いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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569:帳簿

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月が沈む前に起こされる。
ウナギのおかげか、いつもの夜の鍛錬後よりも元気だ。
だが、いつものように寝落ちした後はフルオート。
おいしい匂いで目が覚めた。

マティス君や?君はいつ寝ているのだ?


「寝ている。以前よりはよく寝ているし、よく食べている。」
「太った?」
「なぜ嬉しそうに聞くんだ?体の重さはおそらく増えているな。
筋肉が増えているから。」
「さいで。」
「ん?なぜがっかりする?」
「わたしは太ったような気がする。からだが重い。」
「それは体ができてきてるからだろ?
セサミナにも言ったが、最初はそう感じる。」
「いや、鍛練をはじめてかなり経ってるよ?それでも?」
「それでもだ。私もニックの元で鍛錬すれば、また体が重く感じるだろう。
それを感じないようにさらに鍛錬するんだ。」
「終わりがないね。」
「鍛錬はそうだ。日々精進だな。ルンバもかなり鍛えているな。
あれは鍛錬相手がいればもっと強くなっている。」
「あの人いくつ?」
「あれぐらいになるとわからん。かなり上だとは思うが。」
「ここは爺が元気だよね。」
「王族は特にな。」
「なるほど。」




魔法の絨毯熊バージョンで待機しています。
絨毯の表面はティータイ製の緞通。
裏面に熊の毛皮で海から吹きあげる風を避けてくれている。
が、それは草原の地平線より下にいる場合のみ。
水平の風に乗ってしまうと、
恐ろしいほど加速します。
その場合毛の流れを逆にすればOK。
研究しろよ!と思ってしまうほど画期的です。

「ミーキも熊も絶滅するね。海蜘蛛のように。」
「ミーキを釣るには船がいる。風を操らないとな。
熊は浮かぶ絨毯で使うからだろ?
それをできるのは私たちだけだ。」
「あ、そりゃそうか。」

青い花が偽の匂いを出して受粉したのは昨日より少し多い。
同族との受粉は1/3以下。
そりゃそうだ。元気な同族はもう受粉は済んでいる。
遅れて香りを出しているのはちょっと元気がないか、成長が遅かったかだ。
なので香は弱い。
そこに強烈な偽の匂いを出されれば、騙される輩が多いのだろう。

今回は観察だけで採取は無しだ。
熾烈な生存争いの邪魔は余りしたくない。
が、痛み止めの安全性が分かれば、うん、ごっそり頂こう。
数株は植物園に移しているしね。



「ミーキの漁をして半地下の家を作ろう。」
「そこで研究もするのか?」
「うん。熊の皮も、蛇の皮の染色も。
ミーキの粘膜の研究は、保留かな。」
「はははは。そうしよう。」

お弁当はおにぎり。だし巻きとう巻きはわたしが作る。
たらこをいりもおいしいと教えたいが、ここの魚はトドだし、
卵は大きいし。魚卵はおいしいよね。


「ミーキの卵は小さいかな?いつ産卵するんだろ?」
「・・・卵。」
「うん。粘膜ってもしかしたら卵を抱えてるかもしれないね。
そういうのいるよ。大量に発生するのになんで粘膜を出してるかだよね?
受精のため?海水の代わり?んー、わからんね。」
「保留だろ?」
「そうそう。保留。ここの海岸が産卵のためいっぱい来るかもしれれないね。
それを観察しよう。」
「・・・・それで、卵が食べれそうなら食べる?」
「・・・・少しだけ。」
「少しだけな。」
「うん。少しだけ。えっとそれは動物保護の観点から言ってるんじゃないよね?
おいしかったら問題ないよね?」
「それはもちろんだ。だが、毒があるのは間違いない。
あなたの手がかぶれるのはダメだ。」
「ゴム手袋あるよ?」
「今はほとんど出していないから。飛び散るんだ。顔にもつく。」
「おお。それはちょっと考え物だ。
先にわかっていれば対策も練れる。良き情報ですぞ?」
「・・・少しだけな。」
「うん、少しだけ。」


入れ食いなのだが、なんせ、2人だ。
時間がかかる。
そしてミーキは賢い。他の魚のようにお間抜けではない。
移動は効かなかった。
それでも、船が沈むぐらいは捕獲。
まだまだ取り放題。そう思うと、この遠浅の海は
すべてミーキの生息地だということだ。餌は海藻。
この海藻は、うん、おいしくなかった。
あとはささみも食いつきがいいから何か肉系を食べるのだろうけど、
なんだろ?それを探して今日の海の研究は終わりだ。


「砂の中かな?」
「餌がか?肉系?」
「海藻はいいよね。あの赤いのだ。でも、ささみも食べるでしょ?だから、
似たようなのを食べてるはずなんでけどな。」
「・・・共食い?」
「ああ、それね。あるかも。大量に生息するから共食いか、
共食いするから大量に生まれるか?わかんないね。」
「故郷では?」
「あるある。動物界では普通にあるらしいよ?
虫の世界にもね。有名なのはカマキリかな?
その、交尾した後にオスを食べると。子供の栄養の為にね。」
「・・・・。」
「そういうのは大抵メスの方が大きいかな?
クーちゃんはオスメスっていうのが分からないって言ってけどね。」
「クーは雌なのでは?」
「ああ、そうだった。雌雄同体っていうのもあるよ?
その時に決まるとかね。」
「・・・・。」
「ああ、わたしが研究したんじゃないよ。
やっぱり、専門の人がきちんと研究して発表してるね。
ちょっと調べればすぐにわかるの。
ここでは自分で確かめるか、知ってる人を探して
聞くしかないからね、保留ばかりだ。」
「人の世界に、人が生活するのに、それらのことは必要なのか?」
「おお、哲学だね。知りたいから研究するんだよ。
役に立つとかどうとかはかは2の次、3の次。
もちろん、人々の為に研究することもあるけど、
それがどこにつながるかわからないからね。
それを研究して自己満足で終わるのもあるだろうけどね。
発表されていることしか知らないから。
秘密の秘密は世界に満ち溢れてるんだよ、きっと。
そう思った人がまた研究すると。
動植物と、食物のことはもっと調べてほしいけどね。」
「知らないと、私が知らないとがっかりする?」
「まさか!2人で調べることができるから得した気分だよ?
わたしはすごく楽しい。マティスはいまいち? 」
「それこそ、まさかだ。こんなに楽しいことが毎日あるとは思わなかった。」
「うふふふふ。楽しいね。知っていても実際見ると触るのとはまた違うからね。
じゃ、ミーキの餌は保留にしよう。
家を作ろう。雨が入らないように考えないとね。」
「それは扉君の家もだな。
あの家で過ごすんだったら、考えないと。 」
「そうだった!!んー、屋根のある家の下に展開すればいい?
今から作る家の地下とか。うん!屋根をしっかり作ろ!!」
「まずは、半地下を作るんだな?」
「うん!」


歩けば2時間ほどでデルサートルから来れる位置。
砂漠に人が出入りしている気配はない。
1番城近くの砂漠は砂漠石もとっていないようだ。
そうだよね、他国からの客が来るもん。
奴隷扱いしているところを見られたくはないだろ。
ポンプを砂漠に刺せば水が大量に出た。
ということは、砂漠石もあるのだろう。
砂漠中央からこっちまで流れているのかな?
そう考えると、草原の草たちはそれを求めて、
砂漠に広がって言っているのかもしれない。
切り出した白石をブロック状にして、かまくらのように。

これなら、雨が降っても大丈夫だ。
そこから階段を作って、下に。2Mほどは土と草の根っこだ。
取り除いたものは研究させてもらおう。種もついていたから。


当然真っ暗だし、空気穴もいる。それは煙突を作り、光窓も作る。
これの方が大変だった。少し傾斜して砂漠石のガラスを入れた。
壁は厚めにしていく。
一応、一般人が来てもいいように質素にはした。
わたしには十分すぎるけどね。


「誰がここまでくる?」
「だって、コットワッツ領のわたしたちの管理地だよ?
ここの生産品で売り上げあげて税も納めていきたいでしょ?
繁栄だよ?
なのに、どこに住んでるかわかんないってのは
ダメでしょ?」
「税を納めるのが嫌なのでは?」
「いやいや、帳簿を付けるのが嫌なんだよ。
その時に取ってくれるんならね、それでいい。前払いでもいいの。
帳簿を付けて、後で取られるのが嫌なのよ!めんどい!!」
「すまない、わからない。」
「うん。わたしも商売人なら、ダメだとは思う。
そこはね、なんちゃって商売人だからね。
考えないといけないのは、
例えば、ここで、ウナギ弁当、ミーキ弁当を売るとする。
そうすると卸すわけではないから、
売り上げは帳簿に付けないといけない。
で、その10%を納めると。・・・めんどい。」
「行商では1割納まめるだろ?それは?」
「その日、その場ではいいの!年末というのがやなの!!」
「わかった。それぐらいの帳簿は私が付けよう。
簡単な付け方はザバスに聞いているからな。」
「マティス、あなたはなんて最高な旦那様なんだ。」
「うれしいが、余程嫌なんだな? 」
「こっちに来て何がうれしいかっていうのは一番はもちろん、
マティスに会えたことなんだけど、
その次が確定申告から解放されたことなんだよ。」
 「?」
「帳簿付けね。」
「・・・その言霊とかそういうことよりも?」
「ぶっちぎりでワンツーフィニッシュ?」
「そ、そうか。意味は分かるぞ?帳簿は任せろ。 」
「素敵!!でもでも、わたしも頑張る!」
「ああ、2人で頑張ろう。だが、これくらいは任せてほしい。」
「うん!!」


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