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397:灯台もと暗し
しおりを挟む港町フエルトナの門が見えてくる。
さすがに立派な門構えだ。
守衛さんも左右に立っている。
もう月が沈んでいるのだ。
「どいて!!とまれない!!」
「止まれ!止まれ!!」
「無理!後ろにアヒルも来てるから!!」
「うわー!!」
扉がなくてよかった。
あったら、漫画壁人間になるところだ。
ちょっと下り坂になってるのがよろしくなかったんではないかとおもう。
「いえーい!1番!」
「はー、ダメか。足が速いな!愛しい人は!」
うふふふ。忍者走りですよ?
アヒルたちも次々にゴール。
強盗?そんなもん、途中で振り落とされている。
アヒルたちは賢いのだ。
「お前たち!!そこに伏せろ!!」
ええ、全面降伏の状態です。
あの海外ドラマとかでみるような?地面に大の字で伏せています。
こういうときは従いますよ、悪いのこっちだ。
なんとか、状況を説明。
座らせてもらいました。
「行商、ティスとモウ?
で、強盗から逃げてきたと?」
「そうなんです。荷物もほとんど投げ捨てて!
そしたら、ここ下り坂でしょ?止らなくて!」
「アヒルは?」
「強盗さんたちの?」
「スコル!このアヒルは強盗団のだ。
ほら、首輪をしている。ルトウエル団だ。」
だからそれだれ?
「強盗団の親玉だよ。
ここまでの街道に出てくるんだ。行商ばかり襲う。」
「え?対策はしてないんですか?」
「命までは取らない。
身ぐるみはがされるだけだ。だから大抵は護衛を雇う。
あんたたちが襲われたのは護衛を雇っていないからだよ。」
なにそれ?じゃ、こっちが悪いみたい。
「護衛ってどこで雇えばよかったんですか?」
「それはここフエルトナか、王都の手前の街、ポリプだ。
凄腕の護衛がいるぞ?」
それ、強盗団とグルじゃない?
ニックさんに聞いてみよう。
「そうですか、街道の途中から入ったので知りませんでした。
あ、アヒルさんたちはどうなります?」
「強盗団に返すわけにもいかないな。あんたたちがもらうか?」
「いえ、わたしたちはこれから船に乗って、ダカルナに行くつもりなんで、
それはちょっと。」
「ダカルナ行きの船はもう出たぞ?
月が沈むと同時に出発だから。」
遅かった。
仕方がない、ここで、一泊するか。
「アヒルたち、処分されることはないですよね?」
「ああ、それはない。こっちで引き取ろう。」
アヒルたちはクエーというだけ。
どっちでもいいみたい。
それより、速いな、すごいなと尊敬された。
「うふふふ。約束だよ?羽毛もらっちゃうよ?」
「「「「「クエーーー!!!」」」」」」
5匹分、くまなく撫でまわし、抜けたら移動し、収納していく。
守衛はおぞましきものを見るようにただ黙ってみていた。
イリアスの王都の広場で集めたものとおなじだけ取れたとおもう。
うむ。この方法はいいな。
アヒルも気持ちがよさそうだ。
「寒くならない?これから寒くなるんだけど?」
ちょうどいいとのこと。
暑い時期にもしてほしいと言われた。機会があればと返事だけ。
「お、お前!何してるんだ?」
「いや、なんか、ふわふわだったんで。」
「なんだ。噂の青いアヒル達かと思ったぞ。」
「え?青いアヒル?なんですかそれ?」
「しらないのか?王都の広場で、アヒルの羽毛を奪っていったらしい。
見ていた人は皆卒倒したらしいぞ?その後遺症でアヒルを見ると震えるとか。」
噂は所詮噂だ。
そもそも広場でどうやって羽毛を奪うんだ?
「恐ろしい話だな。
ところで、宿はないか?夜通し走ったし、船は明日まででないのだろう?
少し寝たいんだ。」
「ああ、そうだな。
いまさらだが、フエルトナにようこそ。
ここで、商売は?」
「おすすめのものがあるか?あればそれを買って、
ダカルナで売るが?」
「は!それは自分で確かめないとな。
なにかを売るのなら、許可書が5リングだ。
仕入れは先に5リング払うか、買う度に1割払うかだ。」
「どうする?愛しい人。」
「そうだね。いい商品があれば仕入れたいね。払っておこう。」
「普段の買い物なら、別に払わなくていいぞ?
仕入れだけだ。」
「普段の買い物と仕入れとどこで見分けるんですか?」
「量でわかるだろう?」
「・・・払っておきます。」
「?そうか?じゃこれな。買った先でみせろ。税は払わなくていいから。」
宿は港の近くを紹介してくれた。
大体が、船に乗るためにそこで泊まるようだ。
門から、港に進んでいく。
立派な店構えが並んでいるが。皆閉まっている。
朝が早いから?
ダカルナかマトグラーサ産のものをここで買って、
ダカルナで売っても売れないな。
イリアス産のものがいい。
そうなると、なんだろう?
「ないな。」
「いや、メイガとかあるじゃん。」
「それは王都で買ったほうが安いし、狩ったほうがいい。
樹石はすこし値上げしてるな。あとは魚介類か。
それはダカルナの方が豊富だ。」
「そうか、なくてもいいか。5リングは念のためだもの。
自分で買うものも大量買いしちゃうからね。
説明するより、仕入れですといったほうが怪しまれない。」
「はは、そうなるな。」
「けど、チーズとかいいかも。」
「毛長ボットの乳製品を買おうか。」
「うん。」
宿はご立派なものだ。
皆、先の船で乗っていったようで、静かだった。
「明日の船に乗る。一晩だ。いくらだ?」
「初めてだな?1部屋、3リング。風呂付は5リング。
風呂付で一番上の部屋なら、10リング。
呼ばれるまで誰も近づかない。」
「海が見えますか?」
「もちろんだ、ダカルナの櫓も見える。
しかし、こっちの櫓は見えないぞ?」
「どうして?」
「櫓の下にある宿だからさ!」
「・・・・ぶひゃははははははは!!!!!!」
リアル灯台もと暗し!!
「おい、大丈夫か?ここまで笑う客は始めてだ。」
「この笑い方は止まるまで時間がかかるな。仕方ない。
その10リングの部屋で。」
「そうこなくっちゃ!!」
マティスに抱えながら、10階分ぐらいの階段を上がっていく。
これ、逆に安くてもいいんじゃない?
途中で痙攣も納まったので降りようとしたが、マティスがにっこりと拒否した。
景色がいいが、この階段がしんどいのでなかなか埋まらないそうだ。
じゃ、なんで高いんだということだが、
客が泊まって、ベルで呼ばれれば上がらないといけないからだ、宿の人が。
水をもってね。
なるほど。だから、呼ばなければ誰も来ないと。
「うわ!景色がいい!!港が一望だ!
向こうに見えるのがダカルナの櫓なんだ!
結構高いんだね。あの村の櫓より高い!」
高ければ高いほど船の行動範囲は広がるということだ。
風呂も窓を開ければ海が見える。
すばらしい。
「水を入れてもらうか?
樹石も届けてもらわないと。」
「え、いいよ。悪いし。排水もしなければ、お風呂に入らなかたんだっておもうでしょ?
海峡石で入れるよ。お風呂入って少し寝よう。
起きたら、さっきの駆けっこのご褒美をもらうから。」
「ああ、なんでも。」
景色がいいところで、冷たい白ワインを飲む。
モモのコンポート、プニカのコンポート。ウリ、リンゴも。
みんな同じ大きさにくりぬいてあり、氷の器にはいっていた。
バブルな感じがする。
大きなめな湯桶に入り、のんびりと。
明るいうちに入るお風呂は贅沢だ。
お風呂の中で一通り。
そこで眠ってしまった。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
ワイプに褒められるのはむず痒い気がする。
我々の成長は、決して師匠がいいからとかではない。
久しぶりに剣のマティスとして狙われる。
内臓?
愛しい人は変なところに興味をもつ。
しかも、食べるものではないようだ。
ああ、これはダメだろう。
戦場での臭いだ。
膜を纏わせればよかった。
石?
なれれば問題ないのか?
細切れにしていく。
ん?これか?
トウミギはうまい。
そうか、出るのか。
そこそこといったところか?
いや強いのだろう。
以前なら同等か?
私は剣のマティスと呼ばれていた時以上に
剣のマティス、いや、愛しい人のマティスなのだ。
愛しい人も容赦ないな。
そうだ、試合ではない。
「そうだな。ワイプにそういっておこう。」
(ワイプ、2人を倒した、殺してはいない。ルポイドに送り返すつもりだ)
(顔が見たいですね)
(ではお前が見に来ればいい)
駱駝馬の気持ちがよくわかる。
愛しい人が食べたいのなら作ろうか。
これぐらいの甘さか?
「先生!いい匂いです!」
「たべたい!」
カップとチュラルが手伝ってくれている。
ほれと、切れ端を口に入れてやる。
チュラルはもう一切れほしそうなので、皿に入れて。
ルビスにもっていくのだろう。
外から、ボン、ボンと音が聞こえている。
楽しい食事だ。
さすが、オートだ。素晴らしさをわかっている。
討伐か。
彼女がいれば楽しいものになるだろう。
彼女は肉がおいしかったらねーと返事をしていた。
モモを回収。
彼女は肉の研究。
臭いがひどい。
私は膜の中で、モモの処理をしている。
彼女は匂いに敏感なのに、おいしく食べるために頑張っている。
セサミナに今回のことを伝える。
姉さん、姉さんとうるさい。
コールリオンは10コ。首飾りを作るのもいいな。
卵白だけ?卵黄はマヨネーズを作ろう。
2時間の鍛錬は砂浜で。
かなりの濃度だ。彼女は息一つ乱さない。
もちろん私もだ。
呼吸法を教わったのがワイプだということだけが気に入らない。
焼きあがった肉は、まさに肉だ。
今まで食べた中で一番うまい。
塩か。やはりちがうのか?
彼女の肌をきれいに磨く。
これは私の楽しみだ。
良い香りだ。
合わさりの月の日にもう一度焚こう。
愛しい人!
彼女は私の香りだという。
え?
ああ、彼女の香りだ。
さっきと全く違う。なのになぜ?
いまは、どうでもいい。
彼女を心置きなく抱いた。
あさから、あーんだ。
海の塩を調達せねば。
セサミナが隙だらけだ。
これの特別か。仕方がないな。
セサミナと旅か。ま、楽しいだろう。
会合までの護衛もそうなるだろうな。
彼女は過保護なのだ。
あの石のことはもう少し置いておくようだ。
トックスの工房で、上着を作りまくる。
こういう作業も楽しいものだ。
行商はうまくいったといえるだろう。
お茶とハムをかったご老人たちに、
いい嫁をもらったなと褒められた。
自慢の嫁なのだと、惚気させてくれた。うん、なかなか良い。
気に入った人に配ってもいいよと言われている歯ブラシをわたす。
少しずつ広まればいい。
アヒルと彼女と競争か?
それは楽しいな。
アヒルが振り落とした瞬間に、強盗たちに
一太刀浴びせる。
運がよければ生きているだろう。
彼女はも楽しいそうだ。言う必要はない。
それはグルだな。
護衛と強盗と。始末すればよかった。
彼女を抱え階段を昇る。
彼女が照れるのがかわいい。このまま部屋に。
見晴らしの良さに彼女が喜んでいる。
こういう場所もいいのか。なるほど。
彼女が眠いのか、酔ったのか。
可愛く甘えてくる。
そのまま、そのまま。
ご褒美はあとで。
今はこのまま、私の腕の中に。
彼女が目が覚めた後に欲したご褒美は、
声を殺してはいけない、すぺしゃるなまっさーじを受けることだった。
・・・・。
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