いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
425 / 863

425:へりくつ

しおりを挟む





逸れた道から街道に入る。
それなりに賑わっているのだが、
高くないのかな?
お給料が月15万円のものが1万円のものを買うのは結構な負担だが、
100万円だったらということか?
ここの皆さんはみな高給取りなのか?
それはさすがに聞けないな。


「おーい!!そこの!行商兄弟!」

わたし、いや、ぼく達のことか?

正面から守衛さんが手を振ってる。

「結構ゆっくりしてるんだな?
良いものは仕入れることはできたのか?紅茶、良かっただろ?」
「俺たちには高すぎたよ。」
「え?あ!す、すまない!!
1番街で見たんだな?俺が行ったのは4番街の2番目だ。」


1番城から5番城。
4番城から5番城の間が4番街。
そりゃダメだわ。

「1番街は外客向けなんだよ。
ここの人間はみな4番街か5番街で買う。
ほかの国からやって来た旅行者は1番街か2番街だ。
で、引き返すんだ。
砂漠まで行くっていうからてっきり4番まで行くと思い込んだよ。
ああ、5番街では紅茶屋はないから。」

西側東側と競争しているのは事実。
しかし、ひょうたん屋さんが言うように両方に店を出しているから
あまり関係がない。
高級志向か薄利多売か。

「ものは一緒なんだけどな。」

1番街で安く売ると5番街まで買うものはいない。
この街道を端まで通ってもらう方法らしい。

「悪かったな、あまり、このことを声高には言えないから。」
「いや、謝ることはないさ。あの時点で引き返さなくてよかったよ。
では、4番街の2番目だな?そこで買おう。」
「案内するよ!今は西側贔屓なんだ。」

店を持たない人たちは
毎年贔屓側を作るそうだ。それも楽しいか。
守衛さんは引き返してくれる。
少し行ったところで駱駝馬を借りて、港まで行くそうだ。
砂漠ギリギリを走り抜ける。
高速道路のようなものらしい。
3番街だけの商売だ。
あるじゃん、いい仕事が。


「ケリー、客だよ?他国の行商だ。」
「あら、グリクが案内してきたの?」
「そうなんだよ。2番目の紅茶屋っていったら1番街で見たらしい。
で、ここだって案内したんだ。」

ご贔屓というのは看板娘をってことだな。

この人と一緒に歩いていたので、
3番街ではお姉さん関係はなかった。

案内が終わると手を振って、もちろん店の人にだが、
仕事に戻った。


「いらっしゃい。1番街は高かったでしょ?
ここはいいものは高いけど、お手頃もたくさんあるのよ?」


ほんとだ。
種類も多い。
お高いものも少しだけ。
後はニバーセルの王都で買ったお茶葉も。
こっちの方が安い。
20リング分買った。

「行商なのね?なにかないの?売るものは?」
「兄さん?」
「そうだな、コットワッツで仕入れたタオルはどうだ?
あとはフレシアの布でつくった、首巻。」
「スカーフだよ。」
「ああ、そうだった。そのすかあふと、あとは?」
「それぐらいだよ?お姉さん見てくれる?」
「ええ、いいわよ。街道で店は出さなかったの?」
「うん。見るだけで。あれは勝手に出していいの?
お金はいらないって聞いたけど。」
「1番城主の許可をもらえればいいわ。
ここもそうよ。4番城主の許可をもらえばいい。もう少し行くと出してるわよ?
そこで出す?」
「いえ。今は遅いし。出すなら早いほうがいいでしょ?」
「そうね。円陣の場所もくじ引きだからね。
途中からは無理か。」
タオル8銀貨、スカーフ2銀貨。
タオル高いね。
次からは6銀貨ぐらいにしよう。
染もできてるのだろうか?今は生成りだけだから。
肌触りは抜群なのだ。

「これはいいね。」
「お風呂、湯あみの最後とかに体を拭いたり、汗を拭いたり。」
「ああ、そういう使い方なのね。こっちは?絹をこんな細長くして。
もったいないわ。」
「首に巻くんですよ。
砂埃除けとか。でも、色の組み合わせでおしゃれ?らしいです?」

タオル2枚とスカーフは2色買ってくれた。
青色は人気だ。

今の時間なら月が昇る前にタトートに入れるそうだ。
泊るならタトートの方がおすすめと教えてくれた。
4番、5番は庶民の街で、宿も安いがそれなりだということだ。

ではそうしましょうと進んでいく。
トウミギも並んでいるが、今はいらない。
カメリの実も並んでいる。
あのオイルが無くなったら、ここで実を買って絞ってみようか。

タトートとの国境は遊園地のゲートみたいだった。
砂漠を超えていくのだ。
デルサトールを抜け、何もない砂漠を歩く。
砂漠をこんな大人数で歩くのは初めてだ。
駱駝馬も下りて進む。
月が昇っている間は通行禁止だ。
2時間ぐらい歩くのだろうか?

頻繁な行き来があるが、問答も名乗りもない。
みながだべりながら歩いている。






油断した。













タトートの検問に入ると両脇に守衛さんが立っている。
その間を通るだけ。

ん?と思った時は、大乱闘となっていた。

わたしが前を、マティスが後ろについて検問を通っていたのだ。

横からわたしの腕を取ろうとする男をマティスが殴り飛ばし、
マティスを捕えようとする男をわたしが蹴り上げる。

殺気はない。
だからこちらも、鍛錬ということにして、
殺さず、複数戦。
連携も取れたと思う。

たのしくて笑いながらの拳術で応酬。
笑拳である。


お昼寝会場となった検問所。

周りの人も、遠巻きに見ている。
いかんな。

「に、兄さん!!怖かったよー!!」
「お前は怖かったら笑うのか?」


マティスに抱き付き、グリグリ頭をこするつける。
マティスはご満悦で、頭を撫でながらも突っ込みを入れた。

新喜劇だ。

誰かが、プっと噴き出した。

そこから大爆笑だ。
他の人がけがをしないように気を使ったもの。

わたしたちも同じように笑う。

「あははははは!なんだ。こういうお遊びなんだ!
びっくりしたよ!!」
「そうだろう?お前相手にこのざまでは恥ずかしくて表を歩けないぞ?」
「え?ぼく強くなったよ?ほら?」

ヘナチョコパンチだ。

そこでまた笑いが起きる。
「恥ずかしい!兄さん!離れよう!!」

これで逃げれるか?
無理か。

「待て!お前たち話がある。わかるな?」

2人揃って首をかしげてみた。

えらいさんが出張ってきたようだ。
わかるなってわかるかいな。

このシーンを写真で撮ってほしい。
写真はないんよね。原理も知らんし。
音の再生はできたから、映像の記憶はどうだろうか?
砂漠石先生に聞いてみよう。

「ん?弟よ?なにか楽しいことを思いついたな?
殺るのか?」
「兄さん?極悪兄弟として名前が広がるよ?
ちい兄ちゃんと一緒に旅するとき困るでしょ?」
「・・・あれか。そうか。
ん?兄さんより兄ちゃんがいいな。」
「え?いまさら?・・・兄ちゃん?お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんだ!!」
「・・・はいはい。」

この返事に承諾したと思ったのだろう。
見学者は解散、お昼寝会場出席者は運び出され、
わたしたちは?

片隅に置いといた背負子を背負って、
その人が行く道とは別の道を進んでいった。


まさに、コントだ。

「待て!!」

今度は剣で囲まれる。
5人だ。

「強い?」
「広い場所なら問題ないが、廻りに気を使うと、
一呼吸遅れるな。」
「んー、それはダメだな。」

「お前たち!!ついてこいといっただろうが!!」
「言ってない。わかるな?言っただけだ。
誰になにを言ってるのかわからなかったが?」
「!!!」

へりくつ兄弟と言われそうだ。

「・・・お前たち2人に話がある。私に付いてきてほしい。」
「知らない人について言っちゃダメだって言われてます。」
「!!!」

「私はタトート警備隊隊長、ニコルだ。
話がある。付いてきてくれ。」
「俺たちにはない。」
「お前たちに捕縛令が出ている。」
「お兄ちゃん!!なにやったの!!ちい兄ちゃんが泣くよ!!」
「何もしていない!弟よ?お前ではないのか?」
「え?ぼく?なんだろ?食べすぎ違反?それはつらい。」
「大丈夫だ。金は払ってるぞ?」
「だよね?心当たりはないので。だから行かないです。」
「!!!捕らえろ!!」
「ぎゃー!怖い!!」

マティスにしがみついて、
その状態で捕縛されました。

(いいのか?)
(いつでも移動できるし、なんでか知っときたいからね)
(珍しい)
(おなかすいた。どっかに入れられたら、ご飯にしよう)
(バラバラにされたら?)
(んじゃ、ドロンだ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵様の子供を身篭ったの…子供を生むから奥様には消えてほしいと言う若い浮気相手の女には…消えてほしい

白崎アイド
ファンタジー
若い女は私の前にツカツカと歩いてくると、「わたくし、伯爵様の子供を身篭りましたの。だから、奥様には消えてほしいんです」 伯爵様の浮気相手の女は、迷いもなく私の前にくると、キッと私を睨みつけながらそう言った。

処理中です...