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しおりを挟む「あんたたち!戻ってきたのか?
陸路?無事だったんだな?良かった。」
「10階の部屋は空いているか?
とにかく寝かせてくれ。」
「ああ、夜通し移動したんだな?
船が出たばかりで誰もいない。長期もいないから。
風呂は?水を持って上がろう。」
「ああ、大丈夫だ。砂漠石を持っている。それを使うから。」
「贅沢だな!もったいないぞ?いざって時の為にとっておかなきゃ。
大丈夫、別に金なんかとらないさ。さ、上がろう。」
クスナさんは3往復をして風呂桶をいっぱいにしてくれた。
予備の桶にもいっぱい。
わたしたちは背負子にいっぱいの荷物を詰めていることにしている。
タオルとクッションを売りたいからだ。
「ごゆっくりー。」
と、あの、ニマニマ顔をして下りていった。
オヤジだ、完全にオヤジだ。
が、それに反応することなく、わたしはマティスに抱っこされている。
あのマティスの匂いを嗅いだ後、急に眠くなったのだ。
おなかがいっぱいになったし、セサミンやガイライとか師匠が、
マティスを守ってくれていたのが分かったし、
いろいろ安心したのだ。
「さ、風呂に入ろうな。」
「んー。」
「窓を開けよう。気持ちがいいな。
寒くはないな?」
「んー。ん?」
「どうした?」
「ここっておトイレ、便所はどうするんだろう?」
「ああ、そこの扉が便所だな。
貯めて下す。風呂の水は流すが、便所だ人力だな。」
「おお。そうか。その、しないと怪しまれる?」
「ん?そうなるか。いいよ。愛しい人は家に帰ればいい。」
「・・・うん。」
ほんと下水道完備というのは大事だ。
ここのお風呂に入る前に扉君の家で済ます。
身支度も軽く。産毛とかね。
シャワーも軽く。
だって、洗い場はないもの。
「ん?シャワー?どうして?」
「・・・おトイレ行ったから。」
「?」
「いいの!!」
「ふふふ。そうなのか?一緒に入るんだったらなんでもいいさ。」
湯舟の中で髪も体も洗う。
それが終われば、もう一つの湯舟で流すのだ。
一番進んでいるお風呂システムはテムローサの家のお風呂だな。
流してもいいし、なんせ、床暖房付きだったから。
「マティスは眠くない?師匠に連絡するの?」
「そうだな。そういう約束だが、今でなくてもいい。
さ、眠いんだろ?ここは安全だ。梯子もはずすから。
おいで?」
外すの?
んー、でも後はおまかせコースで。
『いいよ?ゆっくりお眠り。』
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
合わさりの月のあとは、2日程眠ったほうがいいのか?
ここ数日は少ししか寝ていないからな。
少しずつ慣れていくだろう。
彼女が最初から、気持ちよさそうに眠っている。
うむ。爪も整えておこう。
彼女をきれい磨きあがる。
起きているときはなかなか隅々までさせてくれないからな。
その照れている様子がさらにかわいいのだが。
部屋の寝床を扉君の家の布団に替える。
掛布団を真綿の布団にしようと言っていたな。
雨の日の前には作ろうという。
フレシアの布を仕入れに行ったときにまた集めてもらおう。
砂漠石で膜を張り、月無し石に見張りを頼む。
風呂桶にも新しい水を張り、いつでも水浴びができるように。
外の景色が見えるのか、窓は開けておくように言われる。
窓から屋根に出て、梯子を外す。
10階が客室だが、11、12と部屋はある。
同じ櫓宿だ、作りは同じ。
ただの目印だな。
鐘を鳴らすわけでも、見張りが経つわけでもないな。
こちらは荷物置きにしているようだが、使っていないな。
12階の部屋を買い取ることはできるだろうか?
部屋を片付けてみる。10階より少し狭いが
天井は高いな。
服を大陸の物に替え、頭に布を巻く。
ルポイドの人間を装い下に降りると、
船が付いたのか、何人かの客がいる。
船の客は半分は泊るようだ。
ここで一晩泊って、月が沈むと同時に、イリアスの王都に向かうのだろう。
今から出発すれば、途中で月が昇る。
漁村で泊まるしかないのだ。
やはり夜通し移動するものは少ないのだ。
一人で切り盛りしているのか?
客の荷を上へと運び、水も運ぶ。
その間に客が入ってくる。
「手伝おう。」
「え?ああ、すまない。部屋に荷物を。」
「水は?」
「客がいるといのなら。5銀貨もらってくれ。樹石は3つだ。」
「わかった。」
風呂付を選べばすべて水を要求する。
風呂無しでも、桶があるから水を求める。
寒くなったからな。
2階から4階までが風呂無しで、各階5部屋。
5階から8階までが風呂付3部屋。
9階の客はいなかった。
10階が今泊っている部屋だ。
ダカルナ側でも石集めで人が集まり、
報酬をもらってさっきの船で戻っていたのだ。
イリアスの出稼ぎだな。
報酬は同じく10リング。
船賃でほとんどなくなるのでは?と思ったが、
行きは陸路で行く。
船賃は、イリアス、フエルトナからダカルナ、ニッケまでは9リング、逆は5銀貨だ。
荷代も大きさ重さに関係なく5銀貨。
数人で泊まれば問題は無い。
潮の流れの関係だそうだ。
「なるほどな。ではここからニッケにいく客は少ないのでは?」
「そんなことなかっただろ?いちどこの速さと安全性をしれば、
多少無理しても乗るんだよ。出稼ぎ組は帰りだけだがな。
だから、陸路で夜を通してこっちに来たから驚いたんだ。
少し待てば安くで船に乗れたのにって。」
「ああ、そういうことか。」
「いや、でも助かったよ。荷と水の搬入もな。そのもらった金はあんたのだ。
いつもは手伝いの奴がいるんだが、合わさりの月の日は、稼ぎに出てるからな。
きっとまだダカルナで飲んでるよ。」
「そうか。では遠慮なくもらっておこう。」
「奥さんは?」
「寝てるな。無理をさせたから。」
「は!どっちの無理だよ?」
「ん?両方だな!!」
「「あははははは!!!」」
うむ。楽しい。
「少し外に出てくる。」
「ああ。その恰好ならわからないな。
下の梯子は外しているし、9階は俺が使っている。
だが、気を付けてくれよ?」
「ああ、気遣いありがとう。」
月が沈むと同時に船が出て、店が閉まる。
向こうから着く船は半分ごろだ。
月が昇る少し前から店が開く。
いまはまだ早いな。
港に行くと、船底の点検をしていた。
横では流れ着いたプカプカを引き上げている。
全く乾燥していないものか。
一応買っておくか?
「おい!すまない!」
「なんだ?」
「それは?船の上でも見たが、それはなんだ?」
「ああ、知らないのか?船でも見たんだろ海の厄介者だ。」
「いや、見たが、皆で槍でついて沈めていた。」
「そうだよ。こっちに流れ着くんだ。船底についていたら穴は開くし、始末が悪い。
引き上げて、乾燥させて、山に捨てるんだ。」
「そうなのか?面白いな。」
「面白いか?売ってやろうか?」
「何言ってる?捨てるもんなんだろ?」
「あはははは!冗談だ!
なんでも、これの乾燥した奴を買った間抜けがいるって聞いたからな!
あんたもそうかと思った!」
「先に捨てるなんかいったらダメだろ?」
「そうだけどな。だまして金儲けはやはり良くないさ。」
「いい心がけだな。しかし、実は欲しいんだ。引き上げるのを手伝うから
もらってもいいか?」
「へ?それは助かるが。いらないってんで、また海に捨てるのだけはやめてくれよ?」
「ああ、わかった。乾燥させて山に捨てるんだな?
それはどこら辺なんだ?」
マトグラーサの国境沿いだ。そこには何もないからな。」
森がない山か。
植物も育たないのか?
20ほど引き上げる。
「良し!早く済んだ!ありがとよ!」
男が荷車にプカプカをのせてあの倉庫に運ぶのを見送って、収納した。
彼女はまだ寝ているな。
その間にワイプに連絡するか。
(ワイプ!)
(今どこです?モウは?)
(寝てる)
(どうして!!)
(寝不足なだけだ)
(そうですか。で?今どこです?)
(フェルトナの櫓宿だ。予定が変わった。先にこちらに来たんだ)
(ニッケの櫓宿には行ったことがあるんですが、そっちはないんですよね、
呼んでください)
(どうして?)
(あなた、ガイライにも同じ話したんでしょ?今回はあきらめると言われましたよ?)
(?何の話だ?)
(そのフェルトナの宿屋の彼の引抜きですよ)
(!資産院に?軍部に?)
(それは無理でしょ。そこの情報が欲しい。それです)
(ニッケで買えばいいだろ?)
(もちろん、価値のあるものは買いますよ?が、離れた場所での話もほしい)
(クスナは宿をやりたがってる)
(?それはそのまま。むしろそこにいての情報がほしいんですから)
(・・・・)
(ん?だめなんですか?問題あるんですか?)
(・・・お前を紹介するのが嫌だ)
(なんですか、それ?それを決めるのは彼ですよ)
(ライガーをルカリアに届けるのだろ?それは?)
(明日です。その前にうまいものを食べたいですしね。
水炊き。呼んでくれたもいいのに)
なんで飯を食う前提なんだ?
それにガイライもいちいち話すな。
(今からか?)
(あ、ビャクも連れていきますし、カップたちに言っておかないと。
呼びますから、その時に)
(わかった)
「旦那!ティスさん!今の時間だとなんもないだろ?」
「あとで、主、ああ、私もクスナと呼ぼう。
あとで、私の知り合いが来る。部屋に通してくれ。
それでだ。10階は借りているが、その上、11と12は使っていないな?
どうして?」
「ああ、そこまで部屋が埋まることはないからな。
親父が生きていたずっと前から倉庫だ。いまは使っていないに等しいな。」
「12階の部屋を買い取りたいが、いくらになる?」
「へ?買い取るって?ずっと泊るってこと?」
「そうなるな。11階はそのままでいい。むしろ、上に誰も上げないでほしい。
12階の部屋をいつでも私たちが使えるようにしてほしい。」
「?10階の部屋も最近じゃあんたたちが借りただけだ。
200リング払ってくれるんならいいぜ?ははは!吹っ掛け過ぎだな!」
「では300だ。このことは誰にも言うな?愛しい人にもだ。」
「ほんとかよ?え?」
「いいんだ。ああ、知り合いが来たらとりあえず10階に。」
「ああ、わかった。」
彼女には内緒だ。
驚かせよう。
彼女の寝姿を見せる必要はないので、仕切りを作り、
テーブルを出す。
クッションはプカプカだ。
月無し石も絹で磨く。
数が減ったか?
台所も出して、さて、何をつくるか。
海老料理がいいか。海老ふらいと半身を焼いたもの。
串焼きは煙が出るからなやめておこう。
エビピラフもか。
海老とマヨを炒めたものも、小さな身をそのままでできるな。
白身魚の刺身もか。
酒は?白ワインと日本酒?いや、ビールだな。
あの頭をあげたものにはビールだった。
リーン
「ワイプか?」
リン
「ありがとう。」
(ワイプ?)
(いいですよ?呼んでください。)
(どこで呼ぶ?宿の前か?街の入口か?)
(宿の前で)
(知り合いが来ると言っている。ティスの名前を出せ)
(はいはい。我が弟子ティスですね?)
(・・・それは言うな。そのとき、私のこと聞け。なにかおかしなことをしなかったかと)
(したんですね?ええ、わかりました。
ああ、ビャクとクーも行きます)
(そうか、それはいつでもかまわない)
(ほんと態度が違いますよね)
(当たり前だろ?)
(はいはい。ではお願いします)
(気配は消しておけよ?)
『ワイプ!ビャク!クー!
フェルトナの櫓宿の前に来い!』
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