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602:締め技
しおりを挟む大門前集合は明日だ。
それまでまた大量のご飯作り。
あとは、お揃いの運動服。芋ジャージをもう少し余所行きにしたもの。
トックスさん監修なので、高級感がある。
砂漠石は糸状にして練り込んでいる。
本当はこれが量産できれば、防弾チョッキなんぞいらない。
が、わたししかできないというのはダメだ。
かつらも用意した。
改良型だ。きゅっと砂漠石が頭にフィットしてくれる。
蒸れもない。
んー、かつら屋さんて儲かるかも。
でも、砂漠石の部分はオーダーメイドで対応すればいい。
これもトックス製。
毛はシシの毛だとか。
長さと太さが人に近い。
一度狩ってこないといけないね。
月無し石と音石君が組み込まれているインカムも用意。
これでお互いの連絡はできる。
あとはカラーコンタクト。
目立つからだ。
ガイライとニックは軍上層部として知っているものは知っている。
師匠も同じ。これは資産院としてだ。
この3人は徹底して変装してもらう。
わたしたちもだ。
行商の一行ということで。
翌日、王都大門前に皆が集まる。
「タクト街道は一つの単価が高いんですよ。それはもう、えげつなく。
それを1つ、2つごまかされるとそれこそ税収入が違うでしょ?
定期的に視察には行くんですが売る金額が変わったと言われればそれまでなので。」
「ん?それってさ、資産院が視察に来た時にだけ金額が下がるってこと?
それがお安くなる時じゃないの?」
「ああ、それとはまた桁が違いますよ?
普段は1000のものが、500。そのお安い時?は10か、20だとか。」
「おお!!」
「モウちゃん、それでもほかで買えば、1だぞ?」
「あ、ダメ、そういうのだめ。」
「愛しい人?欲しい時が買い時なのだろ?気に入ったものが有れば買えばいい。」
「マティス!!愛してる!!」
「ふふふ。知っているよ。私もだ。」
こんなバッカプル会話はサックと無視されている。
変装せねばと、ブラスの林に移動した。
そこには井戸と、ガイライとニックさんが住んでいたと偽装した
小さな小屋を置いている。
何もないのもおかしな話だからだ。
かつらとカラコンの師匠に大爆笑したのは無理もない。
髪って印象の8割をしめているね。
が、ほかのみんなはそうでもなかった。
若い頃そのままだとか。
えー、師匠はいまのほうが師匠だよ。
「しかし、目の色まで変えると、自分ではないような。
もちろん、こんなにはっきりと自分の姿を見たことはないんですがね。」
では、写真でビフォーアフターだ。
これで、やっと笑いの共有ができたと思う。
「名前までは変えないよ?
そのほうがあれ?ってなるから。
ああ、知ってる?剣のマティスってもっと歳をとってる人だと思ってたって、
デルサートルで言われたよ。」
「ああ、それは剣のポルトフィーのことでしょう。
二つ名で剣のとつくのはポルトフィーとマティスぐらいです。
年配の方は剣のと言えば、ポルトフィーですよ。」
「いや、たぶんわたしより若いよ、守衛さん。」
「?名前わかりますか?」
「覚えているわけがない!」
「断言するんですね、マティス君?」
「バイルと名乗っていたな。」
「師匠?問題?」
「その年齢でマティス君のことを知らないのはおかしいし、
その年齢でポルトフィーのことを知ってるのもおかしい。」
「有名なのね。マティスの剣の師匠殿は。ん、じゃ、バイルさんは結構な年齢とか?」
「どうです?」
「見た目は30だな。ただ、乾季に娼婦通いをしないという、
古風なことをしているなとは思った。」
「古風なんだ。でも、まだ結婚する気がないんなら、一つの方法なんじゃないの?
わたしは話もしないでそんなことされたらその瞬間で覚めるけど。」
「なんでも話すし、まず、そんあことはないからな?」
「もちろん!わたしもだよ?」
「マティス君、自分たちと置き換えないでいいですよ?
そんなことはないと2人してわかりきっていることなんでしょ?」
「な!!ワイプがまともだ!」
「はいはい。その話はあれですね、省いていた話ですね?
話してください。」
というわけで、まったく見ず知らずの独身男どもに、
バイルさんとグリクさんの彼女事情を説明した。
「グリクさんはいいよ、話し合えばいいんだから。
けどさ、バイルさんの彼女に対する扱いはどうなの?って。
待たないよ?普通。いや、こっちの普通とわたしの故郷の普通と、
わたしの考える普通と違うからなんともいえんけど。」
「何とも言えない話ですね。いまどきの結婚事情?
雨の日前に約束する、雨の日に数軒回るというのは以前聞きましたが、
これはちょっと。」
「モウがいう、これはないなですよ?」
「ガイライもそうおもうよね。ちなみにどこら辺が?」
「乾季前に通いをやめるというのがです。女性に対しての仕打ちがないというのは、
モウの考えですよね?それは、ないんですよ。
嫌なら、扉を開けなければいいだけだ。
ああ、その女性はその時点で、次に行く。もしくはあなたが言うように、その男を見限ります。
それが数年続くというのが驚きです。昔はそうだったと聞いたことはあるんですが。」
「デルサートルはちょっと古臭いってことなのかな?」
「そうなりますね。」
「地域性と流行りっていうのがあるんだね。」
「これは分からん話だな。なんせ、俺たちだからな。」
ぶははははははは!!!
わからん、縁のない話をしていても仕方がない。
旧王都の市場に買い物をしてから行こうということになた。
ここで、ベースさんにばれなければいい。
ぐるっと王都の外周を廻り、外から市場に入っるそうだ。
「ここからだと王都に入り放題じゃないの?」
「いえ、ここにも門は有りますよ?ほら。」
大門、外れ大門、西門、とあるそうな。
「問答も?」
「それは大門だけですね。」
「止れー。ここを通れるのはタフト領の通行書を持つものだけだ。
それ以外は大門に廻れ。」
「これ正式?」
「ここを使うのはタフト領だけですからね。
タフト領民は出入りを許されているということです。」
「待遇がちがうよね、領国によって。」
「タフトとマトグラーサはかなりね。
「おい!聞いているのか?」
「市場に行きたいんですがダメですか?」
「ん?タフト民か?許可書はないんだろ?だったら大門だ。」
「そうですか。食材を購入したかったんですが、残念ですね。
廻ってまで購入しますか?」
「モウちゃん?ここにあるものを売ってるとこにも行くぞ?」
「ほんと?じゃ、また今度にする!」
「タフト街道に行くのか?豪勢だな。が、ここで買ったほうが安いぞ?
浮いた分を俺にくれたら通してやるぞ?一人そうだな、10リングだ。」
「・・・・ここでもですか。」
「管轄ってどこ?」
「中央院ですね。どうしましょうか?」
「ここで、どうのこうのはやめておこう?
余裕がある旅じゃなんで、諦めます。」
「ちっ!しけてんなああぁぁぁぁぁ・・・・。。」
「ちょっと!マティス君!」
「「あはははははは!!」」
「そこの2人も!!」
「マティスどうやったの?なんかすごい!!」
「締め技だな。教えてくれただろ?それだ。」
「すごいな!教えて!!」
空気を蹴ることができるんだから、
それで押さえることもできる。
目に見えない腕で、首を絞めるようなものだ。
「モウ?わかりますか?」
「ええ。」
「それ、わたしにもできます?」
「んー、まずこの空気というものを理解してください。」
気絶した門番はほっといて、タフトに向かう。
他の人たちが気付く前に退散だ。
「これはモウちゃんの強化鍛練より、俺たちの鍛錬になるな。
要は、地面をけるように、空気を蹴るってことだろ?」
「そうなりますね。地面があればいいんですが、
上に上がった時、移動の要領で多少長く浮かんでますよね?
それで、方向もかえれるけど、勢いがない。だから、空を蹴るみたいな感じ?
それを意識している時間はないんで、できるってことで。」
わたしたちが飛べるのは封印だ。
これは、昨日のうちに鍛錬中はしないと言霊を使った。
その時の話の中で、柔術や、締め技の話をしたのだ。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ダメだった。見えないものは存在しないと考えてしまうから。
「残念だが仕方がないな。
移動の応用はできるんだ。それをもっと極めよう。
じゃ、行くか!」
というわけで、ニックキャンプの始まりです。
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