いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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452:シャボン玉

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資産院を出るときに、お預けありがとうございますと、
小さなメモ帳をもらった。
マティスが見せびらかしたパラパラ漫画をヒントにしたらしい。
見せたの?どっちを?両方?・・・もういいよ。

少し硬い紙を台紙に、鉛筆を刺せるようにするといいよと教えてあげる。
鉛筆はボルタオネの生産品だ。

「面白いですね!さっそく!」
『中央院に行くのでは?』
「ああ!そうだった。大門まで見送りできませんが、お気をつけて。
スー行きますよ?」

中央院は少し遠いようだ。
スーもゴロゴロ懐いてくる。
「ん?」

この匂いはまずい。

(コクの匂い?香木?クジラ石?)

最後のだな。よく洗い流せ。


(はーい。ん?スー兄が言ってること前よりもはっきりわかるよ?)

いいから。すぐにだ。


そうなの?


スー兄が言うから、井戸の場所を教えてもらって、
そこで、手洗いだ。

(なんだろうね?クジラ石、虫の塊、匂うのかな?動物的に)
(そうかもしれないな。前に焚いたときもビャクとクーが喜んでいただろ?)
(ああ、そうだね。手洗いしっかり、だね。あ!おもしろいことをしてみようか?)
(ん?)

石鹸とお湯、もったいないけど樹脂蜜少量。
これを混ぜる。
で、竹の細い枝の節をとる。ストローだ。
実際は湯がいて乾燥させて、中をもっと削るんだろうけどね。
今はこれでいい。

で、吹く。


「!!!!!!」
結構丈夫なシャボン玉。

(触れるよ?)
(え?)

赤い服を着た大人であろう人間が、
ふわふわ浮く玉で遊んでいる。
結構楽しい。
これは子供たちのおもちゃとして売り出そう。
問題は単価が高い。
石鹸も樹脂蜜も高い。
ダメだな。


(たのしい!それに不思議だ)
(石鹸が泡立つのはわかるでしょ?で、樹脂蜜の粘度で長持ちすると。
じゃ、プカプカ溶かしたらいいかな?)
(どうやって溶かす?)
(微塵切りにして、鍋でゆでる?)
(試してみよう!)

マティスがノリノリだ。こういうのが好きなんだな。
泡ぶろも好きそうだ。今度やってみよう。



大門前。
それはそれはたくさんの人たちですよ。
師匠もいます。あれ?そんなに遊んでた?

(えーと。待ちました?)
(ええ。何してたんですか?)
(手を洗っていました)
(?なんにせよ、引き留めが入りますよ?わたしからは何もできません)
(かまわん。移動できるんだから)
(石を施しましたよ)
(もったいない。ルポイド一行は?)
(それは軍部で接待ですよ。ガイライ殿も到着しましたので)
(いいな。そっちがいい)
(では、早く終わらせてくださいな。わたしもみたい)
(はーい)

『世話になった。金はここの資産院に預けることになったでな、
また世話になろう。ではな。』
「お待ちください、赤い塊殿!」
「ん?済まぬな。面布をしているからわからぬかもしれぬが、
かなりの年寄なのだ。顔と名前が一致しないことが多々ある。
えーと、貴殿は?』
「ああ、初めてでございます。中央院事務部の部長クロモと申します。」
『おお!知ってるぞ?武の大会での進行役。
素晴らしかったと聞いておる。わしも聞きたかったものだ。』
「あ、お褒め頂いて恐縮です。
えっと?どなたからお聞きで?」
『有名な武の大会、誰も彼もが、最後の締めが良かったと聞くぞ?
内容はな、ご贔屓があるのか、一方だけを褒めるし、
こう、ズバーンとか?ビューンとか?
よくわからんのよ。くくくく。』
「そ、そうでございますか。」
『うむ。だから、一番よくわかる進行役殿を見たいと思っておった。
そうかそうか。長生きはするもんだ。ではな。』
「は!ありがとうございます。え?あ!違います!お待ちください。」

だめか。

『なんだ?』
「赤い塊殿は石使いと、異国の石使いと伺っております。
それで、どうか、ニバーセル専属の石使いとして契約していただきたいのです。」
『それはないな。我らは気まぐれ、今は懐具合も暖かでな。
仕事をする気も起きん。ではな。』
「お待ちを!貴殿のお力があれば、どれほどの者が助かりましょうか?
ぜひ、お力をお貸しください。ぜひ、ニバーセルの国民の為に!」
『ん?ここにいるもの皆そう思っているのか?』
「もちろんでございます。」
「あ!わたくしはそう思っていません、除外してください。」
「ワイプ!お前は帰れ!このことオート院長に報告するからな!!」
「はい、どうぞ?国民の為じゃないでしょ?では、失礼します。」

(はー、師匠、かっこいい!)
(ワイプ!鍛練場で待っておけ!!)
(はいはい)

マティスのガルルル顔見れん。残念。

シーンってなったよ?
そりゃそうだ。

『あれは?』
「お気になさらずに。資産院の者です。金にがめついのです。』
『では、我らと同類だな?我らの噂をしってるか?
金にがめついらしいぞ?くくくく。』

あー、これで定着する。

「それはもちろん。」

否定無しだよ!おい!

『では、金は出すと?』
「当然です。」
『誰を何から助けるのだ?空腹にあえぐ民か?
病気に苦しむものか?誰だ?急ぎなのだろ?誰だ?どこにいる?何人だ?
それらを助けるために、ここにいる者たちは全ての資産をなげうって助けているのだな?
我らに金を出すよりも、その者たちに配ったほうがいいのではないか?
畑を作れ、作物を作れ。
医術を学ぶものを保護しろ。読み書きを教える学校を作れ。
下水道を完備しろ。それをすべてやってもダメなのか?
誰を何から助ける?お前達か?何も食べずに、働いているのか?
その衣服は?その腰から見える飾り帯は?
それを食い物に変えることは出来ぬのか?対外的な見栄か?
ある程度は仕方ないな。
病は治せぬぞ?医者でないからな。
さぁ、言え!誰を何から、助けるのだ?
お前たちの金、王都にある金をなげうってでも助けられぬのか?
ここにいる全員の資産を我らに出せるのか?
だったら、できるできないは置いておいて考えはしよう。
前金の返却無しだ。』
「・・・・。」

「たかが、石使い!なにを下手に出ている!
金は出すと言ってるんだ!!大人しく従え!」


おわかりいただけただろうか?
面布の下の2人のニヤリ顔。

『ふふふ。なるほど。年寄りは得てして正論を論じたくなるものだ。
で?貴殿は?』
「中央院、副院長ベンダーだ。年、そうだな、2000だ。
あとは出来高だな、1回あたりに100だ。
どうだ?破格値であろう!
ああ、石はそちらで用意しろ。もしくはその石が出る砂漠の場所を言え。」

まさしく破格値。デフレスパイラルだ。あれ?今使う言葉?ちがうな。

『石な。我らは異国の者。異国に泉のように砂漠石がある砂漠があると。
我らのことは、秘密でもなんでもないな?赤い塊?』
『そうだな?赤い塊?どこから漏れるのだ?
他の赤い塊もここに来ているのか?』
『それはないな。あやつか?それもないな。奴は何も知らん。出来損ないだ。
だから出たのだから。』

2人で聞こえるように話してみる。
異国には砂漠石がザックザックでる砂漠があると思うだろう。
赤い塊のひ孫は何も知らない。出来損ないというはなしも広まる。

『2000な。で、1回100。これ相場?クロモ殿?』
「え?ベンダー副院長!それは余りにも安すぎます!
今の相場は1回5000以上。今回の移動の件も
2人の移動、50人以上の移動、そしてニックの望むときの移動です。
それで、5000。それこそ破格値。」
「石を使えば移動もできるのだろ?その方法でいいぞ?
それを買い取ろう。」
『ははははは!ここで、移動法を公言したら価値がなくなるぞ?
みながみな移動できる。それでは困るであろう?』
「お待ちください!とにかく!ゆっくりお話を。」
『そうだろうな。ここでするような話でもないな。
ふははははっ!クロモ殿?寝る前にな、温めた乳に樹脂蜜を入れて飲め。
その胃の痛み、すこしは和らぐし、ゆっくり眠れるぞ?酒を少し落とすのもいい。』
「ああ!素晴らしい!どうしてそれがお分かりになるか!
どうか、どうか、お時間を!!」

『いや、この話は断る。帰ることにしよう』
「はは!ここで石は使えない!」
『なぬ?どれほど大きな石を使ったんだ?
より大きな石を使えば上書きできることは周知の事実だな?
もったいないことだ。それこそ、その石があれば、なにができる?
我らが来るたびにこのようなことをされては、さすがにもったいないな。
ここには来ぬようにしよう。貴殿のお陰だな。では。』

では、の声と同時にマティスが抱え、とりあえず、呪いの森に。

「「ぶははははははは!!!」」

「赤い塊はひどいね?」
「そうだな。100で使おうとする方もひどいぞ?
しかも石は自腹だ。ん?ワイプは10で使うな。あれ?」
「いや、そんなもんだよ。でもさ、あんだけの人数揃えたからさ、
もっと、桁が違うようなこと言われるかと思ったよ。
だから先に正論を出したんだけど。
安いから無理ですって言ってもよかったね。」
「そうだな。あの男、首になるか?」
「どうだろね?お偉いさんの息子とかじゃないの?
わたしの話もよくわかってなかったみたいだし。」
「ワイプは?」
「大丈夫でしょ?あれでクビになったらとっくになってるよ、師匠の場合。」
「残念だ。」

「じゃ、着替えて、鍛練場に行こうか?」
「大門から?」
「そうだね。どうなったか知りたい。砂漠の民で行こう!
問答はお願いします。」
「ふふふ。わかった。」





大門前に移動。
かいもーん


むっちゃスムーズ。

「砂漠の民ティスとモウ。し、師匠の資産院わ、ワイプに会いに来た。」

マティスがいやいや言ってるのが面白かったぐらいだ。


「通りませー。」

と、気もそぞろで通してくれる。

「なにかあったんですか?」
「え?いや、さっきさ!あんたたちももう少し早く来れば、良かったのに。
もう、腹が痛くて!」
「え?大丈夫ですか?」
「笑いすぎでだよ!ぶ!!!あんたの師匠?ワイプもおもしろかった。
後で聞いてみろよ。ほれ、ここで止まるな!」
「はーい。」

大うけだったらしい。

「シート!」
「お!モウさん久しぶり!ちょっと、ちょっと。こっち来いよ?旦那も!」
「ん?」

小声で教えてくれた。

「知ってるか?ガイライ隊長とニック副隊長!飛ばされたんだよ!」
「え!なんで?どこに?」
「なんでかは詳しくはわからんよ。責任をとって?
飛ばされたってのは分隊だって!実質首だって!ほとんど笑ってた!
俺?俺は笑わんよ、あちゃーって。別の誰かが隊長だろ?
そしたら訓練だって参加させてもらえないかもしれんしな。
ルカリ副隊長?あー、ちょっと、あとちょっとの一押しがないんだ。
いい人なんだけどね。」
「あなたはいい人だからずっと友達でいましょうっていう奴?」
「ぶ!!近いけど違うよ!遠慮するんだよ。
実力もあるんだから遠慮することないのに。」
「ルカリの一族はルカリアから出た一族だ。その関係だろう。」
「家柄か?いやだねー。」
「分隊だったらここにはいないの?」
「ああ、王都の端が拠点らしいよ?あ、でも、さっき戻ってきた。
分隊呼び出しは有事だけだけど、さっき来た人たちが、
軍部と手合わせしたいって!で、呼ばれたらしいよ?」
「おお、結果は?」
「ルカリ副隊長が善戦らしい。あとは、ま。で、2人といまもやってると思うよ?」
「え?ずっと?」
「そう。俺も見たいんだけど、交代なんだ。あ!来た!」
「シート!いいぞ!いや、すごかった!お前も見てこい。
ん?客?」
「うん。ガイライ隊長じゃない、ガイライさんの客なんだ。
ついでに案内するよ。」
「そうか。じゃ、いってこいよ。」
「2人とも行こう。案内するよ。」

「隊長って呼んだらうるさいんだ。」
「へー。」

ご立派な鍛練場に。
中に入ると、うわー、3つ巴だ。
テルマさんすごい。

シートは仲間がいるところにいったので、わたしたちは
師匠のところに。

「モウ!来ましたか!」
「師匠!なんか大門で大うけしたらしいですね?門番が言ってましたよ?」
「ふふ。その後の方がすごかったらしいですよ?後で聞きましょう。」
「で?これは?」
「ま、軍部はすぐに全滅で、ルカリ殿はそこに。頑張りましたよ?
ガイライ殿が来てからは、3人、楽しんでますね。わたしも参加したいんですが、
見学者が多いので。」


「マ・・・ティス殿!」
「ルカリ。善戦したらしいな?」
「お恥ずかしい。息と体力が続かないのです。
テルマ殿は言葉は悪いですが、化け物ですな!それにこたえるあの2人も。」
「ルカリ殿!頑張りましょうね!ゆっちゃなんだけど、
あの3人よりわたしたちは若い!これからですよ!」
「ああ、モウ殿!もちろん!はー。ちょっと挫折しそうでしたけど。
そうです!これからですよ!」

ダイエッターは慰めるすべを知っているのだ。


「モウ殿!」
「エデト様。ここではワイプの弟子、砂漠の民のティスとモウです。
どうぞ、呼び捨ててください。」
「ああ、そうか。では、モウ。あらためて。
久しぶりだな。」
「ふふ。そんなに昔ではありませんよ?しかし、元首が国を出るとは?
よろしいのですか?」
「あの2人の踏ん張りどころだ。対策もしている。」
「そうですか。こちらが心配することもないですね。」
「あのエデト様?」
「ああ、紹介しよう。傍付きのハスナとクミトだ。」
「初めまして。ハスナ殿、クミト殿。
砂漠の民、ティスの伴侶、モウと申します。
テルマ殿の友人がわたしの祖父で、その関係で、親しくさせてもらっています。」
「あの?晩餐会に?」
「ああ、いらっしゃたんですね。お恥ずかしい。」
「べ、別人!!」
「クミト!失礼だぞ!彼らは事務方なのですよ。気は読めませんし、
姿かたちで認識する。わたしもです。
無礼の数々お許しください。」

ダン!

地響きがした。
テルマさんが、槍尻で地面を付いたのだ。

「休憩だ。切りがないな。」
「お見事でした。テルマ殿。」
「いや、さすが、ガイライ殿。ニック殿も。」
「「ありがとございます。」」
「モウが来ているが、モウでいいのだな?」
「ええ、砂漠の民で、ワイプの弟子ですね。」
「俺も槍を教えてますよ?」
「なら、わたしは拳で舞えますよ?」
「槍はなー、あとちょいかな?」
「モウがか?さすがだな。」
「剣はマティスと、棒術ならワイプと舞いましたね。」
「ニック殿!槍だ、槍術だ!」
「そうなんですけど、接してる時間が短い。
次まで槍術のみとしたいが、廻りがうるさい。」
「モウ!」


3人で集まっていたが、呼ばれてしまった。


「テルマ殿!お見事ですね。」
「ああ、おじいさまと呼んでくれ。」
「はは、ええ。テルマおじい様。」
「うむ。で?ニック殿に槍術を?」
「ええそうです。ニックさん、残念なお知らせなんですよ?
この前にドーガーに1本とられました。」
「え?いつ?」
「この前来た時です。」
「先に言ってくれよ!それ似合った鍛練をしたのに!!
ああ、モウちゃん、あれだ、裏街道案内するまで、槍だけだ。いいな?」
「ダメですよ?モウ?棒術ですよ?」
「剣だ。」
「あははは!拳だ!」
「槍だろう?」
「おじい様まで!それはこちらで調整しますから!
ドーガーあの時絶好調だったんですよ。」
「ん?」
「嫁取り前の不安な気持ちをぶつけてましたから。
いえ、これは言い訳ですね。精進します。」



「テルマ様、どうでしたか?我が軍部は。」

師匠が一歩引いたの同時に、わたしたちは気配を消した。
テルマさんは眉をあげただけで、わたしたちの前に。

(エデト様?わたしたちのことには触れないで)
(わかりました。お利口ですからね)
(ふふ。もちろん、知ってますよ)


「さすがとしか言いようがないな。
分隊になったというが、わたしが認識しているものとは違うようだ。
見どころのあるものもいたし、ニバーセルは安泰だな。
次回のクジラ狩り、楽しみにだ。」
「そうでしょうとも。では、これから歓迎の宴がありますので、
どうぞ、こちらに。」
「ああ、申し訳ない。わたしはいいのだが、
エデト様はお忍び。早急に戻らねばならん。
ガイライ殿とニック殿と手合わせできたので十分だ。
エデト様は?」
「わたしのほうも良い取引ができた。
が、戻らねばならんのも事実。砂漠石の取引もできればと思たんだが、
それはまた次回。先がいまいち見えんからな。
中央院の方々にはくれぐれもよろしくと。」

(帰られるのですか?それは残念)
(え?違います。おいしいものをモウがご馳走してくれるのでは?
いったん外に出ますから。そこから呼んでください。赤い塊殿)
(あははは。わかりました。お付きの2人は?口は堅い?)
(もちろん)
(では、わたしたちは準備のために戻ります。大門を出て、人気がないところで待っててください)
(わかりました)



こっそり外に出ると、シートたちはえらいさんが来た時点で外に出されたようだ。

「シート!すごかったね。」
「いや、すごいのはモウさんだよ。ルカリ副隊長とも話せるんだな。」
「いい人だからね。じゃ、帰るね!」
「ああ!また来たら声かけてくれ!旦那も!今度下町だけど
うまい店紹介するよ!」
「いいな!俺の名はティスだ。」
「ああ!ティスさん!モウさん!またな!」

いたん外に出て、また中に。

「下町だって。楽しみが増えたね。」
「そうだな。」

スー兄とホー姐に会いに行って、
匂いもチェックしてもらった。
とにかく、その石を触ったら、手を洗えとのこと。
子供のように言われた。はーい。
あとはホー姐とちょっとおしゃべり。

リグナのところに行くと、
あの4頭がいた。
いたというか、一緒の房に入ってる。

「お!リグナ!モテモテだね。」

コクの匂いがするそうだ
この前の集まりの時だろう

「コクってさ、リグナよりかなり年上だったけど、
リグナのこと尊敬してるんだね。」

軍馬というものに憧れがあったそうだ
わたしは香馬というものを尊敬するがな


「ははは!お互い様なんだね。
あー、ほんと言ってることがよくわかる。
マティスは?」
「そうだな、よくわかるな。
愛しい人とホーが話している間、
スーのワイプに対する愚痴がすごかった。」
「そんな話してたの?ホー姐はね、
最近の馬事情だよ。少し小さめの馬が流行りなんだって。
あの駱駝と馬を掛け合わせたところ?そこで研究してるとか。
馬は小さくても大きくても自然のままがいいと思うけどね。」
「研究院だな?くだらんな。」
「動物はどうかと思うけど、植物の研究は盛んだったよ?」
「収穫がより多くできるようにか?」
「うん。病気に強いとかね。よりおいしくとかね。
動物と植物を同列に考えなかったけど、
こっちでは同列に近いからね。んー、難しい問題だ。」
「愛しい人が悩んでもしかたがないだろ?」
「そうだね。うん、そうだ。
じゃ、リグナ!またね。
アサギリたちはいったん外に出てから呼ぶよ。」




師匠の家。結局何人だ?
師匠家が、5人。わたしたち2人。分隊2人。ルポイド4人。
13人だね。

クーとビャクは今日も元気だ。
カリカリとおでこを書いておく。
トックスさん、ドレスづくりに入ったから、クーへのお願いはまだ先だね。
ビャク並みに素早いトリヘビがいるんだねというと、
知らないと言っていた。
仲間の横同士のつながりはないようだ。


ラーメンとギョウザ。おいしいけど、一国の元首に出すのは、
どうなの?

「熊か蛇?熊の手?クジラはいいよね?」
「魚は?ルポイドでは海の物は食べれないからな。」
「おお!じゃ、カニだね。ギョウザとカニ?
ま、いっか。」



かにの下ごしらえはしてある。
いつでも食べられる。

しかし、13人で食べればあっという間だ。

エビ、カニ、貝、海苔、魚。
セサミンとの旅は食料調達の旅になりそうだ。

食堂でなんとか座れるように。


「あ!モウ様!」
「お帰り!カップ君たち。今日は外回りだったの?
コットワッツ?」
「いえ、他国です。」
「そっか。今日はお客さんが来るからね、ここでごちそうなんだ。
カニだよ?海の物ね。好き?」
「カニ?食べたことないです。」
「そっか。じゃ、楽しみにしておきな。おいしいから。」
「はい!」



「戻りましたよ。」
「おかえりなさい。師匠、ツイミさん。エデトさんたちは?」
「帰る帰らないで、あれから結構話してましたがね。
元首の仕事があると言われれば引き留めようがない。もう、大門を出ていると思いますよ?
わたしは、先に上がりました。」
「オート君に怒られた?」
「まさか!ああいう場合は資産院は一抜けが基本です。
どんなことを背負わされるかわかりませんからね。
無理矢理同席させられましたが、クロモ殿が返してくれてよかったですよ。」
「あの人苦労人だね。じゃ、ガイライ達は?」
「同時に外に出れませんから、少し遅れて。」
「なんで?」
「他国のものに分隊になったことを話されては困るでしょ?その予防ですよ。
ここで集まるから意味がないですが。」
「話さないほうがいい?」
「知ってますよ。他国の情報収集を舐めてはいけません。」
「おお!なるほど。あ!ツイミさん??カニは?好き?」
「いえ、カニは食べたことないですよ?今日はそれですか?」
「それとラーメンとギョウザとか?組み合せがちょっと変だけど。」
「いえ、おいしいのは分かってるので、楽しみです。」

ガイライとニックさんが戻ってきたので、
外に出て、呼びかけてみる。

(エデト様?今どこですか?)
(モウ!人気のないところで待機しています)
(じゃ、呼びますね。一応皆固まって。わたしが呼ぶから抵抗しないでっていってくれる?)
(それは大丈夫です。馬たちは?)
(ああ、それは大丈夫。先に話してるから。いい?)
(はい)


『ルポイド一行、ここに来い!』

「おお!!これが移動。確かに、声が聞こえました。」
「モウすごいな!」
「これが石使い?モウ殿は石使い?」
「うわー。すごいとしか言えないでね。」

まず館の中に師匠が案内してくれる。
馬たちはお茶葉とカンラン。お散歩していいよと。
あまり遠くには行かないように。
何かあったら呼ぶようにと。

向こうの森で香木をコクが見つけたと言わなかった。
森もこの4頭が見つけれるなら受け入れるだろうし、
ダメなら入ることもできないだろ。
リグナもいるし、ほっとこう。


館に入らずじっとエデトさんが見ている。
マティスはその後ろだ。


「わたしの移動は知り合いの気が許す人限定ですよ。
もちろん、内緒ですよ?
ああ、軍事に使えるとかは考えないで?その考えにこれは使えない。
わたしに期待しないで?誰を人質にとっても、なにかと天秤に掛けても、
頼み事は聞けない。人質と天秤で価値があるのは我が夫だけ。
弟も師匠も、産まれたばかりの赤子でも、運が悪かったと思うだけ。
我が夫にそのようなことをするのなら、
その前に御身と身内、あなたの国民が粉々になりましょう。
お利口なエデト?お分かりか?」
「以前に誓ったように、
感謝は香木の香りが続く限り、我が心にと。」
「ふふ。それはエデトの感謝だ。元首としてはそれも反古することもあるだろ?」
「それは・・・。」
「ないとは言うな?いえば悪いが元首失格だ。
わたしの友人はエデトだから、
だから、先に友人として話は聞くから。」
「ああ、わが友、ありがとう。」
「ふふふ。さ!ご飯ですよ!ニバーセルにようこそ。」


中に入ると皆が座って待っている。
手は洗ったようだ。習慣になっているようでよろしい。
わたしとマティス、エデトと手を洗って、テーブルに。

「えーと。ツイミさんは、一緒だったね。で、この3人はツイミさんの弟さんたち。
カップに、チュラルにルビス。師匠のところでこき使われてます。
で、今日はラーメンとギョーザと故郷で中華っていう部類の物。と、海の幸!
カニとエビとお魚!ウニといくらもあるよ。故郷のお酒も出すから。
最後の締めがラーメンか、カニ雑炊か。
悩むところだけど。先にお刺身系かな?
カニ刺し、カニしゃぶ、餃子とかに玉、油淋鶏、カニチャーハン。
うまくおなかの配分考えてね。甘味もあるから。
では頂きましょう!!」


それはそれはすごい気の応酬だった。
武の気ではなく、食に対する気。そうなるとツイミ兄弟が一歩先に行く。
師匠に対抗するようにマティスも。
そこに武の気、元首の気、威圧。ひえー。

わたしとお付きの2人は早々に避難。

小さなテーブルで、マティスが確保してくれるものを食べていく。
熱いものは苦手なのはお国柄。フーフー冷ますか、舌先に付けないようにと。
やはりカニは一番人気。ウニ、いくら。
チャーハンも食べるが、海鮮丼も。

2人は付いてきたのは事務手続きもあるが、
もしかしたら、エデト様の命の恩人に会えるかもと思ったからだそうだ。

「んー、エデト様は最初から赤い塊を呼び出すつもりだったんだね。」
「ええ、赤い塊殿はニバーセル出身のはずと。
此度のことで、ニバーセルから連絡があったとたん、自分も同行すると。
元老院に後を託してすぐ飛び出しました。」
「てか、そんな話していいの?」
「ああ、モウ殿がお聞きになることは全て答えよと言われていますから。
なんでも聞いてください。」
「逆に怖いよ。けど、そうだね?なんの料理が気にいった?」
「ラーメンですよ!それが食べたいのです。このギョウザもカニもおいしかった。
しかし、噂のラーメンを!!」
「噂か。ん?どんな?」
「テルマ様とライガー殿です。何かにつけてラーメンうまかったって。
ライガー殿も同行したがっていましたが、館の床磨きが終わらなくて。
泣いていましたよ?」
「うわー、どれだけの範囲で、どれだけの時間があったかは聞かないよ?
最初から無理な量と時間だってのはわかるから。」
「その通りです。我ら2人もくじ引きで。尻が摩擦で溶けそうでしたがね。
お連れした、マーロ殿たちは終始無言で。」
「マーロ殿と同行の方は?どうやって?」
「ああ、1頭に2人。マーロ殿と他3名。それぞれ前に乗せて。」
「それ過酷だ。あの馬たちも、お尻をのせるところが、きゅってピッタリになるの?」
「?どのような状態かはわかりかねますが、固い。ただそれだけです。」
「鞍があるの?」
「ないですよ?」
「そうだよね。」
「あの馬は鞍は乗せません。そのままで乗るのが
人を乗せる条件です。」
「へー。馬って色々いるんだね。」
「ええ。ところで、モウ様は赤い塊殿をご存じで?」
「噂程度だね。ここに来てたみたいだけど?見たの?」
「ええ!わたしたち、草とガムと飴をもらいました。」
「あははは!おいしいかった?」
「草はおいしかったです。ガムと飴の味はどうでしょうか?
しかし、口に入れている間は、すっきりしました。
会見中、4人とも口の中に。誰が最後まで噛まずに残ってるかって。
エデト様が勝ちました。
ここも建物の中自体がすっきりしていますね。」
「匂いかな?」
「ええ。いやな臭いはしませんね。今はうまい匂いだけだ。」
「あはは!そうだね。じゃ、ラーメンもらおうか?」
「ええ、ぜひ!!」
「マティス!ラーメン食べよう。カニ雑炊は、んー、入ればね。」
「入りますよ!!」
「そう?じゃ、鍋1個だけね。ラーメンは?みなはいる?」

皆問題無しのようです。
鍋の具をすべて上げていきます。
その間に、マティスは小さいラーメン鉢で。

「運んでくれ!」

雑炊もその間に。卵でとじます。
はい出来上がり。
アッというまに完食。甘味も。アイスの土蜜掛けです。
この時点で、カップたちは撃沈。お酒も飲んだようだ。
ガイライとニックは枠。テルマさんとエデトさんも。
もちろん師匠もだ。ツイミさんは先に引き上げる。
さすがだ。
お付き2人も寝てしまった。
月は昇っている。
今から帰るの?

「テルマおじい様?帰りの予定は?」
「ん?ああ。戻らなければならないのは本当だ。
寝ていても馬に持っていればいいしな。一日走ればいい。
あの2人は落ちぬように縛っておけばいい。
行きは2人だったが、帰りは一人だ。
あっという間につく。」
「エデト様?ほんと?」
「ああ、問題ない。」
「んー。悪いけど、アサギリたちがかわいそうだ。
道中どこか寄る予定がないのなら、砂漠の入口まで送ります。
今日はお風呂に入って泊ってください。
師匠?いいですか?」
「ええ、かまいませんよ。少し話したいこともありますし。」
「ガイライは?」
「同じく。ブラスの森でもいい。あそこなら泊まれるだろ?」
「ああ、そうか。じゃ準備してくるよ。
えっと、マティスは?」
「ここをこのままではダメだろう。すぐ行く。ニック、一緒に行ってやってくれ。」
「あいよ。モウちゃん、ちょっと外の風呂を改造したんだ。見てくれよ。」
「わ!そうなんですか?楽しみ!じゃ、行ってくるね。
あ、馬たちも先に連れてくよ。」




「ニックさん?なんだろ?大事な話かな?」
「ガイライとワイプが聞かないといけないことだろ?
俺は後でガイライに聞ける。モウちゃんもあとでマティスが話してくれる。
これは分かってる。その話すことになんら不安があってはダメだからだろうな?」
「だったら一緒にいても良くない?」
「そこは、ほれ、男の意地よ?え?そんなことも知らないの?
って思われたくないないんだろうな?」
「困った奴だ。気にしなくてもいいのに。」

それか虫関係だ。絶対。それは聞きたくないな。
テルマさん達は?ああ、クジラ石か。納得。

アサギリたちはやはり森には入れなかったようだ。
ブラスの森に行くと喜んで駆けてまくる。
リグナがいろいろ教えているようだ。

ニックさんの改造は、露天風呂に横になれるベットが置いてあった。
これいい!!
ただこれは腹筋するのにいいとのこと。そっちか!
そういう鍛練関係が並んであった。
ベット以外は別のところに置いてもらおう。

さ、プカプカのお布団を作っていこう。






─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「なんです?モウを外しての話は?」
「手は動かせ。こっちに運ぶだけでいい。」


ワイプを働かせ、他の者にはお茶を入れる。
2人の従者は悪いが強制的に寝てもらった。

運び、きれいにすればいい。

「マティス?なんだ?早くしないとモウが心配する。」
「ニックがうまくいってくれてるだろう。もしくは虫関係だと思うだろうし、
答えが分かれば話す。
ガイライとワイプは、この2人がおかしな動きをしたら押さえてくれ。
テルマを押さえれるほどの力はないとわかっているから。」
「ほう!なんだ?マティス?」




「これを知っているか?」











「エデト!!」






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