いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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672:おしろい

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宴会です。
それはかまわないんだけど、
ニックさんはまだトイレに行ってないようにおもう。
お願いだから行ってください。
わたしもここのトイレに頑張っていく。
水を流すタイプだ。よかった。


ここの宿屋に泊り客はわたしたちだけ。
お嬢一行はあの日1泊しただけで19番門に向かったそうだ。

「俺のところに泊りはなかったがな。
なんでも、家同士の喧嘩があったらしい。
仲裁に入ったのが中門街の顔役でな、
そのときに雇われた男たちを引き連れていったんだよ。
お嬢たちの護衛は転がされてたよ。
へたに手は出せないからな。王都のえらいさんだからな。」
「あはははは!それは楽しいな!」
「そうなんだよ!しかも、最初はあの剣のマティスの奥方狙いだったのに、
今度はダカルナ国の妃狙いだ。」
「それって全員が?」
「そうだよ?」
「でも聞いた話ではダカルナ国の人もいたって聞いたけど?
じゃ、自分の国の王様に嫁ぐってこと?
あれ?親戚かなんかじゃなかったけ?」
「?親戚でもいいんじゃないのか?」
「あ、いいんだ。」

3人娘は嫁いだと言い切ったけど、
自分のところの国王が嫁を決めるって言ったら
乗り換えるんだ。
3人とも娶るのかな?いや、来るもの拒まずな王様なんでしょ?
最初から嫁いどけよってはなしだよね?
ひとり首をかしげていると、ここの宿の主はああ!と声を上げた。

「緑の3人娘のこと知ってるんだな?」
「緑の!ええ。3人とも緑の目で3人で嫁に行く?
嫁ぐって。その話聞いてすごいなって思ったんですよ。」
「俺も見たよ3人娘。
あんたたちが持ってきた土蜜を売ってくれって。
ここの宿屋みんなにうったんだろ?
みなで買占め合戦だったんだよ。うちにもあるだろうって来たよ。」
「あ、売れたんですか?」
「もちろん。半分だけな。儲けさしてもらったよ。
あんた達ももう少し後でくればもっと高値で売れたのに。」
「それは残念だ。でも、あの時がいい時だったんですよ?
例のお酒を造っているだろうという村にいったら、
ちょうど引っ越しするときで。残ってるお酒を売ってもらえましたから。」
「え?引っ越し?」
「なんでも水が出なくなったとか?新しいところで新たな
お酒を造るっていってましたよ?」
「水が?それは大変だな!え?新しいところで水は出たのか?」
「そうみたい。でも、早酒は仕込めなかったから、
領主さんのところに相談に行くって。今年の雨の日は長いでしょ?
食料が乏しいって。」
「そうなのか。なんだ、言ってくれればいいのに。
いや、言われても、結局は領主に相談しろっていうしかないか。」
「そうですよね。新しいお酒ができれば、
それを買うことで助けになりますよ。
楽しみだしね。」
「そうだな!」
「で、緑の3人娘って緑の目なんでしょ?対象はなんなんでしょうね?
嫁ぎ先が変わるんだったら、旦那が対象じゃないんだ。」
「ああ、あれ、緑の目じゃないよ?」
「え?そうなんですか?」
「みたらわかるよ!」

あ、鋭い人だ。
だけど、砂漠石のコンタクトレンズはわからない。

「白目の中に緑だよ?見えてるのが不思議だよ。」
「何か目に入れてると?」
「そうだろうな。」
「う、痛い。」

演技でなく想像だけで、痛い。


「それにな、ダカルナ国の娘と言っても、
国王とは他人なんだよ。妃が37人いるんだ、その身うちだけでも
大人数だ。国王の義弟の大伯父って他人だろ?」
「それなんで知ってるんですか?」
「うちの宿の前で、喧嘩があったんだよ、スダウト家の娘と。」
「おお!」

名前はたしか、ルリチちゃん。

「土蜜があるなら出せって、3人娘とスダウト家が来たんだよ。
同時にな。
で、やっぱりスダウト家に気に入られるほうがいいだろ?
そっちに売るのが得策だろ?
そしたら自分の大伯父は国王の義弟だって。
それ他人だろってスダウト家に娘に言われてな。
そこから小競り合いだ。」

おんなじやり取りやってるんだ。

「でな、ダカルナ国王にこのことを進言するって。
スダウト家だけは妃に選ぶなとさ。」
「え?そんなこと進言して、そうだなっていう王様なの?」
「あはははは!知らんよ。だけど、スダウト家の娘は笑ってたぞ?」
「どうして?」
「そういってもらえれば、王の眼に確実に止まるってな。
自分を一目見れば必ず妃に選ぶだろうってさ。」
「すごい自信だね。」
「そうだろ?」

会ったとたんそうなるって夢見る夢子なのか?
なにか手段があるのか?
あったのならどうしてマティスと会った時にしなかった?
できる手段を手に入れた?
それはなんだ?
白い粉?
コールオリン?
ルリチは買っていないはず。
コールオリンは関係ないのか?

エフエと一緒にいたビアガムは白い粉が入った袋には
コールオリンはなかった。


考え込んでいると客人がやって来た。
パーニュさん一行だ。


「パーニュ!どうした!」

ここの宿のご主人と知り合いか?

「フォンナ、わたしもここ、10番で宿屋をすることになった。」
「どうして!!」
「その話はまた詳しく話す。ソソ様のお泊りの宿がお前の所でよかったよ。
ソソ様のほうが早いとはさすがでございます。」
「裏から来たんだがな、18番をでたところすぐで襲われたよ。
折角買った馬車もバラバラになった。
身軽になったから思ったより早く着いたんだよ。」
「襲われたと?」
「そうだ。金を持ってるでも思たんだろうかな?
出るときにあるだけの砂金を使ったんだけどな。
ああ、ここの宿の金は払ってるよ?
で、飯を食う金がないからここで食ってた。」
「そうですか。これは、何とも言えませんね。」
「いや、どこの手のもんでもどうでもいいさ。
なんにせよ、それは金にならんからな。」
「さすが、ササ殿です。それで、宴会?
フォンナ、得したな。サギョウグミの振る舞いはうまかっただろう?」
「ああ、今までで一番うまいよ。酒もな。」
「ああ、うらやましい。が、それよりもソソ様、よろしいですか?」
「約束だからね。道中で練習したの?」
「それが、一族を集めるのに時間がかかりましたし、
飛ばしてきたので、何もできず。」
「そうなの?じゃ、ちょっと練習してから声かけて?
ここを出るのは月が沈んで半分だ。
月が沈むまで練習してね。
わたしもちょっと準備があるし。
ああ、先にもう一度、一人見本を見せるよ?
パーニュ殿のお母上?代表してよろしいか?
みな不安がってますから。」

強引に連れてこられたんだろう、みなものすごく嫌そうだ。
一番ご年配の方の後ろに控えている。

「母さん、よかったな。」
「・・・パーニュ?あなたの考えは母からは何も言いません。
最後の責任はあなたが取るんですよ?」

母ちゃんがあきれてるよ。
その気持ちはわかるなー。


「ご母堂、さ、こちらに。セセ?皆に甘味を出してあげて?
ササ?お酒と肴もね。」


「あなたがソソ様?」
「どうぞ、ソソと呼び捨てに。
我らは山師なんですよ。とあることで大金を手に入れましてね。
一生の思い出にとタフト街道で豪遊を。
その時のおふざけをパーニュ殿が気にいてくださって。
あのミフィルとの取引材料にすると。
さすがの胆力ですね。」
「そうだったんですか?
なにやら興奮して戻ってきてね。
一族の女衆みなあつめてここに。
道中説明はありましたが。
ミフィルの化粧は皆しっていますよ。
だけど、1回1万リングはなかなか手が出ません。
みなでお金を出し合って、1人にしてもらおうって
そういう話まででていました。」
「それは賢いお話ですね。」
「ふふふ。その一人に誰がなるかもめたんですよ。」
「あー、わかります。だけど、わたしがご母堂を指名したとき、
みなほっとなさってましたよ?」
「それはそうでしょ?パーニュがするんですよ?
それに、わたしも不安です。」
「母さん!」
「それを微塵と感じさせないのは、さすがですね。
さ、準備は出来ました。足湯と角質取りはサービス、おまけですよ。
パーニュ殿!!始めるよ!!質問随時!」
「はっ!」

リカーナ婆様コースだ。
およそ40分のコース。
指毛もきれいに。


「ご母堂?終わりましたよ?」
「母さん?起きて!みんなに見せてやってくれ。」
「・・・もっとしてほしかったわ。
それで、すこしはきれいになったのかしら?」
「もちろん。さ、皆に。
わたしは、あなたのように年齢を重ねていきたいと思います。」
「あなたの言葉は気持ちがいいわ。」
「ありがとうございます。」

マティスの出す甘味に絶賛を送っていた女性陣は、
そのまま色目を使っていたようだが、そんなことは無駄なことだ。
そのいらだちが大きくなる前に終わってよかった。
マティスとニックさんからは、
はよ終われー、と連絡は来ていた。

その女性陣に今度は母上殿が囲まれている。
今のうちに部屋に戻ろう。

(ニックさんは?)
(俺はここでもう少し話を聞いておくよ)
(了解。追加の肴出しときます)
(おう!)




「お疲れ様。ん?ご機嫌斜め?」
「何度も唯一の伴侶がいるといっても、お構いなしだった。」
「あははは!それだけマティスがかっこいいということなんだよ。
わたしはうれしいよ?
その時は、かっこよく断ってね。ますます惚れるから。」
「そうか!しかし難しいな。
ニックがとにかく黙っておけと。」
「はは。それは正解だ。
愛想笑いすると、その微笑はわたしだからと言われても困るからね。
といって妻のほうがきれいとかなんとかもダメだしね。
んー、笑わなくていいよ。
みんな惚れちゃうから。商売の時だけ。
お買い上げしてくれれば、ありがとうございますとね。」
「それはあなたもだ。愛想笑いはいいが、それ以外はダメだ。」
「ん?わたしの笑い顔でそうなるかな?
慰労会もルポイドでもみんなドン引きだったでしょ?」
「・・・。」
「ん?」
「だから笑わなくていい。」
「そうなの?」
「私だけに。」
「ん?うふふふふ。そうなの?わかった。」

マティスはかわいいなー。
わたしが笑ったってだれもなんとも思わないのに。
ん?大笑いは下品かな?気を付けよう。
あ、福笑い作ろう。大うけ間違いなし!

「何をするんだ?」
「あの白い粉見てくる。
マティスは悪いけど、この陸鳥の砂を乳鉢でもっと細かくしてくれる?」
「ニュウバチ?すり鉢?」
「違いは何だったかな?食品か鉱物か?
なんせ、細かくしてください。白磁で作ったから。」
「わかった。あなたの横でしていてもいい?」
「あ、そうだね近くにいて。何かあったら困るしね。」


袋の中身は白い粉だ。
ナルーザから入荷するキャムロンのえさに混ぜるもの。
菌糸、微生物。
なんせ生きている何かだ。

ここの生き物は仕事という概念を持っている。
仕事、雇い主が望むことをするから報酬を得ていると。
白い粉の場合は雇い主が望む動作、行動を望む相手に施す。
その報酬は何なのか?

わたしたちが持っている素材、食料、
全てを少しずつさらに入れてどれに群がるか観察結果。
本命はコールオリンだ。

離れるときにいったのだ。
お前たちがこれの為に仕事をしているというのはどれだ?
好むものではない、仕事でもらう報酬だ。
それを教えてほしい。
その後に、好みの物を選んでほしい。
順番だ。
一応撮影しているということは伝える。
ごまかしは効かないよ、という意味でだ。



(仮称)クリーンルームに行くと、全体に靄がかかっていた。

「爆発的に繁殖したとか?巨大化したとか?
まさか、虫になったとかあ、ダメ!」
「生きているかどうか確かめよう。袋に入れる。」
「ああ、こっちの袋に。マティスは微生物とか、菌とかわかんないでしょ?
わたしの中での生物の括りとマティスとでは違うから。」
「そうだな。これに?」
「うん。」

わたしは既にマティスの背中に避難している。

『白い粉だったものはここに』

「全部入ったんじゃないのか?」
「じゃ、みんな死んだんだ。」

『生き物に害がないのなら袋からでよ』

害はない?
ただの粉?
インターバル撮影したものをざっくり見たが、
やはりコールオリンに青く着色したものも、黄色も、何もなしも集まっている。
その後は?
あれか、海でほぼ裸で踊った時のお捻るにもらった球体にか。
そこから、ボムって感じではじけて真っ白だ。
球体がはじいたのか、球体事態に変形はない。
んー?
最終的にはコクとスーに相談だな。
それまでできるだけ実験しておこう。



白い粉っておしろいになるかしら?

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