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605:6番門郊外
しおりを挟む食事が終わったあと、そのまま6番門に進み、5人分の入門料を払う。
首から下げているのはモクヘビを染めてがま口をつけたものだ。
モクヘビは木に擬態をするので、きれいな模様が出ている。
薄い色の部分のみ染めてみれば、なかなかに面白い柄が浮かび上がった。
艶はあえて出していない。マンザスの枝を煮詰めたもので洗えば、
マットな感じが上品だ、と思う。
このシリーズで小物類を展開しようと考えているのだ。
「1人30リングだ。」
「20リングではないのですか?」
「先月より6番以降は値上げだ。砂漠石でもいいぞ。
その場合、合わさりの大きさで一人10個だ。」
合わさりの石で5リングってゆってなかった?
それが10個?
「石はないので、リングで。
5人まとめて、150リング出します。」
逆さ木の実の蔓で束ねた、1本50リングの物を3つ、がま口から出す。
「7番からも値上がりしているんですか?」
「ここで買い物をする者たちにはどうってことないだろう?」
「なるほど。」
1リング100円感覚?
ティータイでは1リング1万円だったんだけど。
高いな。
中に入れば、なるほど、豪華だ。
街灯もある。夜でも砂漠が近いわけでもないから、24時間営業中ということか。
街灯の光で月の光も見えない。
砂漠石?鏡で反射させているのだろうか?かなり明るい。
1番門街から5番門街までとは違って、商品は並べていない代わりに、
店構えがみな趣向を凝らしている。
大きな窓にその店の一押し商品を見せているようだ。
「食材とか、食堂とかは?」
「2つか、3つ飛ばしにあるな。8番が食材、9番が短いが
食堂というか、食い物屋だ。
もちろん、寄るよ?が、その近くが、裏街道だ。
そこに卸しているものを扱ってる。卸さないものもな。
両方見るのがいいだろう。虫も、大丈夫か?」
「もちろん!そうか!ニックさんはキャムロン食べてないね!
なかなかにおいしかったよ?ちゃんと処理したよ?」
「あの話な。初めて聞くぞ?」
キャムロンを食べると操られるというスー兄の話だ。
寝る前に焚火を囲みながらおしゃれに飲もうと思っている。
その時のつまみに出そう。んー、贅沢だ。
街道から北にそれて、ピクト側を進んでいく。
鍛練をしていないようだが、荷重は12だ。
10以上にできるのね。
石畳ではないので、沈む。浮くこと、飛ぶことはこの鍛練では禁止だ。
が、空気を蹴るというのはいいのだろうか?
「空気の話ですよね?」
師匠たちはあきらめてはいない。
空気を見せるにはどうするかだ。
プクプク?風船?風?
「あのプクプクが空気ですよね?
で、それを袋に入れたのがこれ。」
ゴム風船ができればいいが、凝固剤やら安定剤がいるはず。
お願いでできるが、今はいいだろう。
砂漠石の薄い袋でいい。
半透明だからイメージもつかみやすいはず。
「ふくらんでますね。中に入っていると。」
「そそ。で、こ、弾力有るでしょ?どこにも逃げないからね。
んー、だから、祖Rを逃げないように寄せ集めているという感じ?
それ動かしたり、蹴ったり。風を起こせるんだから、
そこにとどめておくのも大丈夫でしょ?
で、蹴る。じゃ、ぼよよーんって。」
砂漠石の袋に入れた風船を各自に持たす。
マティスはすぐに受け入れたが、この3人はどうだろうか。
「マティス君は理解できてるんですよね?」
「愛しい人が目の前で見せてくれているからな。
それにできると。走るときに右足、左足と意識しないと同じで、
あるんだから蹴ることができると考えればいい。」
「ああ、なるほど、あるんだからですか。」
そんな話をしながら、荒野にと出る。
「それで、陸鳥ってどこにいるんですか?」
「人を見つけたら寄ってくる。
卵が食べられるとは知らなかったがな。」
「餌もらって、卵を提供してるってことですよね?
ニワトリみたいに無精卵を生むのかな?」
「ん?」
「ニワトリの卵って、温めたらみんな孵るわけじゃないでしょ?
雨の日前に産む卵だけが孵るって聞いたよ?
ガルッスは孵るんだっけ?卵自体は小さいから食べないみたいだけど。
だから、陸鳥もそうなのかなって。」
「?」
「オスとメスが交尾して、温めれば孵る、ヒナが産まれる卵を、
餌の為とは言え、人間に取られたりしないでしょ?
それとも、毎回その卵採りの人と攻防してるのかな?」
「咥えて持ってくると聞きましたよ?」
「さっきの店主さんに?」
「ええ、モウを紹介する前に。陸鳥の卵は珍しいなと聞くと、
そのように。」
「・・・その卵ってホントに陸鳥の卵?」
「え?」
「来たぞ。」
「どこ?あれ?モフモフじゃないのね?」
正に水飲み鳥が集団でやって来た。
卵を確かに咥えている。
「餌と交換?」
「らしいぞ。何と交換だって言ってたんだ?」
「チャクやカンランだと言ってたな。」
「あるか?」
食料関係はわたしたち2人の担当だ。
チャクは煎って使えばいろいろと使えることが分かったので
大量に仕入れている。
「ありますよ、チャクとカンラン。」
チャクとカンランだと
なんだ
見ない人間だからもっと別の物だとおもったのに
いつもの奴と同じだな
帰るか?
そうだな、今日はこの卵でいいな
チャクとカンランでは卵と交換できないってわからせないとな
んー?
「トウミギとかリンゴとか、
干し肉とかあるけど、キトロス、プニカ、ダクルも。
ああ、季節物はテオブロマかな?」
ピーと鳴いたかとわしゃわしゃとすり寄ってきた。
「あははは!やっぱりモウちゃんは動物に好かれるな。」
「愛しい人?どうした?」
ニックさんが笑っている。
こうなると思っていたから笑ってたのね。
言葉が分からなかったからわたしも喜んでただろうけどね。
なんか、この媚び方も嫌だな。
肉がいいな
あいつらの肉も食べ飽きたしな
知らないものもあるようだな
トウミギがいいな
キトロスは久しぶりだな
ピーピーすり寄ってくる。
んー?
「卵われちゃうから、こっちに。
すごい!話してることわかるんだねー。かしこいねー。」
卵を下に置いてまたすり寄ってくる。
その位置から、少しずつ移動した。
マティスが卵を回収している。
分からないのはお前たちだろ?
だからキャムロンで操られるんだ
うまいからな、あれは
全部食べるらしいぞ?ひとは
あはははは!
んー?
「なにがいいかわからないね。
へたにあげてもダメだろうから、
チャクにしておこうかな。」
何言ってるんだ!
肉だ!肉を寄こせ!
こいつらを食うか?いつもの奴は食えんからな!
そうだ!
食おう!
食おう!
『黙れ!食われるのはお前たちだ!!』
ピーーーーーー!!!!
「え?なんで?気を上げてるんですか?」
「ワイプ、ガイライ、ニックも。卵を持ってくれ。」
「え?」
「わたしは愛しい人のシャシンをとるから。」
弱肉強食の世界だ。
違う種の卵で人間と取引するのもいいだろう。
が、わたしたちを食うなんぞ、冗談でも許せんわな。
売られた喧嘩だ、きっちりお買い上げしようじゃないか!!
「モウちゃん!やるんなら、荷重20だ。棒で一打だ。
倒した鳥と同じ場所は打つな!急所にあてろ!
殺すな!血を流すな!食えないからな!!」
「応!!」
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