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494:便座
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大体、みなは何しに会合についてきたのだろうか?
それとなく皆の会話を聞いていると、数合わせと荷物持ち!
各領国が地元産のものを持ってきているとか。
「毎年?」
「いえ、前回の酒の祭りはあの場で買うのは
わたし達だけだったようですが、他領国の酒を知る機会ができてよかったと。
それに今回はコットワッツが新商品を出すとふれこんでますから、
自分たちも同じように持って来たるみたいですね。
また会合館前で店を出してもいいことになってます。
その分のものは持っていきますよ。」
「でも夜会はあるんでしょ?」
「翌日になると連絡はありました。」
「なるほど。いい考えだね。見本市みたいな感じだ。
これは、気合を入れねばな。」
「ええ!」
出発前にそんな風にセサミンが言っていたからそれだね。
戻って来た時に冷たいタオルと、おいしい水を用意しておけばいいかな?
マティスとセサミンの方がちょっと気になるから見て来よう。
馬たちに何かあったら教えてねと頼んでおけば大丈夫だ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「では、ボルタオネは香木の採掘を人の手で行うと?」
「ええ、そのように考えております。」
そう答えるのはテール君だ。
もちろん、両脇にカーチとマーロがいる。
言わされているのだ。
これに付き合わされるのか?
会合はまだまだ先だ。
お昼寝をしたほうがいいのでは?
(セサミン?少し休憩しよう。これだね?コクにはなしというのは?)
(ええそうです)
(こちらからなにもいうことはできない。
そんなはなしは領国として決まっていることだ。
テール君を介することもない。すこし寝かさないと。
会合で眠るわけにもいかないでしょ?)
「少し休憩しましょうか?セバス、コーヒーを。
マリーはテール殿を休憩室に。すこし疲れが出ているようだ。
かまいませんね?カーチ殿、マーロ殿。」
「さ、テール様、こちらに。ご案内します。」
あれ?今日はカーチの方を見る。
「ええ。テール様、お言葉に甘えましょう。
我々も休憩したいのですよ。」
「そうか?なら、すこし。」
カーチに抱き上げられ椅子からおろしてもらう。
固めのクッションを積み重ねているから、
下りるのは注意しなければいけない。
トテトテと両手を広げたわたしに抱き付いてきて、
フンヌと息を吐き、マティスと同じように首元の匂いを嗅いでいる。
うん。匂うらしい。馬たちもそう言っていた。
「テール様。先にお手洗い、お便所に行きましょうか?
中もご一緒しますよ?」
「ひとりでできる!」
「そうでしたか。では準備だけしましょうね。」
子供用便座と、台と。
おしっこも座るのかしら?
「あの、テール様?おしっこ?うんち?」
「!!じょ、女性がそのようなことを!!」
「しかし大切なことですよ?おしっこも座ってできます?」
「カーチに教えてもらっている!座るほうがいい!」
「おお!えーとあとの始末の方法は?」
「知っている!!」
なるほど。
無事に済ませて、手も洗って出て来たようだ。
ご立派でございます。
が、移動はわたしが抱き上げる。
耳元で小さな声で訪ねてきた。
わたしも小さな声で答える。
「・・・昨日の人?」
「ええ。そうですよ。よくお分かりになりましたね。」
「匂いが一緒だ。」
「・・・どのような匂いか聞いてもよろしいですか?」
「?」
「んー、甘いとか、おいしいそうとか、くさいとか?」
「・・・わからない。」
「そうですか。わたしの夫はわたしの匂いだと言いますね。」
「!!!結婚しているの?ぼくの嫁になってほしいのに!」
「おや!それはうれしいですが、わたしの夫は一人だけ。
セバス、いてましたでしょ?あれですよ。唯一なのです。」
「・・・あれか。あれはいい男だ。わたしはわかる。」
「そうでしょ?うふふふ。
さ、すこし水分をとって横になりましょう。
プリンはまだ冷やしているんですよね?
クッキーは持って帰る分?
じゃ、特別。乳にあまーいものを溶かしたのをね。」
ホットココアを。
「あまい!あったかい!これ!あなたの匂いだ!」
「え?この匂いですか?そうなんだ。うふふふふ。
ちょっとうれしいですね。わたしも好きな匂いです。」
カウチにプカプカ大判マットを敷いて、ガーゼケットを。
ポンポンとすれば、すぴーと寝てしまった。
恐るべしホットミルク。
すぐ隣の部屋だ。扉は開けておこう。
念のため見張りは月無し石君に。
「寝ましたか?」
マーロとカーチが尋ねる。
「ええ。お昼寝は必要ですからね。」
「オヒルネ?」
「ああ、半分過ぎに寝ることですよ。
子供は特に。大人もいいらしいですよ?ほんの少しですが。」
「寝るのですか?そのまま寝入ってしましそうですが。」
「寝る前にコーヒーを飲むんです。
眠気覚ましにのみますでしょ?コーヒーを。
なので、それが効いてくるころに目覚められると聞いております。」
「どなたに?」
これはファンファンだ。
「資産院のワイプ様です。」
食べ物関係は全部師匠だと言っておけば相手は疑問を持たない。
「では、取り決めをまとめてしまいましょう。
テール殿はおやすみだが、方針はお聞きしている。
かまいませんね?」
細かい取り決めのみだ。
ここは事務方の応酬。
ドーガーもなかなかなのでは?と思っていたが、
セサミンとマティス、ドーガーと繋げている。
カーチとファンロと料理人2人、それとわたし。
便座のことについて聞かれた。
それと水が出る仕組みと。
くわしいことはマリーに聞いてほしいとセサミンが言ったそうだ。
紙と鉛筆を出してもらって説明。
鉛筆はボルタオネの前領主が作ったということでイスナペンと呼んでいるとか。
洋便器が流行れば便座カバー、当然タオルだ、それも売れる。
下水道は難しいので、少量の水で流すタイプ。
これは外のタンクの大きさ、角度が大事だろう。
「簡易には台を置いて便座を置くだけでも便利になると思います。」
「これも今回売り出しに?」
「いえ、まだその段階ではないとおもいます。
ただ、ご高齢の方には評判ですよ。その足腰が弱くなると、
座るのもしゃがむのもたいへんだとか。
そうなるとお便所もつらいものに。
ただ、お便所というのは一日何度も使うもの。
知らず知らずに屈伸運動していることになりますので、
これになれますと運動不足になるという話も聞いております。」
「それは?」
「ええ、当館にいらした分隊隊長のニック殿です。」
運動系はニックさんかガイライで。
「しかし、その、楽でしたね。」
ファンロだ。
わかるよ。ぽっちゃりはかがむのが大変なのだ。
「運動のお話は極端だとは思いますよ。
そのほかで運動していますから。
食べることと排泄は重要なことだと思っています。
少し座が低いとお思いではないですが?
あの高さが、しゃがんでするときと同じような体勢で、
力を入れられるとか。
なので、あの高さをもう少し研究しないと一般に売り出すことは難しいとかと。
便座だけでもいいのですが、一般の椅子と同じような高さでつくりますと
意味がありませんから。
あ!閃きましたよ!雨の日の後の茸祭り!
その時に設置するお便所で高さを少しずつ変えて
皆さんに使ってもらうというのは?
どれがよかったかあとで投票してもらうんです!」
「それは、その、マリー殿は茸祭りに参加されたことは?」
「ないんです。だから楽しみで!」
「ああ、やはり。」
「?」
「マリー殿。茸祭りはそんな余裕はないのですよ。
ええ、もちろんわたし達は皆参加したことありますよ?
毎年皆で行くことはないですが、数年ごと交代で。」
「え?そんなに、その激しいと?」
「ええ。」
それはそれでなにか考えないと。
なぜか便座の話から便通の話で盛り上がってしまう。
男の人も便秘ってあるんだね。
「これの製作を任せてもらえないでしょうか。」
カーチが言う。
はじめて会った時の胡散臭さは全くない。
「そうなると思いますよ?
便座の材料はやはり木材ですから。」
「そ!それは!」
ファンロが不公平ではないか的に声をあげた。
「ファンロ様。ラルトルガはやはり食の国。
ここは皆がお悩みだった便通の食品をなにか提案できる方がよろしいのでは?
砂糖芋、あれを食べるとそのよいということはありませんか?
それと音的な臭い的ななにかも多いと。」
「!へ?」
「・・・それですね。繊維質が多いんですよ。
で、よくなると聞いております。根菜ですね。
根っこを食べるもの。わたしもそうですが、女性に受けるものは売れます。
例えばですよ、
おいしいのにいくら食べても太らない食べ物なんてものがこの世にあったら、
世の女性は必ず買います。
が、実際にそんなものはない。
太るのは食べる量と消費するものと排泄するものの、この均衡が崩れている。
当然食べる量が多いから太るのです。
いいですか?ここで、そんな正論を女性に言わないように。
分かっているのですよ!そんなことは!
消費する?運動?できていれば太ってなんかいない!
それも言うな!わかっている!
ではどうするか?最低限でできること。お通じです。
あまり大きな声では言いにくいお話。ここでも男性の方も便秘すると
はじめて聞くぐらいですから、あまりこういうお話はしないですよね。
しかし、この食材をこうやって調理すれば、お通じがよくなる。
おなかすっきり!あれ?ちょっとやせたかしら?
なんてものがあれば?
買う、わたしは買う!!」
力説してしまった。
「ファンロ様!あれは!パラゴ!あれを食べた後ってけっこうでますよ!」
「あれか!持ってきているか?ああ、ないか!」
「ものすごく興味のあるおはなしですが、そういうのです。
食のラルトルガ、その方面の開拓がよろしいかと。
そして、ぜひお教え下さい!!」
「な、なるほど!」
「医食同源という言葉があります。タトートの言葉でしたか?
医療も食事も本質的に同じ、タトートの香辛料と同じですね。
当然、食材そのものにもあると思います。」
薬系はタトートだと言っておけばいいかな?
「はー、マリー殿は博識でいらっしゃる。」
「とんでもないです。
若かりしころ、かなり各地を回りましたのでその時仕入れた話ばかりですよ?」
「?かなり幼い時から各地を?」
「?もちろん成人してからですよ?ああ、若く見えるようですが、
48です。テール様からぜひ嫁にと言われましたが、
そこは丁重にお断りいたしましたので。わたしの夫は唯一ただ一人ですから。」
「テール様が?」
「ええ、女性がその、
便のはなしなぞするものではないとお叱りも受けました。
ここでのお話は話の流れで仕方なくですよ?よろしいですね?」
ちょっと圧をかけておこう。
「「「「も、もちろんです。」」」」
「ん?テール様がお目覚めのようですね。
申し訳ないですが、カーチ様、お傍に。
寝汗もかいてますからふいてあげてください。
これで。
なにかお飲み物を用意してきますので。」
月無し石がなんとなく呼んでくれたから。
オレンジジュースでいいかな?
月無し石たちの慰労会もしないとね。
海がいいのかな?
「テール様?お目覚めですね。
これを。その棒は穴が開いてます。ゆっくり吸ってください。
カーチ様お手本を。」
「え?これを吸うのですか?
ズ!ああ、なるほど。テール様、すこしずつの方が良いようですね。
スーっと。」
「ん。!!冷たい!甘いな!」
「キトロスの絞り汁です。あれ?食事の時は出てませんでしたか?」
「たくさんありすぎて飲めなかった。」
「そうですか。樽にいれてますのでお持ち帰りください。
数日は日持ちはしますよ。冷蔵庫が普及すればもっと日持ちしますから。」
「たのしみだ!」
「ええ。わたしもですよ。着替えるほど汗は出ていませんか?」
「それは大丈夫なそうです。これは?」
「クッションシートです。よく眠れるとか。
お持ち帰りしますか?小さな便座と台と。」
「よろしいのですか?」
「もちろん。研究なさるのでしょ?主に伝えておきます。」
「テール様、あの便所の座るところ。
ボルタオネで研究しようかと。」
「いいな!木材はたくさんあるからな!伐採して加工して、それで香木がでればいいな!」
「ええ。」
伐採の過程で香木を探すということか?
それではおそらく見つからないだろう。
それよりもカーチの変わりようだ。
ここは妖精の匂いがないからか?
糸はない。
やはり、匂い、香か?
匂いをどう防ぐ?
誰かが常に焚いているのか?
それとも充満させてしまっている?
竹炭とお茶で防げるか?
コクに相談しよう。
「ではプリンをお持ちしましょうね。」
「ああ、マリー、外で食べよう。
従者の分も作ってるんだ。もちろん、マリーの分も。
みなで食べよう。」
「うれしいい!皆呼んできます。」
「ん?」
「呪いの森に探検にいってるんですよ。」
はやく呼びものさなければ!
中庭に廻ると、皆が戻ってくるところだった。
「お戻りで?どうでした?」
「はははは。なんど挑戦しても、戻ってきましたよ。
人数を変えたり、手をつないだり。
21人目が森に入ったら、みなで、外に。
100人だったらもっと中に入れるんじゃないかな?」
「それは面白い実験結果ですね!」
「え?そうですか?」
「そうですよ!体の一部が、この場合つながっている一部が外に出ていれば、
奥まで進めるということでは?
しかし、20人分が限界っていうこともあり得ますけど。」
「なんだ。」
「うふふふ。がっかりしないでください。
領主様たちが作ったプリンがあるそうですよ?わたし達の分も!」
おおおお!!!
でも、さっき食べたしな。
出すんじゃなかったな。
(大丈夫だ、テオブロマの蜜を使っている)
(おお!そっちの方が豪華でおいしいからね!さすがだ!)
(皆で食べるというからな。愛しい人はこっちの方が好きだろ?)
(うん!マティスも大好き!)
(そうだろうそうだろう)
シンプルイズベスト!
エプロンに刺繍したプリンそのものです。
アップリケとか売れるんじゃないかな?キーホルダーとか?
プリングッツ!プリンの形をしたクッションとか!
長テーブルにセットしなおして
みなで仲良く座ります。
32人なので、16人づつね。
挨拶は順に。
ファンファンからだ。
「我が手で作ったプリンだ。
皆と共に食べたいと思ってな。数を増やしてもらった。
これからも、いや、これからは今以上に精進していく。皆ついて来てくれ。」
テール君。
「はじめて作ったものだ。これとおなじ。
教えてもらえればなんだって!できないことはできないというから。
一緒に。カーチ、マーロ、ウェーブ、そしてみんなも。よろしく頼む。」
セサミン。
「さ、頂きましょう。」
わーっと皆で食べた。おいしい!
とろけるタイプ!
「乳がすこし多かったかな?やわらかいな。」
「固いのも好きだけど、こっちも好き。プリン屋さんしたいね。
お客はわたしだけの。」
「いつでも。」
「うん!」
マティスだけがお客さんのお店もしたいな。
ああ、なんて贅沢なんだ。
それとなく皆の会話を聞いていると、数合わせと荷物持ち!
各領国が地元産のものを持ってきているとか。
「毎年?」
「いえ、前回の酒の祭りはあの場で買うのは
わたし達だけだったようですが、他領国の酒を知る機会ができてよかったと。
それに今回はコットワッツが新商品を出すとふれこんでますから、
自分たちも同じように持って来たるみたいですね。
また会合館前で店を出してもいいことになってます。
その分のものは持っていきますよ。」
「でも夜会はあるんでしょ?」
「翌日になると連絡はありました。」
「なるほど。いい考えだね。見本市みたいな感じだ。
これは、気合を入れねばな。」
「ええ!」
出発前にそんな風にセサミンが言っていたからそれだね。
戻って来た時に冷たいタオルと、おいしい水を用意しておけばいいかな?
マティスとセサミンの方がちょっと気になるから見て来よう。
馬たちに何かあったら教えてねと頼んでおけば大丈夫だ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「では、ボルタオネは香木の採掘を人の手で行うと?」
「ええ、そのように考えております。」
そう答えるのはテール君だ。
もちろん、両脇にカーチとマーロがいる。
言わされているのだ。
これに付き合わされるのか?
会合はまだまだ先だ。
お昼寝をしたほうがいいのでは?
(セサミン?少し休憩しよう。これだね?コクにはなしというのは?)
(ええそうです)
(こちらからなにもいうことはできない。
そんなはなしは領国として決まっていることだ。
テール君を介することもない。すこし寝かさないと。
会合で眠るわけにもいかないでしょ?)
「少し休憩しましょうか?セバス、コーヒーを。
マリーはテール殿を休憩室に。すこし疲れが出ているようだ。
かまいませんね?カーチ殿、マーロ殿。」
「さ、テール様、こちらに。ご案内します。」
あれ?今日はカーチの方を見る。
「ええ。テール様、お言葉に甘えましょう。
我々も休憩したいのですよ。」
「そうか?なら、すこし。」
カーチに抱き上げられ椅子からおろしてもらう。
固めのクッションを積み重ねているから、
下りるのは注意しなければいけない。
トテトテと両手を広げたわたしに抱き付いてきて、
フンヌと息を吐き、マティスと同じように首元の匂いを嗅いでいる。
うん。匂うらしい。馬たちもそう言っていた。
「テール様。先にお手洗い、お便所に行きましょうか?
中もご一緒しますよ?」
「ひとりでできる!」
「そうでしたか。では準備だけしましょうね。」
子供用便座と、台と。
おしっこも座るのかしら?
「あの、テール様?おしっこ?うんち?」
「!!じょ、女性がそのようなことを!!」
「しかし大切なことですよ?おしっこも座ってできます?」
「カーチに教えてもらっている!座るほうがいい!」
「おお!えーとあとの始末の方法は?」
「知っている!!」
なるほど。
無事に済ませて、手も洗って出て来たようだ。
ご立派でございます。
が、移動はわたしが抱き上げる。
耳元で小さな声で訪ねてきた。
わたしも小さな声で答える。
「・・・昨日の人?」
「ええ。そうですよ。よくお分かりになりましたね。」
「匂いが一緒だ。」
「・・・どのような匂いか聞いてもよろしいですか?」
「?」
「んー、甘いとか、おいしいそうとか、くさいとか?」
「・・・わからない。」
「そうですか。わたしの夫はわたしの匂いだと言いますね。」
「!!!結婚しているの?ぼくの嫁になってほしいのに!」
「おや!それはうれしいですが、わたしの夫は一人だけ。
セバス、いてましたでしょ?あれですよ。唯一なのです。」
「・・・あれか。あれはいい男だ。わたしはわかる。」
「そうでしょ?うふふふ。
さ、すこし水分をとって横になりましょう。
プリンはまだ冷やしているんですよね?
クッキーは持って帰る分?
じゃ、特別。乳にあまーいものを溶かしたのをね。」
ホットココアを。
「あまい!あったかい!これ!あなたの匂いだ!」
「え?この匂いですか?そうなんだ。うふふふふ。
ちょっとうれしいですね。わたしも好きな匂いです。」
カウチにプカプカ大判マットを敷いて、ガーゼケットを。
ポンポンとすれば、すぴーと寝てしまった。
恐るべしホットミルク。
すぐ隣の部屋だ。扉は開けておこう。
念のため見張りは月無し石君に。
「寝ましたか?」
マーロとカーチが尋ねる。
「ええ。お昼寝は必要ですからね。」
「オヒルネ?」
「ああ、半分過ぎに寝ることですよ。
子供は特に。大人もいいらしいですよ?ほんの少しですが。」
「寝るのですか?そのまま寝入ってしましそうですが。」
「寝る前にコーヒーを飲むんです。
眠気覚ましにのみますでしょ?コーヒーを。
なので、それが効いてくるころに目覚められると聞いております。」
「どなたに?」
これはファンファンだ。
「資産院のワイプ様です。」
食べ物関係は全部師匠だと言っておけば相手は疑問を持たない。
「では、取り決めをまとめてしまいましょう。
テール殿はおやすみだが、方針はお聞きしている。
かまいませんね?」
細かい取り決めのみだ。
ここは事務方の応酬。
ドーガーもなかなかなのでは?と思っていたが、
セサミンとマティス、ドーガーと繋げている。
カーチとファンロと料理人2人、それとわたし。
便座のことについて聞かれた。
それと水が出る仕組みと。
くわしいことはマリーに聞いてほしいとセサミンが言ったそうだ。
紙と鉛筆を出してもらって説明。
鉛筆はボルタオネの前領主が作ったということでイスナペンと呼んでいるとか。
洋便器が流行れば便座カバー、当然タオルだ、それも売れる。
下水道は難しいので、少量の水で流すタイプ。
これは外のタンクの大きさ、角度が大事だろう。
「簡易には台を置いて便座を置くだけでも便利になると思います。」
「これも今回売り出しに?」
「いえ、まだその段階ではないとおもいます。
ただ、ご高齢の方には評判ですよ。その足腰が弱くなると、
座るのもしゃがむのもたいへんだとか。
そうなるとお便所もつらいものに。
ただ、お便所というのは一日何度も使うもの。
知らず知らずに屈伸運動していることになりますので、
これになれますと運動不足になるという話も聞いております。」
「それは?」
「ええ、当館にいらした分隊隊長のニック殿です。」
運動系はニックさんかガイライで。
「しかし、その、楽でしたね。」
ファンロだ。
わかるよ。ぽっちゃりはかがむのが大変なのだ。
「運動のお話は極端だとは思いますよ。
そのほかで運動していますから。
食べることと排泄は重要なことだと思っています。
少し座が低いとお思いではないですが?
あの高さが、しゃがんでするときと同じような体勢で、
力を入れられるとか。
なので、あの高さをもう少し研究しないと一般に売り出すことは難しいとかと。
便座だけでもいいのですが、一般の椅子と同じような高さでつくりますと
意味がありませんから。
あ!閃きましたよ!雨の日の後の茸祭り!
その時に設置するお便所で高さを少しずつ変えて
皆さんに使ってもらうというのは?
どれがよかったかあとで投票してもらうんです!」
「それは、その、マリー殿は茸祭りに参加されたことは?」
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「ああ、やはり。」
「?」
「マリー殿。茸祭りはそんな余裕はないのですよ。
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「ええ。」
それはそれでなにか考えないと。
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「そうなると思いますよ?
便座の材料はやはり木材ですから。」
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砂糖芋、あれを食べるとそのよいということはありませんか?
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「!へ?」
「・・・それですね。繊維質が多いんですよ。
で、よくなると聞いております。根菜ですね。
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例えばですよ、
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太るのは食べる量と消費するものと排泄するものの、この均衡が崩れている。
当然食べる量が多いから太るのです。
いいですか?ここで、そんな正論を女性に言わないように。
分かっているのですよ!そんなことは!
消費する?運動?できていれば太ってなんかいない!
それも言うな!わかっている!
ではどうするか?最低限でできること。お通じです。
あまり大きな声では言いにくいお話。ここでも男性の方も便秘すると
はじめて聞くぐらいですから、あまりこういうお話はしないですよね。
しかし、この食材をこうやって調理すれば、お通じがよくなる。
おなかすっきり!あれ?ちょっとやせたかしら?
なんてものがあれば?
買う、わたしは買う!!」
力説してしまった。
「ファンロ様!あれは!パラゴ!あれを食べた後ってけっこうでますよ!」
「あれか!持ってきているか?ああ、ないか!」
「ものすごく興味のあるおはなしですが、そういうのです。
食のラルトルガ、その方面の開拓がよろしいかと。
そして、ぜひお教え下さい!!」
「な、なるほど!」
「医食同源という言葉があります。タトートの言葉でしたか?
医療も食事も本質的に同じ、タトートの香辛料と同じですね。
当然、食材そのものにもあると思います。」
薬系はタトートだと言っておけばいいかな?
「はー、マリー殿は博識でいらっしゃる。」
「とんでもないです。
若かりしころ、かなり各地を回りましたのでその時仕入れた話ばかりですよ?」
「?かなり幼い時から各地を?」
「?もちろん成人してからですよ?ああ、若く見えるようですが、
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そこは丁重にお断りいたしましたので。わたしの夫は唯一ただ一人ですから。」
「テール様が?」
「ええ、女性がその、
便のはなしなぞするものではないとお叱りも受けました。
ここでのお話は話の流れで仕方なくですよ?よろしいですね?」
ちょっと圧をかけておこう。
「「「「も、もちろんです。」」」」
「ん?テール様がお目覚めのようですね。
申し訳ないですが、カーチ様、お傍に。
寝汗もかいてますからふいてあげてください。
これで。
なにかお飲み物を用意してきますので。」
月無し石がなんとなく呼んでくれたから。
オレンジジュースでいいかな?
月無し石たちの慰労会もしないとね。
海がいいのかな?
「テール様?お目覚めですね。
これを。その棒は穴が開いてます。ゆっくり吸ってください。
カーチ様お手本を。」
「え?これを吸うのですか?
ズ!ああ、なるほど。テール様、すこしずつの方が良いようですね。
スーっと。」
「ん。!!冷たい!甘いな!」
「キトロスの絞り汁です。あれ?食事の時は出てませんでしたか?」
「たくさんありすぎて飲めなかった。」
「そうですか。樽にいれてますのでお持ち帰りください。
数日は日持ちはしますよ。冷蔵庫が普及すればもっと日持ちしますから。」
「たのしみだ!」
「ええ。わたしもですよ。着替えるほど汗は出ていませんか?」
「それは大丈夫なそうです。これは?」
「クッションシートです。よく眠れるとか。
お持ち帰りしますか?小さな便座と台と。」
「よろしいのですか?」
「もちろん。研究なさるのでしょ?主に伝えておきます。」
「テール様、あの便所の座るところ。
ボルタオネで研究しようかと。」
「いいな!木材はたくさんあるからな!伐採して加工して、それで香木がでればいいな!」
「ええ。」
伐採の過程で香木を探すということか?
それではおそらく見つからないだろう。
それよりもカーチの変わりようだ。
ここは妖精の匂いがないからか?
糸はない。
やはり、匂い、香か?
匂いをどう防ぐ?
誰かが常に焚いているのか?
それとも充満させてしまっている?
竹炭とお茶で防げるか?
コクに相談しよう。
「ではプリンをお持ちしましょうね。」
「ああ、マリー、外で食べよう。
従者の分も作ってるんだ。もちろん、マリーの分も。
みなで食べよう。」
「うれしいい!皆呼んできます。」
「ん?」
「呪いの森に探検にいってるんですよ。」
はやく呼びものさなければ!
中庭に廻ると、皆が戻ってくるところだった。
「お戻りで?どうでした?」
「はははは。なんど挑戦しても、戻ってきましたよ。
人数を変えたり、手をつないだり。
21人目が森に入ったら、みなで、外に。
100人だったらもっと中に入れるんじゃないかな?」
「それは面白い実験結果ですね!」
「え?そうですか?」
「そうですよ!体の一部が、この場合つながっている一部が外に出ていれば、
奥まで進めるということでは?
しかし、20人分が限界っていうこともあり得ますけど。」
「なんだ。」
「うふふふ。がっかりしないでください。
領主様たちが作ったプリンがあるそうですよ?わたし達の分も!」
おおおお!!!
でも、さっき食べたしな。
出すんじゃなかったな。
(大丈夫だ、テオブロマの蜜を使っている)
(おお!そっちの方が豪華でおいしいからね!さすがだ!)
(皆で食べるというからな。愛しい人はこっちの方が好きだろ?)
(うん!マティスも大好き!)
(そうだろうそうだろう)
シンプルイズベスト!
エプロンに刺繍したプリンそのものです。
アップリケとか売れるんじゃないかな?キーホルダーとか?
プリングッツ!プリンの形をしたクッションとか!
長テーブルにセットしなおして
みなで仲良く座ります。
32人なので、16人づつね。
挨拶は順に。
ファンファンからだ。
「我が手で作ったプリンだ。
皆と共に食べたいと思ってな。数を増やしてもらった。
これからも、いや、これからは今以上に精進していく。皆ついて来てくれ。」
テール君。
「はじめて作ったものだ。これとおなじ。
教えてもらえればなんだって!できないことはできないというから。
一緒に。カーチ、マーロ、ウェーブ、そしてみんなも。よろしく頼む。」
セサミン。
「さ、頂きましょう。」
わーっと皆で食べた。おいしい!
とろけるタイプ!
「乳がすこし多かったかな?やわらかいな。」
「固いのも好きだけど、こっちも好き。プリン屋さんしたいね。
お客はわたしだけの。」
「いつでも。」
「うん!」
マティスだけがお客さんのお店もしたいな。
ああ、なんて贅沢なんだ。
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温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
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−−−−−−
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誤字・脱字・文章修正 随時行います。
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