いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
602 / 869

602:締め技

しおりを挟む

大門前集合は明日だ。
それまでまた大量のご飯作り。
あとは、お揃いの運動服。芋ジャージをもう少し余所行きにしたもの。
トックスさん監修なので、高級感がある。
砂漠石は糸状にして練り込んでいる。
本当はこれが量産できれば、防弾チョッキなんぞいらない。
が、わたししかできないというのはダメだ。

かつらも用意した。
改良型だ。きゅっと砂漠石が頭にフィットしてくれる。
蒸れもない。
んー、かつら屋さんて儲かるかも。
でも、砂漠石の部分はオーダーメイドで対応すればいい。
これもトックス製。
毛はシシの毛だとか。
長さと太さが人に近い。
一度狩ってこないといけないね。

月無し石と音石君が組み込まれているインカムも用意。
これでお互いの連絡はできる。

あとはカラーコンタクト。

目立つからだ。
ガイライとニックは軍上層部として知っているものは知っている。
師匠も同じ。これは資産院としてだ。

この3人は徹底して変装してもらう。
わたしたちもだ。
行商の一行ということで。



翌日、王都大門前に皆が集まる。

「タクト街道は一つの単価が高いんですよ。それはもう、えげつなく。
それを1つ、2つごまかされるとそれこそ税収入が違うでしょ?
定期的に視察には行くんですが売る金額が変わったと言われればそれまでなので。」
「ん?それってさ、資産院が視察に来た時にだけ金額が下がるってこと?
それがお安くなる時じゃないの?」
「ああ、それとはまた桁が違いますよ?
普段は1000のものが、500。そのお安い時?は10か、20だとか。」
「おお!!」
「モウちゃん、それでもほかで買えば、1だぞ?」
「あ、ダメ、そういうのだめ。」
「愛しい人?欲しい時が買い時なのだろ?気に入ったものが有れば買えばいい。」
「マティス!!愛してる!!」
「ふふふ。知っているよ。私もだ。」

こんなバッカプル会話はサックと無視されている。

変装せねばと、ブラスの林に移動した。
そこには井戸と、ガイライとニックさんが住んでいたと偽装した
小さな小屋を置いている。
何もないのもおかしな話だからだ。




かつらとカラコンの師匠に大爆笑したのは無理もない。
髪って印象の8割をしめているね。
が、ほかのみんなはそうでもなかった。
若い頃そのままだとか。

えー、師匠はいまのほうが師匠だよ。

「しかし、目の色まで変えると、自分ではないような。
もちろん、こんなにはっきりと自分の姿を見たことはないんですがね。」

では、写真でビフォーアフターだ。

これで、やっと笑いの共有ができたと思う。

「名前までは変えないよ?
そのほうがあれ?ってなるから。
ああ、知ってる?剣のマティスってもっと歳をとってる人だと思ってたって、
デルサートルで言われたよ。」
「ああ、それは剣のポルトフィーのことでしょう。
二つ名で剣のとつくのはポルトフィーとマティスぐらいです。
年配の方は剣のと言えば、ポルトフィーですよ。」
「いや、たぶんわたしより若いよ、守衛さん。」
「?名前わかりますか?」
「覚えているわけがない!」
「断言するんですね、マティス君?」
「バイルと名乗っていたな。」
「師匠?問題?」
「その年齢でマティス君のことを知らないのはおかしいし、
その年齢でポルトフィーのことを知ってるのもおかしい。」
「有名なのね。マティスの剣の師匠殿は。ん、じゃ、バイルさんは結構な年齢とか?」
「どうです?」
「見た目は30だな。ただ、乾季に娼婦通いをしないという、
古風なことをしているなとは思った。」
「古風なんだ。でも、まだ結婚する気がないんなら、一つの方法なんじゃないの?
わたしは話もしないでそんなことされたらその瞬間で覚めるけど。」
「なんでも話すし、まず、そんあことはないからな?」
「もちろん!わたしもだよ?」
「マティス君、自分たちと置き換えないでいいですよ?
そんなことはないと2人してわかりきっていることなんでしょ?」
「な!!ワイプがまともだ!」
「はいはい。その話はあれですね、省いていた話ですね?
話してください。」


というわけで、まったく見ず知らずの独身男どもに、
バイルさんとグリクさんの彼女事情を説明した。

「グリクさんはいいよ、話し合えばいいんだから。
けどさ、バイルさんの彼女に対する扱いはどうなの?って。
待たないよ?普通。いや、こっちの普通とわたしの故郷の普通と、
わたしの考える普通と違うからなんともいえんけど。」
「何とも言えない話ですね。いまどきの結婚事情?
雨の日前に約束する、雨の日に数軒回るというのは以前聞きましたが、
これはちょっと。」
「モウがいう、これはないなですよ?」
「ガイライもそうおもうよね。ちなみにどこら辺が?」
「乾季前に通いをやめるというのがです。女性に対しての仕打ちがないというのは、
モウの考えですよね?それは、ないんですよ。
嫌なら、扉を開けなければいいだけだ。
ああ、その女性はその時点で、次に行く。もしくはあなたが言うように、その男を見限ります。
それが数年続くというのが驚きです。昔はそうだったと聞いたことはあるんですが。」
「デルサートルはちょっと古臭いってことなのかな?」
「そうなりますね。」
「地域性と流行りっていうのがあるんだね。」
「これは分からん話だな。なんせ、俺たちだからな。」


ぶははははははは!!!


わからん、縁のない話をしていても仕方がない。
旧王都の市場に買い物をしてから行こうということになた。
ここで、ベースさんにばれなければいい。
ぐるっと王都の外周を廻り、外から市場に入っるそうだ。

「ここからだと王都に入り放題じゃないの?」
「いえ、ここにも門は有りますよ?ほら。」


大門、外れ大門、西門、とあるそうな。

「問答も?」
「それは大門だけですね。」



「止れー。ここを通れるのはタフト領の通行書を持つものだけだ。
それ以外は大門に廻れ。」
「これ正式?」
「ここを使うのはタフト領だけですからね。
タフト領民は出入りを許されているということです。」
「待遇がちがうよね、領国によって。」
「タフトとマトグラーサはかなりね。
「おい!聞いているのか?」
「市場に行きたいんですがダメですか?」
「ん?タフト民か?許可書はないんだろ?だったら大門だ。」
「そうですか。食材を購入したかったんですが、残念ですね。
廻ってまで購入しますか?」
「モウちゃん?ここにあるものを売ってるとこにも行くぞ?」
「ほんと?じゃ、また今度にする!」
「タフト街道に行くのか?豪勢だな。が、ここで買ったほうが安いぞ?
浮いた分を俺にくれたら通してやるぞ?一人そうだな、10リングだ。」
「・・・・ここでもですか。」
「管轄ってどこ?」
「中央院ですね。どうしましょうか?」
「ここで、どうのこうのはやめておこう?
余裕がある旅じゃなんで、諦めます。」
「ちっ!しけてんなああぁぁぁぁぁ・・・・。。」
「ちょっと!マティス君!」
「「あはははははは!!」」
「そこの2人も!!」

「マティスどうやったの?なんかすごい!!」
「締め技だな。教えてくれただろ?それだ。」
「すごいな!教えて!!」


空気を蹴ることができるんだから、
それで押さえることもできる。
目に見えない腕で、首を絞めるようなものだ。


「モウ?わかりますか?」
「ええ。」
「それ、わたしにもできます?」
「んー、まずこの空気というものを理解してください。」


気絶した門番はほっといて、タフトに向かう。
他の人たちが気付く前に退散だ。




「これはモウちゃんの強化鍛練より、俺たちの鍛錬になるな。
要は、地面をけるように、空気を蹴るってことだろ?」
「そうなりますね。地面があればいいんですが、
上に上がった時、移動の要領で多少長く浮かんでますよね?
それで、方向もかえれるけど、勢いがない。だから、空を蹴るみたいな感じ?
それを意識している時間はないんで、できるってことで。」

わたしたちが飛べるのは封印だ。
これは、昨日のうちに鍛錬中はしないと言霊を使った。
その時の話の中で、柔術や、締め技の話をしたのだ。


「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」


ダメだった。見えないものは存在しないと考えてしまうから。


「残念だが仕方がないな。
移動の応用はできるんだ。それをもっと極めよう。
じゃ、行くか!」


というわけで、ニックキャンプの始まりです。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think
ファンタジー
ざっくり紹介 バトル! いちゃいちゃラブコメ! ちょっとむふふ! 真面目に紹介 召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。 そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。 ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。 皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは リビングメイルだった。 薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが マモリタイ、コンドコソ、オネガイ という言葉が聞こえた。 カイは迷ったが契約をする。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...