いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
635 / 863

635:籠便

しおりを挟む
「いい状態だが、匂いでわかるぞ?」


マティスに死体もどきを見てもらったが、
問題はやはりプニカの匂いだ。
血が流れているのに甘い匂い。

わたしのこだわりなんだけどな。

「えー、師匠は?わかります?」
「ええ。」
「俺は分からんかったぞ?」
「わたしも匂いではわからなかったですよ。」
「んー。2人は特に鼻が利くからね。
でもなー、うん、匂いね。研究してみましょう。」

とりあえず、小さなテントの中に。
ちゃんとベットの上だ。即席だけど。
起すまで寝てもらっておこう。

マティスとジェフェニさんは、
待っている間に、窯でできる料理をいろいろ作ってくれていた。
丸焼きも。
いい感じに焼けている。


マティスが言うには全く料理と無縁だったジェフェニさんは
よい生徒だったとか。
マティスはお料理を教えるのはうまいよね。
自分でも努力したからなのかな?
武は最初は本当に、んん?だったけどね。
今は大丈夫。
なるほど。わたしも成長したってことだね。

できたパン類は、
セサミンとトックスさん、湿地組、ツイミさんのところにも
ブラス籠便で届けている。

この配送サービスだけで食べていける。
できないけどね。

そしてお店で販売していく一押しパンも作ったようだ。
ちょっと固めのパンに、
フォアグラペースト、ポットの薄切り、さらし玉葱。
これらを挟めば、うまうまとしか言いようがない。
フォアグラ、やっぱりキャムロンがおいしいのだ。


「ここはお肉類はどうしてるんですか?
陸鳥は食べれないでしょ?」
「12と18のナソニール側でポットを育ててますよ?
だけど、このポットは肉そのものがうまい。」
「でしょ?
こちに来る前にね、ベリアバトラスの荒野で仕留めたの。
ああ、大型の冷蔵庫で運んだのよ?」


わたしが寝ていたテントはそのままだ。
あの中にあるのだろうとおもってくれるはず。
それにいまいち地理的距離はわかっていないようだ。


「知り合いが来るから、
ジェフェニの移動パン屋さんをお披露目しよう。
キャムロンも目の前で調理すれば皆が食べれると思う。」
「早く食べたいんですけどね。
みながそろってから?
では、先に、モウ?」
「なんだ?ワイプ?」
「あなたもいっしょで。」


ジェフェニさんは、ご飯の用意だ。
ガイライと、ニックさんはジュリエット作戦の練習。


で、2人して叱られました。


「あの手合いの実験は先に報告するように。」
「先に言えば、先入観がはいります。
師匠をも騙せるようなジュリエット作戦でないと!」
「そのじゅりえっと?それはなに?」
「話せば長いですですが、結婚を反対された娘が、仮死の薬をのんで、
その状態を見た恋人がほんとに死んだと思って、自分も死んじゃう話です。」
「・・・。」
「わたし的にはお間抜け満載の話です。」
「わかりました。仮死の状態。それを作りたかったと?」
「はい!」
「早く愛しい人に経験させないとダメだろ?
お前をヤレと言ってるんだが、どういうわけか仮死の話になった。」
「・・・。」
「最初はやはり極悪人だと決めているんです!」
「では、ダンダートを追ってくるものがそれでしょう。
それにしてください。」
「はーい。」
「ん?来たな。カリクだ。
横の男は?最初の食事の時に見てた男だろ?」
「あれ、ニック殿の同期なんですよ。
資産院、つまり暗部の方で、
資産内では数字の方で引き抜かれて富豪の嫁を貰ったと
あこがれの方なんですよ、数字組に。
嫁が欲しいというのは若いときにはもっている欲求ですね。」
「おお!ニック世代は当たり年ですな!ホウ姐に報告せねば!」
「・・・・あの男も好みの類に入るのか?」
「そうだね。なんせ、年上はいいね。
ホウ姐のおすすめポイントなんよ。
わたしも、話を聞いてなるほどって!
あー、カリク殿とか、ジェフェニさんまで行くとおじいちゃんになるから。
テルマおじい様もおじいちゃん組。
うん、ニック世代、現役!いいよ!」
「また、ホウなのか?どうだ?強いのか?」
「そうですね。少し鍛錬をさぼっていたようで。
が、あっという間でしたよ?盗賊相手に。
ニック殿は、お嬢組の護衛には手を出してませんから。
その相手にです。それなりのものだったんでしょうが。」
「それなりでしょ?
奪って来いって言われて、それに同意するんだから。」
「難しいですよ?仕事ですからね。」
「んー、そうなるのか。」


馬車から降りてきたのが
ムムロズ殿とカリク殿だったことに驚いたようで、
ジェフェニさんが駆け寄っていった。

「ムムロズ様?カリク様も?」
「ジェフェニ?どういうことだ?なぜモウ殿といっしょに?」
「ムムロズ殿?それは食事をしながらで。
向こうに水桶が有りますから、手を洗ってください。
温かいタオルも出してますから。
さ、頂きましょう!」




「では、卵採りは辞めた、辞めさせられたと。」
「皆で決まったことのようで。一度戻った時にそう言われました。
俺が卵と餌を交換しなくなったとわかれば、
陸鳥も違う奴と交換するだろうと。
どうやら俺は餌を与え過ぎていたようです。
だから、賢い陸鳥はそれに味を占めて、他の者では交換しないんだと。
言われてみればそうかもしれないです。
うまそうに食べるのがうれしくて。
帰るときにも、また来てくれと、ぴーぴー鳴くんですよ。
可愛くってね。自分の卵、いや、もちろん、
余剰分だろうけどそれをくれてるんだ、
せめて腹いっぱい食べてほしいと思っていたのが、
いけなかったようで。」


いや、違うよ?
あの朝の男は一人で行くんだろうか?
食われるか?最初は量が少ないから卵を渡さずに見逃すか?
それが続けば食われるな。

「それで、この移動式窯と冷蔵庫、冷凍庫を買いまして、
パン屋をしようかと。
ええ、お嬢ちゃん、モウさんとティスさんにご指導いただいて。
パンも自分で焼けるとは驚きです。
茹で卵と、キャムロンのペーストを作りました。
自分で加工したんですよ。
目の前で作れば客に出してもいいんじゃないかって。
ダメでも、いろんなパンを売ろうかなって。
これはまだ、誰もしていない商売だ。
カリク様の許可を頂ければと明日からでも始めたいとおもいます。」
「ティス殿にご指導してもらったのか?素晴らしいな。
どのパンもうまい。ああ、かまわない。どんどん作って売ってくれればいい。
キャムロンは、必ず声をかけてから売るようにな。
昔から言われていることだ、それを守るのが大事なこともあるから。
わたしも食べてみたいな。目の前で作ってくれるか?」
「ええ。すぐに!」

作り方は簡単だ。
丸焼きがダメなら、皮をむいて焼くしかないんだから。
そうすると、油となって溶けてしまう。
だから、小麦粉かカタクリをまぶして焼くか、
容器にいれて湯せんすればいい。これで火が通る。
ペーストにしてしまうならこの方法がいい。
あとは潰すだけ。そのままでおいしいのが素晴らしい。
ハーブとか、白ワインとかを使えばさらにだが、ここでは簡単に。


「それだけ?」
「ええ、簡単なんでおどろきました。
冷蔵庫で冷やしておけばさらにいいとか。
しかし、目の前でするならこれになります。
さ、どうぞ食べてください。これと、コーヒーをつけて、売ろうかと。」
「どこで?」
「門外近くで。」
「まずは、中で店を出しなさい。わたしが手配させてもらうよ。
いますぐに外で商売は危険だ。
わたしの配下ではじめてくれ。
クインタのことで迷惑をかけたな。
クラロもいいようにおだてられてるようだ。」
「そのクラロさん?
彼の名において、わたしはここでの商売は出来なんですよ。
怒らせたようで。」
「え?」

そのときのいきさつをジェフェニさんが説明してくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...