?
突然に砂漠石がただの石ころになったら?
願っても、大きなものを用意しても何も起こらない。

まず何が困る?
火だよ。
人の進化のまず最初にあるものは言葉と火だ。
砂漠石を使わずにどうやって火を起すか知ってる?」

「・・・・。」

「でね?そのことを考えたの。
もしかして、それを知らないから砂漠石が使えるのかもしれない。
砂漠石の代わりがあれば、砂漠石が無くなるかもしれない。
わたしの故郷は砂漠石がない代わりに科学が発展した。
この大陸は砂漠石があってこその世界だ。
知らずに済むことは知ろうとしない世界だ。
不必要な知識は忘れてしまうんだろうね。
だったら、なにも考えないほうがいいかな?」

「・・・・。
姉さん。そのことは考えるべきことではない。」

ほら、ここでストップ、制御がかかる。


マティスは一緒に考えてくれる。
それは、わたしの為にだ。
わたしが一人で悩まないように。
自らは考えない。疑問も思わない。
必要ないからだ。

砂漠石を利用したことなら喜んで聞いてくる?


「・・・・。
そうだね。途方もないことを心配するのは愚かだ。
昔の人なんだけどね、空が落ちてきたらどうしようって。
心配で眠れなくなる話。
それだね。
砂漠石はここでの絶対だ。
うん。なかなか、それになれないからね。
ふふ。だけど、言われてみればそうだ。」
「愛しい人?
そうなったとしても、あなたはなにも心配することはないんだ。」
「ほんとうだ!マティスがいるものね。
それにみんなもいる。ルッションさんの心配が移ったんだね。
あ!しまった!」
「ど、どうした!」
「たこ焼きは普及してって頼めばよかった!」
「工房の中にはなかったぞ?たしか、小さなものは作っていただろ?」
「あの鞄の中にあったのかな?だったらいいんだけどな。」

月無し石君が潜り込んだのは見ていた。
5つもだ。

「なんですか?タコヤキ?」
「小麦粉の中にタコイカがはいってるの。ほくほくのあつあつ。
王都でつくったげるね。天ぷらアイスも。
これは廻りがホクホクで中がアイス!」

「「すごい!」」

護衛はカップ君に任せて、
ルグとドーガーは外に出ている。


わたしの写真や、そのほかのことには反応しなかったけど、
天ぷらアイスには反応して姿を出してしまった。


まだまだ未熟ですよ、カップ君。


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