いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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664:山師

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「んじゃ、18番門街から行くぞ。」


わたしたちは山師だ。
とある場所でごっそりと砂金を見つけた。
ウヒョウヒョと散財しようと庶民のあこがれタフト街道に。

師匠の資産を全部使うつもりだったが、
あまり豪快に使っていると問い合わせが来るらしい。

「めったに問合わせなんてないんですが、
あなた方のその勢いだとおそらくあるでしょうから、
リングではなく、砂金にしてください。」
「じゃ、砂金だせよ。」
「・・・・。」

呼寄せは、そこに確実にあると把握しないといけない。
その量も含めて。
表面は砂なのだ。金銀は下の層にある。
砂と鉱物では砂の方が軽い。
だが、水に入れると、鉱物が浮き、砂が沈む。
砂も特殊だが、水も特殊と考えるほうがいいのだろうか?

セサミンたちも、砂漠での金銀の呼び寄せでは大量に集められなかったのだ。
もっと研究して、この砂の量なら、これだけの含有量というのを
把握すればできるだろう。
が、砂漠でも、多いところ、少ないところとある。
集める場所の確実な含有量の把握が必要だ。
1平米の量を把握するために、
水に沈める作業をしても、隣の場所ではまた違う。
だったら素直に水に沈めるほうが早い。

もっと、アバウトでいいはずなのだが、
彼らにはできなかった。

切羽詰まっていればできるだろうが、どこかで制限がかかっている。
なので、師匠も集められない。
謎袋は今回なにが起こるか分からないから、
師匠がわざわざ資産院に預けたものだ。
このことで2割減る。
師匠にとっては許し難しだろうけど、
それでも預けたのは仕事のためだ。
さすがだ。

「後払いです。」
「どこで採ってきたのか聞かれたら?」
「言ってはダメですよ?
砂金のなかに砂漠の砂一粒も混じっていてはダメです。
あの陸鳥が食べていた砂があったでしょ?
あれを混ぜてください。少しだけね。
必ず調べるはずですから。」
「だったら、混ぜてるものは嘘だって逆におもいませんか?」
「思ったとしても調べるでしょ?
それにあなただから砂一粒まで取り除けるんですよ?
そして、金がどこかに大量にあると思うはず。
あれの話に信憑性が出ます。」
「信憑性も何も、調べればすぐわかる話ですよ?」
「確認をする時間は与えれないんですよ、この場合。
それこそ調べればわかるんですから。
話をする前に金を出すかだなないかの交渉です。
金がある噂はさきに把握している。が、どこにあるか分からない。
嘘は見抜けますから。
その駆け引きです。
あれもわかっているはずですよ。」
「はー、なるほど。
では、砂金で豪遊するのもお仕事ということですね。」
「そうなりますね。」
「3つだ。」
「なんです?マティス君?」
「原石、18から20番門の調査、砂金の噂。
3つだ。」
「そうなりますね。
1件10リングですから、30リング?」
「「「なんでだ!!」」」

この件はリング以外で返してもらおう。

軍資金の用意をしていざ出発。
3人で現時点での100万リング分の砂金だ。
一般的な背負子にずっしり詰める。
鍛練にもなる。


腕に自信があるので、裏から一気に18番門に。
一生の思い出に豪遊するよ、ということだ。

タフト街道に身分は関係ない。
金が正義だ。

「3人?一人、100リングだ。」
「たかっ!聞いた話、1人20リングって!」
「それは1番から6番。ここは18番門だ。
そりゃ高いだろ?それが出せないんなら帰ったほうがいい。」
「いやいや、親切なお兄さん。
聞いた話とちがうから驚いただけだよ。
それにね、がっぽり稼いできたから大丈夫。
3人で300リングね。
そこで、親切なお兄さん、あと200リングだすからさ、
ちょっと教えてくんない?」
「なんだ?」
「ほれ、うちら3人ぱっと見、田舎もん丸出しだろ?
実際そうなんだけどさ。
でもね、憧れのタフト街道で遊べるだけは稼いできたんだよ。
だけど、やっぱり相手をしてくれないと思うんだ。
まずは服をどうにかしたほうがいいと思うんだ。
どっか案内してくれないかな?その後もさ。18番から20番まで。」
「へー。よっぽど金を持ってるってことか?」
「うん。でも、ないしょだけど、堅実に稼いだもんでもないからね、
濡れ手にチャクって感じの金は身に付かない。
だから散財していい想い出を買うんだよ。」

粟では分からんだろうからチャクで。

「いいな!まずは服だな!
で、飯。あとは一級品の買い物。
あんたはあれだけど、あと100も出してくれれば、
きれい処がいるところも案内できるが?」
「行く!行く!!」
「え?あんたが行くの?」
「もちろん!きれいなものは男であろうが女だあろうが
いいものはいいんだよ!!」

ニックさんはどうだかわかんないけど、
マティスが行くと迷惑かな?
だって、興味を示さないのは分かってるから。
きれいなおねいちゃんが気を悪くするかな。


「いや、しかし、女相手に女が何するんだ?」
 「ん?個人対個人?」
「え?皆で?え?」
「あー、いきなりレッツラゴーなのか。
そうじゃなくて、きれい処が踊ったり、おいしいお酒とおいしい食べ物。
それで、さりげない気遣い。そういうお店? 」」
「?」
「違うのね。じゃ、それは無しで。」
「そうだろ?後ろの2人は?」
「いらん。」
「うまい酒とうまい飯だ。」
「わかった。じゃ、行こうか。」
「あ、先にね。これね。」

リングが入った袋を渡した。
いくらぐらいになるんだろう?
価値が分からなくなっている。
コットワッツでは1リング1万ぐらいだった。
王都は1000円?ここでもそれぐらい?
いや、もっとだ。
100円?
200リングなら2万円?

「ソソよ、もっと奮発してやれよ。
それで、きれい処はいいからさ、
あんちゃんのおすすめのお店紹介してもらおうぜ。」
「任せとけ!」

ソソはわたし。
そうだねっていうところを ”そそ”っていうからだ。
じゃ、ニックさんは酒好きだからのササ。
サ行の2文字縛りで行くと
マティスはどれだ?
シシは嫌われもののイノシシもどきの名前、
ススは煤なので、セセとなった。

ササ、セセ、ソソのサ行組だ。


「どこのもんなんだ?」
「ん?どこってわけじゃないけど、いろんなとこ廻ってるよ。
サ行組って呼ばれてるけど、しらん?」
「サギョウグミ?知らないな。」
「うちらもまだまだだね。ササ、セセ?
山師サ行組の名前を大陸に轟かせようね。」
「いらん。」
「うまい酒とうまい飯だ。」
「・・・あんたら、そればっかだね。」
「はは!なんでもいいさ。
ここは18門街。タフトのうまい肉はここの門外で作ってる。
王都の肉よりうまい。」
「たのしみ!!
あ、先に言っとくけど、キャムロン?あの虫関連はダメなんだ。
うちの婆さまの教えでさ。これだけは食うなって。
これ、まもんないとあとでロクなことがないの。それは避けてね。」
「そうなのか?キャムロンはうまいんだがな。
こっちの出身なんかな?
昔ながらの職人は食わないから。
しかし、ばあさんの教えというのは守るもんだよ。俺のところもそうだから。
破るとほんとろくなことがない。
その後のばあさんのそれ見たことかっていう顔がさらに腹が立つ。」
「わかるー!!!」

変なところで盛り上がってしまった。
ほんとうの話だ。母さんもそう言っていたから。
向う脛に怪我をしたのも、枕を踏んずけたからだ。

そんなことしたら足を怪我するよ


あれ?頭が悪くなるだったかな?
膝小僧で歩いた時だったかな?

なんせ、あとで

だから言ったでしょ?
と言われるのだ。

これがまた、腹が立つやら悔しいやら。
だから、きっと守るべきことなのだ。


「わかるか?」
「わからん。が、ソソが言うことは3割真実だ。」
「そうか。
ん?じゃ、残り7割嘘じゃないか!」
「だが、3割真実だぞ?的確に。」
「それは怖いな。」


後ろ2人うるさい!



「まずは、もうすこしいい絹地を着たほうがいいな。」

うん。
わざわざかなりランクの低い服を着ているからね。
一番最初は服飾屋に連れていかれた。
そこは布地とそれから作った服、オーダーメイドでも作ってくれるようだ。

「いいな!!」

マティスが大興奮だ。


確かに大判のレースだ。ヤツマさんが話していたものだろう。
1束単位で買うお客様はめったにいないそうで、
最初、門番が連れてきたわたしたち3人組をみて、
顔には出さずに嫌な気持ちをまき散らしていたが、
いの一番にいい布を手に取り、褒めちぎり、
その間に門番がおそらく上客だと耳打ちしたのだろう、
奥から次々に商品を出してきた。


「ソソ!あなたが着る服はわたしが作りたいが、
今は仕方がない。せめて私が選んだものを着てくれ。」
「へいへい。あんまり露出してないもので、寒くないのね。
で、ドレスはダメ。ズボンで。」
「・・・わかった。」
「セセよ、俺のも選んでくれ。 」
「・・・端から、5番目のものを。」
「見てないじゃないか!ん?これか?んー、これでいいか。」


アラビアンな服装である。


「これはいかがですか?」

ご機嫌な店主が出してきたものは、うん、刺繍布だ。
色とりどりの刺繍布。
あの青の刺繍を見ているので何とも思わない。
さらに上を行く白い刺繍をみているセセは何とも思わないだろう。
それでも、おそらくはいいものなんだろうな。

「青が多いですね?」

この店に入った時にも思ったのだが、
全体に青色が多いのだ。


「ああ、青ね。」
「どうしました?」

店主は、大きなため息をついて、
椅子に座ってしまった。
わたしたち相手に、丁寧な接客も言葉遣いもやめてしまったようだ。
必要ないしね。マティスはお勧めを無視して自分の眼で見て、
気に入ったものだけ買っているし。

「知ってるだろ?青のドレスの話。」
「んー、聞きかじりなんで、けっこうそれどうなの?って感じなんですが、
とある男の好みが青のドレスっていうことで、
年頃の娘さんがこぞって青のドレスを着たがるとかっていう話?」
「簡単に言えばな。
その男が雨の夜会に来るってなってな、
すぐに青の発注がかかったんだよ。在庫もみんな出てね。
そこまではいいよ。
それが出来上がる前に、今度は赤の発注が来た。
手配済みも青じゃなくて赤にしてくれって。
その次は刺繍布だ。
もう色は関係なくなった。
とにかく青はいらないとさ。
雨の夜会用だとしてもこんなことは初めてだ。」
「あー、それはなんとも。
変更が一番難儀ですよね。しかも色なんて。
けど、その男のために着飾るんですか?噂話程度しか知らないんですが、
1人の男の方を巡っての女の闘い?
その男が、その好みのドレスを来た女を選ぶってこと?
そのひとを見ずドレスで?」
「はははは!違うよ!」
「え!違うんですか!!く、詳しく!!」

ものすごく食い付いてしまったのは仕方がない。

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