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681:気合
しおりを挟む知っている限りの話。
物語や映画、漫画で見た破滅の話。
ここでは王の言葉、砂漠石が絶対だということが当たり前のように、
わたしはこれがダメなものだという世界で生きてきた。
テンレの顔色がどんどん悪くなる。
カリク、ムムロズもだ。
「ああ、テンレ殿。ご安心を。今は欲しいとも思わないでしょう?
よかった。大丈夫。二度と吸わない限り。
これはわたしの故郷の話だ。ここでは違うかもしれない。
ただ、御父上、カリク殿が商売のことを、
これからのことを安心したといっても、
2の次3の次にしてしまうほど力があると。
いま、あのザスをよりにもよって
その効果が強くなる筒で吸っていたあなた方に
話をしたのは、わたしたちの料理を喜んで食べてくれたからだ。
素人行商の商品を扱ってくれたからだ。
そしてニック殿の知り合いだからだ。
これで義理は果たした。
今後、もう一度、少量ならいいだろうなどと手を出して、
その後どうなろうと、わたしは何もできない。
いいですか?わたしは何もしない。
このクインタ殿が泣きついてきてもだ。
あなた方の知り合いが、あなた方の知らないところで、
同じように依存症になったとしてもそれも知らない。」
「そこまで、そこまでの危険性を言うのならなぜ止めない!
なぜ大体的に公表しないんだ!!」
「ふふ。わたしは他人がどうなろうとどうでもいいんですよ。
もちろん、わたしの知り合いが手を出していたら1度は警告しますよ?
一度だけだ。
それにね、公表すれば広まる。陸鳥の卵よりも銃よりも。
あっという間に大陸に広がる。それを目的とした戦争もあるだろう。
国が禁止するのは廃人だらけになって税収入が減ってからだ。」
「そんな!ネウロカートは何を考えている!!」
「ネウロカートとて世界を滅ぼそうとはしていない。
だって、働いてくれる労働力をなくしたいわけではない。
現に、あの袋のまま、普通に吸えばいいんだ。
まさに趣向品だ。
味を濃くする、煙を濃くする、
中の比率を変える、それさえしなければいい。
筒の細工、濃度が濃くなる方法は隠匿を掛けたんですね?
よかった。だったら、まずは一安心だ。
あなたがそれを売らない限り。
細工無しでザスを楽しむ分はかまわないと思いますよ?
ただ、それでも、わたしは好まないだけ。
だけど、きっと誰かが別の方法でどうにかする。
人の進歩、欲望は天井知らずだ。
自分の守れる範囲ですればいい。
ああ、カリク殿。その筒の細工、先に隠匿を掛けてくれていてよかった。
そんなことができるんなんて知らなかったから。よかった。」
やっぱり好きならとことん研究するよね。
それは分かるし、その結果がどうなるかは結果が出ないとわからない。
気付いた時点で辞めるというのは難しい。
だって好きだからね。
・・・・。
使う目的もないのに火薬を作っておくというのはやはり問題か。
隠匿があろうとなかろうとわたしは作ることができるのだろう。
どうする?
科学者が費用を湯水のように出してくれる
悪の組織に流れるというパターンだな。
「・・・モウ殿?あなたは、そこまでの危険性を認識して
あなたは何をしたんだ?何をするんだ?」
ムムロズが聞いてくる。
「先ほども言ったように、知り合いがザスに、
このネウロカートから来るザスに手を出すのなら、
今回のように話はする。辞めるようにね。
それだけだ。」
「・・・・コットワッツ領主が扱えば?」
「?同じだ。
それでも、扱う、本人が吸うとなったらそうかとだけ。
いや、2回だ。身内には2回だ。」
「回数ではない!!」
「ほかに何がある?」
「あなたのことは知っている。
異国の石使い赤い塊。その曾孫だと。
石使い赤い塊は、
瞬きをする間に目に見える範囲に高い塀を作り上げ、
銃創でからだが腐りかけているルポイド元首の傷も治した。
部屋の端から端などとお粗末なことではなく、40人以上を移動させる。
ラルトルガの端から王都まで!
しかも好きな時に好きな場所へ移動ができる力を与えることができる。
ニックがそれで王都とフレシアを往復しているんだ。
赤い塊一族は石使いの才にずば抜けている。
そんな力を持つ曾孫だ。
ガイライとツイミも移動してきたんだろ?
もっとなにかできるはずだ!」
「曾祖父のことは今は置いておこう。
我ら赤い塊一族のことも。
石使いとして抜きんでていることができるとしよう。
わたしは、それが出来ないからここにいるんだが、
それも今は置いておこう。
移動はかなりの石を使った。
で?なにかとは?それもわたしが考えるのか?
そして、一個人が皆のため、見ず知らずの人のために世界を奔走するのか?
その対価は?なにを差し出すんだ?
全財産か?売る側、ネウロカートにすれば国を挙げての事業なんだぞ?
それを一個人で押さえろと?
ネウロカート国を滅ぼせと?
国が無くなれば生きていくことができる人間は一握りだ。
雨の日に生まれる赤子も死ぬだろうな。
その対価を出せると?テンレ殿の腹の中にいる赤子を差し出せるのか?
これから未来に夢を馳せるクインタ殿の心臓を差し出せるのか?
それとも、リングかそこらで解決しろと言ってるのか?
それほどのことができる力を持つ赤い塊がリングごときを欲しがるのか?
では、国を寄こすか?それに国民皆が従うのか?
国すらもいらない。赤い塊は。
己さえそれに手を出さなければ済む話を、
なぜ他人がそこまで世話をしなければいけない?
危険性を知ってるか知らないかの差だけだろ?
だから知り合いと身内には話をしている。
しかもだ、大前提にそうかもしれない話でだ。
これ以上何ができる?
これについてもっと確定的なことを調べてから話せというのか?
また話が戻るが、それをわたしにしろというのか?
その対価は?な?同じ話だろ?
しかも、それを調べている間に蔓延する。時間がない。
これから起こる戦争がそれを加速させる。
それこそ知っているのだろ?
数年以内に大陸を巻き込んだ戦争があると。
カリク殿は大事なことを話していない。
数年以内に戦争があれば、自分の体力では不安があるから、
譲ったんだ、あなたにね。
途中でトップが変わることは下の者にとっては
不安しかない。今だ、今がギリギリの交代時期だったんだ。
ん?この話、クインタ殿?誰ぞに聞いたな?
だから顔役にとって代わろうとしたか?
ははは!それはあとで父君に話せ。
クインタ殿はまだまだ子供だ。成人してもな。
子供の特権はまだ使える。教えを乞え、あらゆる手段で知識を吸収しろ。
遅くない。これからだ。それがお前が目指した管理者なんだ。
頑張れ。
話がそれたな。
そう、わたしは違う。管理者ではない。一領民だ。
できる範囲のことを、良心に基づいて行動しているだけだ。
わたしは臆病者で卑怯者だ。
己の心の安寧のみ求める。
それは我が半身マティスの為だ。
逆に聞こう。ムムロズ殿?
あなたはこの話を聞いて何をする?
中門街に生活する何百人の頂点に立つ顔役として何をする?
何ができる?」
「・・・・。」
「と、聞いたところで、わたしは何も思わないし、
何もできないと言っていいだろう。
では、何かできるであろうと考えるわたしを捕えるというか?
ダカルナのように?
それができると思うのか?
ここにいるマティスをはじめ誰の手を借りることなく
わたしはお前を押さえることができるぞ?」
「小娘が!!」
「破!!!!」
気合は破壊の破だね。
イメージすればよりよく圧を出せる。
すかさず、マティスたちはカリク殿、
特にテンレ殿に守りの気をまとわせる。
ムムロズだけに仕掛けているが余波はある。
守るためではない。
わたしが傷つかないためだ。
ここにいる密偵の見せるためだけのこのやり取り。
さぁ、どうでる?
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