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520:聞き上手
しおりを挟むタフトのラフルと名乗った男だ。
「セサミナ様、お迎えに上がりました。」
「ラフル殿でしたか?ありがたいお申し出ですが、どうして?」
「我が領主、メラフル様が夜会の前に話があるとのこと。
どうぞ、中に。」
(セサミナ?)
(軍部隊長の投票のことでしょうね)
(わたしたちは?)
(チャーたちを呼びますよ?)
(いや、セサミナを一人にすることはできないし、
護衛や従者を馬車に乗せるともおもわんな。
愛しい人は乗せるだろう。)
(姉さん、乗ってもらえますか?)
(おお!このドレスで?地獄の鍛錬だね)
中からタフトの領主も出てくる。
「セサミナ殿、どうぞ中に。
美しきご婦人は乗ってください。」
(愛想笑いしたほうがいい?)
(しなくていい!!)
(軽くですよ!ほんとに軽く!)
ここは軽く。礼儀だもんね。
しかし、このドレスは座ることは考えられていない。
毛皮のコート着ていてもだ。
どうする?
安全ピンで留めたい。
いや!形状記憶だ!
太もものラインで動くな!頼んだぞ!
結構広い馬車の中。
この場合、ご婦人が先に座るようだが、
わたしは護衛なので、中を確認後、
後で乗り込むことになる。
なかにはきれい処が2人座っていた。
青い。
だとしても青はいろいろある。
パステルブルーとネイビー。
やはり流行りなんだね。
さすが王都だ。
タフト領主が怪訝な顔をする。
そりゃそうだ。
ここはかなりのレディーファースト。
娼婦という女性のあこがれの職業は、
実のところ、お嫁さんだ。
仕事を持つ女性もたくさんいるが、女性のくせにとはいわない。
ただ、ここでは、
女性は守るべきものという考えがある。
強い女は疎まれる。
テムローサも村の男たちからは避けらているようだった。
だったら、より強くなればいい。
武の世界では強さがすべてだ。
「ああ、彼女はわたしの護衛ですよ。
会合でもそばにいましたでしょ?赤い塊のモウですよ。」
セサミンが乗り込み、
女性の1人がセサミンの横に、
あぁ?
と、思ったら、タフトの領主が乗り込んで、
その横に座った。
なるほど。
おっさんの横に座れと言われたらどうしようかと思ったよ。
「あの?ははははは!
これは驚きました。赤い塊のモウといえば、かなりの武人と。
そういえば、前回の武の大会にも出ていませんでしたな。
いや、美しきものを傍に置きたいというのはわかりますよ。」
予選で負けたんだよ!
あんたのところの出場者をコテンパンにしたつもりなんだけど?
見てないの?
懇親会の弾丸つかみ取りも見てないの?
「護衛ですからね、傍にいるのは当たり前なのでは?」
「ははは!この2人も護衛ですよ。」
「そうですか!」
その2人が護衛だとすれば、わたしはもっと鍛錬しないといけない。
生きてきて武道の武の字も知りません、っていう気配は纏えない。
が、きれい処の目線は鋭い。そして痛い。
新人OLだと死んでいるだろう。
まさしく護衛である。
4頭の西馬が動き出す。
・・・揺れる。これは酔う。
1cm浮けるか?
いや、鍛錬だ。電気椅子!
無理だ!座面が低い!
90度ならまだしも、そこから少し沈まないと不自然。
銅の長い人になる!!
コサックダンスは無理だ。笑っていいのならできるが。
自慢じゃないが、太っていたが、足は長いのだ。
スーツのズボンの裾をカットしたことはない。
ジーンズはだぶつかせればいい。
仕方がない。
1cm浮くことにしよう。
「モウ?どうかしたか?」
「いえ。」
静かなことは静かなんだけどね。
揺れるんだ。
だって、4頭の動きがバラバラだもの。
セサミンも浮かしておこう。
前の3人は満員電車のように揺れている。
「それで?こうして送ってくださるのはありがたいのですが、
お話があるとか?なんでしょうか?」
「おわかりでしょう?明日の軍部隊長の投票ですよ。」
「ああ。ガイライ殿が分隊所属になった後は、
タレンテ家クラサ殿が隊長になったとお聞きしていたんですが。
挨拶に伺ったら不在で。で、会合に出ますと、
そんな話はなかったようで。わたしの聞き違いだったんでしょうか?」
「は!違いますよ!確かにクラサ殿になりましたよ?
が、なぜか、天秤院のほうから不向きだと言われましてね。」
「天秤院ですか?それは問題ですね。」
「詳しくは知りませんが、どうやら天秤院で不評をかったようだ。
情けない。」
「そうだったんですか。天秤院に不向きだと言われてしまっては、
どうすることもできないですね。投票するまでもなく、
スダウト家になるのでは?あなたは投票にするべきだと
おしゃっるからそのようにはなりましたが。」
「当たり前だ!あの痛み方!毒に違いない!
毒を盛られるような人物に軍部は任せられない!
そうでしょ?」
「結局毒物だったんですか?しばらくしたら元に戻ったと聞きましたよ?」
(どこから聞いたの?)
(ワイプ殿です。ルビスが連絡を)
(セサミンも隠密いるよね)
(ええ。カップたちのだれか来てくれたらいいんですが)
(カップ君の意中の女の子、地方にいるポイよ?
師匠が家を買ってあげるって。コットワッツに来たら相談してみたら?)
(それは有意義な情報!)
「あれは恐ろしい毒だ!」
「そうですね。ではタレンテ家も、スダウト家も不向きということに?」
「違いますよ。何もクラサだけがタレンテ家の人間ではない。
変わりはいくらでもいる。むしろどうしてクラサになったのか、
疑問なぐらいなんですよ。」
「そうですか。スダウト家もエボニカ殿以外の方がいるということですか?」
「そういうことですね。」
「わかりませんね。メラフル殿は王都の情報に明るいからうらやましいです。
わたしではとてもとても。」
「でしょうな。なので、間違った選択をしないようにこうしてお話をね。」
「それは助かりますね。そもそもタレンテ家というのは?」
そこから聞き上手なセサミンは
タレンテ家とスダウト家のことを聞いていった。
わたしも頷き、セサミンが驚けば、同じように驚いた。
これでは護衛失格なんだが、仕方がない。
メラフルのご機嫌をとって話してもらわないと。
そもそもタレンテ家はうちの荷物欲しさに泥棒に入ったんだ。
これはどうやらタフトは知らないようだ。
タレンテ家にも派閥があり、タフトご贔屓はクラサではないようだ。
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