いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
446 / 869

446:不安

しおりを挟む
大広間、皆が食べたり飲んだりするところに行くと
宴会場になっていた。
トックスさんが日本酒を出したようだ。
あとコリコリとプカプカ。
ワサビ菜に、刺身。焼き鳥もある。
居酒屋メニューだ。
ドーガーも戻ってきて、イスナさんと飲み比べをしている。
ドーガーは結構お酒が強い。ルグより強いんじゃないかな?
トックスさんとフックさんは寝てる。
こたつで寝るとは贅沢な。

「とにかくだ、あれらをな、かなしませてはだめだ。
いいな?いいな?ドーガー。」
「ええ、十分に。イスナ様、どうか、ご安心を。」
「わかっている、わかっているんだ。ああ、香木を、持たさなくては。
こ、ぼく。」

「寝ましたね。はー、たくさん飲みました。モウ様?2人は?」
「2人も寝たよ?明日はドーガーんちに?月が沈んでも寝てるんじゃないかな?」
「ああ、それはいつでも。あらかたは母たちには話していますから。」
「どういう風に?」
「わたしがボルタオネに向かうことは知っています。嫁を迎えに行くことも。
迎えに行く前にペリーヌ一家がこちらに向かっていて合流できたということに。
代替わりの前に出てきて、その話を聞いて驚いていると。
わたしの名前も騙られたということも話しています。」
「うまいね。ほんとのことが入ってるから、時間系列が前後していても
疑問には思わないだろうね。」
「はい。明日にはわたしの荷物をこちらに持ってきますし、
それが終わってからと。」
「うん。奥さんの親は自分の親だ。向こうにとってもね。
なかよくね。」
「もちろんです。」
「あー、ところで、ドーガー君?その、つかぬ事を聞くが?」
「ドーガー、気を付けろ。この話し方はろくなことがない。」
「もう!マティスはコクのところに行ってきて!
香木のことで話があるって言ってたから!」
「それは私でいいのか?愛しい人ではないのか?」
「うん、わたしかマティスに聞いてもらいたいって。」
「一緒に聞けばいいだろ?」
「先にいってて!すぐ行くから!」
「?わかった。」

マティスがコクのところに移動していく。
早くいかないと。
念のため、誰にも聞かれないように膜も張る。
「え?モウ様?」
「いい?これはわたしが経験したことじゃない。
知っている知識だ。まさに猥談だ。あー、はずかしい!!
2人の為に役立ててくれればうれしい。
他言無用!質疑不可!いいな?」
「え?え?はい。」


2人のこと、望んでいること、3Pの知識。
できること、口、指の使い方。
愛し愛され方、道具とか、どこで仕入れたのその知識?のオンパレード。

「・・・以上だ。」
「・・・・」

ドーガーは口と鼻を押さえている。

「じゃ、マティスのところに行くから。
3人で極めてくれたまえ。
くれぐれも他言無用だ。いいな?」
「はい!!」


知ってたってうまくいくかどうかわからない。
正直に話して、3人でやってみようよ、という形式でいいと思う。



「お待たせ。」

マティスはコクの大きな体をブラッシングしながら待っていた。

「膜を張ったな?なんだ?私に言えぬことか?」 
「くわしくは話さないけど、ほれ、3人でしょ?
ペリフロに3人で愛し合いたいけどどうしたらいいのって聞かれたから、
ドーガーに任せておけっていったの。
で、ドーガーにわたしの知ってる知識を話しただけ。」
「あなたの故郷のか?羞恥心がおかしい故郷の?」
「うん、そうなるね。ドーガー、鼻血出しかけてから。」
「・・・聞きたい。」
「聞いても3人用のはなしよ?実践する機会なんてないよ?」
「そうだが、知りたい!!」
「むー。知識だけだからね。」

また、同じ話をする。
今度はあっさりと。

マティスも口と鼻を押さえてしまった。

「やはりおかしいぞ?」
「いや、マティスが前に想像したのと似たようなもんでしょ?」
「それをあなたの声で聞くというのがなんとも。ドーガーも聞いたのか?
かわいそうに、あの2人が。」
「いや、殺しちゃだめだよ。しかし、かわいい2人だ。
なんか、資料館てのがあるんだって。
建国からの史料もあるって。機会があれば見たいね。」
「そうなのか。変動のこともあるかもしれないな。」
「うん。それは思った。さ!コクきれいになったよ!」

話ながら2人でブラッシングしたのだ。
会話の内容には、うーわーという表情だった。すまぬ。


コクの香木の話。
森にはある。やはり匂いが、別の匂いが邪魔をする。
また、お茶葉を食べさせてもらえれば、すぐにでも探せる。

「いつからその匂いってしてたの?」

最後に香木を見つけた時よりかなり前。
最後のものは香りで見つけたのではなくて、
場所を覚えていただけだそうだ。

「セサミナの代替わりのときはかなり小さい香木を贈られたそうだ。」
「・・・もっと前みたいだね。んー、コクってばおいくつ?」

リグナよりもはるかに上のようだ。
香木関連は長寿なのかしら?

「この話、イスナ殿にしたほうがいい?いいの?
でも、香木欲しがってるよ?コクにもらったのよりも、
わたしがみつけたのよりも、あの森の香木がいいんだろうね。
ちょっと落ち着いたら探しに行こうか?うん。いいよ。一緒に行こう。
で、持ってきた荷物の中にあったみたい!ってね。」
「そこまでイスナ殿は暢気ものではないぞ?」
「だからだよ。きっと気付く人だよ。それでいいんよ。」
「そうか?どちらにしろ、明日以降だ。今日はこれで帰ろう。」
「うん。ドーガーは?」
「ん?トックスを起こしてまた飲んでるな。」
「ははは!眠れん!って奴だね。」
「私もだ。帰るぞ!」

扉君の家の中。
お布団の上です。
マティスも一つを知ったら100ができるタイプです。






リンリンリン


そろそろ起きるかという時間。
昨日のお話のお試しは、やはり3人用だったけど、
実際にやってみたマティスの感想は、

「なんだ、すでにやっているな。」

だった。

2人分のことをわたし一人にしていたということだ。
なるほど。えらいぞ、わたし。



ハードなこともなく、ご満足で眠りについた後です。
いままでが十分にハードなのですよ。


音といっしょに、月無し石が飛び跳ねる。
だれ?



「3回、ワイプ絡みか?カップ?」
「チュラルか?」

リン


何かあったんだ。

気配を消し移動すると、まさに応戦中。
動きやすい服に着替えよう。
ネグリジェ、パンイチはダメだろう。


「下がれ!!守りだけでいい!!」
「「はい!」」

マティスが指示を出し、2人で相手をするが、
例の200人か?40人ほどだ。

「右!!」
「フン!」

様子を見ていた男が逃げる。

槍を足元に投げてこけてもらおう。
親玉か?連絡係?
縛り上げていくが、顔に記憶はない。
だいたい、あの200人のなかで覚えているのはタンタンだけだ。
名前はちがうということは分かっているが。


「なぜ、ワイプの指示を仰がなかった!」

お昼寝会場にしてからマティスが2人に問う。


「いま、資産院は手が足りていません。
主要な手は全て出払っています。
ワイプ様はほとんど寝ておりません。
戻れば、こちらに来てしまいますし、一人抜ければ、
その隙にどうなるかわかりませんでした。」
「・・・ならば、ワイプの読みが甘かったということだ。
呼びに行ってる間か、仕方がないな。」
「マティス。だからわたしたちを呼んだんだ。」
「モウ様!」
「うん。えらいよ。正解だ。よく呼べたね。」

2人抱きしめて、ぐりぐりしておこう。


「さ、中の人たちに声を。それはあなたたちの仕事だ。」
「はい。」



「終わったよ!」
「ああ、坊たち!大丈夫か?よかった、よかった!」
「大丈夫だって。おれたち強いっていっただろ?」
「ああ、同行してもらえてよかった。」

馬車に乗せてもらう代わりに護衛を引き受けたということらしい。
じゃ、わたしたちもだ。

(チュラル、ルビス。わたしたちはあんたたち2人の兄と姉だ
うまく紹介して)

「!ああ、ねーちゃんとにーちゃんも合流できたんだ。
あの、2人も一緒でいい?」
「そうか!いいとも!幼い2人だけでおかしいと思ったんだ。」
「すいません。コットワッツに行く道中で合流しようと。
まさか、追いついた途端強盗達とやり合うとは。」
「俺たちは護衛家業をやってる。
まだ、2人には早かったようだ。不安にさせて申し訳ない。」
「いやいや!とんでもない!こっちの方はからっきしなんだ。
助かったよ。じゃ、コットワッツまでいっしょに?護衛を?」
「かまわないか?ああ、もちろん金はいい。
この2人にはいい機会だ。鍛練しながら行こうか?」
「「・・・。」」
「返事!」
「「はーい。」」

マティスが嬉しそう。
頑張ってたと思うよ?守りながらは難しかっただけだ。
わたしも難しいな。


複数の馬の蹄の音だ。

「軍だ。」
「んー?いやなタイミングだね。あの連絡係は隠して。
残りは引き渡そうかね。」

「おじさん!これ、奥に隠してくれる?
ん?ないしょね、ないしょ。」
「・・・わかった。」

フックさんの父上であろう人に、襲いもせず、
不利になったとたん逃げようとした男を引き渡す。
じっと見ているんだが、納得してくれた。
武の大会に来ていたのか?いや、あの一行なだけなはず。
じゃあ、フックさんが事細かに報告しているのか?
黒目黒髪は変えないとまずかもしれないな。
久々に茶髪にするか!いや、年齢的にグレーヘアか?

とりあえず髪は布で縛っておこう。
職人さんっぽい。

「お前たちは、俺の弟子だ。大きいのから、
トン、カン、ケビ、キリだ。いいな?」

おじさんが言う。
とんかち・かんな・けびき・きり、だよね?

「「「「了解、親方。」」」」
4人でお揃いバンダナ状態だ。

「お前たち!これはなんだ!!」
「なんだも何もないよ!襲われたんだ。おもえたちも強盗か?」
「無礼な!ニバーセル国軍、副隊長のタフコーだ。
盗賊の討伐隊を指揮している。」
「遅いぜ、それは!もう少しで殺されるところだった。
トンたちがいてくれてよかったよ。
ケビとキリもよくやった。カンもな。」
「「「「うーっす!親方!!」」」」

「カン!あんたはこっちに来なさい!」
「へーい、おかみさん。」
「また!そんな言葉づかいで!」


(行ってくる。セサミンには連絡しておくよ)
(わかった)


フックさんの母上に怒られる。
理不尽だ。


「隙間から見てたよ?強いね。
でも、ここは女は出ないほうがいい。こっちに隠れておいで。」
「はい!おかみさん。」
「かわいいねー。うちは3人男で、嫁もこないんだよ。
どう?うちに来ない?」
「うふふ。すいません、あれ、トンはわたしの旦那です。」
「あー、やっぱり!」
「わかりますか?」
「妹を見る目じゃないからね。」
「あははは!それよく言われますよ。どんな目でわたしを見てるんだか。」
「ぷ!今のあんたの目だよ。愛おしそうに嬉しそうに?」
「え?きゃー!!はずかしい!!」
「こっちもきゃーだよ!!あーたのしいね!」

おもいもかけず、ここで女子トークで盛り上がる。

「お茶入れよう!お茶!」
「やったー!!コム茶だ!」

馬4頭で4台の荷車を曳いている。
戦闘中、じっとしていた馬たちを労い、
お水とカンランを出して、
セサミンにも連絡だ。
ちょっと出かけているとだけ。
師匠とガイライは後でいいだろう。
対応しているマティスの話を聞いてからだ。

一番後ろの荷車はでリラックススペース。
お湯も沸かせるようになっていた。
先頭2台は道具類、その後ろは納品する家具。
きっとわたしたちのだ。

「じゃ、あの2人はあんたの師匠の従者?弟子?」
「従者というか弟子というか、師匠が面倒見てますね。
見どころがあると。わたしは慕われています。」
「へー。で、どうなの護衛家業というのは?」
「もともと修行の一環なんで。うちの旦那は喜んでますね。
師匠と旦那、仲がいいんだか、悪いんだかで、
あの2人を鍛え上げて自慢したいんじゃないのかな?
でも、それって、結局は師匠の為になるんですけどね。」
「あははは!男ってそういうところあるね。」
「ありますよね?ふふ。
えっと、じゃ、コットワッツに納品なんですね?」
「そうだよ。急にだよ。持ってこれるものはすべて持ってきたんだ。
うちの亭主も息子たちも、道具と材料さえあれば、
仕事ができるからね。上の子がね、
出発するぞっていう一言で出てきたんだよ。」
「それはバタバタでしたね。」
「一番下の息子が残ってるんだけど、後で連絡しないとね。
あれが一番腕っぷしがいいんだ。
職人としてもいいんだけど、ふふふふ、自慢なんだけど、
ボルタオネの筆頭なんだよ?」

ボルタオネのバタバタは知らないんだ。

「フックさん?ニバーセルの武の大会に出てましたよね?」
「え!知ってるのかい?そうなんだよ!見たの?その大会?」
「ええ。一応、武を志すものなんで。
あのときの歓声は大会で一番良かった。心の底から歓声がでました。
大会の中での一番の一戦でしたよ。」
「そう!そうなの!!領主様からもお褒めのお言葉を頂いたのよ!」
「そりゃ、あの歓声を引き出したんですもの、当然ですよ!」


その試合の内容をものまね付きで再現する。
おかみさんはあまり武というものに詳しくはないし、
息子の仕事ぶりも知らないようだ。ただ、筆頭だということだけ。
命を掛けている仕事だということだけ。

「ええ、ここで、相手の槍がですね、顔面に来るんですが、
フックさんが引くんですよ。で・・・」

フックさん主体の解説。
マティスの動きがよくわかる。
おかみさんが涙を流して喜んでくれている。
知らないわけがないか、知ってるんだ。

「おかみさん?大丈夫ですよ。
フックさんの手紙で兄上は動いています。
イスナ殿も、ペリーヌ、フローネも無事です。
あの2人はあなたたちの護衛です。資産院から派遣されています。
わたしたちは助っ人です。」
「ああ、あああ、ああああああ!!!!」

やたらハイテンションなのは、不安のあらわれだったんだ。
おかみさんの横に座って、落ち着くまで、背中をさすっていた。
もちろん、タオルは渡している。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



「カン!あんたはこっちに来なさい!」
「へーい、おかみさん。」
「また!そんな言葉づかいで!」


(行ってくる。セサミンには連絡しておくよ)
(わかった)



「では、この者らをお前たちで?」
「そうだ。報奨金を出してもらってもいいくらいだな。」

フックの父君、親方がまくし立てている。
フックに似た兄たちも私達の前に立ち威嚇している。
鍛えている。が、武ではないな。
職人の鍛え方だ。

「それは軍部と掛け合おう。
で?お前たちはどこに向かっているんだ?」
「あ?どこも何もこの道はコットワッツだろ?
こいつらのことはあんたたちがどうにかしてくれ。
トッコ!カッケ!出発だ!
トン!お前たちは休憩しろ!4馬車にいくぞ!」
「へーい!!」


向こうに話す隙を与えることなく、出発した。
4馬車?一番後ろだな?愛しい人がいる。

「どうした?」
親方と一緒に馬車に上がると、おかみさんが大泣きしている。
「あんた!フックが、フックが!!」
「いうな!」
「親方。わたしたちは資産院からの派遣です。
この2人は護衛なんですよ。で、わたしたちは助っ人です。
フックさんとイスナ殿、ペリーヌ、フローネは無事です。
コットワッツにいます。手紙を飛ばしたのはフックさんですよ。」
「ああ。そうか、そうか。イスナ様も。よかった。」

手紙を受け取った兄さんたちは父親にも言わなかったんだ。
いえば、どこかでぼろが出る。
秘密を知っているのは少ない人数がいい。
兄さんズたちも呼んで、事情を説明した。
トッコ兄とカッケ兄は男泣きをしていた。
なんか、かっこいい。

「どうだった?」
「わからんな。探るような目つきだ。
私たちには極力気が行かぬようにしたが、どうだろうな。
いや、それを見抜けるのならたいしたもんだがな。」
「あやしいってこと?」
「200人の中にいたものはいない。別物だ。
腕もそれなりにあった。統率も取れていた。元軍部か?4軍?
ちがうな。何らかでやめた元軍部か、辞めさせられた者達か。
槍の使い方が軍仕様だったから。」
「ふーん。だから、ニックさんかルカリさんが行かないように
自分が名乗りを上げたとか?」
「なんとも。あの男は寝たままか?
ガイライに引き渡しておこう。
ケビ、キリ!この件、報告して、
私たちはこのまま同行する。いいな?」
「あの、呼んだことは?」
「お前が頼りないから私たちを呼んだというぞ?」
「違います!」
「トン!またそんな嬉しそうに!
師匠だったら使えるものは何でも使えっていう教えだから、
褒められるよ、心配しないで。」
「そうなるのか。ま、どうでもいい。少し離れるが、いいな?」
「うん、ダメなら煙幕張って逃げるよ。」
「それは面白いな!」
「忍術の一つでござる!ニンニン!」
「使うときは呼んでくれ!」
「呼べるんだったら使わないよ。」
「そうか。そうだな。」
「うん、そうなの。はい、行ってらっしゃい。」
「わかった。」



男を担ぎ上げて、資産院の鍛練場に行く。

(ガイライ!ワイプ!)
(どうしました?モウは?)
(鍛練場か?モウは?)
(来てくれ)

「モウは?」
「フックの家族と一緒だ。襲われた。
チュラルとルビスが呼んだのでな、助っ人に行った。」
「!2人は?怪我は?」
「問題ない。お前を呼びに戻ることが出来ないほどだったようだ。
甘かったな、ワイプ。40人で元軍部ではあの2人には早い。」
「元軍部?本当か?」
「槍使いが軍仕様だ。で、こいつが、戦闘にも加わらず、
不利になるや逃げようとした。
すぐに、副隊長が来たぞ?40人はそいつに引き渡した。」
「・・・わたしはまた母を失望させたのか?」
「わからんな。盗賊よりその副隊長だ。気を抜くな?
このことをどのように報告するかだ。
フックの父君が盗賊退治の報酬を寄こせと言ったんだがな、
軍と交渉するといっただけだ。どこに行くかだけを聞いて、
名は聞かなかった。」
「わかった。」
「ニックはもう出たんだな?」
「月入りと同時だ。」
「呼び戻すか?」
「宿に着いたら連絡を。それで、わたしが呼び戻す。」

(ニック!)
(なんだ?マティスか!いま俊足馬の上だ!簡潔に!
(宿に着いたら、マティスに連絡と言ってくれ、それでわかる)
(?それでいいのか?わかった)

月無し石は付いていっているはずだ。
それでわかるだろう。

「ニックから連絡が来ればそう伝える。
あとはやってくれ。」
「助かる。」
「あの2人は?」
「もう一度仕掛けてくれば、そのまま実戦鍛錬だ。
お前よりうまく鍛え上げてやるさ。」
「そうしてください。」


(マティス!来た!)
(戻る)

「ではな!」



「どこだ?」
「後ろ!チュラとビスがあの地点に残ってる。
もちろん気配を消してね。気を失ってるのをみんな起こしたみたい。
軍の新人にはわたしたちが強盗だっていってる。」
「それを信用したのか?」
「そうみたい。」

「モウ様!」

2人が戻ってきた。
ここは4馬車の上。
見張り台がついているから。

「ラルトルガ内で片を付ける気だろうな。
馬車を止めてくれ。」
「トッコ兄!カッケ兄!馬車とめて!!」
「おお!!」

「どうした!!」
下から親方が叫んでる。

「うん、またお客さんが来る。
コットワッツに入るとややこしい。ここで済ましちゃから。」
「カン!あなたも?」
「おかみさん、大丈夫っすよ。」
「また!ほんとね?大丈夫なのね?」
「もちろん!」


結構な団体さんだ。
馬12頭と、先ほどの盗賊40人。アリババだな。


「お前たち!そこを動くな!!」

副隊長と、実力上位の5人、新人6人。
胸は押さえているし、服装が違う。
新人6人はわたしとマティスに気付くか?
ダメだな。

「なんだ?報奨金を渡してくれるのか?
その後ろの。縄をほどいたのか?大丈夫なのか?」
「黙れ!この者たちはニバーセル軍部のものだ。」
「これは驚いた。ニバーセル軍は強盗を任務の一つとしているのか?
この2人がいうには、いきなり襲われたと聞いたぞ?」
「お前たちが強盗だ。その取り締まりをしたんだ。」
「わからんな。さっきはそんなことを言わなかっただろ?」
「人質の安全を確保したんだ。」
「その40人がか?人質?」
「そうだ!」
「おい!後ろの!この副隊長だったか?
こいつが、わけのわからんことを言ってるぞ?
いいのか?」
「副隊長の言うとおりだ!お前たちが強盗だ!!」

(糸?)
(チュラル!ルビス!糸は持っているな?)
(はい!服のボタン糸がそうです)
(それいいね。親方のところまで飛ぶかな?)
(護衛対象には持ってもらっています)
(さすが!)
(マティス?音石使う?)
(ああ、使ってくれ。もう一度話をさせよう)

石を握り、覚えておいてとお願いした。


「待て!もう一度聞くぞ?
お前は、お前たちは、何者だ?」
「無礼だぞ!ニバーセル国軍、副隊長タフコーだ。
ラルトルガ内出没する盗賊討伐指揮官だ。
お前たちがその盗賊!40人もの先発隊を傷つけた罪も償え!」
「その40人が盗賊だ。
あの馬車を襲ったんだ。そうだな?」
「そうです!制止する声もなくいきなりです。
馬を狙わなかったところを見るとこの荷物が目的です!」
チュラルが答える。
「応戦が手いっぱいでした!そこに兄さんたちが来てくれたんです!」
「討伐隊は名乗りを上げるはずだが?でないとそれこそ盗賊だ。」
「お前たちが嘘を言ってるんだろ?」
「では、今名乗りをあげろ!
どのような罪状かもな。ここで、全員殺せばいいとかいうなよ?
それは法が許さない。それにこの人数で討ってくるなら、
それば殺戮だ。」
「は!少しは法の知識があるということか!
聞け!お前たちはラルトルガの強盗団だ!」
「強盗団?何人だ?何人の強盗団なんだ?そこまでの調べは付いていないのか?
40人以上いて?笑わせるな!」
「お前たち、8人だ!」
「俺たちと、親方もか。それで?なにをしたんだ?俺たちは?」
「強盗だ!」
「誰のなにを奪ったんだ?それはどこに住んでいる?」
「ラルトルガ、ここだ!ここに住んでいる領民が被害にあっている!」
「何を取られた?人は?殺しもか?」
「人殺しもだ!」
「ほう!どこの誰が死んだ?それは当然知っているよな?」
「・・・。」
「お粗末すぎるな。俺たちはここに来たのは初めてなんだが?」
「そんな嘘を誰が信じる?」
「親方はボルタオネの領民だ。そこの筆頭の父君だぞ?」
「え?」
「それこそ調べているんだろ?」
「それも嘘だ!!お前たちが強盗だ!!」
「お前?さっきから何をしている?」

指をこすりながら糸を細かくして撒いている。

・・・あ!なんかあったよね?ほれほれ、なんだったけ?
サイババ!!!ビブーティ!

あれがトリックであろうとなかろうと、心が救われた人もいるのだろう。
宗教家とはパフォーマーだ。
しかし、こいつのはいただけないな。

「!効かないのか?」
「なにがどう効かない?」
「うるさい!」

『答えろ!お前はどこの誰で、どこの出身だ?
どうして軍部に入った?そして何にしにここに来た!!』

マティスが言霊を使う。

「あ、あ、ニバーセル軍部副隊長、タフコー。
マトグラーサ領国のもので、軍部に入った。
ここには、軍をクビになったものを集めて、騒ぎを起こさせ、
軍が、制圧。そのまま、ここの治安を軍が維持。
その後ボルタオネ・コットワッツの治安維持を兼任。
王都管轄下に置く。
ボルタオネ代替わり時期に合わせた計画だったが、
急遽前倒しになった。」

『誰の指示だ?』
「知らない!知らない!」

プツリと糸が切れたように、馬から落ちてしまった。
40人もだ。
まさにお昼寝会場。

『馬たち!大丈夫だ!落ち着け!』

興奮している馬をなだめる。
糸の影響はないようだ。

「踏まぬようにしてこちらに。水を出そうな。
ん?そうだ、リグナから聞いてるか?では、うまうま籠は?
そうかそうか。おい!踏むなよ!今、出してやろうな。」


落馬した者たちを踏まぬように、やってくる。

「親方!おかみさん!戦闘にはならなかったよ。
いいんだか悪いんだか。」
「いや、そのほうがいい。しかし、俺たちが盗賊?どういうことだ?」
「わかんないけど、ここにいても仕方がない。
コットワッツに向かってください。
ケビとキリ!鍛練も何もなかったけど、大丈夫だね?
作り置きがあるから、それを食べて?親方たちにも一緒に。
向こうには連絡しておくから。」
「わかりました。親方!行きましょう!」
「いいのか?行ったほうがいいんだな?」
「ええ!おかみさん!またあとでお話しましょうね!
とっておきの甘味あるんで!」
「わかったよ!待ってるよ!」
「はーい。」

樽に入れた作り置きセットを持たして皆と別れる。

(セサミナ?いま、フックの家族一行と別れた)
(え?そちらに行ってたんですか?)
(いろいろだ。月が昇る前に着くだろう)
(分かりました)
(ボルタオネのほうは?)
(代替わりのことは済んだ後に報告なので、
イスナ殿が不審者に殺害されたということのみです。
これ以上は何も出ないでしょう)
(そうか。領国の治安維持を王都に任せるという話は聞いたことがあるか?)
(は?代替わりに領民が不安になる場合に臨時で軍が派遣されることがありますが、
それは余程の時だ。)
(お前の代替わりの時は?)
(不安になった時のみですよ。わたしは次期として表に出ていましたし、
領民は父の死を嘆いただけですよ。
それに、父の代以前からそんな話は聞きません。
変動があるまで領国は強い立場です。今の軍は、ガイライ殿にはわるいが、
それほどの力はありませんよ。
今回のボルタオネのことで軍が介入するかもしれませんが。)
(そうか。くわしくはまたあとでだ。コットワッツも多少絡むからな)
(わかりました。気を付けてください)
(ああ)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...