いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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674:ボチボチデンナア

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(ガイライ?)
(モウ!どうしました?なにかありましたか?)
(ううん。順調。ちょっとバタバタしすぎなような気がするけど
そっちは?)
(そうですね、こちらもバタバタといった感じでしょうか?)
(いまからカリクさんのところに行くんだけど、ご飯どう?)
(そうですね、少し前に呼んでもらえますか、わたしが移動します)
(ん?来れる?)
(ワイプが弟子の元に行けたのでしたら、主の元に行けるはず)
(なるほど。じゃ、ご飯前になったら呼ぶね)
(おねがいします。ルカリはいい仕上がりですよ?)
(おー。うん、陸鳥相手には上出来って言われたから!)
(また?)
(詳しくは後でね)
(はい)




(師匠?)
(モウ!ご飯には早いですよ?)
(うん。今からカリクさんのところに。来れますか?)
(もちろん)
(ガイライも来れるって。移動で来るのを挑戦するみたい。
師匠が弟子のわたしの所に来れたから、主の場所にも行けるはずだって)
(カリク殿の屋敷ですよね?わたしもそれで移動しましょう)
(ふふ。呼びますね。距離0で移動してマティスに殺されないように)
(それは気を付けますよ)
(ん)


「師匠もガイライも移動で来るって。」
「愛しい人の体に触れるような移動ならワイプは死んでもらうぞ?」
「はははは!感情をのせればワイプは殺せんぞ?場数が違う。」
「鍛錬だ!鍛錬!!」
「そうだな。10番から15番まで門外を走ればそれなりにいるだろう。」
「滅?」
「嫌か?」
「・・・うん。」
「では殺さずだ。だが、体がいかれれば、以降は食っていけんないんだぞ?」
「気絶のみ?」
「仕方がないな。では、気絶だけだ。
骨を断つな、身を切るな、当然血も流すな、臓物の破損も禁止、音を出すな。
この条件だ。
ワイプは得意だぞ?」


そんなこと言ったらマティスのやる気が満々でしょうに。
しかし、あて身?首に手刀?
それ、ニックさんのは気絶してる?
痛さに悶絶、気を失ってるんだと思う。
デルサートルの砂漠でした時は言霊要素が強かったんだろうな。


「それ、眠れっていえば寝ちゃいます。
それに師匠の場合は相手は死んでます。」
「そりゃそうだ!モウちゃんの言霊は禁止な。」

顎に入ればいいのか?
ボクシング的に?
チン?こめかみ?
脳震盪だ。
鳩尾は?呼吸困難?


「あまり考えこむな?
臓物の強打ぐらいでな。」
「はい。」
「マティスもな。」
「応。ニックは?」
「そうだな。その間は空を蹴りながら見ておこう。」

盗賊と遭遇するまで三つ巴。
技を出していく。

「声出しで。」
「「え?」」
「こう、円月殺法!!とか?稲妻落とし!!とか?
こう、かっこよく?溜めてから技を繰り出すと。」
「いや、その間に殺されるぞ?」
「いやいや!こっちの人って待ってくれるって!
で、倒れそうになるまえに、お前はもう、死んでいる!っていうの!」
「いや、殺さずだから。」
「言うだけだから!」
「・・・・。」
「ニック、やらしてやってくれ。ダメならあきらめるはずだから。」
「もう!マティスまで!!
サ行組は山師で賞金稼ぎなんだよ?」
「なにその設定?」
「ほら、殺さずだから、すこしすれば気付くでしょ?
あの強い3人組は誰だ!!ってなった時にさ、
名乗っておいた方が、砂金の話もあれだけ強いんだ、ありえるなって!
信憑性がでる。
15番に入ったら、変装も解くからね。
謎の集団、サ行組!!」
「愛しい人?後付けだな?」
「・・・・うん。なんか、楽しくしたくって。」
「楽しくなぁ。そう考えてるほうがいいのかな?
感情を出さないでいるとな、普段も感情が出にくくなる。
タンダートは最初死んだと思った。だが、なにも思わなかった。
話したように、死体の処理が面倒だなってことだ。
酒を呑んでいる間はいいんだ。うまいって思える。
モウちゃんと会ってから感情は動くな。
酒もうまいが飯もうまい、笑いもあるし、
なんといっても泣けるんだ。
そうだな、これは鍛錬だ。楽しくいこう!」
「はい!」
「ニック?後悔するなよ?」
「え?」
「じゃ、練習しよう!!」
「え?」



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



・・・・・練習。
え?これを言うの?
この型で?

 
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



「いいところに来たな!さ、その荷物おいて行け!」

「聞けぃ!!我ら、ササ !」
「セセ!」
「ソソ!!」
「「「3人合わせて!サギョウグミ!」」」
「我らの前に山は無し!我らの後ろに屍の山ができるのみ!
いざ!我らの秘奥義受けてみよ!!」

「へ?」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘




10番から13番までは変わるがわるにやって来た。
なかなかの鍛錬だと思う。
ニックさんはしきりにおなかをさすってた。
笑いを我慢して痙攣をおこしそうだからとのこと。
マティスは無だ。ニックさん褒められていた。
わたしは右ストレートを繰り出し、顎狙いでノックアウト。
褒められました。
しかし、必殺技の詠唱は却下されました。

「愛しい人?あなたがその必ず殺す?必殺?それをいうと、
意識せずに本当に死ぬのでは?
戦闘中はなかなか制御しにくいだろ?」

・・・。
後ろで、ニックさんがものすごく頷いている。
「モウちゃんが言わないなら、俺たちもやめておこう!」

最初の名乗りのみになりました。

それでも、黙って、近づけば皆が崩れ落ちていくのを
傍から見ていれば恐怖だろう。
うん、サ行組恐るべし作戦は成功したということにしよう。



「顎とこめかみか。」
「頭蓋骨、頭の骨があって、
その中に考えをつかさどる臓器があるんエ。
それが首が支点で顎が力点?で、
御脳様が作用点でこう、ぐわんって動くのね。
で、崩れ落ちると。
御脳様は繊細だからね。」
「んー。頭が揺れるってことだな?」
「そう。で、顎、こめかみが一番良いと。」
「気を失うのは御脳様を守るためなんよ。
だから、もしかしたら、あんまりやりすぎるとお間抜けになるかもしれん。」
「強盗やってる時点で間抜けだろ?」
「そりゃそうだ。」



14番門当たりに来るとぱたりと強盗は出なくなり、
三つ巴の鍛錬。
14・15番門外はとカリクさんのおひざ元だからだ。
10番から13番まではなかなか目も届かない。
いや、わざとだな。強盗するなら勝手にと。
出るとわかっていれば、街道を通るからだ。

15番門の手前で、変装をとって小奇麗に。
またお金を払って中に入る。

ジェフェニさんのパン屋さんを見に行こう。
晩御飯まえなのに結構賑わっている。
買ってそれを晩御飯にするんだろうか?


「ジェフェニさん!もうかってまっか?」
「あ!モウさん!えーっと!ボチボチデンナア?」
「くふふふふ。そうそう。いい感じだね。手伝おうか?」
「助かります!パンもそうなんですが、
月が昇る前はゆで卵が売れるんです!」
「やっぱり晩御飯のおかずか。お総菜屋さんもいいかもね。」

半熟の味付け卵を作ろうか。
針で穴をあけてから作り冷水に入れれば剥きやすい。
冷凍庫で氷は作れるからね。
お醤油と、お酢とすこしのお酒、すこしの樹脂蜜。
ああ、いい匂い。
これは半分は絡ませて、半分は一晩おいておこう。
キャムロンも売れている。
調理は目の前でしているので、誰でもできるはずだが、
出来立てをジェフェニさんの笑顔付で買ったほうが何倍もおいしいのだろう。
一言二言をかわすのも、
感謝の言葉がある。
気遣いがある。
いいね。
マティスはパンを焼いている。
ニックさんは味付け卵の付けダレを作ってる。
お!赤粉、メイガもいいね。
わたしもどんどん、ゆで卵を作り、ポテトサラダも作っていく。
明日も出せるからね。
ラップが欲しいけど、ゴムのフタとか?
洗って使えるのがエコだけど、
おトイレの後ても洗わない感覚じゃ逆に怖いな。
ぬれふきんでいいかな?


「ジェフェニ?明日なんだが?あ!!」

クインタだ。

「こちらに!
父が探しています。門番から連絡があったのに
屋敷に来ないからと。」
「そうなの?飯は食いに行くんだから待っとけばいいのに。
せっかちだねぇ。」
「でも、ご飯の用意してくれるんだから、そんなこと言ったらだめだよ。」
「それもそうだ。クインタ?5人で行くからよろしくと伝えてくれるか?
それで?ムムロズは陸鳥に追いついたか?」
「え、ええ。でも、その、ニック、殿に騙されたと。
えらく怒っていました。」
「あはははは!臭かったんだろうな!
膜を張れないからな。」
「あ!そうだね。悪いことをしたね。」
「愛しい人、それはわざとだ。」
「あはははははは!!」

ひでー。




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