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683:理解者
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(なんだ?今、ムムロズの屋敷だ、来るのだろ?)
(問題が出ました。
ムムロズの屋敷ということは取引をするということですね。
わたしの代わりにツイミを。モウが安心するでしょう)
(食事だぞ?お前が来れないとは!愛しい人が心配するだろうが!)
(いえ、仕事優先でしたら問題ないでしょう。火事騒ぎの件ですよ)
(戻らなくていいんだな?)
(ええ、逆にツイミの身の安全が確保できますから、
そちらで預かってください)
(?)
(ナソニール絡みです。
ツイミは本当に優秀なんですよ。彼に人が群がる)
(チュラル達には?)
(そこまでの関係は知りません。母君のところも大丈夫でしょう)
(油断するな?なにかあれば、愛しい人が嘆くぞ?
お前が死んでもそれは仕方がないと思うだろうが、
子供たちに何かあれば、気持ちを押さえられない)
(それは十分に。臨時会合で正式に副院長に納まります。
それまではここにいないほうがいい。
あとはツイミの話を聞いてください。
揺らいでいる。あなたに聞いてもらえればいいでしょう。
ガイライ殿と今一緒にいますので)
(わかった)
「・・・・・・
それで?ワイプは?」
「モウ様には火事の後始末と、あの2人の鍛錬だということにしましたが、
ナソニールが遁走しました。
領主、その兄弟、一族すべてです。
領地解体競売ということに。
そこに、スクレールの資産、土地が絡みます。
スクレールは飛び地で保有しているところがナソニール領内にあるのです。
その地があれば廻りの土地の価値が数倍跳ね上がる。
スクレール家の当主が王都に戻っていることは皆が知るところに。」
「?名乗ったのか?」
「いえ、おそらくはオート院長の奥方といっていいのか、
その予定の方から漏れたのだと。」
「あれか?」
「ご存じで?」
「愛しい人に殺気を送っていた。」
「え?」
「ああ、愛しい人は別に何とも思っていないから。
それでは前当主が存命なのは?」
「そこまでは。いずれ漏れましょうが、資産の譲渡は済んでおります。
問題は無いと。」
「では、その話はいいな。ほかになんの問題がある?」
「・・・・わたしは、ナソニール領主の長子です。
母は最初の子ですが、皆女です。
弟が次期だと言われていましたが、正式には決めていませんでした。
何も取り決めがない場合は領主の兄弟よりも長子に権利がある。
わたしたち親子が外に出された時点で権利は何もかも放棄しています。
しかし、それを証明するものがない。
石を使えばわたしが長子だということは疑いようがないのです。
わたしを領主、いえ、都合のいい管理者にしようとしています。」
「だれが?」
「中央院とおそらく、マトグラーサです。」
「?」
「わたしが名乗りでれば、わたしが領主になる。
優遇されるのです。もちろん、それでだめなら競売なのですが。」
「それで?」
「・・・わたしは、モウ様に御大などと呼ばれる人格者ではないのです。
あの焼却場のことはただ知らなかっただけだ。わたしに話が来ていれば、
同じように利用していたかもしれない。
弟たちに対して涙する資格なぞないんですよ。
ほかにも人様に、モウ様に言えないことは多々あるのです。」
「はは!だろうな。
それは愛しい人も言っていたぞ?決して善人ではないと。
それで、脅されていると?」
「直接ではないのですが。遠まわしには。」
「お前は?お前はどうしたい?」
「このまま、資産院に。」
「ならばなにも心配はいらない。ん?何が不安なんだ?」
「わたしは、モウ様のお役に立ちたいのです。
わたしのようなものが傍にいていいのでしょうか?」
「お前はワイプの役に立つ。そのことで愛しい人は安心をもらっている。
それにお前を尊敬している。ワイプとは別にな。
故郷で唯一尊敬している人物がなまこを最初に食べた人物だと言っていた。
それがこちらにもいたのだ。それだけで十分だ。
それでも役に立ちたいと思うならそうすればいい。
お前はガイライと同じで神聖視しすぎだ。
今までのことで心苦しいことがあるなら
先に話してしまえ。
そして、叱られろ。
次から気を付ければいい。
彼女はわたしの愛しい人なのだ。
緑目の私のな。だから彼女も緑目なんだよ。
他のことにはほとんど心は動かない。
わたしと同じでな。
それなのに、ワイプとガイライ、セサミナのことには心を砕く。
セサミナとガイライはいいだろう。身内なのだから。
なぜワイプに心を砕く?」
「・・・。
モウ様はやはり武人。上を目指す、
いえ、上を倒してこその武だとお考えなのでは?
まずは師を超えるという目標がおありなのでしょう。
それを声高に発するのは武人として品位に欠けるというもの。
己の手で倒すのならともかく、
他のことで疲労なさるというのは許せないことなのでしょう。
それはまさしくマティス様と同等の志。
しかし、それを言うのもまた、気恥ずかしいものが有るのでは?
その、やはり女性というものもありますし、
第一はマティス様のことが優先ですし、
なかなかに武に邁進することはできないのでしょう。
その間に、ワイプ様に何かあってはいけないと、
常にこころ配りだけは欠かさないのでは?
そこはやはり、マティス様と同じではないかと?」
「!!!!!!そうだったのか!!
ん?しかし、それをなぜ私に言わないんだ?」
「なかなかに心の内は言葉で出せないものですし、
モウ様もただ漠然とお考えなのかと。
聞くところによるとそれほど武の世界には
馴染みがないとか。ただ、漠然とそうお考えなのかなと。
これはわたしも武には疎いのでそうなのかなと。
それを察し、そっと見守るのはマティス様のお役目ですね。」
「・・・私は分からなかった。」
「そこは、マティス様は武の世界に長い。
ですが、一般生活では砂漠での生活が長かったからとしか。
経験は何物にも代えがたく。
そこはそれこそ、これから気を付ければよろしいかと。」
「!さすがだ!!
ツイミは愛しい人の御大だが、私の理解者でもあるな。
だから、迷いなく愛しい人の役に立ってくれ。
決してワイプの為ではない。」
「もちろんです。ありがとうございます。」
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