いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「ムムロズ殿?
ガイライは知ってますよね?
彼、ツイミ殿を紹介させてください。
わたしが御大と呼ばせていただいている方です。」
「ああ、モウ様、そのように言われると。」
「いえ、当然のことです。
こちらが、ムムロズ殿です。
ニックさんのご友人で、この中門街の顔役です。
此度、カリク殿から引き継いだとか。」
「そうでございますか。わたくし、資産院副院長代理のツイミと申します。」
「ムムロズです。カリクが顔役時には補佐の立場だったので、
資産院に対しては何も言えなかったが、これからは良く話し合いの上で
いろいろと取り組んでいきたい思います。
わたしも、若き頃資産院い在籍していたことがありますので。」
「ええ。そのようで。
が、此度はモウ様の補佐ということで。
資産院だということはお気になさらずに。」


それは嘘だ。
がっちり把握するつもりだ。
が、それをムムロズさんが見せるはずはない。
ん?ということは、モウモウ商会のことはがっちり把握するということか。
んー、それはいいんよ、後払いがなければ。
多くとられて還付されるっていうのは気持ち的にはうれしんだけどね。
そういう仕組みはないんかな?
後で聞いてみよう。

2人で当たり障りのない、いや、ある意味恐ろしい税金の話をしている。
こわい。

「モウ?」
「税金怖いなって。ガイライはどうしてたの?」
「?」
「お給料もらうでしょ?あとから国にお金取られなかった?
商人が売り上げに対して1割の税を納めるみたいな。
天引きされてたのかな?」
「ああ。新年に1年分をいただいて、年末に使わなったものを返します。」
「なにっ!え?じゃ、使わないと損じゃない!
もちろん100%使ってたよね?」
「ええ。」
「よかった。返してたっていったら、
昔のことだとしても、説教しちゃうところだったよ。」
「・・・・。」
「ん?」
「その、大抵は足らないので、追加で申請するんですよ。」
「・・・。どれぐらい?」
「副隊長以上は年に2回申請が許されています。なので、3倍?」
「・・・・・。」
「モウ?」
「それはもとから、その3倍が正規の給料だ。
あんたは1/3の給金で仕事をしてたんだよ!!」
「いえ、十分すぎるほどなんですよ?」
「だけど!!そんなのダメだ!ちゃんと請求しないと!
自信をもって請求するべきだったんだ!!
報酬無しで仕事をすることが偉いんじゃないんだよ!
対価としてのお金なんだ。そういう仕組みなんだよ。
街の人の感謝だとか、自分の満足感が報酬とかいうなよ?
それは別だ。
要求できないほど手を抜いてたわけじゃないんだろ?」
「!それはもちろん。」
「そのときの状況が分からないから、これ以上は言わないけど、
これからはきちんと要求しなさい。
ああ、でも、わたしも同じ立場だったら、請求してないな。
うん、わかるよ。それで、仕事は当然、請求してもいいくらいのことを
していたはず。でも、それは自分で評価してるだけなんだ。
しかも自己満足の何者でもない。
そして組織の中での評価はない。
組織で働く以上、成果を出すのではなく、見せないと。
そして評価してもらわないと。
うん。我が息子、よく頑張ったね。
そして、我が臣よ。
これからは、わたしに目に見えての成果を見せておくれ?
それを評価する報酬もきちんと与えよう。」
「はっ。」
「ん?でも、ガイライとニックさんが分隊になって
財政が助かったって師匠が言うくらいだから、
その3分の1のお給料でもすごかったと?」
「ええ。」
「ちなみにおいくら万円?」
「10万リングです。」


コットワッツ出の価値は1リング1万円。
王都では1000円ぐらいだと思っていた。
1億、2回追加して合計3億円。
5億リング足らないというのは、
5000億円足らないということ。

「うん。高給取りだ。
うん、ガイライの感覚は正しい。
庶民はそれ以上請求できない。
それを全部使いきるだけでも偉いよ。
うん、偉そうなこと言ってごめん。
ちなみに住んでたところの家賃は?借りてたんだよね?」
「わたしの借りていたところは、年1万リングです。」
「んー?32番地の10倍?部屋数は?」
「1部屋です。」
「・・・・。それって、その収入はどなたに?」
「屋敷の持ち主ですね。王族ですね。
軍部に一番近いところだったんですよ。」
「なるほど、人気の物件ってことか。んー。
いや、もう、この話はやめておこう。金銭感覚がおかしくなる。」
「それは、わかります。」

わたしもガイライも庶民なのだ。
ガイライも対軍となればいいのだが、
自分の生活のことになると、かなり遠慮が出てします。
それが軍再編成で言葉は悪いが、
よく動く燃費のかからない人材が無くなったんだ。
そして指導力がある人材も。
組織として成り立たなくなるのは現場で働くものが困るけど、
馬鹿な上層部だけが困ればいい。

資産院は大変だな。

部屋に入るとカリクさんは出来上がっていた。
テンレさんもだ。

後継者は決まり、孫は素直になった。
娘も自分の夫の実力をやっと公表できる。
婿の、その手腕は認めている。売り上げも伸びるだろう。
憂うことはないもない。
好好爺だ。

しかし、そこまで変化するのは早くない?

傍らにはいかにも装飾華美の筒があった。
ザスだ。
2人ともザスを吸っている。
多幸感があるという、その作用?
室内にはその匂いもしないし、マティスもなにも言わない。
待っている間にタバコを吸っていた、という感じか?
そんな短時間も我慢できないのか?

「さ、どうぞお座りください。」

円座にすわり、次々と料理が運ばれてくる。
もちろんキャムロンとスーリムは外してもらっている。
18番門内で食べたものの豪華というか、豪快版。
ダイナミックだ。
豚が丸ごと出てくるのだが、
肉は食べやすいようになっている。
さっそくマティスが運んできてくれる給仕に話を聞いている。
料理人も呼びだしたようだ。
女将を呼べ!という奴か?

順番なんて関係ないようでどんどん食べていく。
ニックさんとムムロズさん、そしてツイミさんとガイライは
そうそうに酒にシフトしている。
カリクさんとテンレさん酒プラスザスだ。

わたしとクインタはがっつり食べている。

「これ、おいしいですね。」

豚の丸焼き。
北京ダックのように表面がカリカリで、少し甘いのだ。

「18番門でのポットは有名ですが、
ここでは豚の方がおいしいんですよ。」
「そうなんですね。特別に育ててるとか?」
「油実、エカーナの実ですね。その油をとった残りです。」
「やっぱり食べ物なんだよね。うん、おいしいな。」
「あの。」
「はい?」
「あの、食事会でたべた甘味はどうやって作ればいいんでしょうか?」
「アイス?うふふ。好きなお味でした?」
「ええ!」
「あれの作り方はコットワッツで販売中の冷凍庫についてるの。
冷凍庫買う?」
「買います!」
「ま、それはコットワッツと取引して。
いまは、持っているものを出すよ。バニラと抹茶と、プニカね。
鍋ごと出すから、食後に出してもらって。
わたしたちからの手土産ということで。
食後に出してもらえればうれしいな。
背負子に冷凍庫ごと入れてるから
取りに行こう。」
「はい!」

「どこへ?」
「手土産を出すのを忘れていましたので、それを。」
「モウちゃん、俺も手伝うよ。」
「お願いします。」

なんだろう?
ニックさんが立ち上がった時に、
カリクさんとテンレさんが眠ってしまった。



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