いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「ルロイドのこと師匠に聞けなかったね。」
「トックスには聞いたぞ?エルトナガ国が国を挙げての生産品だそうだ。
ソヤの聞いた話では原材料となる植物は枯れたと、
なので、関わるなとのことだ。」
「それはトックスさんに聞いてよかった。では、これは保留と。」
「却下ではないのか?」
「中毒性がないのなら、花の株を分けてもいいでしょう。なので、保留。」
「なるほど。では、あの香りの種は?」
「これはどれくらい香りが持つか。つきっきりで研究しないといけないからね。
1時間おきぐらいに匂いが出ているか確認。
数粒いれて、部屋に置く。で、1時間後、その部屋に匂いがあるか、確かめる。
そのまま、違う部屋に持っていき、1時間。で、また確認。
これを一月、月の状態でどうなるかわからないから。
合わさり、離れはじめ、会わず、混合いはじめ、この区切りでね。
それを1年研究。
あとは、採取の時期も。
雨の日前に受粉するであろうということは推測だから、
これもこまめに観察。植物園でも育てる。で、また、1年研究。」
「・・・保留だな。」
「はい。保留です。」
「船は?」
「風を受けて進んでみよう。で、風がどの方向から吹いているのか、
月、1年でどう違うのかを研究。とりあえず、風があれば進むのであれば、
風神がある。なので、大きなアーリアを師匠に調達してもらう。
それまでわたしたちだけで、楽しむ。
これは今から漁に出よう。魚がおいしい時期は今だから。
近くの海でなにが取れるかを把握できる。」
「櫓は?」
「それは設計図を書いてみます。親方にも相談します。
雨の日以降です。」
「では、海だな。」
「イエス!」


海に出た。
テルニから出る船や、ほかの船から見られないように隠匿を掛けるかどうか。

「ここは管理地。
絶壁の家は内緒だけど、草原に半地下な家を作ってもいいんじゃないかな?
屋根もつけて。で、手前の砂浜から出入りすると。
そうすれば、漁で獲った魚は堂々と売れる。収益になるよ?」
「金になることが分かれば、ほかの船も来るぞ?」
「どうやって?いま、船は潮の流れか砂漠石で動かしている。
費用が掛かって、魚が売るにも高くなってしまう。」
「帆の原理に気付いたら?」
「それはそれで素晴らしい。海から人が出入りできるように成れば、
ここは別荘地だ。あの家を宿として貸し出すよ。
そして、草原で凧で遊べるようにする。
お客様がいっぱい来るね。大儲けだ。2人でまったり過ごす場所は
また違う場所を探せばいい。湖のほとりは温泉もまだまだ満喫してないしね。」
「まさしく!!」
「ただ!」
「ん?」
「やっぱり生臭いのはダメ。あの家で魚を捌くのは嫌だ。どこか、別の場所がいい。」
「そうだな。が、そんなに魚が取れないかもしれないぞ?」
「それもそうだ。とにかく海に!」


潮の満ち引きはないようで、ただ、のんびり波が生まれている。
砂浜はかなり遠浅になっており、ここには魚はいなかった。
なにか、小さいものがピシャッとは跳ねるが、見つけられない。
ようやく深い場所で出てきたが、ここでの漁は船から丸見えだ。
調査中なので急いで船ごと隠匿をかけた。

結局、マティスの操舵でドライブではなく、クルーズだ。
なかなかに楽しい。わたしも教えてもらう。
底が見える海というのは初めてだ。
海藻かな?ゆらゆら揺れてきれい。
照りつける太陽がないだけ。

「あ、またなんか跳ねた!」
「どこ?」
「向こう!ほら!」

なにかが顔を出したのだ。
静かにその近くに船を進める。
自在ですね。

よく見ると砂に孔が開いてる。チンアナゴ?


糸を出し、ささみを括り付ける。


「?」
「釣り。」
「ここで?」
「うん、今のがうまく釣れたらいいなと。こう、孔にいれて、上下すると、
餌かなって?食い付く?」
「私もしたい。」
「ん。これね。」


波は静か。
風も地上ほど強くはない。
帆をたためば重い鉄の船だ。動くことはないのだ。
着ぐるみは寒いので着ている。
走ったりしなければ、ちょうどいい。


「ん!!」
「来た?くいくいって上下にして、一気に釣りあげて!!!」
「よし!!」


ビチャン!!
船の中にうまくはいってくれた。



「魚!!!まさしく魚!!!うひょーーーーー!!!!」

ずんぐりむっくりの魚だ。
筒状だ、顔が円柱面についている。
魚だと言えるのはヒレが付いているからだ。


「触るな!」
「え!なんていうの?名前は?」
「ミーキだったとおもう。触るなよ。ぬめる毒液を出すから。」
「毒?ん?食べるよね?」
「食べない!」
「名前も特性もしってるのに?」
「キンルガンの海岸に打ち上げられる。一度それの清掃を行った。
皮の手袋をはめて、ひたすら集める。
その体と同じだけの粘液を出すんだ。」
「毒というのは?」
「直接触れるとかぶれる。」
「おお!それはいかんね。んー、あと3匹釣るよ!」
「・・・・食べるんだな?」
「もちろん!!でも、小さいからね。1人2匹はいる。」
「・・・わかった。」
「もう!!マティスも次からはこれを見ただけで小躍りするよ?
師匠は男泣きだね。ニックさんとトックスさんは宴会が始まる。
あー、はやく!釣ろう!!」

ウナギだ。
うな丼、うな重、ひつまぶし。
う巻きにうなきゅう、肝焼き、肝吸い。
白焼きをワサビで、バターを乗っけてもおいしい。

10本ほど釣竿を用意して、餌もかえる。

「あと3匹でいいんだよな?」
「いやいや、他国の軍に清掃を依頼するぐらい生息してるってことでしょ?
だったら、ここにも大量にいるかもしれないから。
次に釣るときの為に研究だよ?」
「次。」
「そそ。これは自信ありだよ?期待してて!!」
「そんなに?良し!!」

捌くのはわたしがしないと。
生臭いとかの問題じゃないな。
えっと、背開き?それで軽く焼いて蒸すんだっけ?
これが関東風。関西風は腹開きで蒸し無し。
蒸すほうがいいかな?


餌は意外にというか当然というか、昆布、乾燥していない生昆布がいい。
うん、そりゃそうだ。その次がささみ。
肉食なのか草食なのか?
でも、カンランや芋系には食いつき無し。

あと3匹どころか、昆布を付ければ入れ食い状態だったので、
うほうほと釣りを楽しんだ。
もう一艘だして、そちらに入れていく。
釣った瞬間に真空で締めれば、粘液は出ないことが分かった。
抵抗してるからだよね。
それでも、多少のぬめりはある。見た目でわかる。
ゴム手袋で触らないと。


「収納はしたぞ?船底にあるぬめりもきれいにした。
どうする?どこに戻る?」
「扉君の家に戻ろうか?
あの家が一番台所が充実してるしね。水も大量に使える。
んー、けど、これが商売になるんだったら、ここでできるように考えないとね。
そうだ!ここって水の確保はどうしよう!」
「砂漠でポンプだな。草原では土があるが、少し下は白石だ。」
「根っこがすごかったもんね。デルサートルの国境に近い
草原側に半地下の家を作ろうか?水は砂漠側から取って。
協定はないからね。
でも、今後の為に協定を作ってもらっておこう。」
「そうなると、ニバーセルとデルサートルの協定だな。
次の臨時会合で申請してもらえばいいのでは?」
「そうだね。そうしよう。まずは、2人前作ろう。
晩御飯だ!!」


扉君の家に帰って、さっそく調理。
マティスが今度は傍で見ている。なまこのこともあるから、
きっとおいしいものだわかっているはず。


「愛しい人?魚、いや、これを魚というのか?」
「ああ、分類は違うのか。これは?」
「分類?」
「魚とか鳥とか。海にいるあれが魚でしょ?飛ぶから鳥。
これは?」
「飛んだり、羽があるから鳥だ。だからこれも鳥。
これが羽根。」
「ヒレね。じゃ、虫も妖精も鳥?」
「手足があるから違うな。」
「んー、いまいち納得はできないけど、そうかな?そうなんだ。」
「いや、それはいい。捌くの嫌だろ?しようか?」
「いや!うちの旦那様が素敵なディナーを用意してくれたからね。
わたしも、素敵な、んー、おいしいご飯をたべてもらいたい!
すき焼きとおなじごちそうご飯だよ。
故郷では、これを食べる日っていうのがあって、
国民のほとんどがこれをその日の前後に食べる!!」
「それはすごいな!」
「うふふふふ。わたしもすきなんだ。
その日以外でも、よくお母さんと食べたの。」

なぜか地元にウナギ屋さんがずっとあった。
小さな商店街の中だけど居抜きで必ず。
出ていったお店は別に売れないから出ていくわけでもない。
違う場所に店を構えるのだ。それも自社ビルを建てて。

目の前で捌いていたのを見たことはある。
首に包丁をあてて?首ってどこ?
中骨まで?あ、これ?
目刺しで固定。
背中を開いて、内臓、骨を取る。
肝はこれ?
頭を落として、腹骨とって、背びれもとって。
頭は半助っていうんだっけ?
焼けばいいのかな?
骨は骨せんべい?油であげよう。

ぬめりは熱湯をかける。
で、氷水で締める。
その後包丁でこそげ落とす。
竹串を刺したら、もう、ウナギ!!
竹炭で炙って、これを蒸す!
竹かご大活躍!

2枚はそのまま。
残りを焼く。タレは醤油と砂糖とお酒。横で煮詰めている。
さらご飯ももう炊ける。


「匂いがいいな。」

2匹目から2人で捌いているのだ。

1枚先に焼いたものを味見。
半分はう巻きとうざくにしよう。


「どうかな?」
「照り焼き?」

マティスはなんでそこまで?という顔だ。
ま、ウナギだけ食べればね。
ごはんとなってこそのウナギだと私は思う。
山椒に近い赤玉を砕いて掛けようか?もう、抵抗はない。
肝の処理も慣れたもの。
カツオもどきと昆布で出しを取る。
あー、三つ葉がないのか。近い香草の茎でいいか。

「あとは任せて?テーブルで待ってて?」
「わかった。」

お重はつくった。塗がないが仕方がない。
透明の膠、食器に使うものはあるので、それで。
急激に乾燥させる。赤と黒のを作ってもらおう。

2段にしようか?
う巻き、うさくはサボテンで。
おしんこがないからトウミギ芯の酢漬け。
白焼きのワサビ添えとバター添え。
当然、肝吸い付!

特上うな重!お待ち!!







─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘




「師匠、泣くかな?」
「泣くな。ガイライとニックも。
軍関係者でキンルガン行軍に参加したものは全て泣く。」
「そうか。悲しいね。ミーキ的に。」
「そうだな。だが、何でもだ。立場が違えば気持ちも違うだろう。」
「まさに。」



ものすごく満喫しました。
特にマティスはう巻きを絶賛し、もう一度作ったほどだ。

「これだけの定食なら1リングでもいいかな?
ちょっと高い?」
「資産院相手に、ラーメンは1リングだったぞ?」
「いや、あれは深夜料金と資産院だからね。
1銀貨でも高いよ。
特上うな重は1リングでも、わたし的にはちょっと高いかな?
マティスは?いくらならもう一度食べてもい?」
「100でも食べたいぞ?」
「うーん。師匠に聞こう。
できれば、みんなでちょっと贅沢しようかって食べるものになってほしいな。」
「食は一番安価で手に入る。が、贅沢できるものは、それこそなんだって贅沢だ。
あなたが言う、ちょっとという加減が難しいな。」
「そう?今月はちょっともうかったな。来月分に予算を置いといても、まだ余裕。
そうだ!おいしいものを食べに行こう!!
ほら!ハニカさんがさ、たくさん収入がはいったから行ってみようかなって言ってたでしょ?
あんな感じ。その時に、ハンバーグか、ウナギかっていう感じかな?
そういえば、あのハンバーグいくらなの?」
「確か2リングからだったと思う。
私たちが食べるのは、いろいろついてるだろ?最後の甘味も。
あれらがなくて、ハンバーグの皿とパン、1杯の酒で2リングだと聞いたな。」
「おお、お高いね。じゃ、わたしたちが食べたのは?」
「1人10?セサミナはそれ以上には出していると思うがな。」

王都は10倍って思えばいいかな?


「どちらにしろ、先に身内でお披露目だね。
トックス村も入れてね。何人だ?オート君もリカの兄貴も食べてもらいたいな。
ゼムさんもザバスさんも。んー?
50人前?一人3匹?150匹?
今回釣ったのはもうちょっと研究というか2人でいろいろ試す分ね。
明日また漁に出よう。」
「キンルガンに行くか?山ほど取れるぞ?」
「打ち上げられた時点で粘膜だらけなんでしょ?
その粘膜だらけのミーキはどうしてるの?処分方法は?」
「麻袋に入れて、引き渡していたと思う。
塩袋の半分ぐらいの大きさで5銅貨だったかな?」
「なんだ!じゃ食べてるよきっと。」
「腐っているぞ?」
「なんかの餌?」
「毒なのに?」
「そもそもなんで、ニバーセル軍がそんな海岸清掃みたいなことしてたの?」
「メイガ狩り、ブラス刈り、ミーキ集め。鍛練と小遣い稼ぎだな。
ニバーセルは各国でその国の物が誰もしない作業をしている。
軍事力を見せたいんだろう?」
「ある意味素晴らしい、慈善事業だけどね。メイガとブラスは中止になってるよね?」
「ニバーセルからも取り止めを申請したと言ってなかったか?
それからどうなったかは知らん。」
「もう、しないだろうね。ガイライじゃないし。
それはいつ頃だった?雨の日の後にブラスでしょ?メイガは?」
「メイガは暑い日だ。イリアスは涼しいし、湿地の中はひんやりしてるんだ。
キンルガンは今時分だ。2年に一度だ。」
「じゃ、いい時期だったのかな。
でも、船のことで行くでしょ?いつか、お金を貯めて。
その時にどうしてるか観察しよう。キンルガンのミーキは保留ね。」
「ああ、そうしよう。船も風を受けて走るのはいいが、風向きに左右されるのが問題だな。
じぇっとなんとか?」
「それはアーリアが手に入ってからかな?
ここの海だと必要ないし。砂を巻き上げるから、良くないよ? 」
「では、保留だ。」
「うん。」
「では、すこし寝よう。1日が短いから、眠いだろ?」
「うふふふ。ウナギはね、元気になるんだよ、食べれば。
だから夏の暑い日に食べると元気になりますよーっていう宣伝もん気につられてみんな食べるの。
実際に栄養満点なんだよ?夜のお菓子に入ってるぐらい。」
「?」
「んー、夜元気になる。」
「やはりか!では、寝よう!」
「うん!でも月が沈む前に、青い花は見に行こうね。」
「眠る時間がないぞ?」
「そうなの?」
「そうだ。」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


砂浜にジャグジーを作って、そこでまったりしている。
月無し石は、ブラスで作った、ウォータースライダーで、海に飛び込んでは、
飛び上がって戻ってくる。

「明るいよね。」
「そうだな、もうすぐ離れはじめだ。」
「うん。わたしも暦は分かるようになったよ?そうじゃなくて、
外で、明るいのに、裸だね?湖と違って、向こうに街の光が見える。
あれ、テルニだよね?もっと向こうはえっと?」
「ピクトのギーだ。」
「そうそう。丸見えではないのでかな?」
「あんな遠くから?」
「ガラスのレンズの研究は進んでいるよ?眼鏡も作ってるって。」
「まだまだだろ?」
「そうだね。エデトに渡したメガネ、ズームがついてるのよ。
カメラもおんなじ理屈。双眼鏡作ったほうが速いかな?」
「?遠くが見える装置があるのか?が、それは愛しい人が作ればだろ?」
「そうなるね。」
「ふふふ。沖に砂漠石で膜を張っている。
見えないよ。」
「早くいってよ!!」

愛しい人は、胸にあてていたタオルを外すと、私に抱き付いてくる。
長く伸びた髪を後ろに撫でつけながら、
額に、ほほに、鼻先に、そして唇と口づけを落としていった。


「全部いい?」
「ん、全部。マティスもね。」

明るい月の下の彼女の肌はさらに輝きを増す。
白い肌に赤い花が咲く。
蜜を出し私を誘う。

彼女は私だけを求める。
私は彼女だけを求める。





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