いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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515:寝言

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結局、各自が1本ずつ買っていった。
生産院、ボルタオネ、ラルトルガとして
5本ずつ確保したかったようだが、
個人でまず楽しみたいという欲求のほうが強かったようだ。
醤油さしも気に入ってもらえたようだ。

メディングの食レポはなかなかに楽しかった。
乗りがいいのだ。
うまそうに食べる。
食いしん坊万歳。
みんなが笑いながら楽しんだ。

食品開発部か、販売促進部を作ればいいと思う。
昆布と海苔のことを相談してみようかな。


生産院とラルトルガ一行はこれでお帰りに。
ソヤもドーガーと一緒にコットワッツに。


「まずは館を案内しましょうか?」

ジャングル風呂は普通のお風呂に。
ポンプで水をくみ上げる方式なのだから画期的だろう。
それに砂漠石か、樹石を入れて沸かしてほしい。
排水も考えてある。
汚物の回収は改めて契約してほしいと念押し。
匂いが上がってこないように砂漠石で風を起こしていると説明した。
小さな石で事足りるのだから、
便座開発と言わずに便所の開発をしてもらいたい。
後は屋上に。
トランポリンはそのまま。ハンモックも。
この上に高さを倍にした屋根を戻したので、濡れることはないだろう。
まっすぐの雨しか降らないようだから。

「これ?」
「ええ、思っていたのとは違いますか?」
「・・・違う。」

テール君のがっかり顔がかわいい。
どんなものを想像していたんだろうか?



「では一緒に飛んでみましょうか?」
「え?ふわふわする。」

靴を脱いで手を繋いで、真ん中に。

「行きますよー。」

「うわ!は!!あは!」

おお!と大人たちも驚いている。

「ゴムを張っています。そのままお使いください。」
「よろしいのですか?」
「ええ。ゴムの宣伝にもなりますでしょ?」
「はは!なるほど。それに、、この木材の使い方がいいですね。」
「亡きイスナ殿にもお褒め頂きましたよ。」
「ああ、イスナが喜びそうだ。」
「それで?お話というのはこの館のこと?」
「いえ。」
「テール殿は?」
「できれば、おやすみになってもらうほうがいい。」
「わかりました。マリー!我らは下に。後は頼む。」
「はい。さ、テール様、お二人に激励を。」 
「うむ。2人とも後は任せたぞ。」
「「はい、お任せを。」」


2人は下りていき、もう2人、御者と料理人は下で
檜のおひつについてマティスと話している。
窯の使い方も説明。赤い海峡石は外して、樹石にしている。
もうひとりは御者もするし、木工加工もできる人らしい。
その2人は引っ越しの準備もあるので先に帰っていった。
荷物を持ってこないといけない。

「テール様、お昼寝しましょうか?
あのハンモックに揺られるのは気持ちがいいですよ?」
「マリーは?」
「わたしも少し寝ちゃいましょうかね。内緒ですよ?」

2人でハンモックに乗るのに苦労したが、
子守唄をうたいながらポンポンすればあっという間だ。
抱きかかえて、下に降りていこう。
悲しい寝言を言っている。
会談の隣の部屋で寝てもらえばいい。

各部屋の案内も終わったようだ。


「寝たのか? 」
「ええ。わたしも同席させてもらっても?」
「頼む。」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘





こちらはセサミン以下3人。
向こうはカーチとマーロ。
テールは隣の部屋で眠っている。


「さて、お話というのは?」
「・・・イスナはどこにいますか?」
「石におなりでは?場所は存じ上げません。」
「ドーガー殿がいらっしゃった。マティス殿も、モウ殿も。」
「なんのお話で?」
「2人の姫は?フックは?」
「カーチ殿?話が見えませんが?」
「・・・ここに寄せてもらってから、常に緑茶とガムと飴と。
籠に入った炭を寝床に。館内で香木のように茶を焚いています。」
「本当に話が分からない。」
「セサミナ様?わからない話ついでにわたしから少しお聞きしても?」
「かまいせんか?マーロ殿?カーチ殿?」
「ええ。」
「テール殿の母君はどこの出身の方ですか?」
「・・・王都です。天文院院長の遠縁の方だと。」

これはカーチ。

「今は?」
「わたしの判断で、別の館街に。」

これはマーロが答えた。

「ご病気?隔離?幽閉?」
「・・・・。」
「良き母ではないと?」
「何が良い母だと判断するのかが分かりませんが、
一度も抱き上げたことがないとだけ。」
「それは偏見だな。」
「モウ殿?」
「子を産んだから母になるわけではない。
いつか取られるものをどうして慈しむことが出来る?
それでも母というものは必ず子を守ると?
は!幻想だ。子が育つように母も育つ、成長するんだ。
逆にダメなものはダメなんだ。必ずとか、絶対はない。
が、その機会すら与えずに、
勝手に引き離しておいてよく言う。
お前の問題はそこか?
ああ、失礼。言葉が過ぎました。」
「・・・。」
「失礼ついでにもう一つ。なぜ自分たちに兄弟がいるのか?
考えたことがあるか?
争いの元にもなるだろうが、
大抵は、必要だからだ。必要だからいるんだ。」
「・・・影となっても?」
「逆の立場になっていたら?同じだろ?
なんで相手の立場になって考えないんだ?想像しろよ?
自分がされて嫌なことはするなってことだ。
自分がしたことは自分にされても、されたことに対して文句は言うな。
が、立ち向かうのは自分の力量だな。
あるかどうかは別の話だ。」
「モウ、控えろ。」
「申し訳ありません。
なにぶん、テール様がわたしの耳元で母様とつぶやきましたので。
少し感情的に。」
「・・・・。」
「お互いがなんの話をしているのかわからないですね。カーチ殿?」

「わたしは、わたしは・・・・。」

なにを思って涙を流しているんだろう?
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