435 / 869
435:人生3番目
しおりを挟むマティスは料理。
トックスさんは刺繍糸の吟味。
わたしは簡易マッサージチェアーを出して足揉みを。
身長が低いのでちょっと改良した。
足湯をセットして、角質ケアから。
蒸しタオルも作り顔にあてる。
やはり化粧水とオイルはお使いのようだ。
きれいな肌です。化粧水、いいんんだ。
使い続けよう。
タオルを宣伝しておく。
10枚ほどお買い上げです。毎度ありー!
じっくりあったまってもらったら、
足の裏を砂トカゲの皮の裏をしゃもじのように
削り出したブラスに張り付け、こする。
でるわー。ボロボロでございます。
「ちょっと!なにそれ?」
「足の裏の皮膚の塊?痛くはないですか?
こちょばいのは我慢してください。
足の爪もちょっと巻き爪ですね。これ、切るときまっすぐ切ってくださいね。
あ、爪切り。これ、いいですよ?予備があるんで、もらってください。
切りすぎないように。
それで、肌と同じように化粧水を。乾燥は良くないので。
髪油でもいいですよ?塗ったとは、拭きとってくださいね。
滑りますから。」
後は足指、足裏、踵。
膝裏もオイルをつけて揉むというより撫でる。
筋肉がないのだ。ぽよんぽよん。しかし、血の流れは良くないのか、
ところどころ、ぼこぼこしている。
「どうですか?結構すっきりしたと思いますが?」
足の角質がたまったり、巻き爪だと歩きにくくなる。
これが良くないとわたし個人的に思っているのだ。
母さんにもしてあげるとすっきりすると言っていたから。
「・・・・。」
寝ていらっしゃる。
寒くないように今晩泊めてもらう部屋から毛布を持ってきてもらおう。
ドロインさんの寝室がどこかわからんし、知っててもダメだろう。
「何だ寝たのか?」
「うん。気持ちよかったみたい。
あの、いいの?刺繍の依頼は。お金はいいんだけど、時間的に。
無理させてない?」
「まったく。意匠をすぐに決めないとな。」
晩御飯はスープとボットの窯焼きでした。うまい!!
ポットは肉の味がいいと思ってしまった。
家畜化していない状態だからか?
今はいいが、肉の在庫が切れるころ狩りに来よう。
晩御飯を勝手に食べて、トックスさんとマティスは意匠案を
絞り込む。
わたしは二人の話に参加はしないので、
足置きを改良していく。
椅子を作りたいが、これはわたしには技術不足だ。
椅子を作ることが出来れば一人前だと言われたが、
そこに行くまでに、工房から外れている。残念。
「はーー。おや?寝てしまったんだね。
久しぶりにゆっくり寝れたよ。腰が痛くないね。」
「良かった。先に食事は頂きました。
あの2人はお願いする意匠を決めています。
食事の用意しますよ。わたしももう少し食べていいですか?」
「ははは!もちろんだよ。食べよう、食べよう。」
2人の前にはサンドイッチを置いておく。
勝手に食べるだろう。
「これまたやわらかい。赤身だろ?うまいね。」
「おいしいですよね。これ、ティスの得意料理です。
このスープもおいしい。その香辛料使ってるんですか?
バザールでいろいろ買ったんですが、どれがどれやら。」
「西だろ?東のバザールで売っている葉物を適当に束ねて入れるんだよ。
日持ちするからたくさんあるさ。持って帰るといい。
名前も書いてやろう。
東に行くときにそれを見せて買えばいいから。」
「ありがとうございます!」
そこから、いろいろ話を聞く。
トックスさんの若かりし頃の話。
ドレスを送ろうと言ってくれたとか。
おうおう!それは甘酸っぱいねー。
クッキーを気に入ってくれたのでそれを作りながら。
足置きは温かくて気持ちがいいといってくれた。
「樹石ですよ。」
「これが?へー。便利な使い方があったもんだ。
ここでは手に入らないね。」
「そうですか?少し予備がありますから、置いておきますよ。」
「そうかい?」
「ええ。香草と交換ですね。」
「ドロイン!ダメだった!!」
ぼちぼちわたしたちは寝ましょうかという頃になって、
布をあの店に運んできた女の人がやって来た。
お店の人もだ。
「何と言っていた?」
柔和な顔から職人の顔になる。
「あの、ドロインさん?ぼくは部屋に行くね。」
あの2人は先に部屋に入っている。
5人は寝れる部屋だ。紙が散乱するから怒られたんだ。
「かまわないよ。
悪いがこの2人にあんたの入れたコーヒーを振舞っておくれ。
孫とひ孫なんだよ。」
ドロインさん、ほんと結構なお年なんですね。
コーヒーとクッキーを。
香草を入れたものも作った。バジルかな?
乳と乳酪は豊富にあったので問題ない。
「ドロインがコーヒー?珍しい。」
「うまいよ。この焼き菓子もね。」
「ほんと!おいしいわ!」
「いいから話しな。」
「ああ、そうだね。持っていったら、かなり待たされたよ。
トリヘビからの返事待ちでね。距離があるから往復はできないんだろう?
時間をおいて5匹だよ?
それが来るたびに顔色が変わっていく。
面白かったよ。最後は作り手が失踪したらしいってことだった。
それで、別の作り手を呼び寄せたんだけど、
ドロイン?
石の契約であの布に鋏を入れれるのは、
あんたが指定した人間だけらしいね?
呼ばれた服飾屋が試しに鋏を入れたけどダメだったよ。
諦めきれなかたんだろうね。
かなり大きな石を持ってきて解除を試みたんだけど、
それもダメ。
結局、なにもできない布なんぞ要らないってさ。」
「あはははは!そりゃそうだ。
双方の契約だ。片方だけの思惑で解除ができるわけがない。」
そうなんだ。
「ドロインさんを呼んで解除すれば良かったんでは?」
聞いてみるが、3人がよく似た顔で大笑いした。
「あはははは!ドロインを呼び出す?
それだけでどれだけの金がかかるんだ?」
「布代は1000だよ?だが、わたしに仕事を依頼する分は前金で1万なんだよ。
呼び出すのも、話を聞くのもね。」
「うぞん!!」
鼻からコーヒーが出そうだ。
さすがに今はそんなお金はない。
景気よく使っているがまたルポイド級の仕事をしないとダメだ。
まったく貯金ができていないと言っていいだろう。
「あはははは!いいんだよ。
この敷物と足置き、便所の改造と、うまい肉。
楽しい話に、おいしいコーヒー。1万以上の価値だ。」
「そう言ってもらえるのは、そのありがとうございます。
けど、うちの叔父、トックスは知ってるんですかね?」
「当然だ。だから、あんたにあれを着せて見せたんだろ?
金の話をしたら、あれを見ただろ?2万だって平気で言うよ?」
「うぞん!悪徳商人だ!!」
「あれはそうなんだよ。はは!楽しいね。
さ、お前たち。ご苦労だったね。
わたしはこれからまた仕事を引き受けたから。
あとは頼むよ。」
「え?また?この子たちが頼んだの?
はいはい。何も言わないよ。食事の用意ね、了解だ。
しかし、どうするんだろうね?あの青のドレス以上のものを着ると
触れ回っていたからね、あのご令嬢は。
雨の日前の夜会だろ?恥をかいたものだ。」
「それは大きな夜会なんですか?」
「ここの別荘地で一番大きな夜会だよ。いや、大陸一だね。
これにすべてをかけていると言ってもいいんじゃないかな?
うちのばーさん、はいはい、ドロインは一番人気なんだよ。
ここ何年も断ってきたのにね。
なんの気まぐれか、引き受けてさ。
ドロイン最後の作品だってね。」
「はは!違うね。あれはまだまだ。人生3番目だね。
これからが作るものが最高傑作なんだよ。」
「楽しそうならなんでもいいよ。」
「さぁ、お前たちはもうお帰り。ここは問題ない。」
「え?そうなの?ふーん。ドロインがそういうんなら、大丈夫だね。
じゃ、わたしたちは帰るよ。コーヒーと焼き菓子おいしかったよ。
もっとある?」
「さっき焼いたばかりです。よかったら持って帰ってください。」
「うれしいね。ありがとう。」
「なんて意地汚いんだろうね。置いといておくれよ。」
「また作っておきますよ。日持ちしますから。」
部屋に戻ると2人はまだやってる。
替えのコーヒーとクッキーを置く。
マティスが何も言わすに、わたしの首元に顔をうずめて匂いを嗅いでくる。
それで満足したのか、また没頭しだした。
はいはい。
わたしは先に寝るよ。湯あみも何もせずにそのままベットに入って寝た。
月が沈む前に目が覚める。
横を見るとマティスもいつの間にかベットに入っていて、
わたしに静かにと目で言う。
(何人か入ってきたな)
誰か来る。
ドロインさんだ。
「起きてるね?客だよ。
トックスは?寝てる?あんた、ちょっと来れるかい?」
「もちろん。愛しい人。行ってくる。」
「ん。わたしも起きるよ。朝ごはんにね、おいしいもの作ってあげる。
昨日のスープに混ぜるだけだから。」
海老を焼いてつぶして混ぜよう。
生クリームは乳酪と混ぜて作ってある。
海老のビスクだ。
「そうか?でははやく片付けなくてはな。」
「うん。」
「あんたたちそんな暢気な。
いや、そうだね。一番暢気なのはそこで寝てるトックスだ。」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
意匠も満足ができるものができたと思う。
この柄を繰り返し、あの布に刺繍を施すのだ。
「これでいい。もう寝るぞ。明日は、コットワッツに戻ろう。」
「わかった。トックスはそこに。私は愛しい人と寝るから。」
「おう。」
愛しい人も、ぐっすり寝ている。
後ろから抱きかかえると、向きをかえて、匂いを嗅いでグリグリしてくる。
ゆっくり眠れそうだ。
もう少しで月が沈むころ、
数人の気配が、館の中庭に入ってくる。
ドロインも起き出したようだ。
愛しい人も。
客だというのでもてなすことになった。
愛しい人も朝ごはんを作ってくれるそうだ。
素晴らしい。
13
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる